初夢は憑依の夢②~初夢の裏~(完) 作:無名 ”自分が憑依される夢” そんな、初夢を見てしまった彼女。 不安を感じながらお正月を過ごす彼女の運命はー…? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ”いつまでも初夢を引きずっていちゃだめ” そう考えた美彩は、 前向きに、前向きに物事を考えるようにしたー。 「ーーせっかくお年玉貰ったんだし、何か買い物にいこ!」 美彩が、気を紛らわせるために弟の大志を唐突に 買い物に誘うと、大志は”えぇっ!?姉さんと僕で!?”と 困惑した表情を浮かべたー 昔はよく一緒に買い物に行ったり、遊びに行ったりもしていたが、 最近は大志の方が恥ずかしがる年齢になったことから、 あまり一緒に出掛けることはなくなっていたー 「え~?嫌なら一人で行くけど」 美彩が少し不貞腐れた様子でそう呟くと、 大志は「い、い、イヤではないけどー」と、少し照れくさそうにしながら 「ーい、行くよ。行く!」と、ようやく重い腰を上げたー。 一緒に近くの大型商業施設で買い物をしたり、 昼食を食べたり、ゲームコーナーで遊んだりする美彩ー。 存分に楽しんだ美彩は、満足そうに1日を終えるー。 「あ~~~たまんねぇ♡」 鏡にキスを繰り返す美彩ー。 ペロペロと鏡の自分と舌を交えるとー、 嬉しそうに美彩は微笑むー。 「クククククー♡… すっかりエロい顔になっちゃってー」 美彩はそう呟くと、 バニーガールの格好をしたまま、ペロペロと再び鏡を舐めだすー。 ーーー!!!!!!!! 美彩が、ベッドで飛び起きると、 「もう!もっとひどい夢になってる!」と、うんざりした様子で叫ぶー。 ”夢になんか、負けないから!” だんだんと意地になってきた美彩はー、 「今日は新年初遊園地に行くよ!」と、弟の大志を誘ったー 「えぇっ!?!?!?」 大志が困惑しながらも、強引に遊園地に連れていかれてしまうー。 「ーき、昨日から何なんだよ急に~?」 戸惑う大志ー。 観覧車に乗りながら美彩は「ー夢には負けないから!」と、 ムキになった表情を浮かべるー 「ゆ、ゆ、夢?」 戸惑う大志ー。 「ーー今年に入ってからずっと変な夢ばっかり見るからー。 だからー 夢になんか負けちゃいけないなって」 美彩がそう言うと、 大志は「ーー憑依されたとかなんとかって夢?」と聞き返すー 美彩は「うんー。今日もまたその夢見たしー」と、戸惑いながら呟くー。 「ーーーあんま夢なんて気にしない方がいいよー 僕だっていやな夢15日ぐらい連続で見たことあるしー」 「それは見すぎー」 美彩がそんなことを呟きながら、笑うとー、 「とにかく、楽しいことで頭の中を埋め尽くしたらーーー」と、 笑顔を浮かべながら、大志にそう言い放つとーー 次の瞬間ー 「ーー!?!?!?!?!?!?!?」 ベッドの上でガバッと、突然起き上がったー 「ーーえ?」 美彩が目をぱちぱちとさせるー。 観覧車の中で大志と会話をしていたのはーーー ーー夢ー? 「ーーーへへへー 何が何だか分かってないって顔だな」 「ー!?」 男の声がして、美彩がビクッとしながらその方向を向くとー ”初夢”で美彩に憑依した男が、すぐ横に座っていたー。 「ーへへへ まぁ、そう驚かなくたっていいー」 男がそう呟くと、 美彩は「は、初夢のー…わ、わたしに憑依したー」と、 震えながら答えたー。 「ーーあん?初夢?」 男が首を傾げるとー、 美彩は、怯えた表情を浮かべたまま、 その男のほうを見つめるー。 「ーーー……あぁ~…寝ぼけてるのかー まぁ、”3か月”も憑依され続けてりゃ、当然か」 男はそう呟くと、 「ーー君は、俺に憑依された。覚えてるだろ?」と、 笑みを浮かべながら呟いたー 「ーーーえ…」 美彩は表情を歪めながらこれまでのことを考えるー。 ”下校中にー 知らない男から声を掛けられてー ”君に憑依する”とか言われてー 逃げようとして、そしてーーー” 美彩は瞳を震わせたー ”あ、あれはー… ゆ、夢なんかじゃないー” とー。 ”夢”はー そのあとに見ていた映像だー。 初夢以降ー ”憑依される夢”が毎晩続いたのではなくー 時々、夢の中でも眠りが浅くなってー ”憑依されたわたし”の現在が見えていただけー??? 「……!」 青ざめる美彩ー 途端に恐怖心がこみあげて来て、 「だ、誰か!」と、叫びながら部屋の外に飛び出すー。 