結婚式当日の告白①~わたしは”皮”~ 作:無名 結婚式当日ー 彼女から呼び出された彼は 衝撃の告白を受けることにー --------------------—- 結婚式当日ー 原口 尚樹(はらぐち なおき)は、 婚約者である三崎 果里奈(みさき かりな)に呼び出されていたー。 穏やかな雰囲気で、”守ってあげたい”と思ってしまうような そんなオーラを出している果里奈ー。 だが、結婚式当日の本番直前になって 果里奈がどうしても話をしたいー、ということで、 本番を30分遅らせてもらい、尚樹は果里奈の待つ部屋に 会いに行ったのだったー 「---尚樹…」 ウェディングドレス姿の果里奈が振り返るー 尚樹は、ドキッとしながらも、 「果里奈…話って?」と平静を装って声を掛けたー 正直、親族たちの待つ会場への入場を 遅らせることになってしまうのにも関わらず、 こうして呼び出されたことに、尚樹は少し、不安を覚えていた。 「----…」 果里奈の表情を見て、尚樹は 果里奈がこれから話そうとしている話が ”決して良い内容ではない”ということを悟るー 果里奈の表情には、”曇り”が、滲み出ていたー。 これから、とてつもなく重い話をするー そんな、顔だー ゴクリと唾を飲み込む尚樹ー。 「----怒らないで、最後まで聞いてくれるー?」 果里奈の言葉ー 尚樹は”良い話ではない”ということを 改めて確信したー。 だが、大好きな果里奈の言葉は 何でも受け止めるつもりだったー もしかしたらー この場で婚約破棄をされるのかもしれないー そんな覚悟もあったー。 でもーーー 果里奈の話は、そうではなかったー 「--わたしは…”皮”なの」 果里奈の言葉ー 「----皮?」 尚樹は思わず表情を歪めた。 怒っているわけではないー 果里奈が何を言っているのか、本気で意味が分からなかったからだー。 「----…うん」 果里奈は頷くー まだ”打ち明けるかどうか”迷っているー そんな感じだー。 ウェディングドレス姿の果里奈と、 尚樹が見つめ合うー。 緊張で、喉がカラカラに乾くー 会場の控室に設置された時計の音だけが カチ、カチ、と沈黙したその部屋に 音を刻むー。 「----…そう、皮ー」 果里奈はそこまで呟くと、 「-ーーー見て」と、意を決した様子で呟いたー 「---!!」 尚樹は目を疑ったー 果里奈の頭に”亀裂”のようなものが出来てー 果里奈が自分の後頭部のあたりに手をかけるー そしてー チャックのような音が聞こえるとー 果里奈の顔がベロン、と皮のようになってー そのまま垂れ下がるー 「え……、、、」 尚樹は言葉すら失ってしまったー 目の前で起きた出来事が”現実”なのかどうかー それすらも理解できないままー 尚樹は硬直するー。 ”皮”になった果里奈の顔の中から 出て来たのは”短髪の男”の顔だったー 「----………これが、、本当の、姿ー」 果里奈の声じゃないー 男の声ー 果里奈の顔の中から出て来た男は、 寂しそうに、尚樹を見つめたー 尚樹は驚いて悲鳴を上げそうになったー ”お前、果里奈をどうした!?”と 叫びそうになったー だがーー 尚樹はその言葉をすんでのところで飲み込み 冷静を装って続けたー 「---…ーーーそれが、果里奈の本当の姿ってこと?」 尚樹の言葉に、 果里奈の皮の顔の部分だけ脱ぎ、顔を出した男が、 頷くー。 不安そうな表情を浮かべながらー。 「---……分かったー ーー果里奈…いや、、君が正直に打ち明けてくれたならー 俺も、率直な気持ちを言うよ」 尚樹は頭をかきながら、 気持をどこにぶつけて良いのか分からず、 何度か大きくため息をついたー 「---正直、全く意味が分からないー いったいーどういうことなんだ? 最後まで、話をちゃんと聞くと約束するからー 全部、説明してほしいー。 