ゾンビチェンジ①~わたしがゾンビに!?~
 作:無名


2035年ー

世界には”ゾンビ”が溢れていたー。

そんなゾンビたちからの逃避行を続ける若きカップルー。

しかし、彼女はゾンビと入れ替わってしまう!?

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「--こっちだ!」

若い男が、銃を放つー。
撃った相手は、人間ーーー

ではないー。

人間の形をした歩く屍ー。
元々は生きていた人間”だった”
別の存在ー。

”ゾンビ”

歩く屍となったそれが、最初に確認されたのはー
2032年のことだったー。

世界的権威であった
科学者、Drウィリアムソンが、開発した新薬ー

それにより、ゾンビが生まれてしまったのだー。

各分野で多大な功績を上げていた
Drウィリアムソンは、”人間の寿命”をも克服しようとしていたー

”体内の細胞を若い状態に作り替える”
そんな技術を作り上げたのだー

Drウィリアムソンは、熱心に説明を繰り返した。

その説明はー
”理”に適っていたー

そして、2032年ー
Drウィリアムソンによって、とある研究施設で、
人間に対する”新薬”の投与が行われたー

”GOD”

人間が”死”という概念を超越し、
”神”の領域に突入するーーー

そんな思いを込めて名付けられたー

GODを投与された人間たちの
健康状態はみるみると、良くなっていき、
GODは、あらゆる病気をも治したー

まさに”奇跡の薬ー”

だがーー

Drウィリアムソンの狙いは別にあったー。

GODを投与した人間はみるみるうちに”健康”になっていきー
やがて”健康”を通り越えてー
”不死の肉体”へと変化していくー。

食欲が爆発的に増しー
健康を通り越えた人々はーー
”ゾンビ”となったー。

最初からー
Drウィリアムソンは、
それを狙っていたのだー

20年かけてー
様々な分野で天才的頭脳を駆使して
人々の信頼を得、世界的権威となりー

自分が”信頼”される存在になったタイミングで、
”ウイルス”を開発するー。

そして完成したのが
人々をゾンビへと変貌させるウイルス”GOD”だー。

GODを”人々の寿命を延ばす薬”と偽り、投与ー、
”ゾンビ”を生み出したー

各地に解き放たれていたGODの被験者たちは、
たちまちゾンビになり、周囲の人間に噛みつきー
周囲の人間をも、ゾンビにしたー

あれから数年の現在ー

2035年ではー
世界中にゾンビが溢れていたー。

「ーーー順平!」

若い女が叫ぶー。
ゾンビに銃を放った男・順平の彼女、優莉(ゆうり)だー。

順平と優莉は、年齢的には”大学生”なのだが、
大学には通えていないー。

ゾンビから、日々生きるだけで精一杯なのだー。

「----くそっ!まさか囲まれるなんて!」
順平と優莉は、近くのとある施設を生活拠点にして暮らしているー

順平の両親は、ゾンビとの戦いに巻き込まれてから消息不明ー
優莉の両親は、優莉を逃がすために犠牲になったー

それからは、二人で生きて来たー。

今日は、食料の確保に向かった帰りにゾンビの襲撃を受けて、
順平が持っていた銃でゾンビに応戦している最中だー。

「--はぁはぁ…」
ゾンビを始末すると、順平は物影に隠れた状態で、
優莉に「大丈夫か?」と声を掛けたー。

「うんー」
優莉は頷くー。

生活拠点にしている施設まではあと5分ほどー。
そに入れば、頑丈な扉があるために、ひとまずゾンビからは
逃れることが出来るー。

「---でもまさか、俺が本当に銃をこうして握ってー
 撃つことになるなんてなぁ…
 
 数年前まで、FPSゲームで銃をぶっ放しているだけだったのにー」

自虐的な笑みを浮かべる順平ー。

優莉は「いつまで続くのかなー…」と、
ゾンビまみれになった世界に不安の表情を浮かべるー。

「--……」
順平は答えないー。

この事態を解決できるとすれば、
人間がゾンビ化するウイルス”GOD”を作り上げた
Drウィリアムソンしかいないー

Drウィリアムソンが解毒剤を作れば、
ゾンビになった人間を元に戻すことが出来るかもしれないー

だが、残念ながらそれは実現しないー。

何故ならー
Drウィリアムソンは既に死んでいるからだー。

”地球を守るために、何をすべきか、
 私はその答えにたどり着きましたー”

