カワノゲーム①~謎の空間~
 作:無名


ある日ー、突然、謎の施設の中で目を覚ました男ー。

彼は各部屋ごとに用意された”皮”の中から
最適な皮を着て、脱出を目指す謎の”ゲーム”に参加させられてしまうー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー!」

朝ー。
男子大学生の安川 勝平(やすかわ かっぺい)は、
目を覚ますと同時に、呆然とした表情で周囲を
見渡していたー。

それも、そのはずー。
勝平が目を覚ました場所は、自分の部屋ではなかったのだー。

「ーーえ……どこだここ?」
勝平は戸惑いの表情を浮かべるー。

随分と広々とした四角形の部屋ー。

しかし、ベッドがぽつんと置かれていて、
後は少し離れた場所に、セーラー服のようなものが
吊るされている以外には、特に何も見えないー。

「ーーー窓もないー…あるのは扉だけー」
勝平が、そんな言葉を呟いていると、
「ーえ?俺、もしかして誘拐された?」と、表情を歪めるー。

勝平は一人暮らし。
昨日の夜も確かに家の戸締りはちゃんとしていたー。
そんな状況であれば、”勝平を起こさずに”家の中に侵入して、
そのまま誘拐する、というのは非常に難易度が高いだろうし、
現実的ではないー。

とは言え、このような見知らぬ謎の部屋に自分がいる、ということはーー

「ーーーそうか」
勝平は手をポン!と叩いたー。

「これは夢か。おやすみ」
悟りに達したような笑みを浮かべながら、勝平がそう言葉を口にすると、
ポツンと置かれたベッドに寝転びー、
すぐに熟睡し始めたー。

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「ーーーー!」
再び、目を覚ますー

「あ~~!変な夢だったなぁ」
そう口にしながら、伸びをして目を開くとーーー

「って、戻ってねぇ!!!!!」
勝平は思わず叫んだー。

目を覚ました場所は、再び”謎の部屋”
広々とした四角い部屋に、ベッドがポツンと置かれていて、扉は一つ。
離れた場所に、セーラー服のようなものが置かれているー。

意味が、分からないー。

「ーーーーなるほど。俺はまだ夢の中ってか。
 じゃあーー…もう一度寝るとしますか」

勝平は、半笑いでそう呟くー。
意味の分からないこの状況に、現実逃避に入った様子だったー。

がーーー

「ーーーって、これ、夢じゃねぇ!」
ようやくそう気づいた勝平は、ふとベッドの足元に、
勝平のスマホが落ちていることに気付いたー。

「ーーー…おいおいおい、スマホを雑に床に置くなよなー
 踏んだらどうするんだ」

そんな不満を口にしながら
勝平はスマホを拾うと、
すぐに外部に助けを求めようと、電話をかけ始めたー。

最初に電話を掛けたのは「110」ー
つまり、警察だー。

こういう事態においては、まず警察に助けを求めるのが
最も適切だと、勝平は思ったー。

しかしー…

「くそっ…繋がらない!」
そう思いながら、今度は同じ大学に通う彼女・真理恵(まりえ)に電話を掛けるー。

もちろん、真理恵に”今、自分がいる場所まで助けに来てくれ!”などと
言うつもりはないー。
そんなことをすれば彼女を危険に晒してしまうー。

だがー、助けを求めることはできる。
今、自分の置かれた状況を伝えておくことさえできればーーー
何かそこから”希望”が見えて来るかもしれないー。

「ーーーーダメかー」
しかし、彼女の真理恵にも連絡はつかず、
大学の親友・朔太郎(さくたろう)に連絡を入れるー。

流石に3人目ともなると”もう繋がらないだろうな”と思いながら
電話を手にしているとー

”ーーーもしもし?”

