僕だけが持つ夢の力①~憑依三昧~
 作:無名


他人に憑依し、意のままに操る力を
生まれつき持つ男ー。

彼は、その能力を使うことで、
人生を謳歌していたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーはぁ~~~…♡ はぁ…♡ ぁぁ…♡」
女子大生が、自分の部屋で気持ちよさそうに、
乱れた姿を晒しているー

「ーーへへ…へへへへへ…」
散々散らかった部屋の中で、女子大生がふらふらと立ち上がると、
「ー昼間は、僕のことを見下すようなことを言ってたのにー」と、
一人、呟き始めるー。

彼女は、一人称が”僕”の女子大生ではないー。

今、彼女は、同じ大学に通う男子生徒に憑依されているー。

「ーー……どうだい?僕の意のままにされて、
 身体中を弄ばれた気分はー?」

支配された女子大生は、自分をあざ笑うかのように
鏡を見つめながら、ニヤニヤと笑みを浮かべるー。

”クククー
 僕には、憑依の力があるー。
 僕は、なんだって、できるんだー”

彼ー
中原 雅夫(なかはら まさお)には
”人に憑依する力”があったー。

初めて、この力を使えるようになったのは
いつからだっただろうかー。

きっかけは自分でもよく分からないー。

だがー
雅夫自身は、”僕だけが”この力を使える、という
この状況をとても喜んでいたし、
彼は、自分は神に選ばれたのだと、
そうとさえ思っていたー

「ーーほらほらほら!僕に謝れ!土下座して詫びろ!」
支配された女子大生は嬉しそうにそう叫ぶと、
鏡に向かって土下座し始めたー

彼女は昼間ー、
大学内で友人と歩いていた雅夫のことを、
遠くから笑ったー

雅夫は、”優男”と呼べるような感じの男子生徒で、
”イケメン”だとかそんな風に感じる人もいれば
”貧弱そう”と、感じる人もいるー
そんな感じの見た目だったー。

その雅夫を”あれ?誰だっけ?”と、
遠くから一緒にいた女子とコソコソ話ながらー、
極めつけには”不健康そうだよね 気持ち悪い”と、
話しているのを、雅夫は聞いてしまったー

ムッとした雅夫は、
その日の夜ー、
つまり、今ー
その女子大生に憑依して、散々好き放題していたのだー

「ーさて、とー」
女子大生はニヤニヤしながら立ち上がると、
「ーお前も僕のおもちゃの一つにしてやるよ」と、呟きながら
何かを念じ始めたー。

憑依した人間の身体で、強く念じることで、
本人の思考を捻じ曲げることもできるー。

”憑依で人を乗っ取っている間”は、
”その人間の脳”を使って物事を考えるー。

他人の脳で、何かを強く念じることで、
その性格や思考に、強い影響を与えることができるのだー。

「ーーよし」
女子大生は笑みを浮かべるー。

「ーこれで、僕に忠実で、僕とヤリたくてたまらない女が出来たー」
そう呟くと、雅夫はその女子大生から抜けて、
女子大生は、その場にぐったりと倒れ込んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

雅夫が友人と歩いていると、
友人が笑みを浮かべたー

「ーそういやお前さぁ、まだ”アレ”なのかー?」
友人の言葉に、雅夫は「ん?あぁー…うん。まぁ」と、頷くー

「ーーしっかし、大学に入る前までの記憶がないとかヤバくね?」
友人が言うと、雅夫は「まぁでも、日常生活には支障ないしー」と
静かに呟くー。

雅夫にはー
”なぜ”かは分からないが、
大学に入学するまでの記憶がなかったー

いやー
正確に言えば”大まかなこと”は覚えているー

自分の名前ー
どこの小学校、中学校、高校を卒業したかー。
両親の顔と、名前ー
そういう大まかな記憶はあるー。

だがー、
”具体的な記憶”が抜け落ちているー。

どのように過ごしてきたのかー

それが、分からないのだー。

とは言え、
家族の名前や顔、住所などは分かるし、
自分の名前や経歴などは分かるー。
一般的な教養の記憶もちゃんと残ってはいるため、
特に人生を送る上で、不便なことはなかったー。

