初夢は憑依の夢①~新年の夢~ 作:無名 新年早々に見る夢ー ”初夢”ー。 しかし、彼女の”初夢”は ”憑依”に関連する夢だったー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーー………」 高校帰りー… 土谷 美彩(つちや みさ)は、 友達の佳恵(よしえ)と共に雑談をしながら いつものように下校していたー。 話の内容は”いつもと変わりのない”内容ー。 授業の話題だったりー 友達の話題だったりー 先生の話題だったりー 特別”いつもと違う”ことはないー 「来年の今頃は、もう高校生活ももうすぐ終わり~! みたいなタイミングだよね きっとー」 佳恵が笑いながら言うと、 美彩は少し不安そうに「今頃ちゃんと、進路決まってるかなぁ」と笑ったー。 「ー大丈夫大丈夫、美彩なら絶対サラッと進路も決まって 今頃のほほんとしてるよ」 佳恵のそんな言葉に、 美彩は「え~…みんなわたしを過大評価しすぎだよ~」と、 苦笑いしたー。 いつものように駅の前までやってくると、 美彩と佳恵は「じゃあまた明日!」と、手を振って別れるー。 美彩はバスー、 佳恵は電車で帰るため ここでいつもお別れだー。 佳恵と別れた美彩は、スマホを確認しながら バスの到着を待つー。 これも”いつもの”日常ー しかしー バス乗り場の付近の物陰で、男が不気味な笑みを浮かべたことに 美彩は気づいていなかったー。 バスに乗る美彩ー。 男も、そのバスに乗り込んでくるー。 男は明らかに美彩のほうを見つめているー。 だがー、 男は”罪を犯す”つもりはなかったー。 いや、美彩に指一本触れるつもりもないー。 男がこれからしようとしていることは ”法律上”罪に問われることはないー。 何故ならー ”人に憑依してはいけない”などという法律は この世には存在しないのだからー。 憑依さえしてしまえばー 例え、本人が望まないことをさせられてしまってもー ”本人の身体”は喜ぶのだからー。 バスを降りた美彩ー。 美彩があまり人通りのない道に入ったところで、 男は背後から声をかけたー。 「ーーあの!」 そんな言葉に、美彩は首を傾げながら振り返るー 「はい…?」 少し不安そうな表情の美彩ー。 そんな美彩の表情を見て、男は笑みを浮かべながら 言葉を続けたー 「ーー”憑依”って知ってますか?」 とー。 「ーー?」 美彩は思わず首を傾げるー 男が何を言っているのか、まるで理解できないー 「ーー他人に乗り移って、その身体を乗っ取ってしまうー みたいな、そんなやつです」 その言葉に、美彩は「す、すみませんーわ、わたし急いでいるのでー」と、 頭を下げて早歩きで男から離れていくー。 美彩の判断は正しいー 人通りの少ない道で、このまま いきなり”憑依”などと言い出した男の話を聞き続けることは 悪手でしかないー。 人通りの少ない道を素早く抜けようと、早歩きで 背後を警戒しながら進む美彩ー。 だが、男はそんな美彩に向かって叫んだー。 「ー俺、”憑依”できるんだよー!」 とー。 「ーーー」 美彩は答えないー 「ー例えば、そう、 君に憑依して、君の身体を乗っ取ることもできるんだー」 とー。 「君の身も、心も、俺のものにできるー」 その言葉に、美彩は恐怖を感じて、ついに走り出すー ”クククー逃げろ逃げろ” 男は笑うー。 男はー これまでにも何度か”憑依”を楽しんできたー 最初の身体はお試しでー 2番目の身体は5年間ー 3番目の身体は半年ー 4番目の身体は3年間ー そしてー 美彩が”5番目の身体”だー。 最初のお試しの時以外、 男は毎回、こうして相手に”憑依すること”を宣言してから 憑依しているー 何故ならそれはーーー ”逃げる様子を見るのが” たまらなく楽しいからだー。 「ーーーへへへへ…無駄無駄ー」 男は笑うー 「逃げても無駄だぜ!俺は”幽霊”のようになって ものすごい速度で君に追いつくことができる!」 そう叫ぶ男ー 逃げながら美彩が少し振り返るとー 男が”煙”のようになって姿を消すのが見えたー 「ひっ!?」 悲鳴を上げる美彩ー。 男の身体が突然煙のようになって消えたー。 それはつまりー ”男の言葉”がハッタリなどではなく 本当であることを意味しているー。 美彩は”どこから来るのか”分からない男の幽霊から 必死に逃げようとしたー だがーーー ”ほ~ら!もう追いついちゃったよ” 男の声が聞こえるー。 すぐ、側でーー 「ひっ…!?