強くてニューゲーム③~GAME OVER~(完)
 作:無名


人生をやり直すー。

2周目の人生を楽しむため、
生まれたばかりの赤ん坊に憑依した男ー。

”天才少女”として、充実の人生を送っていたもののー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

中学校の卒業式を迎えたー。

明日香はすっかり”天才少女”などではなくなりー
授業に追いつけなくなりつつあったー。

明日香は、爪をガリガリとかじりながら、
不満そうな表情を浮かべるー。

小学生時代までの”明日香”のチヤホヤされてきた人生とは
打って変わってしまったー。

大人から褒められ続けて、
周囲からすごいと言われ続けてー
まるで、本当に自分が天才になったような錯覚を覚えてしまっていたー

だがー
実際は”おじさんが小学校の授業を受けていた”に過ぎないー。
だからー
周囲の子供より優秀に”見えた”だけに過ぎないー。

そしてー
勝夫は決して頭が良いわけではないー
勝夫の学力では”中学生の授業”を十分に理解できなかったー

もちろん、チャンスはあったー。
明日香として、必死に勉強すればー
”勝夫のとき”とは違う人生になったかもしれないー

だが、元々勉強が嫌いな勝夫は、明日香の身体になっても
勉強をせずー
結果ー、成績は下落したー。

小学生時代は、上から数えたほうが早かったのにー
今では、下から数えたほうが早いー。

偏差値の低めの高校に辛うじて入学した明日香ー。

しかし、明日香が天才少女だったということを知る人間などおらずー、
明日香が褒められるようなことも、もはやなくなってしまっていたー。

「ーーーへへへへへ♡ はぁぁ~~~こうしてる時だけが幸せだぜ♡」
明日香は帰宅すると、自分の身体でエッチなことをする日々を
送っていたー。

”女の快感”
高校生になった明日香の身体は、既に十分に楽しめるぐらい、
女として成長していたー。

「ーーはぁぁぁぁ…やっぱ、美男美女の娘は違うなぁ~」
明日香が顔を歪めながら、可愛い顔をニヤニヤしながら触るー。

勝夫の狙い通りー
美男美女の両親に生まれた明日香は、
美少女だったー。

必ずそうなるとはもちろん限らなかったがー
その可能性は高いと読んで、明日香に憑依したのは正解だったー。

「ーーーんっ…♡ はぁ…たまんねぇ…♡
 美少女の顔を、おじさんみたいなヤベェ顔に歪めるの…たまんねぇ…♡」

”天才少女”として、チヤホヤされることができなくなった明日香はー…
”強くてニューゲーム”の恩恵を受けることができなくなった明日香はー
女の身体の快感に、溺れ始めていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーあんたさぁ、うざいんだけどー」

