離婚危機を救うため③~介入~(完) 作:無名 何者かに過去を変えられてしまい、 両親が”妊娠前”に離婚してしまったことにより、自分が消滅してしまう危機に 晒された男子大学生。 彼は時空の番人と共に”憑依”を駆使して、それを阻止したものの…? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーーーそれにしても、よく食べるなぁ…」 時空の番人と力を合わせて、過去を正した浩太は 再び”元通り”になっていたー。 一度は、何者かによって、過去の母・雅美が憑依されてしまい、 夫・輝彦を罵倒ー、”浩太”の妊娠前に二人が別れてしまうー、という過去に 改変されてしまったー。 しかし、浩太が時空の番人と共に過去に遡り、 母・雅美に憑依ー、過去を改変した男を撃退して、 雅美として過ごし、二人は無事に新婚旅行に出かけ、 後に浩太を妊娠したー。 その結果、一度は消えてしまった浩太の存在は 再び元に戻り、こうして彼女の美亜、そして親友の正行と共に 一緒に大学内でのひとときを過ごしていたー。 「ーーわたし、食べても太らないし」 彼女の美亜が笑いながらそう言うと、 「ーいいよなぁ~」と、親友の正行が言葉を口にするー 「ーーーはは、美亜が嬉しそうに食べてる姿を見ると こっちまで嬉しくなるんだよな」 浩太はそんなことを言いながら、美亜が美味しそうに カレーを食べる姿を見つめるー。 「そ、そんなに見つめないでよー」 美亜が恥ずかしそうに笑うと、浩太は「ははーごめんごめん」と、 言葉を口にするー。 ”ーーーーー” 時空の番人は、宙を浮遊しながら、そんな様子を見つめていたー。 ”ーよかったなー” 青年風の容姿の時空の番人は心の中でそう呟くと、 そのまま立ち去ろうとするー。 浩太は”さっきまでの出来事”をもう覚えていないー。 ”普通に生活をし続けている”と思っているー。 時空の番人は”過去への介入”を防ぎー、 それを正す者ー。 が、その存在は悟られてはならず、 歴史を修正するために、人と接触する際には、 それが終わり次第、その人間から、その時の出来事の記憶は消去しているー。 そのため、今の浩太はもう、 自分がいったん消えたことも、過去に戻って自分の母親に憑依したことも、 何もかも、忘れているー。 ”さて、僕もそろそろー” 時空の番人がそう呟いたそのときだったー。 「ーー!」 ”嫌な”うねりを感じて、浩太のほうを見るー。 するとー… 彼女である”美亜”の髪色の一部が”赤く”染まっていて、 浩太の親友・正行と口論しているのが見えたー ”ーー…な……”また”ー?” 時空の番人は驚くー。 ”また”浩太が消えているー。 美亜は浩太の親友・正行の彼女になっていて、 少し荒れた感じになっているー。 ”ーー何故だー…?修正したはずなのにー?” 時空の番人はそう思いながら、再び”存在を消去されて、”時空の亡霊”となった浩太”の 前に姿を現すー。 「ーーーこ、これはー…?」 戸惑う浩太ー。 そんな浩太に対して、光を飛ばすと浩太は”前のこと”を思い出すー。 「ーーー…! 時空のーー…」 浩太が”さっきまでのこと”を思い出して声を上げると、 「ーすまないー。歴史の修正に成功して、君も元の生活に戻るはずだったんだがー… 問題が起きたー」と、時空の番人は説明するー。 「ーー…」 浩太は、大学の食堂内の美亜と正行を見つめるー。 美亜の髪の一部が”また”赤く染まっているー。 浩太が存在しない時系列の美亜は、浩太と出会わなかったことが原因なのか、 髪の一部を染めて、少し”キツイ”感じの性格に変わっているー。 「ーー……また、”俺”が生まれてないことになったのかー?」 浩太が言うと、時空の番人は自分の手元に謎の光を発しながら”確認する”と、だけ答えるー。 そして、1分ほど経過すると、時空の番人は、 「君のお母さんが、今度は”新婚旅行”のときー… 君を妊娠するきっかけとなるその日に豹変して、離婚したー…」 と、言葉を口にしたー。 「ーう…嘘だろ…?