僕だけが持つ夢の力②~真実~(完)
 作:無名


憑依能力を手に、
やりたい放題の日々を送る男子大学生。

”僕だけが持つ力”に酔いしれ、
自分を神だとさえ思っていた彼が”知らない”真実とは…?

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「ーーお前の彼女は、今日から僕のものだー」

雅夫はニヤニヤしながら、
大学で気に入らない男子生徒に対して、
そう言い放ったー

「ーな…な… 里佳子(りかこ)!?」
気取った感じの男子大学生が明らかに動揺しているー

「ーごめんね~!わたし、今日からご主人様のものになるの♡」
里佳子と呼ばれた子は、
バニーガールの格好をして、雅夫にお尻を触られながら
ニヤニヤと笑みを浮かべているー。

「ーお…お前…!ふ、ふざけるな!里佳子に何をした!?」
男子大学生がそう叫ぶと、
雅夫は笑みを浮かべるー。

「ー別にー」
雅夫はそう言うと、
里佳子にキスをしながら、男子大学生のほうを
ちらりと見つめるー。

「ーお前さぁ、僕より優秀だと思われていて、
 鼻につくんだよなー。
 この世界の支配者は、僕なのにー」

雅夫がそう言うと、相手の男子大学生は
「な、な、なんだとー?何を言ってるんだ!」と、
言い返すー。

「ー僕より、成績優秀で教授たちから褒められるなんてー
 身の程をわきまえろって言ってんだよー」

雅夫の態度に、男子大学生は困惑したー。

「ー僕が、一番なんだー。」

そう言いながら、雅夫はニヤリと笑うー。

「この世界で一番優れているのは、この僕だし、
 僕より優秀なやつなんて、許されないー。
 僕の側にいる人間は、僕よりも劣ってなくてはいけないー」

その言葉に、相手は「何言ってんだお前は!」と、叫ぶー。

「ーー僕は、何でもできるー
 人の彼女をこんな風に、盗むことだってー」

雅夫はそう言うと、突然ズボンを下ろして、
バニーガール姿の里佳子に「咥えろ」と命令するー。

里佳子は嬉しそうに、”彼氏の目の前”で跪いてそれを咥え始めるー

「お、おい!ふざけんな!
 なんだこの胸糞な展開は!?
 ふざけんなよおい!?」

彼女を目の前で踏みにじられている男子大学生は
顔を真っ赤にしながら叫ぶー。

「はははは…!いい気味だ!
 どうだ?僕のコレをしゃぶる”元カノ”の姿はー?」

雅夫はそこまで言うと、
「ーーたまんないなぁ…何もかもが”僕の思い通り”になる、この世界はぁ…!」
と、ニヤニヤと笑うー。

「ふざけんな!おいコラ!テメェ!このクソ野郎!」
男子大学生はそう言うと、雅夫をグーで殴りつけようとしたー。

「ーーそんな用語、僕に使うなよ」
雅夫はそれだけ言うと、フェラをさせていた里佳子に、その場でいきなり憑依したー

「ーーお~っとーーー
 フェラの最中に憑依したのは初めてだから、
 口の中が気持ちわりぃな」

里佳子はペロリと自分の唇を舐めると、
そのまま”彼氏”のほうを見つめたー。

「ーーー……な…な…何が… 起きてるー…?」
男子大学生は呆然とするー。

雅夫が目の前で突然消えて、
雅夫にフェラをしている最中だった彼女の里佳子が、突然笑みを浮かべて
こちらを見ているのだー。

「ーな…なんなんだお前はー」
男子大学生が悲鳴を上げるー

「ーークククー
 僕は”他人に憑依”できるんだー」

里佳子が笑みを浮かべながら言うー。

「ひ、ひ、ひ、憑依… ひょ…ひょ、憑依…?」

あまりの混乱に男子大学生はそう呟くと

「ーな…なんなんだお前はー」
と、再び声を出したー。

「はははははははっ!
 だから、僕の思い通りにならないことはすんなって。
 僕に忠誠を誓うか、死ぬか。どっちがいい?」

里佳子が笑み尾を浮かべるー

「ひ、ひ、ひ、憑依… ひょ…ひょ、憑依…?」

「ーな…なんなんだお前はー」

男子大学生は青ざめた表情で、同じ言葉をそう呟くー。

精神が壊れたかー。
里佳子はそう思いながら
「ーまぁ、いいやー。とりあえず死んどけ」と、
そのまま里佳子の身体、彼氏の首を絞め始めたー。

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”交際中の大学生男女 無理心中か”

