結婚式当日の告白②~真相~ 作:無名 結婚式当日ー 新郎新婦の入場直前に、 彼女が打ち明けた真実を前に、 彼氏は困惑するー --------------------- 果里奈の言葉に、彼氏の尚樹は驚きを隠せないー 今日、結婚式を済ませて、 近日中には入籍、新生活が始まる…予定だったー だが、目の前にいるウェディングドレス姿の果里奈は、 果里奈であって、果里奈ではないー。 茂という男が、 当時、大学生だった果里奈を皮にして乗っ取っているのだー。 そしてー 果里奈は既に”尚樹と出会う前”から皮にされていたのだというー。 それはつまりー 本当の果里奈は、”そもそも尚樹のことを知らない” ということを、意味するー。 「---学園祭で、あなたと再会してからー わたしは変わったー」 果里奈が目を閉じながら ”続き”を話すー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 学園祭で尚樹と再会した果里奈は 嬉しそうに尚樹を案内したー。 心から”楽しい”と思えたー そして、果里奈は自分の中に ”自分を助けてくれたこの人への恋愛感情”が 芽生えていることを自覚したー。 「--今日は楽しかった。ありがとう」 尚樹はそうお礼を口にすると、 「そろそろ一緒に来てる友達のところに戻らないと」と 苦笑いしたー。 「---あ、はい、そ、そうですよね」 果里奈はザンネンそうな表情を浮かべると、 意を決して呟いたー 「--あの!良ければ…連絡先を…!」 とー。 尚樹は一瞬驚いていたが、すぐに微笑んで、 連絡先の交換に応じたー その夜ー 果里奈はいつものように、エッチな服装に着替えて ひとり、果里奈の身体をしゃぶりつくそうとしたー。 しかしー 何故だか、その気になれなかったー ”こんなことをしていると知られたら、あの人に嫌われてしまうかも” という、今まで感じたことのないような感情が 巻き上がって来たー。 「-----…ふぅ」 果里奈は、何もすることなく、普段着に着替えると、 エッチをするために購入した過激な衣装を押し入れの奥にしまい込んだー ピキッー 果里奈の皮を脱ぐ茂ー 「--このままだと、おかしくなっちまう…」 茂はそう呟いて、皮になった果里奈を放り投げるー ”元に戻す”方法もあるー。 一緒に添付されていた注射器を用いれば 果里奈を”人間”に戻すことは可能だー だがー ♪~~~ ”今日は本当にありがとう。 おやすみなさい” 何も知らない尚樹からの連絡ー。 それを見て、茂は目に涙を浮かべたー 「俺は…俺は、、何をやってるんだー」 とー。 果里奈の身体を乗っ取り、 果里奈として欲望に生きるつもりだったー だがー それが何故だか、いつの間にか歪んできているー 「ーーくそっ」 茂は複雑な表情を浮かべながら呟いたー ”女として普通に愛されたい” そんな風に思ってしまったー 果里奈の皮を着こみ、黙り続けていれば 恐らく、それは可能だー。 他人にバレることなんて、絶対に、ないー。 「-----くそっ!くそっ!」 今更、果里奈の皮を捨てて、自分に何が出来るー? 果里奈を着こんでいれば 自分はきらきらとした女子大生でいることが出来るー けれどー ”茂”としての人生に戻れば、どうなるー? 一人暮らしで、コンビニバイトすら失った みじめな男に戻るだけだー。 「--……」 茂は、頭をかきむしるとー 「--俺は、茂なんかじゃない、俺は茂なんかじゃない」と 呟きながら果里奈の皮を再び身に着けていくー 「わたしは果里奈、わたしは果里奈、わたしは果里奈ー」 自分に言い聞かせるようにして、 何度も何度も、自分が果里奈であると呟くー 果里奈の皮を完全に着込んだ茂は決意したー ”もう、自分は茂じゃない、果里奈なんだ”とー それからはーー 果里奈は、女子大生ライフを存分に堪能したー 夜に一人、”男として女の身体を楽しむ”こともやめー ”女として女の身体を楽しむ”ことは時々あれど、 コスプレ衣装などは身に着けることはなくなったー やがて、尚樹と正式に彼氏・彼女の関係になり、 周囲から祝福される果里奈ー。 