「はぁ・・・」
まったくなんてついてない一日だったんだろうか。
俺はそう思うと、ソファに深く腰をかけてため息をついた。



【TSショップ、山本の日常】
作:リイエ



俺の名前は山本。
大学を卒業した後、就職もしないでグータラしているあるフリーターだった。
いや、正確には就職をしようとしたが出来なかっただな。
ある食品会社の内定をもらっていたが、あるミスを俺はやっちまった。

その前に説明しておこう。
俺が就職しようとした会社は、今巷で有名な「ゼリージュース」を作っている会社だ。
ほらおまえも聞いたことあるだろ?
赤とか黄色とか色に分かれて効能が違うあのジュースだ。

しかし、販売されているやつ以外もあることを俺は知ってしまった。
そのことがまずかったらしい。
内定も取り消し。
上から圧力がかかったのかしらねーが他の会社に就職しようも門前払い。
お先真っ暗ってやつだ。
まぁ、だったからお察しがつくように、最近商売を始めたのさ。

今から俺の商売話をしてやろう。
まぁ、興味があろうがなかろうが俺は話すがな。



「帰った帰った、お前はうちじゃ雇えない、さっさと出て行ってくれ」
俺はほぼ押し出されるような形で外に出された。
「はん!言われなくてもおめーの会社なんかこっちがお断りだよ!!!」
捨て台詞をビルの方に向かって言い、俺はその会社を後にした。

「ちくしょお、俺が何をしてったんだよ」
俺は愚痴を漏らしながら、家に帰宅した。
「はぁ・・・」
ソファーに座り大きく上に仰いだ俺は、今日になって何回目か分からないため息をついた。
「ゼリージュース、販売されてない禁止のシリーズだったけか」
そう、そもそもなんでそんな危険なものをいまだに流通させているのかが疑問だった。
「こんなジュースに俺が振り回されるとは」
俺はソファーから立ち上がり、冷蔵庫の中にあるカラフルなペットボトルから緑色のペットボトルを取り出した。
「こんなもんにそんな危険な力がねぇ・・・・」
「まぁいいや、しまっておくか」
俺は再びそれを中にいれ、冷蔵庫を閉じた。

そもそもこんなに大量のゼリージュースをなんで持っているかって?
それにはわけがあってな。
詳しくは言えないが、まぁゼリージュースを流通させているやつがいてそいつから全部引き継いだってわけだ。
食品会社としても、それを欲しがっているやつらとしても俺の存在は見過ごせないんだろうな。

普通に流通している赤、黄、青。
それ以外にも桃色や黒色、緑や透明な原液。
色々な種類のものがあるみたいだ。

俺は冷蔵庫を見てふと思いついた。
「・・・・そうか、これで商売をすればいいじゃないか」
俺は使う気なんかさらさらないが、使いたがるやつは山ほどいるはず。
そいつらの弱みに付け込んで金を儲ければいい。
そうだ、それでいいじゃないか。
あんな会社の評判が落ちようが落ちまいが知ったこっちゃない。
なんで今まで思い浮かばなかったんだ。
俺はこのゼリーで商売をすることに決めた。


「使用する時には、くれぐれも注意してください。
 下手に使うと取り返しのつかないことになりますので」
俺がそう言うと、男はへつら笑いをしていた。
「へへへ、わかってるよ、これでやっとあいつに復讐が出来る。
 ありがとうな、じゃああばよ」
男はそう言うと、扉を開け階段を上っていった。
「ふぅ・・・、あの男がどう使おうがかまわないが。
 復讐とか相手を人生をもらうとか、本当に短絡的な考えのやつらばっかだな。
 まぁお金さえもらえれば別にいいんだけどね」
男の姿が見えなくなった後に俺はそう言った。

さっきの男の客が来てから、お客が来なくなり暇になってしまった。
「ふぁー、今日は暇だからそろそろ閉めるかー」
カウンターから立ち上がり、扉のOPENの札を、CLOSEに変えようと扉まで行くと突然後ろから話しかけられた。

「あ、すいません。
 もうお店終わっちゃうんですか?」
俺が後ろを振り向くと、そこに少女がぽつんと立っていた。
「え?いや大丈夫ですよ、いらっしゃいませどうぞ店内へ」
少女は見た目にも年齢が低いと分かる。
一体どうやってこの場所を知りえたんだろうか。
そんな事を思っていると、少女が話しかけてきた。
「あ、あのー。ここでゼリージュース買えるんですよね?」
「はい、そうですよ。
 どのようなゼリージュースが欲しいんでしょうか?」
俺がそう言うと、少女は黙って何も言わなくなってしまった。
「お客様?お客様大丈夫ですか?」
「あ、はいだいじょ・・ぶで・・・す」
それだけ言うとまた黙ってしまう。
一体何がしたいのだろうか、少女にもう一度聞いてみる。
「お客様、このお店にこられたということは何か大きなお悩みがあるということではないのでしょうか?」
「誰かを憎んでいるとか、自分が別人になってみたいとか」
「そういうお悩みでこられたんでは?」
俺がそう言うと、少女は顔を上げて大きく首を振った。
「いいえ!違うんです!!
 ここに来ればお姉ちゃんを助けることが出来るんじゃないかなと思って」
「お姉さんを助ける?」
「お姉ちゃんもう、長くは生きれないんです・・・。
 だからゼリージュースを使って・・」
「ちょっと待ってください」
俺は少女の話を区切った。

「いくらなんでも死人を生き返させることはできませんし、病気も治すことはできませんよ?」
「はい、それは分かってます」
「では他人を犠牲にして、お姉さんを助けるって事ですね、それではこのし・・」
「た、他人なんか犠牲にできません!!!」
俺が商品を紹介しようと思ったら、少女にものすごい剣幕で怒られた。
「申し訳ございません、ではどのような商品がよろしいのでしょうか?」
「緑色の・・・心を一つにできるゼリージュースがあると聞いたんです」
「メロン味のゼリージュースでございますね、しかし飲まれましたら二度とその精神は離れることは無くなりますが」
「はい・・・。それが欲しいんです。
 お姉ちゃんとはいつも一緒でした、どこへ行くにも一緒に。
 それなのにお姉ちゃんと離れ離れになるなんて嫌なんです!
 それならいっそ一緒になってしまいたいと思ったんです。
 私の中で生きるなら、お姉ちゃんも助かるしこれが一番なんです」
「左様でございますか、わかりましたこちらが緑色のゼリージュースになります。
 それと効能が書かれた説明書です、一緒にお持ちになってください」
俺はそう言うと、少女に緑色の液体が入ったペットボトルを紙を添えて渡した。

「ありがとうございます」
少女はペットボトルを受け取って代金を支払うと、ぺこりと頭を下げ店を後にした。
「ありがとうございました、またのお越しを」
「しかし、二人で一つにねぇ」
ぼそっとそういいながら、店の看板をCLOSEに変えた。
「しかし、あの少女はその姉に飲ませるつもりで買ったんだろうかね。
 あの勢いだと自分で飲んで同化しそうだな。
 しったこったやないが、ベースが姉なら
 同 化 し た 二 人 ご と 死 ぬ ん だ ろ う な ぁ」

扉のカギを閉め、奥の家に戻っていった。
ガチャン!











(おまけ)

(おまけ2)

(おまけのおまけのおまけ?)