ありえる“かもしれない”未来 × 入れ替わりシンドローム 町中に鏡を! (入れ替わりシンドローム版) 第1回 きっかけは、テレビだった でも、なぜあの子たちは服を間違えただろう…。 私にはそのことがよくわからなかった。 けれども、その答えは意外なところにあったのだった。 私はいつものようにぼ~っとテレビを見ていた。 いまどき、テレビなんてもう古い。 友だちなんて、誰も見ていない。 けれど、最近の機器の小さい画面はイヤだし、そのせいで目を悪くしてしまったからそれしか見るものがない。 いまどき、新聞も電子ペーパーのものしかないので、スイッチを入れないと何をやっているのかわからない。 そう思ってスイッチを入れたその時だった。 「みなさんは、BSS、「入れ替わり症候群」についてご存知でしょうか?この病気の大きな特徴は、まるでアニメやマンガのように、人と人との人格が入れ替わってしまうということにあります…。」 「入れ替わり」ってまさか、マンガやアニメでおなじみのあの展開? ウソぉ…。 信じられない!! 番組によると、その現象の名前は「入れ替わり症候群(BSS)」といい、ある日突然、二人の人間の中身が入れ替わってしまうものらしい。 私は超能力や宇宙人などについての番組が好きだけど、こういうのは初めて聞いた。 そんなこと、マンガやアニメの中だけのことで現実には起こらないんじゃないの? 第一、そういった番組でも取り上げられたことはないし…。 番組は、再現ドラマと各パターンの解説からなっていた。 「20××年、日本の某大学で、その出来事は起こった。Aは、その日、100人余りの生徒と共に、大学の講義を受けていた。授業も中盤に差し掛かったそのとき、Aは、何か光のようなものを目撃した。その瞬間、周りがパニックに陥った。一緒に講義室で講義を受けていた学生が集団入れ替わりを起こしたのだった。当然、A自身も例外ではなく、別の女子学生になっているのに気付いた…。」 意外なことに、この現象は私の住んでいる日本でも起きているらしい。 でも、身の回りで誰かと「入れ替わった」人を私は知らない。 最近、性格変わったなあって思う人はいるんだけど、それなのかなあ? でも、どうして気づかなかったんだろ…? そして、どこかの研究所の学者らしき人が、今までに発見された「入れ替わり」のパターンについて説明し始めた。 「BSSにはパターンG、パターンP、パターンIの3種類のパターンがあります。パターンGは周囲の人間と玉突き式に入れ替わるもので、ドラマにもあったように、日本のとある大学で初めて確認されました。パターンPは、1対1で入れ替わるものですが、遠く離れた空間にいる人間の間でも発生するもので…」 そんな解説なんてどうでもいい。 自分には医学的な知識なんてないからだ。 まるで、本当のことのように言っているけど、 ほかの似たような番組と同じで、まさか、この番組インチキじゃないよね…? 私は「入れ替わり」を信じなかった。 あえて言うならば、信じたくなかった。 自分の好きな人と「入れ替われる」わけじゃないし、他人になったからといって、そっちのほうがラクというわけでもないからだ。 けれど、番組は信じられない方向へと向かった。 「あっ!」 「なんで、私がここに?」 「どうしたんですか?」 「気がついたら、あたし、こんなところにいたんです。ここはどこなの?」 なんと、番組の中で司会者がその場にはいない誰かと入れ替わってしまったのだ。 番組の中でそんなものが発生するなんて…。 そういうこともあって、番組は何を伝えたかったのかよくわからないまま終わった。 でも、その様子をテレビの画面で見て、私はこの現象の存在を信じたくなった。 「この世にまた一つ謎が増えたんだ!」 そういうことを知って私はうれしくなった。 私たちの世代は興味の幅が小さいって言われているけど、けっしてそうじゃないんだってば。 でも、心の中では 本当じゃなかったらいいのにな…。 って思っていた。 そういう私の願いが裏切られたのはあっという間だった。 その番組を見て数日もしないうちに、私の住んでいる町にもその”災害“はやってきたからだ。 (以下次回) |