また母さんが憑依されたってことかー?」 浩太が言うと、時空の番人は頷いたー。 「ーーどうやら、君のお母さんに憑依した犯人は ”1回阻止されても”、懲りずにまた君のお母さんに憑依するようだー」 時空の番人のその言葉に、 呆然とする浩太ー。 「恐らく、何度阻止しても彼はまた、別のタイミングで君のお母さんに 憑依しようとするー。 つまりー、阻止して、一時的に君の存在が復活しても 今みたいにまたすぐに消えてしまうー」 時空の番人の言葉に、浩太は表情を歪めるー。 「ーーーくそっ…」 浩太は、時空の番人から前に伝えられた”犯人”の名前を口にするー。 「ー進藤教授めー…俺に何の恨みがあるんだー」 とー。 進藤教授は、浩太の大学の教授で 過去には優秀な研究者だった人物。 あまりにも危険な実験を繰り返した結果、研究者としての道を絶たれたー、 そんな噂も聞いているー。 その彼が、”憑依薬”や、”タイムマシン”を完成させて、 その実験のために、浩太の母・雅美に憑依ー、浩太が生まれるという事実を消して、 ”どうなるか”を試しているー。 それが、事の真相だー。 時空の番人が言うには、進藤教授は浩太に恨みを持っているわけではない、 ”自分の大学の学生のうち誰か”が、生まれないように歴史を変えたらどうなるのか、を 好奇心から試している様子で、 要するにー”自分の大学の学生なら、誰でも良かったー”という理由とのことだったー。 「ーーくそっ!あのマッドサイエンティストめー」 浩太は毒づくー。 こうなる前に、親友の正行と、進藤教授のことを”できれば近付きたくない”なんて 言っていた浩太ー。 まさか、その進藤教授のせいで、こんなことになるなんてー。 「ーー…なるほどー。君に1回、憑依を阻止されたことで 今度はムキになって君を消し去ろうとしてるようだなー」 時空の番人はそう言うと、「とりあえずもう一度同じ手で阻止してみよう」と、 言葉を口にしたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「うっ…」 過去ー。 母・雅美が、夫の輝彦との新婚旅行中に、進藤教授に憑依されたー 「ククククー…今度こそ、離婚してもらうよー。 私の実験のために」 雅美に憑依した進藤教授は、夫・輝彦を罵倒しようと、 輝彦のいる場所に向かおうとするー。 がー 「ーひっ…!?」 時空の番人と共に再び過去にやってきていた浩太が雅美に憑依ー、 その中でー、”進藤教授”を撃退したー 「ーーはぁ…はぁ…」 雅美の身体の主導権を奪い返した浩太ー。 「ーと、父さんと、”ヤらなくて”いいよなー?俺は?」 雅美の身体で浩太がそう言うと、 ホテルのスタッフの身体に憑依していた時空の番人は 「あぁ、それは流石にキツイだろうからねー」と笑ったー。 そしてー、雅美から抜け出し、 ”また”元の時代に戻るー。 時空の番人は、また浩太の記憶を消して ”時の流れ”を再開させたもののー やはりー… すぐにまた”浩太”は消えてしまったー。 「ーーー…はぁ」 浩太は”また”時空の番人と対面したー。 「ーー何度憑依を阻止しても無駄のようだー。 教授は、意地でも君を消すつもりだー」 時空の番人はそう呟くと、 浩太は「俺は…消えるしかないってことかー?」と、不安そうに言葉を口にするー。 「ーーーーー」 時空の番人は少しだけ考えてから、 「少し待っていてもらえるかな?」と、だけ呟くと そのままスーッ、と姿を消したー。 「ーあ!おいっ!」 置いて行かれた浩太は、”自分のいない現代”を浮遊しながら見つめるー。 彼女の美亜が、親友の正行と別れて、 自暴自棄になっているのが見えるー。 「ーーもうさ~わたしも遊びまくってやろうと思って」 そんなことを友達に言い放つ美亜。 ”浩太がいない世界”の美亜は荒んでいるー。 こんな美亜は見たくないー。 