「ーーーーーー」
スマホでニュースの見出しを見つめながら、
雅夫は笑みを浮かべるー。

「ーークククククー
 何でも、僕の思い通りだー」

「ーどうしたの?」
背後から美優の声がするー。

雅夫は振り返ると「あぁ、お前か」
と、笑みを浮かべるー。

「ーーえ…お、お前ー…?」
困惑した表情を浮かべる美優を見て、
雅夫は「ーあぁ、ごめんごめんー」と、笑うと、
「いや、あのさー。昨日コンビニ行ったら、すっげぇ
 可愛い子がいてさ、お前もういらねぇなって思ってー」
と、満面の笑みで言うー。

「ま…雅夫ー…?」
美優は困惑するー。

元々、美優も”憑依”で思考を塗り替えて作った彼女だったが、
雅夫はそんな美優に身勝手にも、もう”飽きて”しまっていたー。

「ーーあぁ、いや、こっちの話だよー。
 僕のことは気にしないで」

雅夫はそれだけ言うと、混乱している美優を見て
「大丈夫だよ。失恋のショックを味合わずに済むように
 ちゃんと”処理”してあげるからさ」
と、美優の肩をポンポンと叩いて、そのまま立ち去って行ったー。

先日の”黒点”は何だったのだろうかー。
それは気になるが、
やはり、あれも”自分が神に選ばれた存在”である
所以なのだろうー。

雅夫は、そんな風に思いながら
その日の夜、美優に憑依して、美優の思考を破壊したー。

雅夫に思考を滅茶苦茶にされた美優は、
翌日ー、
獣のように四つん這いで街を走り回り、
警察に確保されてしまったー。

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「ーーお前は今日から僕の彼女だー」

コンビニに足を運んだ雅夫が笑みを浮かべるー

「ーえ…?」
コンビニの女子高生バイトが戸惑うと、
雅夫は「ー僕の女になれ」と、笑みを浮かべたー。

店長がすかさず乱入してきたが、
雅夫はその場で店長に憑依して、
営業中のコンビニを閉めて、
さらには店長と、スタッフをその場で”自殺”させたー。

雅夫は”平然と”生活しているものの、
既に何百人以上、殺しているー。

いやー
正式に言えば”自分の手を汚さずに”殺しているー。

「ひっ…」
怯える女子高生バイトを見て、雅夫は笑みを浮かべると、
「ー大丈夫。僕のことが大好きな女に、染め上げてあげるからー」
と、笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

