離婚危機を救うため②~過去~
 作:無名


過去の世界が何者かに変えられて離婚してしまった両親。

自分の存在が消えることを阻止するため、
時空の番人と共に過去に遡り、”憑依”で歴史を戻そうとする
彼の運命はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー…ねぇ」

現代ー。
浩太の彼女であった美亜が、
不快そうに正行に声をかけるー。

浩太の存在が消えてしまった今の状態では、
美亜は正行の彼女になっていて、
性格も元々の歴史より”キツイ”性格になっていたー。

浩太の存在が消えたことで、浩太の周囲にいた人々にも
微弱な影響を与えているのだー。

「ーーな、なんだよー?」
浩太の親友だった正行が首を傾げるー。

すると、美亜は言葉を発したー

「”もう一人”いなかったっけ?」
美亜が険しい表情で言うー。

「あ…?も、もう一人って?」
意味が分からず首を傾げる正行ー

「ーーっ…な、なんか、もう一人、
 わたしと正行と、誰か!仲いいのいなかったっけ?」
美亜が少しうんざりした様子で言うと、
正行は「え…????く、栗原さんのこと?」と、
同じ大学の女子のことを口にするー

「ち、違う!男!」
美亜がそう声を上げると、
正行は「いや…… え?」と、戸惑うー。

すぐに美亜は、正行の”何言ってんだこいつ?”と言わんばかりの目を見て
「な、なんでもない!」と、イラつきながら立ち去っていくー。

”ーーーーー…”

”何者かによって急に変えられた歴史”

だがー、それが”完全に定着”するまでには
わずかだが、時間がかかるー。

美亜のように”直接的には影響を受けなくても”
影響を受けた部分と繋がりが強かった人物の中には
歴史が完全に定着するまでの間、”ほんのわずかに”
疑問のような感情を抱くことがあるー。

しかしー

それも、いずれは消えるー。
”このまま”ならー…

「ーー…あぁ…もう… 全部アイツのせい」

浩太が消えた歴史では、彼氏である正行のことを
思い出しながら、美亜は舌打ちをすると、
「なんかすっごくムカつく」と、
元の歴史ではあり得なかったぐらいにイライラ
しながら大学内を不機嫌そうに歩き始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

過去ー…

浩太は、若き日の母・雅美に憑依しようとしていたー。

「ーーー…若い頃の親に憑依するとかー…
 なんか、こうー… 言葉に言い表しがたい何かがー」

浩太が言うと、
時空の番人を名乗る青年は
「すまないー。でも、このぐらいしか方法がないんだ」と、
少し申し訳なさそうに笑うー。

「わ、分かったよー…
 俺がこのまま消えるよりかはマシだ」

浩太はそう言うと、若き日の母・雅美に
自分の霊体を重ねるー。

「ーぁ」
ピクッと震える雅美ー。

雅美の身体をこれで動かすことがーー

と、思ったその時だったー。

「ーーえ」
浩太は、謎の白い空間に放り出されたー。

「ーは!?な、何だこれ!? 
 て、天国ー?

 あ、あれか?俺が歴史から完全に消えたのかー!?」

浩太がそんな風に叫んでいると、
「なんだこれはー…?」と、不気味な声が聞こえたー。

「ー!?」
浩太が振り返ると、そこには”男”がいたー。

「ーーーお、お前はー…!」
その男が驚きの声を上げるー。

そしてーー
その男は浩太に襲い掛かって来たー。

「ーーなるほどー…私の”憑依”に気付いたのかー
 一体、どうしてー!?」
男のその言葉に、浩太は意味を理解するのに時間がかかったがー、
それを察したー。

「ーまさか、お前が母さんに!」
浩太は叫ぶー。

そうー、過去の母・雅美の様子が突然豹変したのはー、
この謎の男が雅美に憑依したからー。

さっき、時空の番人と一緒に見た母の豹変の瞬間と、
自分が母に憑依した際の母の反応ー、
そして今の状況から、
浩太は”こいつが母さんに憑依したせいで歴史が変わった”のだと
そう考えたー。

そして、この白い世界は、”母さんの精神世界のようなもの”だとー。

既に憑依されている母・雅美に、
自分自身が憑依したことで、”二人”の魂が母の中に居る状態となり、
”身体の奪い合い”が起きているのだとー、
そこまで浩太は考えたー。