やっぱり、何としても戻らないとー… 浩太はそう思いながらも、1日、また1日と ”時空の亡霊”として、自分のいない世界を見つめたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 「”強制介入”の許可をー」 時空の番人として浩太と接触した青年が 青い光が交差する空間でそう言い放つー。 「ーーーーなるほど。確かに”強制介入”が必要だな」 賢者のような雰囲気の老人がそう言い放つと、 「ー”進藤教授を削除する”ということでよろしいですか?」 と、眼鏡の真面目そうな雰囲気の女性が言うー。 「はい。」 青年は答えるー。 ”時空の番人”は、50年後の未来、タイムマシンの技術が完成した時代で、 ”過去の改変”を防ぐために生まれた組織で、浩太から見れば ”未来の人間たち”で構成される、過去の改変を防ぐ専門の警察のような組織だ。 タイムマシンが完成した時代では、法律で過去の改変は禁じられており、 厳しい制限も課せられているものの、 それでも法律の網や制限を潜り抜けて過去の改変を試みようとするものがいる。 それを阻止するのが、時空の番人の仕事だー。 今回の件は、未来の進藤教授が、100歳を目前にして ”結局、私は何も残せなかった”と、自分の過去を変えようと、 その時代のタイムマシンで過去の進藤教授…浩太のいる時代の進藤教授に接触、 タイムマシンと憑依薬を提供したことにより、起きた事件だったー。 未来の自分から憑依薬とタイムマシンを手に入れた進藤教授は 手始めに”実験”と称して”自分の勤務する大学の生徒のうちの誰か”の 存在を消してみようと、浩太を狙った。 浩太を狙ったのは”たまたま”で、誰でも良かったー。 よってー、浩太が消えるのを阻止するためには、 進藤教授を”削除”する必要があるー。 「ーー”介入タイミング”の検討に移りましょう」 眼鏡の女が言うー。 ”強制介入”は、時空の番人たちの最終手段。 普段は、直接過去の歴史を変えることを固く禁じているものの、 止むを得ない、と時空の番人10人が全員承認した場合のみ、 時空の番人が直接過去に介入できるー。 なお、”強大な力”を持つ時空の番人自身がルールを破ると ”死よりも恐ろしい罰”が待ち受けているため、 全員、ルールは徹底しているー。 青年が持ち込んだ進藤教授の件は”承認”された。 あとは10人で話し合い、”どの時代で進藤教授を削除すれば、 一番後の時代に影響が出ないかどうか”を検討するー。 どうしても、どんな人間でも”消せば”何らかの影響は出るのだー 「ーー妻との間に娘が出来た後の離婚後ー このタイミングが最も影響が出ないだろうな その前に進藤教授を消せば、この娘と、その先の子孫が全員消える」 髭の男が言うー。 「ーー確かにー…それではー… で、使う身体はー? スーツ姿の男が言うと、 「ーちょうど、逃亡中の女犯罪者がこの時代にいるー。 この女に憑依して進藤教授を始末すればいいだろうー。 この女は元々死刑になる運命だ。一人増えても後の時代への影響は少ない」 と、屈強な男が答えたー。 ”答え”は出たー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーーー今から強制介入を行う」 時空の番人を名乗る青年が、彷徨っている浩太の前に 再び現れ、そう告げたー。 「ーきょ、強制介入ー?」 浩太が言うと、 「できれば円満に解決したかったが、進藤教授は何をしても 過去の君のお母さんに憑依を繰り返すことが分かったー。 よって、僕が直接、進藤教授を排除するー。」 と、青年は答えたー 「えっ?えっ?そんなことー」 浩太は狼狽えるー。 「ーーこれが、時空の番人の仕事だー。 まぁ、終わった後、関係者から記憶は消えるから、 僕たち以外、誰も覚えてはいないけどね」 青年はそう言うと、 「ー本来、108歳まで生きる進藤教授を始末して ”一番影響が少ない”タイミングが今から10年前の時代でねー そこで、進藤教授を排除すれば、君のお母さんが憑依されることもなくなり、 離婚の危機は去るー。 君は、消えることはないー」 と、そう言葉を付け加えたー。 