強くてニューゲーム①~NEW GAME~ 作:無名 「人生、2周目が出来たらいいのになぁ」 そんな風に思っていた40代後半のおじさんは、 ある日、”人生をやり直す”方法と出会うー。 それは、”生まれたばかりの子に憑依する”という方法だったー ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「はぁ~~」 40代後半の疲れた様子のおじさん、 原山 勝夫(はらやま かつお)は、 ため息をつきながら、自分の一人暮らしのアパートへと帰宅したー。 勝夫の人生は、小さいころから”馬鹿にされて”ばかりの人生だったー 学校では、成績はいつも悪くー なかなか勉強も捗らずー 高校受験の際にも、偏差値の低い高校ですら落とされてしまい、 2次試験で、ようやく進学先が見つかるような始末だったー。 性格にも難があり、恋愛経験がないのはもちろん、 友達もほとんどおらず、 そのまま大人になり、社会人になったー。 がー 社会人になってからも苦難は続いたー。 ”特にとびぬけた能力がない”上に 向上心もなく、世渡りも上手ではなかった勝夫は、 すぐに会社の隅っこに追いやられるような存在となり、 会社でも”役立たずの社員”のレッテルを張られたー やがてー30代前半にしてリストラされてしまい、 それからはフリーターとして、色々な職場を転々としているー 今ならわかるー。 ”小さいころ”にもっと頑張っておけば、 運命も違っていたのかもしれないー、と。 けれどー 今更そう思っても、後の祭りー。 人生をやり直すことはできないし、 自分は既に40代後半だー。 今更成功できるとも思わないし、 もはや正社員としての就職も難しいだろうー このまま、生涯独身で、狭いアパートの一室で孤独死するー。 それが、自分の運命なのだと勝夫はどこかで悟っていたー。 「ーーーはぁ~~~」 ため息が癖の勝夫は、帰宅すると、 コンビニで購入したおにぎり1個と安い冷凍食品のチャーハンを 口にしながら、ゲームを遊んでいたー 「よし」 先月から遊んでいたRPGゲームをようやくクリアした勝夫は、 そのエンディングを見つめながら、満足そうな笑みを浮かべていたー。 ゲームのエンディングが流れー 平和になった王国の様子が描かれる。 そしてー スタッフロールが終わるとー ”キャラクターのレベルやアイテム、スキルなどを 引き継いだ状態でゲームを最初からプレイできる ”NEW GAME+”が追加されました” と、お知らせがゲーム上に表示されたー 「ーーへへへ 来た来た」 勝夫はやり込み勢で、こうしたゲームクリア後の ご褒美を楽しみにしているー。 だがー ふと、呟くー 「あ~あ、俺も強くてニューゲームしてぇなぁ」 ”もしも、現実でも、強くてニューゲームができれば” 勝夫は、そう思ったのだー。 ゲームの中には、ゲームをクリアしたあとに レベルやアイテムの状態を引き継いで、 「もう一度最初から遊ぶことができる」ゲームが存在するー。 ”2周目”や”強くてニューゲーム”など、色々な呼び方をされる ゲームにはよくあるシステムだー。 最初にゲームを始めた時には、LV1からのスタートだったり、 アイテムも何も持っていなかったり、 クリアの方法も分からなかったり、色々苦戦するものだが、 クリア後に、もう一度最初から始めることで LV60の状態で、最初のステージを遊べたり、 豊富なアイテムを持っていたり、クリア方法を知ってる状態で サクサクゲームを進めたりすることができるのだー。 もしもー もしも、人生において、これができればー? 「ーーー」 勝夫は、そんな妄想をしたー。 人生において”記憶”を持ったまま”2周目”ができるとしたらー? 学校では、”いきなり成績優秀の天才”として、 チヤホヤされるだろうし、 自分のような人間でも、40年以上生きていれば 少なくとも子供よりは、社会での立ち回りもうまくできているし、 色々な”知識”があるー。 