や、やめてー…」 あまりの恐怖に、声すらちゃんと出ないー 人間、”真の恐怖”に直面すると 声も出なくなり、身体も動かなくなってしまうー そんな、場面に直面することになった美彩ー 透明になっていた男の姿がゆらりと視界に入るー ずぶっー… そんな今まで感じたことのないようなー ”誰かが自分の中に入って来る感触”に、 美彩は強い恐怖を覚えながらーーー 悲鳴を上げたー 「きゃああああああああああああああああああっ!!!!!!!」 あまりに大きな悲鳴ー 人生で、一番の悲鳴を上げたかもしれないー もう、恥ずかしいとかそんなことを構っている暇もなく、 悲鳴を、あげたーーー 「ーーね、姉さん!?!?!?!?」 だが、その直後ーーー 「はぁっ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」 美彩は、荒い息をしながら、 突然目の前に現れた弟・大志(たいし)のほうを見つめたー 「ーーはぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」 美彩は冷や汗をかきながら周囲を見渡すー。 だがー そこはー”美彩自身の部屋”だったー 「あ…あれ…?」 荒い息をしながら、美彩がそう言うと、 「姉さんー…大丈夫?」と、心配そうに弟の大志が 表情を歪めたー 「あ…え…???」 美彩がまだ寝ぼけた様子でそう呟くと、 大志は「ーー姉さんーまだ寝ぼけてるの?」と、 困惑の表情を浮かべたー。 「ーーーえ…????」 そう言いながら、自分がベッドの上にいることにようやく気付く美彩ー。 「ーーー姉さんー新年早々、 この世のおわりみたいな悲鳴をあげて 目を覚ますなんてー いったいどんな夢見たんだよー…」 弟の大志が呆れ顔で言うと、 ようやく美彩は、自分が寝ていて、夢を見ていたことを 思い出したー。 「ーーーあ……」 カレンダーを見つめる美彩ー。 2025年1月1日ー そうだー 今日は元旦だったー。 昨日の夜ー 新年のあいさつを友達とやり取りしてー、 それから寝てー 今日はお正月だー。 「ーーー…えぇ…」 美彩は、安堵すると同時にー 新年早々 ”自分が憑依される夢”を見たことに 呆然としたー 「ーー最悪な初夢みちゃったー…」 そう呟く美彩ー 弟の大志は「ーいや…まぁ、あんな悲鳴をあげたら、 いい夢じゃないのは分かるよ」と、 笑いながら呟くー。 ”自分が憑依される夢” 何でそんな夢を見たのだろうかー。 そういうホラー番組を見たわけでもないし、 別に憑依に興味があるわけでもないー 最近、怖い体験をしたわけでもないー それなのに、あんな、不気味な夢をー。 「ーーーー…」 まだ身体の震えが止まらないー 美彩はそう思いながらー 気を紛らわせるためにー 「大志の初夢は何だったの?」と 青ざめた表情のまま、笑いながら そう尋ねたー 「え?僕~? 僕はあんまり夢見ないからなぁ~ たぶん、今日も見てないと思うー」 大志はそんなことを言いながら、 改めて「姉さん?大丈夫?」と、心配そうに確認して来るー 「ーうん!もう大丈夫。急に叫んでごめんねー」 美彩がそう返事をすると 大志は「そっかーよかった」と言いながらー 立ち去っていくー 少し間をおいてから 「あ、そうだー今年もよろしくー」と、だけ言いに戻ってくると 今度こそ大志はそのまま立ち去って行ったー。 「ーーふぅ…」 再度、深呼吸をしてようやく自分の気持ちを落ち着けた美彩は ゆっくりとベッドから立ち上がると、 そのままカレンダーのほうを見つめたー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ”え~?そんな夢見たの?最悪の初夢じゃん!” 友達の佳恵とメッセージのやり取りをしながら 初夢のことを伝えると、佳恵は そんな返事を返してきたー。 ”どうしてそんな夢を見たのか、全然わからなくてー” そんな返事を続けて送ると、 ”もしかして今年、そういうことが起きるかもしれないから 気を付けなさい~!って意味じゃないの?” と、佳恵がさらに返事を送って来たー。 「憑依」 そんなものが現実に存在するとは思えないー。 少なくともー わたしが今日見た夢のようにー、 男の人があんな風に他人の身体に入るようなー そんな憑依は絶対にありえないー、 と、美彩は思うー。 ”ちょっと~!