「ー(まぁ、たぶんこの”力”を手に入れた代償だろうなー)」

雅夫はそんな風に思いながら
友人と共に食堂へ向かうー。

「ーそういや、また新しい彼女が出来たんだって?」
友人が苦笑いしながら言うと、
雅夫は「あぁ…できたよ」と、頷くー。

「ーお前、ホントモテモテだな~!
 次から次へと、彼女が出来て!」
あきれ顔の友人に対して、
「僕も不思議だよー」と、苦笑いする雅夫ー。

”まァー僕の手に掛かれば、誰だって彼女にできるからなー”
雅夫は内心で、そんな邪悪な笑みを浮かべるー。

半月前ー
”前の彼女”に飽きた雅夫は、前の彼女を捨てたー

どこかの良い家のお嬢様で、
全ての男を見下しているような感じの女子だったものの、
そんな彼女でさえ、雅夫の憑依能力の前には、
無力だったー。

雅夫に憑依されて、思考を書き換えられた彼女は、
雅夫のことが大好きでたまらない女に変貌したー。

雅夫は、その彼女のことを見下しながら
付き合うことを承諾し、
しばらく付き合っていたものの、
最終的には”飽きて”、半月前に捨てたー。

捨てる前には憑依で散々身体を弄んだ挙句、
最後には、”何事に対しても無気力”な女に変えて
そのまま放置しているー。

今度の新しい彼女は、
”アニメ好きのコスプレ好き”な、美優(みゆ)という子だー。

「毎日コスプレしてくれるとか、うらやましいなぁ」
友人が笑いながら言うと、
雅夫は苦笑いしながら
「僕なんかでいいのかな~って思っちゃうけど」と、呟くー。

美優はー
元々アニメに全く興味がなかった子だったが、
その美優も、憑依で思考を変えて
アニメ大好き、コスプレ大好きな女に変えてしまったー。

美優にコスプレを披露してもらって、
”雅夫として”美優のコスプレを楽しむのもいいし、
美優に憑依して”美優として”コスプレを楽しむのもいいー。

「ーーあ、雅夫~!」
遠くから偶然通りかかった美優が雅夫に手を振るー

雅夫は笑顔で手を振り返すと
「俺はお邪魔かな」と、笑いながら友人の男は
そのまま立ち上がって
「喰い終わったし、俺は先に行くわ」と、
雅夫に言い放つー。

雅夫は「気を使わせて悪いな」と呟くと、
そのままやってきた美優と話し始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅中ー。

雅夫は、ふと大学内付近の林の中へとやってきていたー。

「ーーーー」
雅夫は、林の奥の方にある
”ある場所”へとやってくるー。

「ーーー」
青白い謎の光を見つめながら、雅夫は表情を歪めるー。

まるで”世界が切り取られている”かのような
青白い光ー。

普通の林の中に、”謎の光”が存在していることに気付いたのは
大学に入学してすぐのころだったー。

林の奥深くに行くと、途中で林が急に終わっていて、
その先に、謎の光の空間が広がっているのだー。

「ーーー…これは、何なんだろうな?」
林の奥の空間がまるで”切り取られた”かのように
存在するその青白い光ー。

吸い込まれそうなほど、綺麗なその空間ー。

だが、林の途中から、まるでその先の世界がないかのように
”青白い光”に包まれたその場所は、あまりにも”異様”な光景だったー

普通の光景なのに、突然、”その先”が、青白い光に包まれた
謎の空間に切り替わるー。

林が途中で途切れているかのような、異様な光景ー。

先に進めば、どうなるかもわからないー。

林の中に、突然”宇宙”が広がっているような異様な光景なのだー。
足を踏み入れれば、青白い光の世界に転落して、
そのまま帰ってこれないような感覚さえ受けるー。

以前、雅夫は”この光はなんなんだ?”と疑問に思い、
同級生に憑依して、この先に進もうとしてみたことがあるー。

だがー
”進めなかったー”