君は女装してたってこと? それとも、実は人間じゃないとか、そういうことー? まるで、俺には意味が分からないー だからー 全部、説明してほしいー」 尚樹は、必死に平静を装いながら やっとの思いでそう言葉を口にした- 果里奈は「---うん」とだけ呟くと 再び皮を全て被り、果里奈になって、 そのまま語り始めたー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ まずーーー 果里奈は、 ”三崎 果里奈”という人物は ちゃんと実在しているー ということを説明したー ただしー 今の”三崎 果里奈”は ”三崎 果里奈”であって”三崎 果里奈”ではない、とー。 とーー。 今ー 三崎 果里奈を動かしているのはー 滝山 茂(たきやま しげる)という男である、ということー。 「---尚樹ー あなたと出会った時には、既に、 わたしは、わたしじゃなかったー あなたは、”本当の三崎 果里奈”を知らないー」 「---それは、どういう…?」 尚樹が首を傾げると、 果里奈は続けるー。 「--”人を皮にして着込む力”」 「--!」 尚樹は驚くー 「--そんな力を、手に入れたのー」 滝山 茂は、コンビニでパートとして働く男だったー。 そのコンビニにいつも寄っていたのが、一人暮らしを始めたばかりの女子大生ー 三崎 果里奈だったー。 果里奈に好意を抱いた茂は、 ある日、果里奈に告白したー しかしー 果里奈に”ごめんなさい”と振られてしまったー 逆上した茂は ”相手を支配する方法”とネットで連日検索を続けたー その結果ー 茂はたどり着いてしまったのだー。 ”他人を皮にして乗っ取る”という力にー。 茂は半信半疑ながらも、それを注文したー。 そしてー ”人を皮にするための注射器”が、茂の手に届いたのだー 「---あの!」 コンビニのバイトが入っていない日に、茂は 果里奈を待ち伏せしたー。 「--え?」 振り返る果里奈ー。 茂に乗っ取られる前の果里奈はショートヘアーだったー。 「---!」 茂は無言で果里奈に近づくー そしてー 果里奈の首筋に、茂は注射器を刺したー 悲鳴を上げながら あっという間に、皮のようになっていく果里奈ー コンビニ近くの人通りのない路地に皮になった果里奈を連れ込むとー 茂は”己の欲望”を満たすためだけに果里奈の皮を着てー 果里奈を支配したー 「--うふっ♡ ふふふふ♡ あははははははっ♡」 果里奈になった茂は、果里奈の身体をしゃぶりつくしたー。 毎晩毎晩エッチに溺れて 喘ぎ狂う果里奈ー 色っぽい服装をかき集めー 髪を伸ばしー 茂は、”茂”としての人生を捨てて 果里奈として生きていくことに決めたー。 果里奈としてー ”女”を武器に男を誘惑しー 茂は今までの人生で味わったことのないような 欲望の日々を過ごしたー。 だが、そんなある日ー 夜の街で太ももを大胆にさらして歩いていた果里奈はー 柄の悪い男たちに絡まれてしまっていたー。 「やめて!!」 果里奈が悲鳴を上げるー 中身の茂は男ではあったがー 数カ月も女子大生として過ごすとー 感覚的にもだんだん”女”になって来るー。 しかもー 果里奈の姿では非力でー 男たちに抵抗できないー 果里奈になった茂はこの時初めて ”女としての恐怖”を味わったー。 その時ー 果里奈を助けたのが、別の大学に通っていた尚樹だったー 「おい!何してるんだ?」 果里奈に絡んでいた男たちに声を掛けた尚樹ー 逆上する男たちを 習っていた格闘術で、撃退するとー 尚樹は、果里奈に手を差し伸べたー 「--大丈夫?」 尚樹の言葉に、 果里奈は目に涙を浮かべながら頷いたー。 それが、尚樹と、果里奈の出会いー。 尚樹が果里奈と出会ったときにはー 既に、果里奈は果里奈ではなかったー。 「---……」 そのことを聞かされた尚樹は表情を曇らせるー。 「---……ごめんなさい」 果里奈は頭を下げるー。 