明日香の通う高校には、素行の悪い生徒も
そこそこ多かったー。

明日香は、ギャルのグループに目をつけられて、
いつしか、嫌がらせを受けるようになっていたー。

美少女…と言える顔立ちの明日香を
目の仇にし始めたのだー。

嫌がらせを受ける明日香ー

「くそっ!2度目の人生でもこんな目に遭うなんて…
 ふざけんじゃねーぞ!」

帰宅しては怒り狂ってー
心配する両親に強く当たってー
夜になると、明日香の身体でイクまで、一人、エッチなことをするー

そんな、堕落に満ちた日々を送るー。

だがー
明日香として2度目の人生を楽しむ勝夫は、
”あること”を思いついたー

「ーーそうだーー…あんなギャルたち、この身体があれば、簡単にー」
笑みを浮かべる明日香ー。

翌日、明日香は早速行動を起こしたー。

学校内の”素行不良の男子”を束ねるリーダー的存在の男を
放課後に呼び出したのだー。

明日香は、今までこの男子を避けていたもののー
ある目的で、呼び出していたー

「ーー平本に呼び出されるとはな…で、何の用だ?」
高校生とは思えない体格の鋭い目つきの男子が、明日香を見つめるー

「ーーわたしを、助けてほしいのー」
明日香が甘い声を出すー。

「ー助ける?ククー」
不良男子はそう呟くと、笑みを浮かべるー。

「ーお前、馬鹿だろ?
 誰に助けを求めてやがるー」

そう言うと、不良男子はバカにしたように笑いながら続けたー

明日香をいじめていたギャルのリーダー格はー
この不良男子の”彼女”なのだー

「ーー俺が自分の彼女を裏切って、お前みたいな女を助けるわけー」

そう言いかけて、彼は言葉を止めたー

「ーーねぇ、あんな女捨ててーわたしと付き合わないー?」
明日香が甘い声を出しながら、不良男子に抱き着くー

「な…なんだって?」
不良男子が戸惑うー。

天才少女から転落した明日香には、まだ、美男美女の両親から受け継いだ
”美貌”があるー。

明日香に憑依している勝夫は、それを武器にすることを
思いついたのだー

誘惑するような声を出しながら、不良男子の手を自ら掴んで、
胸を触らせたり、スカートの中を触らせたりするー

「ーわたしなら、あなたを満足させてあげることができるー
 どう?」

明日香の挑発的な口調に、
不良男子は思わずニヤニヤし始めるー

「わたしを助けてくれるならー
 フェラでも、コスプレでも、なんでもしてあげるー」

明日香の言葉にー
不良男子はーー落ちた。

その日以降、明日香は彼の彼女となりー
明日香をいじめていたギャルたちは、一掃されたー。

明日香は連日、不良男子とエッチを繰り返す日々を送りー
彼と夜の街で遊び続けたー

元々の勝夫は、こんな経験をしたことがなかったためにー
勝夫からすれば、とても楽しい経験でもあったー。

「ーーははは!お前は最高の女だ!」
彼氏になった不良男子も、明日香のことをとても大事にしてくれたー

日々、夜遊びを繰り返しー
かつて”天才少女”と呼ばれた明日香は、
今やすっかり、不良少女となってしまっていたー。

だがーーー
乱れた生活を送り続けた高校生活の代償は、大きかったー。

高校は、出席日数が足りずー単位を落とし、
ついに退学になってしまったー。

明日香の母親は泣いていたー。
父親も、困り果てた様子だー。

娘は、どうしてしまったのかー、
理解することができない様子だったー。

それもそのはずー
娘の中には、赤ん坊のころから”おじさん”がいて、
そもそも、普通の”娘”とは考えていることも違うのだからー。

それからさらに月日が流れー
明日香は本来であれば”女子大生”になっているはずの年齢に
なっていたー。

しかし、高校を退学しー
学力的にも、金銭的にも、大学に行くことは難しい状況になっていてー
明日香は、高校時代に色目を使って彼氏にした不良男子と
遊び歩く日々を送っていたー。

だが、ある日ー

「ーーー悪いな、明日香ー」
彼氏であった、その男は、別の女を作りー、
明日香を切り捨てたー。

「は!?ちょっと待ってよ!どうしていきなり!」
明日香が怒りの形相で叫ぶー。

「ーーー…お前は、自分の鏡でも見とけ」
彼氏だった男は、明日香にそう言い放ったー。

「ーーーー…」
明日香は歯ぎしりをしながら、トイレの鏡で、自分の顔を見つめるー。

”美少女”だったはずの明日香の顔はー
明日香に憑依している勝夫の性格が出たのかー
いじわるそうな顔立ちになっていたー。

しかもー
髪も肌も傷みー、
明日香は今や小太りになっていたー。

「ーーー…くそっ!なんでだよ…!」
明日香は髪を掻きむしりながら呟くー。

”夜遊びを繰り返す堕落した生活”を続けたことで、
明日香は美貌すら、失ってしまったのだー。

どんな美少女でも、どんな美人でも、
それを維持する努力をやめればー
人は、変わるー。

”かわいい”は
才能などではないー。
”努力”と”運”で成り立っているということをー
勝夫は理解できなかったー。

美貌を保つための努力を何一つせず、
それを壊すことばかりしていた明日香がー
美人で居続けることができるはずもなかったのだー

「くそっ!!!」
明日香は鏡を殴りつけると、
彼氏をも失い、大学にも行けず、就職先も見つからず、
やがて、家に引きこもるようになったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「へへへへへー」
部屋に引きこもりー
ネットを眺めながら、
Hな動画を見ては、自分の身体で快感を味わうー。