「ーーー…で、でも、教授はー…」 浩太がそう呟くー 流石に”殺す”と言われると驚いてしまうー。 「未来において、過去を変えるのは重罪以上の重罪だー。 君が消えてしまえば、この先の君の子孫ーー そうだなー、サッと確認したところ、1000人以上の人間が消滅するー。 そうなれば、歴史に大きな影響が出るー。 が、10年前の時点で既に子供もいて、離婚していて、この先子供が増えることもない 進藤教授は消しても”最小限の影響”に留まるー。 そういうことだー」 時空の番人はそこまで言うと、 「ーーーー急に、驚かせてすまなかった」と、頭を下げるー。 「ー君の人生には恐らくほぼ影響はないはずだー。 僕が”仕事”を終えれば君は全てを忘れ、何事もなかったかのように、 日常に戻るー だから、安心してくれー」 そんな言葉と共に、青年は姿を消し、 浩太は一人、残されたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーーぅ…」 浩太のいる時代から10年前の時代ー。 逃亡中の女犯罪者に憑依した時空の番人はー、 当時、研究室に勤務していた”進藤教授”の帰路を狙ってー、 背後から襲撃したー。 「ーーがっ… ぁ」 進藤教授がうめき声をあげるー。 ”直接憑依して自殺する”ということは、憑依者自身が死ぬ可能性もあるため、 ”禁”とされており、他の身体を使う必要があるー。 「ーーー…恨むなら、未来のあなたを恨めー」 女の身体で、青年はそう言うと進藤教授の遺体を”処理”して、 そのまま姿を消したー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 進藤教授が”死亡”し、 歴史は修正されたー。 大学の食堂で、親友の正行と雑談する浩太ー。 もう、時空の番人云々のことは忘れているー。 そしてー、 そこに同じ大学に通う彼女の、麗奈(れいな)がやってくるー 「あ、麗奈!」 浩太が呼びかけると、麗奈は「あ!浩太もいたんだ~」と、 笑いながら近寄って来るー。 ”麗奈”ー… 浩太の彼女ー。 でも、”前”は、彼女は”美亜”だったー。 進藤教授が10年前に死亡した歴史に変わりー、 ”予想外の変化”が生じたー。 それはー…美亜の父親が、進藤教授が当時勤務していた 研究施設の会社に勤務していたことが原因だー。 進藤教授が急死したことで、 美亜の父親は”転勤”になり、娘の美亜共々、地方に移住したー。 ”本来”なかったその出来事により、 美亜は別の大学に通うことになり、浩太と出会わなかったー。 結果ー、”子孫”にも変化が生じ、歴史に大きな異変が起きてしまったものの、 ”浩太と美亜から繋がる子孫”が後の時代で大勢消滅してしまったー。 が、”強制介入は取り消せない”がルールであり、 代わりに浩太と麗奈から繋がる子孫”が後の時代に誕生したため、 ”総合的な人数にはあまり影響がない”と、時空の番人たちは判断、 ”このまま”歴史を定着させる決定を下していたー。 がー そんなことを知る由もない浩太は、今日も”麗奈”と共に 穏やかな大学生活を送るのだったー。 歴史は日々、”修正”されているー。 けれど、それに気づく人間はいないー。 もしかしたら今日もどこかで気付かないうちに 歴史は改変・修正されているのかもしれないー。 おわり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 最終回でした~!☆ 浩太くん自体は消えずに済みましたが、 なんだか知らないうちに 最初の通りには戻らなくなってしまった…! そんな、結末でした~!☆ 私も、実は数秒前までは 誰かと一緒にいたのに、歴史が変わって 覚えていない…なんてこともあったりして…? と、色々考えちゃうと なんだか面白いような、怖いような…、不思議な気分デス! 今回も最後までお読み下さりありがとうございました~! 次に皆様にここでお会いするときには すっかり暑さも忘れている頃になりそうですネ~! 体調を崩さないようにお過ごしください~!☆! |