GODにより、人間をゾンビ化させ、ゾンビ化が
伝染していくのを確認した
Drウィリアムソンは潜伏拠点から、全世界に向けて動画を配信した

”それは、人類を滅亡させることですー”

順平も、その時の動画を見ていたー。
2年前、だっただろうかー。
当時のことは、今でも忘れないー

”私は”GOD”によって人類を一人残らず抹殺しますー
 ゾンビになった人間は繁殖能力を持ちません。
 いずれ、全員が死に絶え、人間は滅亡しますー

 地球にとって、人間は毒です。
 故に、滅ぼさなくてはならないー

 そして、それはー”

順平は、あの動画を見た日のことを忘れないー
決して、忘れられない”トラウマー”

”私とて、例外ではありませんー
 私も、地球にとって毒となる存在のひとり。

 よってー
 ここで、私は私を処分しますー”

Drウィリアムソンはにこっと笑うと、
全世界への生配信の最中にー
持っていた銃を自らの頭に突き付けて
自分の脳みそをぶちまける要素を
全世界に流したのだー

Drウィリアムソンは、もういないー。

「---きっと、いつか、また平和に暮らせる世の中が来るさ」
順平はそう言いながら、優莉の方を見るー

ゾンビ騒動に”終わり”はあるのだろうかー。
そんな風に思いながらー

「---!」
その時だったー
肥満体のゾンビが、優莉に襲い掛かるー

「きゃああああ!」
掴みかかられた優莉が悲鳴を上げるー

”噛まれたら”
感染ー。

「-優莉!」
順平が慌てて叫ぶー

銃をすぐに撃とうとするが、
優莉とゾンビが取っ組み合いになっていて、
優莉にもあたる危険性があるー。

順平は決して”プロ”なんかじゃないー
生きるために、銃を握っただけの、ごく普通の若者だー。

「く…くそっ!」
順平は”優莉!”と叫びながらー
ゾンビに近づきー
ゾンビを物凄い勢いで蹴り飛ばしたー

しかしー

「あっ!?」
吹き飛ばされたゾンビに引っ張られた優莉はー
そのままゾンビと一緒に階段から転落してしまったー

「--ゆ、優莉!」
”優莉を助けたい”
その一心で、咄嗟にゾンビに対して強烈な蹴りを
お見舞いしたのだが、
その結果ーゾンビと共に、優莉が階段から
転落してしまったのだー。

優莉の元に慌てて駆け寄った順平は
優莉の名前も何度も何度も呼ぶー

「----うぁ…」
優莉が目を覚ますー。

「ゆ、、優莉!よかった!怪我はないか?」
順平が慌ててそう言うとー
優莉は突然「うあぁ~~~」と言いながら
順平の腕にかみついたー

「--!?!?!?!?」
順平は咄嗟に優莉を振りほどくー

肥満体のゾンビに噛まれて、優莉がゾンビ化してしまったのではないかと
思ったからだー

そして、もしそうならば、
優莉に噛まれた自分もー

そう思い、すぐに自分の腕と優莉を確認するー。

しかしー
優莉は”ゾンビ”にはなっていないし、
自分の腕の傷も、ゾンビに噛まれた時のようなものではなく
歯形がついている程度だったー

「ゆ、優莉!?」
戸惑う順平ー

優莉が再び無表情で、涎を垂らしながら
順平の方に向かってくるー

だがー
優莉の外見には”変化”がないー
ゾンビ化すると、すぐに皮膚に変化が合われるのだがー
まるでゾンビのような仕草で近づいてくる優莉は
紛れもなく”人間”だったー