「ーーー母さんから出て行きやがれ!このクソ野郎!」

母・雅美を救いたいという気持ちもあったし、
何よりも自分が消えたくないという思いも強かったー。

相手の男を蹴り飛ばし、
その顔をハッキリ確認しようとするー。

ーーが、男は「クソッ!」と叫んで、
そのまま煙のようになると、その場から姿を消したー。

そしてー…

「ーー!!!!」
急に、”現実”世界に引き戻されるー。

「ーーあ」
すぐに自分の手を確認すると、”女”の手が視界に入ったー。

「ーか、母さんの身体かー…」
口から出たのも女の声ー。

どうやら、若い頃の母親・雅美に憑依することに
成功したらしいー。

”ーーアイツは…”
浩太は、母・雅美に憑依していた男のことを思い出すー。

咄嗟のことで、ハッキリと顔を確認できなかったがー、
どこかでー…

「ーー大丈夫かい?」

「ーー!?!?」
雅美が振り返ると、そこには制服姿の女子高生がいたー。

「ーーえ……」
戸惑う雅美ー。

すぐに、その女子高生は「あぁ、僕だよー時空の番人」と、
笑みを浮かべたー。

「ーーデート中の女子高生の身体を貸してもらってねー。
 この子の身体を少し借りるぐらいなら、歴史に変化は起きないのは
 確認済みだから、心配ないー。

 まぁ、僕は”直接”変わった歴史の部分には介入できないからー、
 こうしてサポートするのが限界だけどー」

少女の身体で、時空の番人はそう呟くー。

どうやら、”誰かに憑依した状態”=霊体ではなくなった状態の浩太には、
誰かの身体を借りないと話しかけられないようだー。

「ーー…母さんの中に”別の男”が憑依してた」
母の身体で浩太が言うと、少女は「なるほどー…」と頷くー。

「ーその憑依のせいで、歴史が変わったってことだねー。
 しかし、不思議だなー…
 元々、君のお母さんは憑依なんかされなかったんだからー…
 ”別の時代”から介入しない限り、歴史は変化しないはずなんだがー」

少女は考え込むー。

そして、少し間を置いてから
「ー恐らく、君のお母さんに憑依した人間も
 別の時代から来た人間だろうねー」と、言葉を口にしたー。

「ーーー…別の時代からー…」

”本来の歴史”は、
雅美と父・輝彦は今日のデートを円満に終えるー。

それは、”外部から”いじらない限り変わることはないー。
”この時代”での出来事が急に変化することはないー。

がー、”別の時代”から誰かがこの時代にやってきて、
”出来事”をいじったとすれば別だー。

雅美に憑依した何者かー、は、
この時代ではなく、別の時代から来た人間で間違いないー。

「ーとにかく、君はしばらくそのままお母さんとして過ごすんだーいいね?」
少女に憑依した時空の番人はそう言うと、
「僕は君のお母さんに憑依していた人間を”別の時代”も含め調査するー」と、
だけ言い残して、その少女の身体から離脱したー。

「あ、おいっ!」
母・雅美の身体で戸惑いの声を上げる浩太ー。

「ーーーえ?」
正気を取り戻した少女が戸惑うー。

「あ、いえ、な、なんでもありませんー」
雅美の身体で慌ててそう言い放つと、
トイレから戻って来た父・輝彦のほうを見て、
「あ…え、えっとー…」と、苦笑いするー。

”若き日の母”とデートしている”若き日の父”を見るのは
何となく複雑だー。

しかもー

「ーーお待たせーじゃあ、次はどうするー?」
輝彦の言葉に、雅美は「え…あ、あ、え~っと、父さんー…あ、ちがっ…」と、
戸惑いの言葉を上げると、
深呼吸してから「て、て、輝彦にお任せ!」と、言葉を発したー。

しかもまさかー、
その光景を見るだけじゃなくて、自分で若き日の母さんを
演じることになるなんてー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーお…オエッー…」

輝彦とのデートを終えた雅美は、
そんな言葉を漏らしながら、うがいをしていたー。

別に、父親のことは嫌いではないー。

が、自分の父親とキスをする、というのは
やはり、未来の息子である浩太からしてみれば
なかなか衝撃的な体験であり、
気味の悪い体験だったー。

ペットボトルの水でうがいを終えた雅美ー。

「ーーー」
ふと、鏡を見つめると”昔の母さんってかわいいんだなー”と
変な感情を抱いてしまいそうになり、首をぶんぶん横に振るー。

「ーー……っていうか俺、いつまで母さんに憑依してればいいんだー?
 まさか、俺に妊娠して出産までさせるつもりじゃないだろうな?」

雅美の身体でそんな言葉を口にする浩太ー。

「ーーー…」
”若き日の母さんの身体で、自分を出産する”

