レンタルスーツ①~戸惑い~
 作:無名


バイト中に、幼馴染を見かけた彼ー。

しかし、その幼馴染の様子がおかしいことに気付いた彼は、
後日、改めて確認するとー…!?

”皮にされて着られるバイト”に手を染めた幼馴染との物語…。

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一人暮らしをしている男子大学生の村木 義治(むらき よしはる)は、
大学での1日を終えると、バイト先の飲食店である焼肉屋へと足を運んだー

「ーー悪いねー村木くんー」
店長が申し訳なさそうに言葉を口にするー

「ーーいえー。ちょうど予定も空いてましたしー
 それに、風邪なら仕方ないですよー」
義治は店長にそう返すと、事務所に向かって
バイトの仕事の準備を始めるー。

今日は、バイト先の先輩が一人、
体調不良で欠勤となったため、急遽、義治が呼び出されたのだー。

「ーーいらっしゃいませ~」
準備を終えて仕事を始める義治ー。

”何事も”無難にこなす義治は、
バイト先でも、店長から信頼され、重宝されていたー。

義治自身、このバイト先のことは気に入っているー。
立地条件が良いのか、客層も悪くないし、
店長をはじめとする社員や、バイト仲間の雰囲気も
悪くはないー。

「ーーありがとうございました~!」
色々なことを考えながら、今日もバイトとしての仕事を
順調にこなしていく義治ー。

今日も、いつものようにバイトのシフト…
勤務時間の終わりが、順調に近づいてきているー。

「ーいらっしゃいまーー」

がー、その時だったー。

幼馴染で、高校時代まで一緒の学校だった子ー、
黒井 梨桜(くろい りお)が入店してきたのだー

「ーーーせーーーー」
一瞬、ドキッとしたものの、梨桜が特に何の反応も示していない様子だったため、
そのまま”店員”として、いらっしゃいませを言い切った義治ー。

知り合いが来た場合、多少反応する程度は、
この店では特に問題視されていないし、
他のお客さんが不快にならない程度に留めればいい、と言われているー。

がー、梨桜が義治と目を合わせても”何も”反応しなかったために、
義治は”店員”に徹したー。

「ーーー…(今の、梨桜だよなー…?)」
義治は、心の中でそう思うー。

梨桜とは、恋人同士の関係ではないものの、
”梨桜” ”ヨシくん” と呼び合う仲だったー。

しかし、随分と派手な雰囲気になっていたし、
男と一緒だったために、何だかイメージが随分違う感じもしたー。

そう思いながらも、義治は梨桜と、男が座ったテーブルから
呼び出しの音が鳴ったために、注文を確認しに行くー。

「ーーえ~、カズくんも好きなもの頼んでいいんだよ~~?」
梨桜が、相手の男を”カズくん”と呼びながら
そう言葉を口にしているー。

だが、相手のカズくんなる男は、とてもオドオドした様子で
「え…あ、はい…」などと、戸惑いの言葉を口にするー。

「ーーー…」
義治は、梨桜の方を見つめるー。

梨桜は「あ~店員さん!ちょっと待ってくださいね~」などと
笑いながら義治の方を見つめるー。

少し化粧が濃いのとー、髪型や髪の色ー、
肩を見せるような服装から、イメージが大分違うものの、
この顔に、この声は間違いなく梨桜だと思うー。

が、梨桜が義治を見ても、全く表情を変えないことに、
義治は少し違和感を抱いていたー。

”まぁ、彼氏と一緒なら、幼馴染の男の存在は知られたくないのかもなー”