雅夫は、自分の姿を鏡で見つめながら
笑みを浮かべていたー

周囲からも”イケメン”と呼ばれるぐらいに整った容姿の雅夫ー。

「ーーー僕だけが持つこの夢の力ー」
手を見つめると、雅夫は自分の憑依能力に、感謝しつつ、
「僕は、神に選ばれたんだー」
と、呟くー。

だが、その時ー
ふとー

”自分の顔”に、一瞬違和感を覚えたー。

「ーーー…」
すぐにその違和感を払拭した雅夫は
”そういや、僕の記憶が欠けてるのは、なんでなんだろうな”と、
小声で呟いたー。

まぁ、そんなことを気にしても仕方がない。
今日は”昨日憑依で作った新しい彼女”との
初エッチの日だー

存分にー

「ーーー…!」
大学に向かって歩いていた雅夫は、ふと、表情を歪めたー。

「ーーーえ」
周囲の人が、全て”止まって”いたー。

「ーーーー…は?」
雅夫は、首を傾げながら、
すぐ近くを歩いていたOLの前にいき、
「あの~~~~」と、目の前で手を振って見せるー。

だが、OLは何も反応しないー。

「なんだよ」
そう思いながら、胸を触ってみるが、
それでもOLは反応せず、
雅夫は「ど、どういうことだ?」と、戸惑いながら
OLを蹴り飛ばしたー

だがー
蹴ってもOLは微動だにしなかったー

「ーま、まさかー」
雅夫が空を見上げるー

「ー僕ー、ついに”時間を止める力もー」

そう叫んだその時だったー

突然ー
上空に”青白い光”が、まるで空間を割くかのように出現したのだー

「ーーえっ!?」

林の中で見た”途中で林が切れて”、その先に存在している
青白い光と同じー。

そしてーーー

「ーーえっ!?!?」
周囲にいた”止まっている人々”が一気に消えていくー

「な、なんだー…
 なんなんだ!?!?」
雅夫が周囲を見渡すと、
周囲の空が、建物が、
上から順番に”黒い粒粒”になって、
上空の青い光の空間に、吸い込まれていくー

「ーーな…な…な、、なんだ…!?」
雅夫は、驚きながらも、周囲を見渡すー

高層ビルが上から、黒い粒子のようになって、消滅していくー

「ーう…宇宙人!?」
雅夫が叫びながら、逃亡を始めるー

「ーーー…あっ!」
雅夫はふと、昨日彼女にしたばかりの女子高生バイトが
制服姿で高校に向かっているのを見つけて、
声を掛けるー。

彼女たちは、普通に動いているように見えるー。

雅夫が叫ぶと、
彼女は「え…!あ、ご主人様!」と、嬉しそうに叫んだー。

雅夫の元々いた場所のほとんどが、青白い光の空間に吸い込まれて、
全て何もない、青白い光の空間になってしまっているー。

雅夫は、そんな場所から逃げながら、
彼女に向かって叫ぶと、
彼女は笑顔でほほ笑んだー

「青い光から逃げろ?なんのことですか?
 ふふ…もう~ご主人様ってば~!」

そんなことを言いながら、彼女は
”青い光のほう”に歩いていくー

「お、おい!」
雅夫が叫ぶー

だが、彼女は青い光に飲み込まれるようにして、
一瞬に砕かれて粒粒となって、消滅したー。

「ーーひぃっ!?」
雅夫は、青白い光に全てが吸い込まれていく場所から
必死に逃げ出すー。

「なんだ、なんなんだあれはー」
上空に出現した青い光は、徐々に全方向に広がり、
全てを吸い込んでいくー。

雅夫は、少しでも光から逃れようと必死に走るー。

だが、通行人たちは
”この状況”にも気づいていないのか、
さっきの彼女のように”平然と”吸い込まれたり、
あるいは、動きを止めて、石像のようになっているか、
そのどちらかだー。

「ーー何だよ…何だよこれー」

謎の電子音のようなものが上空から響き始めてー、
雅夫は思わず耳を塞ぐと、
”恐ろしい光景”を目の当たりにしたー。

町の景色が一望できる高台まで、いつの間にか
逃げて来た雅夫ー。

雅夫が街のほうを見ると、街は”粒粒”になって、
全て消滅していたー

何もない、無の空間が、そこにあるー。

無の空間が、広がってくるー

「ま、待ってくれ!なんだこれ…!
 おい!!助けてくれ!
 僕は、、僕は神だ!
 おい!!おい!!ふざけんな!おい!」

雅夫のいる場所まで”青白い光”が広がってくるー。

雅夫は、悲鳴を上げるー。
自分の足が、飲み込まれて、粒になって消えていくー

痛みは、ないー

雅夫は、あまりの恐怖に、思わず笑いだしてしまうー。

足が消えー、
胴体が飲み込まれー
手が消えてー

粒になっていくー

いやーーー
よく見たらー
”粒”ではなかったー

遠くから見たら”粒”になって、世界が飲み込まれているように
見えていたがー

”粒”ではなくー

「ーーー…なんだよ…それー」
雅夫は、目に涙を浮かべながら、
自分の身体が、粒粒ー、
いや、小さな”0”と”1”の文字に砕かれていくのを見たー。

それが、何を意味するのか、理解できないまま、
雅夫は”0”と”1”に砕かれて、全て、消滅したー。

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「ありがとうございましたー」
アパートの管理人が、パソコン回収業者に頭を下げるー。