「---……いや…」 尚樹は寂しそうにそう呟くと 「最後まで聞くって約束したからねー」 と少しだけ笑い、 果里奈に”続き”を促したー 果里奈は頷くと、目を閉じて思い出すようにしながら続けるー。 尚樹に助けられた果里奈は 男を誘惑するようなことをやめー 大学でも、落ち着いた服装を好むようになったー それはー ”乗っ取られる前の果里奈”に戻ったような感じでもあったー。 それからしばらくの間は 果里奈は、”女子大生”として過ごしたー 「んっ…♡ んっ…♡」 ”男に襲われる恐怖”を女子大生として経験した果里奈を 乗っ取っている茂は、 外では大人しく振る舞いー 家で、一人、楽しむようになっていたー 「--へへへへ…この身体は、俺のものだー… 誰にも渡さねぇ…」 果里奈が下品な笑みを浮かべながら コスプレ姿で笑うー。 毎晩毎晩エッチを繰り返すー。 けれども、外では”男”に怯えるかのようにして、 過ごしていたー そんなある日のことだったー。 果里奈の通う大学では学園祭が開かれ、 他の大学の人間や、地域の住民なども 遊びに来ていたー 果里奈が友達と歩いていると、 偶然、別の大学に通う尚樹が、友達数人と歩いているのを見かけた- 目が合う二人ー 「あっ…」 尚樹が果里奈に気づくと、 会釈してきたー 果里奈は一緒にいた友達に”ちょっと待ってて”というとー そのまま尚樹の方に近づいて、 「この前は、本当にありがとうございました」と頭を下げるー。 尚樹は、この大学に知り合いがいるという友達に 付き合って学園祭に遊びに来ていたのだというー。 尚樹も、友達に声を掛けて、 友達を先に行かせると、 果里奈と、雑談を始めたー。 数分が経過しー 尚樹は「じゃ、学園祭、楽しんで」と 微笑みながら立ち去って行こうとするー。 しかしー 果里奈は尚樹を呼び止めたー 「あーー、、あの、、」 果里奈を乗っ取っている茂自身にも、 自分が何を考えているのかわからなかったー 助けてもらったからー? それとも、自分の心は”女”に染まってきているー? 色々なことを考えながらも、 果里奈を乗っ取った茂は、自分の行動を止めることができなかったー 「--良ければ…いっしょに、回りませんか? ほら、、あの、、わたしの大学ですし、 色々案内できるかなって」 果里奈の言葉に、尚樹は少し驚いた表情を浮かべながらも 「---じゃあ、せっかくだから、お願いしようかな?」とほほ笑んだー。 ”自分を助けてくれた男性”への好意ー 果里奈の中で、それが膨れ上がりつつあったー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「---いけないことだって、分かってたー… でもー」 ウェディングドレス姿の果里奈が震えながら呟くー 「--わたしは、”皮”だからー 他人を皮にして乗っ取った人間だからー でも、それでもーーー 尚樹と一緒にいるうちに、わたしはーー わたしは、だんだん、あなたのことがー」 悲しそうな果里奈を見つめながら 尚樹は複雑な表情で頷くー。 「-ーーー……」 少しだけ深呼吸をすると、尚樹は 果里奈の方を見つめるー。 「--……その先も…聞かせてもらえるかな?」 とー。 「---うん」 果里奈は頷くと、 ”尚樹との再会”のその先ー 尚樹と深い関係になってー そして、今に至るまでを語り始めたー ②へ続く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 皆様こんにちばんは~! 最近はすっかり暖かく(暑く?)なりましたネ~! 私のあとがきも、 暑い暑い~!で染まる時期が近づいてきました~笑 (暑いのが苦手デス~!!) 今回は、解体新書様ではまだそんなに数を 載せていない皮モノデス~!! 大切な人に突然”皮”、 中身は違う人間だと結婚式当日に相手から言われちゃったら…? 皆様だったらどうしますか~?★ 物語の中の主人公がどんな風に反応していくのか、 次回以降で楽しんでくださいネ~! |