「--ちょ、優莉!何してるんだ!」
順平がそう叫んだ直後ー

優莉の背後で、肥満体のゾンビが起き上がったー

「こいつ、まだー!」
持っていた銃を放とうとするー

しかしー

「--な、、、い、、、で」
肥満体のゾンビが、何やら奇声を発したー

ゾンビの通常のうめき声とは違うー

順平は戸惑いながらも銃を撃とうとするー

それを見た肥満体のゾンビは
「うだないでえええええええええええええええ」
と、大声で叫んだー

「---!?!?!?」

”撃たないで”
そう聞こえたー。

順平は慌てて銃を下ろすー。

優莉が、再び腕に噛みついてくるー

「おい!やめろって!」
順平が優莉にそう言い放ちながら、
肥満体のゾンビの方を見つめるー

何故か噛みついてくる優莉を必死に振り払おうとしているとー
肥満体のゾンビが突然ふらふらと近づいてきてー
優莉を突き飛ばしたー

「おい!やめろ!」
”優莉がこいつに襲われる”
そう思った順平は再び肥満体のゾンビに向かって銃を構えたー。

「--う、、た、、ないで、」
肥満体のゾンビが順平の方を見つめるー

順平に襲い掛かって来る様子もなければー
たった今、自分で突き飛ばした優莉の方に襲い掛かる様子もないー

「---お、、お前…人間の言葉が分かるのか?」
順平が警戒しながら肥満体のゾンビの方に銃を向けると、
肥満体のゾンビは口を開いたー

「--わ、、、わ、、、た、、、し」
とー。

順平は表情を歪めたー。

肥満体のゾンビの姿を今一度よく確認するー。

”ゾンビ化した知り合い”である可能性もあるからだ。

しかしー
その姿をどんなに見ても、思い当たる人物はいないー。

肥満体のゾンビに突き飛ばされた優莉は
「うあ~~~」と叫びながらうずくまったままー。

「---知り合い…?悪いけど思い出せないー
 喋れるなら教えてくれー。
 名前は?」

順平が周囲を警戒しながら、肥満体のゾンビに銃を向けたまま言うー。

すると、肥満体のゾンビは信じられない言葉を口にしたー。

「--ゆ、、うり、、、わたし、、、ゆうりぃ!」
とー。

「---なに!?」
順平は、起き上がった優莉の方を見つめながら、
肥満体のゾンビを見るー

「--わ、、わ、、たしが、、、ゾンビの、、、身体に…」
苦しそうに、口を動かす肥満体のゾンビー。

起き上がった優莉は、再び順平に噛みついてくるー。
胸が順平の腕に押し付けられるのもお構いなしに、
噛みついてくるー。

「---(なんだって…?)」
順平は、自分の腕に噛みついてくる優莉と、
目の前にいる”わたしは優莉”だと主張する肥満体のゾンビを
交互に見つめたー

「--まさか…中身が入れ替わっている…とでも言いたいのか?」
順平は、そう言い放ったー。

先程から、まともな言葉を話さず、順平に噛みついてくるだけの優莉ー。
そして、様子がおかしく、自分が優莉だと主張する肥満体のゾンビー。

順平は、”ゾンビと優莉が入れ替わった可能性”にたどり着いたー。

既に、Drウィリアムソンの手により、ゾンビが溢れる世界ー
何が起きても、順平はもう、驚かなかったー。

「----本当に、優莉なのか?」
噛みついてくる優莉を押さえながら、順平は肥満体のゾンビに対して言い放つー

肥満体のゾンビは頷くー。

「---わかった。落ち着け優莉ー」
順平がそう言うと、銃を下ろすー。
ゾンビになった優莉と、優莉になったゾンビー

この状況をどうするべきかー

他のゾンビの姿が遠目に見え始めるー。
ゾンビ同士共食いをしているのは見たことがないからー
ゾンビの身体になった優莉はひとまず安心かもしれないー

だがー
逆に、中身がゾンビだとしても
優莉になったゾンビは食われてしまう可能性があるー

仮に二人が入れ替わっているのだとすればー
どちらも失うわけにはいかないー。

「--くそっ!」
優莉(ゾンビ)の手を掴み、無理やり引っ張る順平ー

「--優莉!ついてきてくれ!」
ゾンビ(優莉)に対して叫ぶ順平ー

とにかく、隠れ家にしている施設まで行かないといけないー
順平は優莉(ゾンビ)の手を引きながらー
あまり走れないゾンビ(優莉)を心配しつつ、
生活拠点にしている施設を目指したー

②へ続く

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解体新書様をご覧の皆様
こんばんは~!(お昼の皆様はこんにちは~!)

今回はゾンビと彼女が入れ替わってしまうという
お話デス~!

ゾンビだらけになってしまった世界を舞台に、
一度入れ替わりモノを書いてみたいと思っていたのですが、
それに初挑戦したのがこの作品でした~!

ネタを頭の中で浮かべてから、実際に書くまでに
結構期間があった作品で、
色々迷う部分もありましたが
こんな感じに無事、形にできたお話ですネ~!

私は常に浮かべているだけで実際には書いていない
ネタストックが100近くあるので(超えてる時もあるかも…笑)
時々、その中から発掘するのも、執筆する上での楽しみの一つデス…!

今回は全2話なので、次回の掲載で最終回デス~!
結末もぜひ、見届けて下さいネ~!