林と、青白い光の境界線を踏み越えようとすると
まるで”見えない壁”があるかのように、
前に進むことができないー。

”もしも足を踏み入れて転落したら”などと考えて
他人の身体を乗っ取った雅夫にとっては
拍子抜けだったー。

そして、さらに気がかりなことがあるー。

以前、”最初に憑依で作った彼女”をこの場所に
連れて来たことがあるのだがー
その彼女は”別に何もないけど…?”と言っていたのだー。

「ーーーやっぱり、僕は選ばれた人間に違いないー」

林の先に広がる、不気味な青白い光の空間を見つめながら、
雅夫はそう呟いたー。

他の人間には、見えないー。
つまり、これは”僕だけに見えている”ことになるー。

確かに、ネットの地図で確認しても、
この先には、”本来”林が広がっているはずなのだー。

だが、実際には、”謎の光の空間”が広がっていて
林は途中で途切れており、この先には進めないー。

そして、”自分以外の人間”には、
それを認識することが出来ていないー。

「ーーははは…僕だけが持つ憑依ー
 僕だけが見ることのできる光景ー。

 やっぱり僕は、神に選ばれたんだー」

雅夫はそんな風に思いながら、
嬉しそうに笑みを浮かべたー。

ヤリたくなったら憑依して、
欲望に身を投じるー

邪魔者が現れたら憑依して、
そいつを破壊することだってできるー。

彼女が欲しくなったら
憑依で思考を捻じ曲げて、
好きな相手を憑依にすることだってできるー。

何だってできるのだー。

「ーーふふふ♡ かわいい~~~~♡」
今晩も、同じ大学に通う女子大生に憑依して、
メイド服を着て、コスプレ三昧を楽しんでいるー。

「ーへへへ…どいつもこいつも、俺の想いのままだぜ」
メイド服を着たまま、乗っ取った女にそう言葉を
口にさせると、満足そうに笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

メイド服姿のまま、寝落ちしてしまっていた
同級生の女の姿で目を覚ますと、雅夫は
「は~~…憑依したまま寝ちまった」と、
ボサボサになった髪を掻きむしりながら、
部屋のソファーに座るー。

「ーーそれにしてもー」
鏡に映るメイド服姿の女子大生を見つめながら
雅夫は思うー。

「ーほんと、”夢”みたいだよなー」

こんな風に、他人に憑依して、
何でも好き放題することができるー

おかげで、何に困ることもなく、
欲望のまま、自分の描いた生活を
楽しむことが出来ているー。

”憑依能力”
何故、自分がこんな力を手に入れたのかは、わからないー。

最初は”夢”だとも思ったー。

こういう、現実離れした力を手に入れて
好き放題しているー…
なんて言うのは、大抵の場合、夢であることが多いし、
雅夫も、最初は”夢”だと思ったー

だがー、夢の中で”これは夢だ!”と認識できるような
機会は少ないし、
自分を殴りつけて見たら、ちゃんと痛かったー。

それにー
流石に”こんなに長い夢”を見るはずもないー。

やはり、これは現実なのだー。

「ーーさて…と、そろそろ大学に行く準備を
 しないといけない時間だけどー
 せっかく憑依したまま寝落ちしちゃったんだし、
 もう1回、エッチなメイドさんになるか!」

憑依した女子大生の身体のまま、嬉しそうにそう呟くと、
朝の欲望に、雅夫を身を委ねたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから数日後ー

雅夫は、ふと、”あること”に気付いたー。

休日ー。
現在の彼女である美優と共に
デートを楽しみ、
海岸沿いの道路を歩いているその時だったー

「ーーー………なんだ、あれー?」
雅夫が、海の方に見える、”黒い点”を指さしたー。

「ーーえ?」
隣にいた美優が首を傾げるー。

雅夫が指を指したその先には
”月”よりも小さいが”謎の黒い黒点”が見えていたー。

「ーーー…え?どれ?」
美優が聞き返すー

雅夫が「ほら、あそこー」と、海の先に
”黒点”があることを美優に伝えるもー
美優は首を傾げたー

「何もないけどー」
とー。

「そ、そうかー?」
雅夫はそう言いながらも
”林の中の光の空間と同じで、僕以外には見えないのかー”と、
心の中で静かに呟いたー

「ーーーーー」

”不気味だー”
雅夫は、そう思いながら海の向こうの空に
不自然に浮かぶ”黒点”を見つめながら、そう呟いたー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

解体新書をご覧の皆様こんにちは~!
(おはばんはの皆様はおはばんは~!)

夏真っ最中で、毎日とっても暑かったり、
急に変な天気になったり、大変ですネ~…!
暑さが苦手な私は連日、とろとろな日々を送っています~笑

皆様も熱中症に、天気に気を付けて下さいネ~!

今回のお話は今のところ”憑依やりたい放題”状態デス!

でも、不穏な気配も少しちょっとあったりして、
それは次回の②で明らかになります~!

”あえて”いつもよりも酷い憑依を意識して
描きましたが、それも全て②のためなのデス…!

どういうことなのかは、ぜひ次の話を見届けて下さいネ~!