成績トップで、友達も多くて、恋愛もできてー そんな、最高の人生を送ることができるだろうー いきなり ”大人の知識を持った赤ちゃん”として生まれることができればー どんなに人生、素晴らしいものになるだろうかー。 ふと、気づけば勝夫は無意識のうちに、 ゲームを放置して、 スマホで”現実 2周目” ”現実 引き継ぎプレイ” ”現実 強くてニューゲーム”などと、 検索し始めていたー 我に返った勝夫は、自虐的に笑いながら 「ーーそんなこと、できるわけねぇか」と、呟くー そう、人生は一度きりだー。 二度目の人生など、あるはずがないー。 仮に、生まれ変わるようなことがあったとしてもー その時、自分は”今の人生のこと”を忘れているー 自分が勝夫という人間であったことを忘れているー。 だからー もしも”人生に2周目”があったとしても、 それは、”また最初から”であり、”引継ぎプレイ”ではないのだー。 もしかしたら、自分自身も、人生2回目だとか3回目の可能性もあるー。 でも、少なくとも今の自分に「前、生きていた記憶」はない。 だからー そんなことを頭の中で延々と考えていた勝夫ー しかしー パソコンを閉じようとしたその瞬間ー あるモノが目に入ったー ”あなたの人生、強くてニューゲーム” そう書かれたサイトを見つけたのだー。 「ーー!?!?!?!?」 勝夫は、パソコンをシャットダウンしようとしていた手を止めて、 そのサイトの説明を見るー。 そこにはー ”今の記憶を引き継いで、もう一度人生を”プレイ”するー ”人生強くてニューゲーム”に、あなたは興味はありませんか?”と 書かれていたー 「な、なんだこれはー?」 勝夫は、いつの間にか夢中でその画面を見つめていたー。 ”特殊な手術で霊体となり、赤ん坊に憑依することで、 人生をやり直すことができる” そこに書かれていた衝撃の事実にー 勝夫は、思わず笑みを浮かべたー 「ー心からワクワクするのなんて、何年ぶりだろうなー?」 そんなことを思いながら、勝夫は、”人生強くてニューゲーム”の 受付場所へと、翌日には足を運んでいたー 「ーー」 とある繁華街のビルー。 ”闇.net”と呼ばれるサイトが運営している ”人生強くてニューゲーム”を行うための場所にやってきた 勝夫は、指定されている場所の入口の前で 思わず唾を飲み込んだー。 明らかに、怪しいー。 このビルに入った途端、いかつい男たちに囲まれて ボコボコにされるのではないかー? と、いう不安すら浮かんでくるー。 しかしー ”よく考えたら、今更俺に失うものなんてないもんなー” 自分は、冴えないおじさんだー。 もう、失うものなんて、何もないー 例えボコボコにされても、 それはそれで構わないー。 そう思いながらー 勝夫は、ビルの中に足を踏み入れたー。 その中にはー 勝夫の想像したような光景はなくー 中性的な雰囲気の美青年が待ち構えていたー 「ーーー”2周目の人生”を希望の方ですか?」 その言葉にー 勝夫は嬉しそうに「はいっ!」と叫んだー。 ・・・・・・・・・・・・・・ 色々と説明を受けた勝夫ー。 中性的な雰囲気の美青年によれば、 ”特殊な手術”により、勝夫の肉体と霊体を分離させ、 霊体になった勝夫は、他人に憑依することができるようになるのだというー。 ただし、注意点として、 ”霊体と切り離された勝夫の肉体”は数日以内に死亡するため、 もう元の肉体には戻れないことー、 そして、 憑依対象は赤ん坊にすることー、 を、説明された。 成長するにつれて、人間には”自我”が芽生えるため、 赤ん坊以外では「拒絶反応」により、憑依する側が 消えてしまう可能性がある、とのことだったー 「ーーー記憶は、ちゃんとそのまま憑依できるんですか?」 勝夫が言うと、 「ええ」と、中性的な美青年は答えたー。 