果里奈の身体になっただけでー 茂は大きくその人生を変えたー。 ”人間は見た目である”ということを茂は 強く実感してしまったー。 やがて、果里奈も尚樹も大学を卒業ー 果里奈も尚樹も就職して、社会人となり、 幸せな日々を送っていた。 そして、数年が経過して、 仕事にも慣れ、安定してきたタイミングで、 尚樹は、果里奈にプロポーズをしたー。 ”果里奈”という女性はー ”中身が男”になっているということも知らずー。 果里奈は涙を流して喜んだー 当然、返事はYes- だがー ”尚樹と結婚する”ということになり、 果里奈を皮にして乗っ取っていた茂は 強い罪悪感に襲われたー ”尚樹や両親を騙したまま結婚しても良いのか” とー。 ここ数年、果里奈の皮を脱ぐことも 少しだけ顔を出すようなこともまったくしなかったー。 自分自身が果里奈であると本気で思い込んでいたー だが”プロポーズ”という出来事を迎えて、 果里奈は、自分が本当は果里奈ではない、 という冷たい現実を思い出してしまった。 「--それで、今日まで悩んでいたのか?」 尚樹が言う。 ウェディングドレス姿の果里奈は頷いたー。 「--そう…このまま黙ってあなたと結婚する道もあったー… でもーー」 果里奈は目に涙を浮かべながら呟いたー。 「---でも…やっぱり、あなたのことが好きだからー 隠せないーー そう、思ったの」 果里奈は、そう呟きながら何度も何度も 「ごめんなさい」と口にしたー。 新郎新婦の入場を30分遅らせてもらって、 尚樹は今、ここで果里奈から衝撃の告白を受けたー。 大学時代ー 果里奈から告白された時以上に びっくりな告白だー。 「-----」 尚樹は言葉を失うー。 「---」 会場には、尚樹側の両親も、果里奈側の両親も 待ち構えているー 新郎新婦の入場は、今や今かと、待ち構えているー 「-----」 尚樹は、控室の天井を見上げたー 茫然とした表情にも見えるー 「--なんでも、、なんでもしますから… ごめんなさい… ごめんなさい…」 ウェディングドレス姿の果里奈は泣きながら 土下座をしているー 「---…果里奈を、元に戻すことはできるのか?」 尚樹はやっとの思いで、言葉を振り絞ったー 「--え、、あ、、うん…いえ、、はい…」 果里奈は、”彼女”としてではなく、 ”茂”として、言葉を口にするー 「--人を皮にするモノを購入した時に、 元に戻すための薬品も一緒についてきていたので、 それは今も、わたしが持ってます」 他人行儀に一気に戻ってしまった果里奈を 悲しそうな表情で見つめる尚樹ー 「---……本当の果里奈は、 俺のことを全く知らないー そういうことなんだな?」 尚樹が言うと、 果里奈は「この子を元に戻したことはないので、 分かりませんけど、尚樹…いえ、、あ、、あなたと 出会う前にこの子は既に皮になっていたので…」と泣きながら言葉をつないだー 「---ふぅぅぅぅ~~」 尚樹は大きくため息をつくー。 必死に自分の中に気持ちの整理をつけようとしているー。 尚樹は”このまま果里奈として見て” 結婚してしまうー、という選択肢も少しだけ浮かんだー 「---果里奈は果里奈だー 俺にとってはー”今の果里奈”が好きになったんだし、 ”今の果里奈”が俺の彼女ー。 だからこのまま結婚しようー」 尚樹の言葉に、 果里奈は驚きながらも、目から涙をこぼす 「--って、本当は言いたい」 尚樹の言葉には、続きがあったー 「-でも、それはできない」 尚樹は言うー。 尚樹の理由は”相手の中身が男だったから”ではないー。 もっと、別の理由ー 「--俺が”今の果里奈”と結婚すればー その子のー その子の人生を奪うことになってしまうー だから、結婚は出来ないー。」 尚樹は悲しそうに言うー ”本当は、こんなこと知らずに大好きな”今の果里奈”と結婚したかったー” でもー 「--その子の人生を奪ったままー それは、絶対にダメだー。 