怖いこと言わないでよ~” 美彩がそう返事を送ると、 ”ごめんごめんー でもほら、憑依じゃないにしても そういう不審なおじさんには気を付けろって ことじゃない?” と、佳恵が真面目な論調でメッセージを返してきたー ”まぁ、それはそうかもねー。 前向きに考えることも大事かも!” そういった危険な目に、今までの人生で遭ったことはないー だからこそ”気を引き締めなさい”と、そういう意味なのかもしれないー。 油断してはいけない、という神様からのメッセージなのかもしれないー。 そんな風に前向きに考えることにして、 美彩は、”初夢”のことを気にするのをやめたー ”あ、そうそうわたしの初夢はね~! お金が空から降って来る夢だったよ” 美彩のそんなメッセージに、 ”なんか、美彩らしいなぁ”と、笑いながら スマホのほうを見つめたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ その夜ー 昼頃までは気にしていた”初夢”のこともー だんだんと気にならなくなっていた美彩ー。 嫌な夢を見てもー 朝・昼・夜と、時間が経過するにつれて だんだんとその夢が気にならなくなってくるー… そんな人間も多いー。 美彩も、そうー。 夕方になる頃にはすっかりいつも通りで、 夢のことも気にしなくなっていたー。 そのまま、何も気にせず、眠りにつく美彩ー しかしーーーー 「ーークククククー…」 美彩は、笑いながら学校にやってきていたー。 笑みを浮かべながら、友達の佳恵を イヤらしい目つきで見つめる美彩ー。 「ーーふぅぅぅ…興奮しちゃうなぁ♡」 美彩は小声でそう呟きながらー 舌でペロリと唇を舐めるー。 やがてー、 佳恵に近付くと、佳恵の髪を触ったりー、 胸をどさくさに紛れて触ったりー イヤらしい目で佳恵を見つめたりー ”勝手に”美彩の身体が動いていたー。 「ーーー!!!!!!!!!!」 ガバッと、起き上がる美彩ーーーー 「ーーま、、またっ…!?」 冷や汗をかきながら荒い息を吐く美彩ー。 新年早々ー 2日連続で”憑依される”夢ー。 「ーーーー」 昨日と違い、悲鳴を上げることはなかったー。 けれどー… 「ーーーな…何なの…?」 2日も連続でこんな気持ち悪い夢を見るなんてー そう思いながら美彩は、ため息をついて 自分の部屋の外に出るー。 確かにーーー ”怖い夢”を数日間連続で見るようなことは 今までにもあったー 何故だかは分からないけれど、悪い夢が続くことはあるー。 精神的に疲れているのかー 何か自分が不安に感じているのかー それは分からないけれどー、 悪い夢を一度見ると、それが連鎖するー… そんな経験は今までにもあったー。 ”わたしが心のどこかで昨日の夢のことを引きずってるってことかなー” 美彩はそう思いながらー 少しだけ表情を歪めるー 「ーーあ、姉さんーおはよう」 弟の大志も、ちょうど同じぐらいの時間に起きて来て、 美彩に気付くと、 大志は、「あれ?姉さんー」と、 少し首を傾げながら言葉を続けたー。 何だか、ぼーっとしているー 美彩がそう思っていると、美彩はいつの間にか 昼ごはんを食べていたー 「ーーーー」 憑依の夢のことばかり気にしてしまうー。 「ーーお~~い!姉さん!大丈夫か?」 心配そうな大志ー。 ハッと我に返った美彩は ”何で夢のことをこんなにずっと気にしてるんだろうー”と、 そう思いながらー 大志のほうを見て「あ、うんーだ、大丈夫大丈夫ー」と言葉を繰り返したー そうだー いつまでも初夢を引きずっていちゃだめー 美彩はそう心の中で呟くとー ”とにかく、楽しく過ごそう せっかくのお正月なんだし” と、自分に言い聞かせて、静かにため息をついたー。 ②へ続く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 皆様こんばんは~! (こんにちは?) 今年も残りあとわずかになりましたネ~! 今回の作品が、解体新書様では 今年最後の作品になります~!☆! 年末の掲載ということで、 この時期ならではの作品を考えた結果、 今回は年始の”初夢”をテーマにした憑依モノを 皆様にお届けすることにしました~!☆ まだ12月ですが、次に解体新書様で皆様に お会いするときは1月下旬… そうなってしまうと、もうお正月も遠い過去な雰囲気に なっちゃっているので、 年末だけど、年始のお話でいいかな~?と、 この作品を選んじゃいました~!☆笑 今年は…どんな初夢を見るか (見ない時もありますケド)今からちょっぴり楽しみデス~! |