予想外にも、朔太郎と電話が繋がったー

「ーーお…お!?さ、朔太郎だよな!?俺だ安川だ!」
達平が慌ててそう言うと
朔太郎は”え?ど、どうしたんだよ急に?”と、戸惑いの声をあげたー

がー
その直後ー

プチッ、と音がして、朔太郎との電話が切れてしまったー

「お、おい!朔太郎?? おいっ!」
達平がそんな風に叫んでいるとー、
やがて、スマホに電話がかかって来たー。

一瞬、朔太郎がかけ直してくれたのではないかと
期待したもののー
そんなことはなく、
”非通知設定”の電話がかかってきていたー。

「ーーーーーー」
達平は表情を歪めるー

「ーー俺は、非通知の電話は出ない」

そう呟き、スマホをベッドに置くと、腕を組んで「ふん!」と、
顔を背けるー。

彼は、頑固だったー。
普段から”非通知の電話には出ない”と、決めていて、
この緊急事態においても、それを変えるつもりはなく、
電話を無視したー。

「ーーーー」
達平が無視をしていると、やがて電話は鳴りやむー。

だが、しばらくして非通知で電話が
再びかかって来たー。

状況から考えると、この非通知の電話が
何か、この状況と関係している人物から
掛かってきている可能性は、それなりに高いー。

だが、達平はそれでも無視をし続けたー。

がーーー
10回ぐらいそれが続き、
流石に”この電話に出ないと先に進めない”と感じた達平は
「ーーなんだよ!?もしもし!?」と、苛立った様子で電話に出たー。

”ーいやいや、もっと早く出ろよ”
加工音声のような男の声がするー。

「ーーあ?俺は非通知は出ないんだよー
 っていうか、アンタ、誰だよ?」

達平がムッとして、電話の向こうに向かってそう叫ぶと、
”ーーお前を、誘拐した男だ”
と、そう言葉を口にしたー。

「ーーーあ…????」
表情を歪める達平ー。

”ーーはははー、まぁ、そんな怖い顔すんなってー。
 俺は別に、お前の命を取るつもりはないー。”

謎の男が、そう言葉を口にすると、
達平はスマホを手にしたまま
「じゃあ、何が目的なんだ?」と、不満そうに言葉を続けるー。

”ーーなに、お前にはゲームに参加してもらおうと思ってなー
 俺が作った”カワノゲーム”に、さー”

男の言葉に、達平は表情を歪めるー。

「カワノゲーム?」
達平がそう言うと、男は”そう”と答えるー。

”まぁ、まずはその部屋でチュートリアルってやつをしてやるから、
 俺の話をよく聞けよー。

 ーおっと、電話は切るなよ?
 俺はゲームの世界の神様のような存在じゃないから
 お前の頭の中に直接語り掛けるようなことは
 できねぇからなー”

男の言葉に、言いなりになることに不快感を感じた
達平は、電話をプチッと切るー。

ニヤッとする達平ー。
すぐにまた非通知で電話がかかってきてそれに出ると、
相手の男は”切るなって言っただろうが!”と、不満そうに叫んだー

「はははー…で、俺に何をさせようっていうんだ?」
達平は不満そうにしながらも、余裕を見せながら
そう言葉を口にすると、
”お前には、その”施設”からの脱出を目指してもらう”
と、男が言葉を口にしたー。

「ーはぁ…」
達平が呆れていると
”だが、普通には脱出できないー
 お前には、その施設内にある様々な”皮”を着て、
 状況に応じた皮を使い、謎を解きながら脱出してもらう”と、
男は言葉を続けたー。

「ーーー皮?」

”そうだー。皮だ。ベッドから離れた場所にJKの皮があるだろう?”
その言葉に、
達平は表情を歪めるー。

「ーーど、どういう意味だ?
 そもそも、今更だけど、俺をどうやってこんな場所に連れて来た!?」
達平がそう声を荒げると、
男は”お前が”カワノゲーム”を順調に進めれば、教えてやるよ”と、
笑いながら答えたー。

”とにかく、チュートリアルを続けるぞ。
 まずは、JKの皮のところまで行け”

男の言葉に、達平はスマホを手にしながら
部屋の端に、洗濯物を干すかの如く
吊るされているセーラー服の方に向かって近づいていくー。

だがー
近付くにつれて、達平は”あること”に気が付くー。

それはー…

「ーーー…こ、これはー…」
驚く達平ー。

セーラー服のようなものは、ただの”服”ではなかったー

妙にリアルさを感じさせる”顔”や”髪”のようなものまで
一体化しているー
そんな、”着ぐるみ”のようなものだったー。

”それが、皮だ
 それを着てみろ”

男が淡々と言葉を口にするー

「着る…?これを?」
達平が不快そうに表情を歪めるー。

「ーふざけるなよ?俺は男だぞ!」
達平のそんな言葉に、男は”もちろん分かっているさ”と、
スマホ越しに笑いながら答えたー。

だがー

”着ろ”
と、冷たい言葉を投げかけて来るー。

”その部屋は美少女しか出ることのできない部屋だー。
 部屋の唯一の出口に、カメラがついているのが見えるだろうー。
 その扉は、美少女にだけ反応して扉が開くようになっているー。”

男の言葉に、
達平は不満そうに「俺がこの皮とやらと着て、女の格好をしないと、
ここから出られないってことか?」と、言葉を口にするー。

”その通りだー。察しがいいな”

男は少し感心したようにそう言うと、

”この先にも”部屋”が何個も続くー
 そして、各部屋にはそこにあるJKのような”皮”が複数設置されているー。
 お前はその時その時、その部屋ごとに最適な”皮”を着て、 
 各部屋を突破し、脱出を目指すんだー”