だがーー 隣の部屋にいるはずの弟の大志は居ないー。 両親の姿もないー。 男が、美彩の後を追ってくるー。 「ー逃げても無駄だぜー? 両親は仕事、弟は友達と遊びに行ってるー ククク」 男が笑いながらそう言うと、 美彩は「な…何のためにこんなこと!」と、 泣きながら叫ぶー 「何のためってー?」 男は、美彩の方に歩み寄って来ながら、 ニヤニヤと笑うー。 「ーークククー 他人の身体を乗っ取って好き放題できるなんてーーー なんかこうー たまらなく興奮するだろ?」 男はニヤァ、と邪悪な笑みを浮かべたー 必死に逃げようとする美彩ー。 しかしー 男は美彩のほうを笑いながら指さしたー。 「ーーチッチッチッチー、君はそのまま外に出れるのか?」 男が指さした美彩はーーレオタードを身に着けている状態だったー 「そんな姿で、外を歩くやつは、まずいないよな? クククー ほら、まずは着替えないとー こっちに戻ってこい」 男がそう呟くー 美彩は表情を歪めるー 男が美彩から一度抜けだしたのは何故なのだろうかー。 ”憑依”していたというのであれば ずっと乗っ取り続けることだって、可能なはずー。 それなのに、何故、こんな風にー 美彩は、数秒考えてからー レオタード姿のまま家から飛び出したー 「なにっ!?」 予想外の行動に驚いたのか、男が声を荒げるー。 まさか、レオタード姿のまま美彩が家から飛び出すとは 思ってもみなかったのか、男は慌てて家から飛び出して美彩の後を追うー。 どよめく街中の人々ー だが、美彩はおかまいなしで、足にあたる風を感じながらー そのまま近くの交番へと駆け込んだー 「~~!?!?!?」 交番の警察官も、いきなりレオタードの美彩が駆け込んできたことに驚くー 美彩は半泣きの状態で悲鳴をあげながら 警察官に助けを求めるー しかしー 後を追ってきていた男はニヤリと笑みを浮かべたー 「無駄なことだー」 男は笑うー 今、この瞬間に再び美彩に憑依してしまえばー、 美彩はどうすることもできない、と男は思っているだろうー。 泣きながら警察官に助けを求めた美彩。 しかし数秒後に急に態度を豹変させて 「やっぱり何でもないで~す!」と言い出せば 美彩は頭のおかしな子だと思われるだろうが、 男自体に影響が及ぶリスクは格段に減るー。 「あ、あの人が、わたしに憑依してー」 悲鳴をあげながら叫ぶ美彩ー。 「ーーな、何だって!?」 戸惑う警察官ー 男はニヤッと笑うと最初に憑依した時のように 霊体になってー そのまま美彩の方に向かってきたー。 だがー 「君は下がっていなさい!」 交番の警察官が、美彩を交番の奥の方に移動させるとー 交番の入口付近に立って、そのまま銃を構えたー。 そしてーーー 向かってくる男の霊体に向かってー 銃を発砲したーーー 「ーーーがっ…!?」 霊体の状態だった男が、実体化して、何もない空中から 現れて落下するー。 「ぐふっ!?!?!?」 落下した男は、腹部を撃ち抜かれた状態になっていて 青ざめているー すかさず、交番の警察官が男に駆け寄るとー 「ーー憑依とか…何だかよく分からないけどー… ひとまず、話は署で聞く!」 と、大声で叫びながら男を逮捕したー 美彩は呆然とした表情で、 交番の中から男が逮捕されるのを見つめたー。 だがー 腹部を撃ち抜かれて逮捕された男は それでもニヤリと笑みを浮かべていたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 男は逮捕されたー。 ”初夢”は”初夢”じゃなかったー。 憑依される夢だと思っていたものはー 夢ではなく、現実ー その後に見ていた映像こそがー 夢ー。 けれどー ようやく、解放されたー 男が美彩を何故解放したのか、それは分からないー。 レオタード姿のままなら、家を飛び出さないとでも思ったのだろうかー。 いずれにせよ、美彩に憑依していた男は自滅したー。 連行される瞬間に笑っていたのは気になるけれどー… でもー…とにかくーーー もう、”憑依”に怯える必要はないんだー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 新学期が始まり、 美彩は、友達の佳恵と新年のあいさつを交わすー。 「ーー大丈夫だった?」 心配そうに呟く佳恵ー。 「ーうんー大丈夫」 美彩がそう返事をしながら、周囲をキョロキョロと見渡すとー 「ーーねぇ、大丈夫?」