ありえる“かもしれない”未来 × 入れ替わりシンドローム 町中に鏡を! ここ最近、街のあちこちで奇妙な光景を見かけるようになった。 ドアに、店のシャッターに、電信柱に、なぜか姿見くらいの大きさの鏡がついている。 珍しいからだろうか、その鏡を多くの人がのぞき込んでいる。 聞くところによると、それは万が一誰かと「入れ替わった」ときに身体を確認するためのもので、アイディアを出したのはある女子中学生らしいのだけど…。 そんな鏡、わざわざつける必要もないと思うんだけど、どうかなあ? 私の名前はひとみ。今中学2年生。 つい最近までは、絶好調だった。 あの時は、次々に自分の夢がかなって最高だったけれど、今は大変だよ…。 そのすべての始まりは、通りがかりに聞いた、友人のほんのささいな会話なんだけど…。 「この服きついんだよぉ…。」 「あら、自分の服なんか着ちゃって。今のあんたに合うわけなんかないでしょ。だって、今のあんたはオレなんだからな。」 「きついといったって、私、男物の服を着る気がしないんだってば~!」 その友人は彼氏の男の子になっているのに、自分のブラウスとスカートを着てしまっていたのだった。 「もしかして、家にはジーンズとかないのか? いつもスカートしかはいていないから不思議に思ってたんだ。」 「ない!1枚もないわ!」 でも、どうして自分の服を着てしまったんだろう? 自分が今、誰なのかくらい、自分でもわかってるはずなのに…。 そのことが不思議になって、その日の晩は眠れなかった。 次の日、中学校に行くために近所を通りかかると、今度は近所の小学生くらいの女の子が私の中学の男子の制服を着ているのを見かけた。 体より少し大きい服なので、ぶかぶかで歩きにくそうだ。 そう思ったとき、入れ替わった相手らしき男の子がその子を追いかけてきた。 「それ私の服ぅ!」 「いいだろ。そんなにぶかぶかじゃないし。女子の制服ってスカートがスースーしてて、いやなんだよな~!」 「でもそれは男物よ!いくら自分の服だからといっても、格好悪いわよ!」 「おまえだって、髪短いくせに!昔、友だちに男子って間違われたんだろ」 「前のことはどうでもいいわ!それより、女の子の服を着てるあんたのほうが格好悪いわよ!」 おろおろと自分の体を見回す女の子。やっと気がついたらしい。 「あ、そうだった。早く着替えてこないと…。」 その女の子は急いで家に戻っていった。 もうすぐ学校が始まる時間だけど、遅刻してないかな…? 私は誰かと「入れ替わった」ことはない。 けれど、誰になっているのかはわかるんじゃない?という “思い込み”を持っていた。 でも、その”思い込み“は、この二つの出来事によって裏切られた。 どうしてみんな、自分が今誰になっているのかがわかんないんだろう? そのことが気になって、勉強にも集中できない。 ついには、空を見上げたり、ノートにこっそりと考えを書き留めたりしていた。 その時、私はそんな疑問とともに、あるアイディアを思いついた。 町には”鏡“がほとんどないってことを。 確かに、鏡やその代わりになるものと言えば、ショーウィンドウや曲がり角のミラーぐらいしかない。 それも、映りにくい時もあるし、曲がり角のミラーは身体を確認できるほどの大きさではない。 しかも、今ではそれさえもない。 確か、ちょっと前、ある時間に鏡の前に立つと引きずり込まれてしまうっていう、変なうわさがたって、町中の鏡やガラスが全部こわされちゃったって聞いているけど…? ここ最近、大地震に大津波、台風…。 本当に災害が多くていやな世の中になったよ…。 でも、これだって、いってみれば災害なのかもしれない。 それが何かって…? ※筆者からお知らせ 今回は、どせいさんのシェアワールド「入れ替わりシンドローム」と私の連載「ありえる“かもしれない”未来」のコラボでお送りします。 同じ設定の話をアクシデントによる「入れ替わり」と技術による「入れ替わり」で描いた場合、ストーリーはどう違ってくるのか、そして、両者の「入れ替わり」の違いとその問題点は何なのか、そういったことを少しでも明らかにしてみようと思い、この企画を思いつきました。 アクシデントと技術、あなたはどちらの「入れ替わり」がお好きですか? 入れ替わりシンドローム版 第1回 (2012.03.25)第2回 (2012.04.15) ありえる“かもしれない”未来版 第1回 (2012.03.25)第2回 (2012.04.15) |