頭のおかしくなりそうな衝撃的すぎる光景だ。

そんなことを思いながらも、
「で、でも、俺が消えないようにするためだから」と、
そう言葉を口にするー。

母・雅美は既にこの頃には一人暮らしをしていたようで、
持っていた身分証明書を頼りに、自分の家へと帰宅するー。

「ーーあぁ…まだスマホじゃないのかー」
帰宅して、家の中を興味深そうに見つめる雅美ー。

「うわっ!これ古!」

「おっ!このお菓子、もう売ってないやつ!」

「ーーなんか色々時代を感じる…!」

そう呟きながら、特に意識していなかったのに、
雅美の胸にたまたま手が震えてしまってドキッとするー。

「ーはぁぁ……頭がおかしくなりそうだー…」
ドキドキしながら、雅美の身体でそう呟くー。

だが、”若き日の母さん”の身体で変なことをしてしまえば、
”未来”にも甚大な影響を与えることになってしまうかも
しれないー。
おかしなことは絶対にしないと固く誓い、
母・雅美として浩太は過ごすことを改めて決意したー。

その後も、雅美として、若き日の父・輝彦との日々を送るー。

”雅美の身体”だからだろうか、
それとも自分自身がそう思っているのだろうか。

輝彦と一緒に過ごすうち、若き日の父が好きになりそうになってしまい、
困惑するー。

しかもー
今度、二人で”旅行”に行く計画があることを知った浩太ー。

「ーー男女で旅行とか…まさかー…アレを…」
雅美の身体で困惑の表情を浮かべるー。

若き日の母さんの身体で若き日の父さんとそういうことをー?
流石に精神が持たないような気がー…

そんな不安に苛まれていると、
「ーー…お待たせ」と、背後から少女の声がしたー。

「ーー…あぁ、驚かなくていいよ。僕だよー」
と、少女は言うー。

「ーあ、あぁ、時空の番人さんー」
雅美の身体で浩太がそう言うと、
「ー人間に憑依している状態の君には、人間の身体を借りないと
 話しかけられないからね」と、少女は苦笑いしたー。

「ーー…何でいつも可愛い感じの子に憑依するんだー?」
雅美が少し意地悪っぽく言うと、
「ーいや、2回とも”偶然”僕が憑依してもこの後の行動に影響のない子が
 そういう子だっただけさ」と、特に気まずそうな雰囲気もなく
時空の番人は答えたー。

「ーまぁそれはそうとー、
 君のお母さんに憑依した人間を突き止めた。
 少し待たせてしまってすまなかったー。

 ”時空界”も色々手続きとか、面倒なことがあるんでね」

少女のそんな言葉に、
雅美は表情を曇らせるー

「ーで…誰が俺の母さんに憑依をー?」
雅美の身体のまま、浩太がそう言うと、
時空の番人はその名を答えたー。

「ーーーー…!!」
険しい表情を浮かべる雅美ー。

「ーまぁ、とにかく憑依自体は阻止したー。
 君のお母さんについてはもう心配ないー。

 憑依されている間の記憶は、自然に補正されるし、
 問題はないー。
 
 元の時代に戻れば、君の存在もまた”復活”してるはずだー」

少女の言葉に、雅美は「そ、それならよかったー」と頷くと、
そのまま時空の番人と共に、憑依していた身体から離脱するー。

宙を浮きながら、時空の番人のほうを見ると、
浩太は「その…ありがとうー」と、お礼の言葉を口にするー。

「いいさー。大きな影響を及ぼす”変化”を取り締まるのが
 僕の仕事だからね」

その言葉と共に、時空の番人は”さぁ、君の時代に帰ろう”と、
そんな言葉を口にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへ…じゃ、俺は邪魔者になっちまいそうだし、
 これで失礼するかなー」
親友の正行が言うー。

「え~?別に大丈夫だよ?」
彼女の美亜が笑うー。

「ーーえ~?そうかぁ?」
正行が浩太のほうを見るー

「ーーーーーー…!」
少しボーッとしていた浩太がハッとして、
「俺も全然気にしないし、邪魔じゃないよ」と、慌てて言葉を口にすると、
浩太は表情を歪めたー

「ーーあれ…俺、今…?」

少しだけ違和感を感じたー。

けれど、歴史はまた”修正”され、
浩太の存在も復活したー。

何事もなかったかのように、浩太は親友・正行、
そして彼女の美亜と共に楽しいひとときを過ごすのだったー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こうして無事に歴史も元通りになって
めでたしめでたし……???

……でも、あと1話、まだお話が
残っているのデス…!

私の作品でハッピーエンドに見えるのに
あと1話残っている…と、なると
なんだか嫌な予感がしちゃいますネ~笑

どうなってしまうのかは、
次回の最終回を見て
確かめて下さいネ~!

今日もありがとうございました~~~!