このアパートの住人・雅夫は
1年半前に意識不明の状態で発見され、
すぐに病院に運ばれたものの、現在も
昏睡状態が続いているー。

原因は不明ー。

アパートの管理人は、厚意で、
雅夫の部屋を1年半もそのままにしていたものの、
雅夫の母親から”もう十分です”と連絡があったため、
一部の私物を除き、今日、処分が行われていたー。

雅夫のパソコンも、今日、回収業者に初期化を依頼し、
そのまま持っていくことになっていたー。

まさか、その”パソコンの中”に雅夫の意識があったなどとは、
夢にも思わずにー。

雅夫はー
一人暮らしのフリーター。

ゲームの開発が好きで、
”自分自身がゲームの世界の中に入ってプレイできるゲーム”を
学生時代からずっと、個人で制作し続けて来たー

そして、1年半前ー
それを完成させたのだー。

それが、”憑依大学生”というゲーム。

主人公の”憑依能力を持つイケメン大学生”になって、
ゲーム内で、憑依三昧の生活を自由に楽しめる、という
そんなゲームだ。

ゲームの中に入り込んで実際にプレイすることができ、
主人公のイケメン男子大学生は、自分で名前を設定できるー

そのため、彼は「雅夫」と自分の名前をつけて、
ゲームをプレイし、憑依三昧の生活を送っていたー。

だがー
彼には誤算があったー。

”初めてのテストプレイ”で、
実際にゲームの世界の中に飛び込んで
プレイを開始した彼は
ゲームの世界に入り込んだ際に、
”バグ”で、自分の記憶を失ってしまったー。

”ゲームを開始してから、バグがあれば
 ゲームから出て、直せばいい”などと思っていた彼はー、
まさか”プレイヤーの記憶が飛ぶ”なんてバグがあるとは
思ってなかったー。

そしてー、
ここがゲームの世界であることも、
自分の本来の姿も何もかも忘れてー
ゲーム内の世界を現実だと思い込み、
そのまま生活を続けてしまった雅夫ー。

”林の中の青白い光”や、
バグにより表示されていた”黒点”ー。
それに、登場人物が同じセリフを何度も繰り返したりー

色々、兆候はあったものの、
”ここがゲームの世界”とは夢にも思わないほど、
リアルな世界を創ってしまっていた雅夫は、
最後まで、自分がゲームの世界にいることを思い出せなかったー

やがてー
1年半、ゲームの中で過ごし、
現実世界にある自分の本来の身体は植物状態ー。

そしてー
今日、”パソコンのデータが初期化”されたことで、
雅夫の意識がいた”ゲームの世界”も、消滅してしまったのだー。

そんな、事実を誰も知らないー。

雅夫の身体は、今日も
”もう二度と雅夫の意識は戻ってこない”のに、
心臓だけが、動き続けていたー

おわり

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とんでもない結末に…☆!

②の結末を知った後に、
①を見返してみると、
これはそういうことだったんだ~☆な発見が、
あるかもしれません~☆笑

憑依できるにしても、
こんな風になってしまう憑依は
したくないですネ~☆

今回もお読み下さりありがとうございました~!

次に皆様にお会いする時期には、
暑さも少しずつ和らいできていることを祈りつつ、
夏を頑張って乗り切ります~☆!

前回と同じことを言ってしまいますが、
暑さには気を付けて下さいネ~!
私も気を付けます~!