姉妹
原案:リイエ
作:toshi9



「お姉ちゃん、これ飲んで」
「え? なあにそれ」
「ゼリージュースっていうの、あたしが買ってきたの。
 お姉ちゃん、あたしを置いていかないで、あたしを一人にしないで。お願い……ぐすっ」
「愛子ちゃん……」
「お願い、お姉ちゃん……飲んで」
「ふっ、なんだかよくわからないけど、どうせあたしいつまで生きていられるかわからないし、うん、わかったわ、それちょうだい」
ごくっ、ごくっ


「あ! なに? どうして? 体が、あたしの体が」
 緑のゼリージュースを飲み終えた姉の体は徐々に透き通り始めていた。
「うわあ、ほんとに本物だ……ねえ、お姉ちゃん、あたしを抱いて。ぎゅっと。あたしの最後のお願い」 
 両目にいっぱいの涙を溜めながら、愛子は半ば透明化した姉にもたれかかった。 
 そんな愛子を姉はそっと抱きしめる。
「……ああ、お姉ちゃん、お姉ちゃんがあたしの中に……あたたかい、あたたかいよ」
「愛子ちゃん、あたしの体が、どうして? どうしてあなたの中に? ああ、でもあたたかい。まるであなたの中に溶けていくよう。愛子ちゃんの中、とっても気持ち……いい」
「お姉ちゃん、あたしたち一つだね……。 うん、あたしにもわかる。あたしと愛子は一つ、
これからずっと。
 そう、あたしたちずっとずっと一緒だよ」


 一人病室に佇む彼女の背中を、雲間から顔を覗かせた月が優しく照らしていた。