「ーー記憶はそのままですー ですから、”今の記憶”ー これまで、あなたが人生の中で得た知識は、全て引き継いだまま また新しく、赤ん坊から人生をやり直すことができるー。 これが、”人生強くてニューゲーム”ですー」 勝夫はー 迷うことなく、その場で”手術”をお願いしたー。 「ーー費用は?」 「ーーいえ、費用は必要ありませんー 我々”闇.net”は、あなたのような方に”夢のような技術”を 提供するために、存在するのですー」 ”怪しい” とは思うー。 けどー 勝夫は、それでも、夢に希望を託したー。 手術を受けた勝夫はーーー 言われていた通り、幽体離脱に成功したー。 ”眠っている自分の身体”を見つめながら、勝夫はー ”ありがとなー俺の身体ー。 俺は、人生、やり直すよー”と、笑みを浮かべてからー ”憑依対象”の赤ん坊を探しに、そのままその場から姿を消したー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ”どうせ、もう一度人生をやり直せるなら” 「今度は、女だなー」 笑みを浮かべる勝夫ー。 特別、下心があったわけではないがー、 もう一度やり直せるなら、女がいいと、勝夫は感じていたー。 勝夫の場合、単純に”前回の自分が男だったから、今度は女だ”と いう理由だー。 もしも自分が元々女だったなら、たぶん男を選んでいただろうー。 闇.netの人間から ”憑依対象のおすすめ”として、何人か候補を挙げられたのも参考にしつつー 勝夫はー 1歳の”平本 明日香(ひらもと あすか)”という女の子にー 憑依したー 「ーーぁ」 憑依されてビクンと震える明日香ー 明日香を選んだ決め手はー 両親が美男・美女であったことー そして、霊体として浮遊した状態で、家族の様子を見ていた感じではー 両親共に、優しい雰囲気だったことー 加えて、”ある程度金も持っていそう”だったことだー。 「ーーぁぅぁ~」 明日香の身体で声を出してみるー ”へへへ…本当に”俺”の記憶がちゃんと残ってるぜ” 勝夫が送ってきた人生の記憶、そして知識ー その全てが、1歳の明日香に憑依した今でも、 しっかりと頭の中に残っていることを 明日香になった勝夫は確認して、明日香の身体で 笑みを浮かべるー。 ”だが、さすがにー まだ、自由には行動できねぇなー” 勝夫は”まぁ、それもいいかー”と笑うー。 まさか、こんな風に”明確な自我”がある状態で、 赤ん坊としてのライフを楽しめることに なるとは思わなかったー。 「ー明日香~!おいで~!」 明日香の母親に抱きかかえられた明日香は、 思わず笑みを浮かべるー ”はぁ~!しばらくはこのエロいお母さんに 愛される日々を送るか~ふへへへ” 勝夫は”俺はベビーニートになるぜ!”と、笑みを 浮かべながら、 自由に動けるようになったらどうするか、 学校ではどんな風に生活していくか、 女子として、どんな人生を送っていくか、 十分すぎるほどに与えられた時間で、 のんびりと考えながらー ”うへへへへへ 興奮しちまうなぁ~” 嬉しそうに、美人なお母さんの母乳を ニヤニヤしながら、口にするのだったー。 まさかー 娘の明日香が憑依されて、おっさんに乗っ取られてしまったなどと 夢にも思わない両親は、明日香に、変わらぬ愛を注ぎ続けたー。 ②へ続く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 皆様こんにちは~!(こんばんは~??) 今月は、強くてニューゲーム…というお話デス~! ゲームなどで時々ある、 クリア後にレベルやアイテムなどを引き継いで もう一度最初からプレイできる…という要素から 浮かんだ作品デス~! ①は、憑依して2周目の人生を始めるところまでが メインでした~! 次回の②では、たっぷりと2周目の人生を満喫していく(?)ので、 ぜひ楽しんでくださいネ~! |