その子には、その子の人生があるー 既に何年も経過していたとしてもー やっぱり、返さなくちゃいけない」 尚樹の言葉に、果里奈は泣きながら「はい…」と呟くー 「--でも」 尚樹は考えるー。 本来の果里奈ー 果里奈を乗っ取っている茂ー そして、尚樹と果里奈、両側の両親ー 「-----」 尚樹が”全員が不幸にならない選択肢はないのか”と 必死に頭の中で考えるー 「---あの」 果里奈が尚樹の方を見つめたー。 「--いや、それはダメだ」 尚樹は否定するー。 親族の前で真実を明らかにするー、と 果里奈は言ったー。 だが、それはダメだー ”娘が皮にされていた”なんて知れば両親は絶望するー。 そしてー 結婚式に参加している人間の中には 怒り出す人もいるだろうし、 怒りと憎しみのスパイラルを生み出すことになってしまうー。 「----…聞いてもいいかな?」 尚樹が言うと、 果里奈は頷くー。 「--君は、俺を騙すつもりだったのか…? それとも…? 怒らないから、素直な気持ちを聞かせてほしい」 尚樹が言うと 果里奈は目に涙を浮かべながら呟いたー。 「--尚樹…いえ、あなたのことを騙すつもりはなかったー… でも、本当のことを言えば、あなたと一緒にはいられないー だから、、だから、ずっと言えなかったー。 ”今”が全部壊れてしまうからー 尚樹のことは、本当にーー… でもーー… 尚樹と出会う前は、男を誘惑したり… 騙したりもしてた…… この身体で…」 果里奈の言葉に、尚樹は頷くー 「--ーーわかった」 尚樹はそれだけ呟くと、 天井を見上げて考え込み始めたー ”どうすればこの状況を解決できるのかー” 「---ここで待ってて」 尚樹はそれだけ言うと、 控室から立ち去っていくー。 そしてー 結婚式の式場に入った尚樹はー 親族たちの前で土下座したー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「---------」 果里奈の”皮”が割れているー 鏡で茂は、自分自身の顔を見つめていたー 「---こんな……… この子みたいに、生まれたかったー」 茂はそう呟きながら、一人涙を流すー。 30代の男の涙なんてー この世界では、何の価値も生まないー 茂はそう思っているー。 この世界は、そういう世の中である、とー。 尚樹がこの部屋を出て行ってから、 そこそこの時間が経過したー 「---」 果里奈を乗っ取っている茂は、これからどうなるのだろうー…と 不安を感じるー 果里奈として生きたこの数年間は、本当に幸せだったー。 恐らく”茂”として生きていれば このような幸せを手にすることはできなかっただろうー。 けれども それは”他人の幸せを奪っている”ということー 茂は今になって強い罪悪感に襲われていたー。 そもそも、最初に果里奈を乗っ取った動機は ”果里奈に振られたから”という身勝手な理由だったのだからー。 ガチャー 「--!」 果里奈の皮を再び被っていた茂が振り返ると、 そこには尚樹がいたー。 「---俺の両親にも、果里奈の親族にも、帰ってもらったよー ”今日はどうしてもこのまま結婚式は出来ない”ってお話してー」 尚樹はそう悲しそうに呟くー 顔には殴られたような跡まで見えたー 「----」 そして、尚樹は続けて口を開いたー ③へ続く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 幸せの真っただ中だったはずの 結婚式当日に大変なことに…★! 解体新書様では、過去に書いた作品の中から 毎回、私が(きぶんで…笑)選んで 掲載させて頂いていますが、 今回は、最近選んだ作品の中では 結構前の作品だったので、 選ぶときに読み直してみて、 ちょっぴり読む人側の気分を味わえました~!笑 書いてから4年も経過していると、 (毎日新作を書いていることもあって)記憶から 程よく消えていることもあるのデス…! 次回の最終回もぜひ楽しんでくださいネ~! |