そんな、堕落した生活を送る明日香ー。

ストレスからか、おかしを食べる手が止まらずー
明日香は、見る影もなく肥満体形になってしまっていたー。

「ーーーーーへへ…わたし、ゲームオーバーじゃん」
明日香は自虐的に笑うー。

前と同じー
いや、前よりもひどいー。

どうしてこんな人生になってしまったのだろうかー

勝夫が、勝夫であったときには、
フリーターではあったものの、一応、働くことは
できていたし、どうにかなっていたー

だが、今回はー

「ーーくそっ!くそっ!!くそっ!!!
 くそっ!!!」

パソコンのキーボードを何度も何度も叩く明日香ー。

両親たちが部屋に近付いていても、
口を利くこともせずー
かつての”天才少女”はもはや、完全にその輝きを失っていたー。

「ーー俺は天才なんかじゃなかったんだー。
 俺はー
 ただ、”大した学力もないおじさんが、知識を幼稚園や小学生で
 披露して、悦に浸ってただけだー”」

悔しそうに呟く明日香ー。

”強くてニューゲーム”の状態で2度目の人生をはじめてもー
例え”レベル40”からはじめたとしてもー
自分が努力をしなければ、自分のレベルは40のままー
あがっても、41や、42になるだけだー。

だが、普通の子供たちは違うー。
みんな、日々成長しているー

だから、最初は明日香になった勝夫だけがレベル40で周囲が5だったとしてもー
周囲はみるみるレベルがあがりー
やがて、明日香は置き去りにされてしまったのだー。

「ーーそうだ…もう一度…もう一度、ニューゲームを…
 3周目の人生をー」

明日香は、その日から、ネットで
”あなたの人生、強くてニューゲーム”と書かれたサイトを
再び探し始めたー

だがー
あの日ー
明日香になる前ー
既に20年以上昔のことだが、見つけたあのサイトはー
見当たらなかったー。

そうしているうちにも月日は流れー。

明日香の父親が病に倒れてまもなくこの世を去りー
母親も後を追うように、1年後にこの世を去ってしまったー

ひとりになった明日香はー
何もできなかったー。

「ーーー結局、これかー」
ボロアパート暮らしになった明日香ー。

幸い、満足に食べることもできず、
働かないと生きていけないこの環境によってー
明日香の肥満体形は改善され、
今や標準体型になっていたがー
容姿を保つ努力も何もしていなかった明日香の肌は
既にボロボロで、髪も傷みー
顏も、生気のない雰囲気の顔立ちになっていたー。

「ーこれじゃ、”女”として楽しむこともできねぇな…」
明日香はそう呟きながらー
今日も仕事に向かう準備をするー

結局ー
最終的に行き着いた先は
”アパート暮らしのフリーター”ー

”これが、俺の運命なのだろうか”

そんな風に思わずにはいられないー。

もしかしたらー
人は運命が決まっていて、
何をしようと、そうなるようになっているのではないかー。

だから、身体が変わっても、結局はーー

「ーー…俺が努力不足だっただけかー」
明日香はそう呟くと、やつれはてた中年のおばさんになった自分を
見つめてため息をつくー。

”もしも、この子が、普通に人生を送っていたら、今頃どうなってたんだろうなー?”

そんなことを思いながらー
今日も、清掃のアルバイトの時間が近づいてきたことに気付いて、
サバの缶詰で手早くご飯を済ませると、そのままバイトに向かうのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最終回でした~!☆

結局、手に入れた新しい人生も転落して
前と同じような状態に…!

最後も、彼は
”結局運命は決まっているのではないか”
なんて言っちゃってるので、
この先も、努力する気配は無さそうですネ~…笑

私が今の記憶を引き継いで
別の身体で人生を送れるなら、
今までできなかったことにチャレンジしたりも
してみたいですネ~…!

ちなみに今回が最終回ですが、
後日談も掲載して下さるとのことなので、
後日談も後日、掲載されます~!

楽しみにしていて下さいネ~!