そう心の中で解釈しながら、
注文を聞き終えると、
「ーーえへへー お兄さん、イケメンですねー」などと、
急に梨桜が声をかけて来たー

「ーち、ちょっと…!そういうのやめようよー」
戸惑う”カズくん”ー。

「ーーー…え??あ、は、はいーありがとうございますー」
義治は戸惑いながら、そう言葉を口にして、
調理場の方に戻っていくー。

”ーな、なんだー?…”
戸惑いの表情を浮かべる義治ー。

梨桜から”お兄さん”などと、完全に他人のように言われたことに戸惑うー。
それに、梨桜はあんな風に店員に軽く話しかけるような子だっただろうかー。

色々な戸惑いが一気に膨れがあるも、
義治は”今はバイト中だー。バイトに集中しろー”と、自分の中で
自分に言い聞かせつつ、再び仕事に集中し始めるー。

がー、
梨桜と”カズくん”とやらのテーブルから、
アルコール類の注文が頻繁に入り、義治は心配し始めて居たー。

「ーーーえへへへへ~このあと、ホテル行くでしょ~?」
梨桜がニヤニヤしながら、カズくんとやらに迫っているー。

「ーーーえ…え…え…」
戸惑うカズくんー。

「ーーいいじゃんー”こんな可愛い女”とヤれるんだからー」
梨桜のそんな言葉に、義治はおかわりのサワーを運びながら、
表情を歪めるー。

どうやら、頻繁に追加されているアルコール類は、
ほとんど梨桜が飲んでいるようで、
梨桜はかなり酔っていたー。

既に年齢的には、飲める年齢にはなっているがー、
高校時代の梨桜のイメージからすれば、
梨桜がこんなに飲むなんて、あまり想像ができなかったー。

やがてー、さらに時間は経過しー、
梨桜が、攻撃的な言葉を口にし始めたー

「ーあ~…面倒くせぇなーわたしを楽しませろって言ってるんだよー。
 なにびびってんだよー あ?」
梨桜が見たこともないような表情で、”カズくん”とやらに
そう言葉を口にするー。

「ーー”この女”とヤりてぇだろ? あ???」
梨桜が机をトントン叩きながら、まるで自分を他人のような言い方をすると、
カズくんは「で…でも…」と、申し訳なさそうに言葉を口にするー。

「ーあ~~~うぜぇなー。
 ”俺”と、約束しただろうがー
 そのために高い金を払ってこの女を”着て”ー」

梨桜が自分のことを”俺”と言うー。
しかも、金がなんとかー…

見かねた義治は「あ、あのーお客様…周囲のお客様の迷惑になりますのでー」と、
そう言い放つと、梨桜は「ーーあ?うるせぇな黙ってろよ」と、
恐ろしい形相で義治に言い放ったー。

「ーーーーえ…」
義治は呆然とするー。
いくら酔ってるとは言え、梨桜はこんな子だっただろうかー。

いやー、酔っ払うと酒癖が悪いのかもしれないー。

とは言えー、これは…なんだかおかしい、
そう思った義治は、
「ーすみません。人違いだったら申し訳ないのですがー」と、
前置きした上で、「…黒井 梨桜さんですよね?」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーー…あ?」
梨桜は、少し驚いたような表情を浮かべると
「この女の知り合い?」と、自分を指差しながらそう言葉を口にしたー。

「ーーーえ…何を言って…?」
義治が戸惑うと、梨桜は「あぁ、いや、いや、何でもないー」とだけ呟くと、
笑顔を浮かべながら「ごめんね!お会計、お願いできる?」と、
そう言葉を口にしたー。

「えー…あ、は、はいー」
義治は戸惑いながら、”店員”として会計の手続きをするー。

すると、梨桜は逃げるようにして会計を済ませると、
そのまま連れの男・カズくんと共に慌てて店の外に
出て行ってしまったー。

「ーー今の女の人、知り合い?」
店長が笑いながら言うと、
「ーいやぁ…そのはずなんですけどー、なんか別人みたいでー」と、
苦笑いする義治ー。

高校時代まで一緒だった幼馴染だと説明すると
店長は「あ~卒業してからもう2年以上経ってるんだろ?」と、笑うー。

「女の子ってのは、特に変わるもんだからさー」
そう言い放つ店長ー。

が、何か”そういうことではない”ような気がしてしまった義治は、
後日、スマホにまだ残されていた”梨桜”の連絡先に対して
LINEを送信するのだったー。

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”この前は、ごめんなー。店の中だったから
 大声で口論している人は止めないといけない
 決まりになってて”と、

あくまでも、この前のお店での対応のことをお詫びする内容で、
そうメッセージを送った義治。

すると、その日のうちに”あ、ヨシくん!ーえっと、どういうことかな?”と、
梨桜から返事が返って来たー。

「ーーー」
義治は、その返事に戸惑いながら、
”えっと…先週の週末ー…”と、そう返事をさらに送ると
”それ、人違いじゃないかな~?”と、そんな返事が返って来るー。

「ーーーーー…」
義治は今一度、自分の中で記憶を整理していくー。

”人違い”ー?
いや、雰囲気は全然違ったけれど、
確かにあの顔とあの声は、梨桜だと思うー。

1か所だけあるほくろの位置が同じだったし、
口調はいつもと違ったとは言え、確かに梨桜の声だったー。
もちろん”奇跡的にそっくりな子”もいるかもしれないがー、
それでも、あれは梨桜本人だったと思うー。