男のそんな言葉に、達平は
「ふざけるな!こんなことしてただで済むと思ってるのか!?
 これは誘拐だぞ!?
 このまま俺が大学にも家にもバイト先にも姿を現さなければ、
 大問題になるぞ!!!」
と、少し怯えながら叫んだー。

”ーーーーとにかく、JKの皮を着ろ。これはチュートリアルだ”

「ーふざけやがって!」
達平は怒りのあまり、壁を蹴り飛ばすと、
どうすることもできなくなって
「俺に女装させて何がしたいんだ!くそっ!」と、
舌打ちをするー。

”皮”が、どのようなものか、まだハッキリと理解できていない達平は
謎の男が、達平を女装させようとしているー…と、思っているのか
そんな言葉を叫ぶと、
そのまま”皮”を身に着けていくー。

だがー…着終えた達平は、
”想像もしていなかった”感覚に驚きを露わにするー

「えっ…な、なんだこれー…」

”セーラー服を単に着ただけ”ではなくー、
かと言って”着ぐるみ”を着ているような感触でもないー

まるで、自分自身が”この身体”になってしまったかのようなー
そんな、不思議な感覚ー

”部屋の隅に鏡がある。見てみるといい”

そう言われて、女子高生の皮を着た達平は、
慌てた様子で言われた通りにするとー、
そこには驚いた表情を浮かべた女子高生の姿があったー。

それはとても、着ぐるみなどと表現できるものではなくー、
可愛らしい美少女そのものがそこに立っているー…
と、言ってもいい、そんな光景だったー

「ど、どうなってるんだこれー…
 それに、声もー」

女子高生を着た達平は、驚きの様子で、
自分の口元のあたりを触ると、
”声”も、自分の声ではなく、可愛らしい声が出ていることに
驚きを隠せない様子で、そう言い放ったー。

”それが、皮だー。
 単なる着ぐるみなどではないー
 それを着ることで、着た人間は”そのもの”になることができる”

そんな言葉に、可愛い顔に、呆然とした表情を浮かべながら
「どうなってるんだこれ…」と、言葉を口にする達平ー。

そしてーーー
自分の胸に視線を下ろしてドキッとするー。

「~~~~~~!」
顔を赤らめる達平ー。
しかも、自分の顔ではなく、美少女の顔で、顔を赤らめるー。

”ククククー触りたければ触ってもいいんだぞ?
 その膨らみも、今はお前のものだー”

「ば、バカっ!そ、そんなことするもんか!」
達平はそう叫ぶもー
今、”この声”でそう言う言葉を発すると、
いつもとは違う雰囲気に聞こえてドキッとしてしまうー。

”まぁいいー。では、それでその部屋を突破するんだ”

男の言葉に、カメラの前に立つ達平ー。

だが、扉は開かないー。

「おいっ!開かないぞ!」
可愛い声で達平が叫ぶと、男は”ゲームには謎解きもつきものだ”と、言い放つー。

首を傾げながら、達平は扉に目をやると、
そこには”可愛いは正義”と書かれていたー

「ーーーーー」
「ーーーーーーー」

達平はカメラとにらみ合うと、
「ーーおい!開かないぞ!」と、もう一度叫んだー。

”ーーー仕方がない。今だけヒントをやろうー。
 可愛いは正義ー
 つまり、カメラに向かって可愛いを振りまければいいー”

その言葉に、達平は表情を歪めるー

そして、悔しそうに可愛いポーズをしてみるとー、
ついに、扉が開いたー

”クククー
 そうだー。
 これでチュートリアルは終了ー。
 この先の部屋は自分の力で突破するんだなー”

男が笑うー。

達平は「くそっ…!ふざけやがって!」と、改めて怒りを
露わにすると、脱出を目指して、怒りの形相で静かに歩き出したー。

②へ続く

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皆様こんにちは~~!★

夏も終わりに近づいてきて、
暑さが苦手な私も
”もう少しで…!”な日々を送っています~!

今回の”カワノゲーム”は、
初めて解体新書様側からのご希望で
掲載作品を決めた作品で、
私もびっくりしました~笑(ありがとうございます~!)

いつもは、解体新書様に載せる作品を
私のほうで選んで、管理人のtoshi9様にお伝えしているのですが
今回はその逆★、ということですネ~!

こちらの作品は、
”どの皮を着るか”を考えつつ、何かをクリアしていく
パズルゲームみたいな作品…というところから浮かんだ作品デス~!

こんなゲームがあったら、私も実際に挑戦したくなっちゃいます~笑

この先もぜひ楽しんでくださいネ~!