と、不安そうに再度言葉を繰り返すー 「ーーーー」 美彩は、そんな佳恵の言葉に、 「あー、うん、大丈夫」と、少し困惑したような表情を浮かべるー そうー 大丈夫ー。 何も心配する必要はないー。 あの男は、自滅したんだー。 何も、心配する必要は、ないー。 美彩は高校に向かって歩きながら思うー。 もしー もしも、”わたしに憑依していた男”が、 あのままずっとわたしに憑依し続けていたらー? そう考えるとゾッとするー ”憑依の初夢を見た”と思って目を覚ましたあのお正月の日々はー 全部夢だったー。 夢の中では当然、その実感はなくー、 現実だと思っていたー。 けれどー 夢だったー。 と、いうことはー ”憑依されている間は夢を見ていた”ということになるー。 もし…もしも、あの男がずっと自分に憑依していたらー 永遠に”夢の中”で、それに気づくこともなくー ずっと、ずっと、身体を支配され続けていたのかもしれないー。 「ーー本当に、よかったー」 美彩がそうため息をつくー。 でもー ”何故”あの男が”わたしから一度抜けた”のかー その目的が分からないー。 そしてー 逮捕された男は、”また”やってくるかもしれないー そう思いながら、美彩は少しだけ不安そうな表情を浮かべて歩き出したー ”ずっと憑依され続けていたらー” ずっと、夢を見続けていたかもしれないー。 いやーーー 見続けているのだー 今もーーー 「ーーふぅ…♡ ひひひひひひ… はぁ… 何年ヤリ続けても、たまんねぇな…」 ”現実”ではー 既に何年も経過しているー 男に憑依された美彩は、 ずっとずっと、男に憑依されたまま、 既に大学生になり、一人暮らしをはじめてー 毎晩のようにコスプレエッチを繰り返しているー 「ーひひひひ… やべ、鼻血出ちまったー」 美彩がニヤニヤしながら立ち上がるとー、 鼻血を止めるためにそのまましばらくイスに座るー。 「ーそれにしてもー この女ー… 今頃どうしてるんだろうな? へへー」 美彩がニヤニヤと笑みを浮かべるー 憑依してからもう4年が経過したー。 美彩に憑依した男は、これからも当分、美彩の身体で 過ごすつもりだー。 「ーーず~っと、夢でも見続けてたりしてなーへへ」 男は、これまでにも数名の人間に憑依して 長い間その身体を使ってきたー。 だが、”その後”に男は興味がないー。 美彩の前に支配していた身体が解放後、どうしているのかも知らないー。 「ー何年先になるか分からねぇけど、 この女を解放したらー そのうち聞いてみるかー まぁでもーコイツの身体、本当に気持ちイイからー あと10年ぐらいは解放しないかもな! ははっ!」 美彩がそう呟くと、笑いながらご機嫌そうに 足をバタバタと動かしたー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーあけまして、おめでと~~!」 2025年1月1日ー 新年を迎えた美彩ー。 2024年の年末の下校中に”憑依”されてしまった美彩は、 今も夢を見続けているーー。 ”憑依されて、支配される” そんな、普通ではありえない出来事に、脳は 必死に”バランス”を保とうとして、 美彩に”日常的な夢”を見せ続けているー 2024年の年末に支配されたからだろうかー。 年末年始あたりー、それか新学期の夢が多いー。 ”また”夢の中で新年を迎えた美彩は それを自覚することもできず、 夢の中の弟の大志と、新年を祝いながら 嬉しそうに笑みを浮かべたー。 男が飽きるまでー もしかしたら一生醒めないかもしれない、夢の中でー。 おわり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 憑依から解放された…ように見せつつ ずっと憑依されていた… そんな結末でした~!☆! 見ている光景が、あまり怖い光景じゃないまま…なのは、 憑依された側にとってせめてもの幸せなのかも しれないですネ~! …私が憑依大好きになっちゃったのも、 実は憑依されたからで、 これも心の中の出来事だったら…? なんて、少し考えたら不思議な気持になっちゃいました~笑 今年の解体新書様での掲載は これで最後デス~! 少し早いですが、 一足先に、今年も1年間ありがとうございました~!☆ 残り数日間も、楽しく過ごしましょうネ~! 良いお年を~! |