そう思いながら
”いやー、り、梨桜だったよなー?”と、返信すると、
梨桜は”ちょっと、通話できる?”と、そう返事を返して来たー。

特に今は忙しいわけでもないし、今日はバイトも休みだから、
断る理由はないー。

そう思いつつ、”いいよ。都合が良くなったら教えてー。
俺から電話を掛けるから”と、返事を返すと、
すぐに、梨桜の方から電話をかけて来たー。

「ーー…あ、もしもしーー あぁ、そっちから掛けさせちゃってごめんなー」
こっちから掛けるつもりだった義治がそう言うと、
梨桜は”ううんー。大丈夫ー… あ、というか久しぶりだねー。直接話すの”と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーははー、まぁ、こうしてのんびり話すのは久しぶりだなー
 この前はバイト先だったし」

義治がそう言葉を口にすると、
”そ…それなんだけど…”と、梨桜は気まずそうに言葉を口にしたー

ゴクリと唾を飲み込む義治ー。
なんだか、とんでもないことを言われる気がしたー。

実は双子がいるー
実はもう一人のわたしがいるー
実はーーー

そんな、とんでもないことの数々を想像しながら、
梨桜の言葉を待っていると、
やがて梨桜は口を開いたー。

”「本当に」わたしだったんだよね?”
とー。

「ーーあ…あぁ…間違いなく梨桜だと思うー
 だって、高校の時までずっと一緒だっただろー?
 間違えるわけないよー。

 なんでー…あんな…
 いつもと違う感じだったんだー?」

義治がそう言うと、
梨桜は”…ーーーそれね…たぶん”バイト中”のわたしだと思うー”と、
そう言葉を口にしたー

「バイトー?」
義治は戸惑うー。

男と一緒にいたー…ということは
”レンタル彼女”とか、そういうやつだろうかー?
それともー、義治自身はあまり詳しくないためよく分からないが
夜の仕事か何かだろうかー。

「ーーーた、たぶんー…?」
義治は首を傾げるー。

レンタル彼女にせよ、何にせよ、
何故、”たぶん”などという言い方をするのだろうかー。

すると、梨桜は
”まさかバイト中のわたしがヨシくんと会うなんてー”と、
そう言葉を口にしたー。

やはり、言っている意味がイマイチ分からないー。

そう思いつつ、義治が再度確認の言葉を口にしようとすると、
梨桜は言葉を続けたー

”わたしね…”レンタルスーツ”のバイトやってるの”
とー。

「ーレンタルスーツ…!?」
義治は聞いたことのない言葉に困惑したー。

すると、梨桜は
特殊な注射器で”皮”にされて、自分自身が着ぐるみのようなものになり、
それを着られることで、”自分の身体を着ぐるみのようなものとして貸す”
バイトだと説明したー

”だから、見た目はわたしでも、中身は別の人で、
 わたしの意識は眠ってる状態だったからー
 別人のような振る舞いだったー…ってことだねー”

梨桜は、気まずそうにそんな言葉を続けたー

「ーーー…え、えっとー…つまり、自分の身体を売ってるってことー?

 ーーあ、いや、ごめん、言い方悪かったー。
 でも、あの、理解がちょっと追い付かないー」

義治がそう言うと、
梨桜は少し考えてから”今度、週末に会えたりする?”と、
そんな言葉を口にしたー。

「ーーえ? あ~~~バイトは午後からだから、午前中だけならー」
と、義治がそう言葉を口にすると、
”ー説明がちょっと難しいから”と、直接会って話をすることを提案してきたー。

「…分かったー。じゃあ、今度の週末にー」
義治はそう言葉を口にしながら電話を切ると
”レンタルスーツ”という聞きなれない単語に強い不安を感じるのだったー…

②へ続く

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皆様こんにちは~!☆

暑い季節もだんだんと終わりが見えて来そうな
時期になってきましたネ~!
(まだまだ暑いですケド…笑)

暑さが苦手な私は、ようやく苦手な時期の出口が
見えて来て一安心している最中デス~笑

…今回のお話は、解体新書様に載せる私の作品では
久しぶりの皮モノになります~!

”レンタルスーツ”のバイトとは一体何なのか、
それは次回以降のお話で確かめて下さいネ~!