ありえる“かもしれない”未来 × 入れ替わりシンドローム 町中に鏡を! (入れ替わりシンドローム版) 第2回 「それはとうとうやってきた…」 次の日私はいつものように学校へ行った。 一晩中、アイディアを考えてたから、眠いよ~。 「さっちゃん、おっはよ~!」 親友のさっちゃんことさちこにあいさつをしたはずだったんだけど…。 「ひとみ、おはよ。気がついた?」 「気がついたって?あなた、さっちゃんじゃないの?」 「実はね、わたし、ゆみこなの」 「なに変なこと言ってんの?」 「知らないの? 実はね、私「入れ替わり症候群」にかかっちゃったの」 「もしかして、あのテレビで言ってた?」 「そうよ。でも、わたし、この学校を卒業してもう6年、あの頃の校舎、今はもうないのね。でも、もうすぐ大学に進学することが決まっていたのにこんなことになって残念だわ。あたしになったあの子は勉強についていけるかしら…」 ゆみこさんは、私の知り合いで、4月から女子大に進学する予定だった。 でも、これからを目の前にして、後輩と入れ替わってしまうなんて…。 ホント気の毒ね…。 でも、その影響は私の予想以上だったのだ。 いつものようにテレビを見ていると、イケメンのアナウンサーがニュースを読み始めた。 わかりやすく、かっこよく言ってくれる、中学生に人気の番組だ。 「きょう午後3時ごろ、○○市××にお住いの20代の女性が、同じ年頃の男性にナイフで刺されました…。女性は治るまでに1か月のケガだそうです…」 次のニュースも似たようなものが続いた。 たまたまじゃないの? って思ってたけど、次の日もそんなニュースばかり。 その日を境に、「入れ替わり」による事件が毎日のように報じられるようになった。 「どうしてだろう…?」 そう思った私は、ニュースをコピーしてノートに貼っていった。 「増え始めた「オレオレ詐欺」」 「「入れ替わり」のため、裁判中止」 「増える誤解・増える悪用」 裏切られたと思い込んだ恋人を刺してしまったとか、 自分が未成年になっていることを知らずに酒を飲んだりタバコを吸ってしまったとか、 社員がまるで別人のようになってしまって職場が崩壊したとか…。 もしかしたら、今ではほとんどなくなった交通事故よりも多いかもしれない。 そんな状態だけど、政府も動きはじめた。 最近、「BSS対策室」が設けられたらしい。 でも、いまだにその原因が分からないし、 関係者の何人かは入れ替わっちゃって、話が進んでないらしい。 それどころか、 外国人と入れ替わった場合のために、全国民が英語を話せるようにしようとか、 人格のほうを“個人”とする法案が出されて大反対されるとか…。 ホント、めちゃくちゃ。 どう考えたっておかしいよ…。 それでも、少しは望みがある。 よくわからないけど、「入れ替わらない」体質の人も少しはいるらしい。 それに、この現象は地球だけのもので、月や火星では発生していないらしい。 だから、地球から情報を送ったうえで、別の星で研究しようって話もある。 それに、大金持ちの中には、プライベートシャトルで月や火星に住む人もいるらしい。 最近まで、税金のない国に逃げるのがはやったのと同じかな? でも、住み心地はとても悪いし、事故も多いらしいから、私はいやだな。 とりあえず、BSSにかかれば、入れ替わったことの“証明書”を持たなければならない。だけど、誰が誰と入れ替わったかはわかりづらくて時間がかかる。 だから、発行まで1年もかかるらしい。 最近になって多くなってきたので、発行が追いつかないとか…。 それに、重いし、相手(つまり、自分がなっている相手)の情報も書かれている。 入れ替わっていても発行を待っている人も多いし、持たなくてもおまわりさんに呼び止められることはまずない。 だから、誰も持ち歩かないらしい。 だったら、いつでも検索できる小さな端末にしてくれたらいいけど、なくしたり誤って壊してしまうと大変だからかなあ…? それに、自分の知っている人に「入れ替わっている」ことを言うのは勇気がいる。 だから、マンガやアニメのように、入れ替わったことを言わない人もいる。 それに、お年寄りはそういった現象があることを知らないみたい。 よくわかんないけど、あの子たちもそれを持たずに外出したから、間違われたんだろう。 自分が誰になっているのかわかんないから、自分の家に帰ってしまうかもしれない。 でも、体は相手のものだし、自分の家に相手に合う服なんてあるわけない。 家族にたまたま服が合う人がいたら別だけど…。 でも、今じゃ一人暮らしや核家族が多いから、そんな人はなかなかいない。 でも、ハダカで行くわけにはいかないから、とりあえず自分の服を着ていって、友だちに笑われる…。 そんなとこかな? 家の中以外だったら、トイレなどにかけ込んで確認するという方法もあるけれど、自分が今、男か女かわからないのに、危険だし、下手したら、 「キャ~~~~~~!!!」 って言われるかもしれない。 そうなる確率は低いとはいっても、地球に住んでいる限り、逃げられないのだから、自分が今、誰になっているかがわかんなくても仕方ないんだろう。 そういう人たちのために、町じゅうに全身が映るくらい大きな鏡を置いてくれたらいいんだけど…。 (以下次回) |