ゾンビチェンジ②~決意~(完) 作:無名 ゾンビと入れ替わってしまった彼女ー そんな彼女をなんとか助けようとする彼氏ー ふたりの、運命は…? --------------------— 「あっ…あぁぁぁ…うぁ…」 ゾンビ(優莉)がうめき声をあげながらその場に 涎を垂らして、倒れ込んでしまうー。 「優莉!」 優莉(ゾンビ)の手を引っ張りながら 目前に迫った生活拠点としている施設を目指していた 彼氏の順平は叫んだー 「ご、、ごめん… こ、、、こ、、の身体…うまく、、動かない…」 ゾンビ(優莉)が必死に口を開くー 「-大丈夫だ!もうすぐ俺たちの家だ!」 今ー 彼らに家はないー 生活拠点にしている施設こそが”家”だー 順平は優莉以外にも、何人かの若者が共同で生活しているー。 「---うぁ…ぁ…うん、、、あ、、りがと…… ゾンビ、、って、、つら、、いね」 ゾンビ(優莉)はそう言うと、肥満体の身体を動かしながら 立ち上がるー ゾンビ特有の腐臭がして、順平は思わず顔を歪めるー 「----」 ゾンビ(優莉)は、そんな順平の顔を見逃さなかったー。 好きだからこそー 彼氏の変化を見逃さなかったー。 「--さぁ、もう少しだ!」 順平は、優しいー ゾンビと入れ替わってしまった優莉に対してもー けれどー。 「--あぅあぁああああああっ」 優莉(ゾンビ)が、順平にしがみついて、順平に噛みつくー 「いてててて!くっそぉぉ」 順平が優莉(ゾンビ)をなんとか引きはがすー 優莉になったゾンビに噛まれてもー 身体は優莉のもので、”人間”であるために 順平が”感染”することはないー ゾンビと違って歯もあくまで人間のものであるためにー どんなに噛まれても致命傷にはならないー せいぜい、歯型がつくぐらいだー。 だがー 身体は優莉のものである以上、 撃ってしまうわけにはいかないし、 この場に放置すれば、簡単に他のゾンビに ”人間”だと認識されて喰われてしまうだろうー。 だから、優莉になったゾンビも、生活拠点に連れ帰らなくてはならないー 「ついた!」 順平が叫ぶー 優莉(ゾンビ)の腕を引っ張りながら、 髪をボロボロに乱しながら「うあーーーー」と叫ぶ優莉(ゾンビ)の方を見るー。 「--ちょっと待ってて」 順平は、施設の入口で、ゾンビ(優莉)に対して声を掛けるー。 ここは、元々は図書館だった場所なのだが、 既に社会はゾンビにより崩壊しており、 現在は、順平らが生活拠点にしているー。 各地で、そういう光景は、どこにでも広がっており、 時々”生活拠点を奪おうとする人間”もやってくるのが現状ー。 順平は、自分たちの生活拠点である図書館の入口で「俺だ!」と叫ぶー。 「--おう!順平!戻ったか!」 順平の同級生で、施設のリーダー的存在・毅(たけし)が、窓から顔を出して返事をするー。 「--隠れてて」 順平が、ゾンビ(優莉)にそう呟くー ゾンビの姿を見れば仲間が有無を言わさず発砲する可能性があるー。 だからー 先に施設に入って、優莉(ゾンビ)の現状を見せつつ、 みんなに事情を理解してもらう必要があるー。 「---戻ったか」 毅が言うー 他に、4人ー この図書館をアジトにして生活しているー。 「--うあああああ」 優莉(ゾンビ)がうめき声をあげるー。 「--!!」 毅が優莉(ゾンビ)に向かって銃を構えるー。 身体は優莉だが ”ゾンビ化した”と勘違いされたのだー 「待て!」 順平が叫ぶと、 起きた出来事を全て手短に説明すると、 毅は銃を下ろしたー 「つまり、優莉ちゃんとゾンビが入れ替わってー 今、そこにいるのは、中身がゾンビな優莉ちゃんってことか」 毅の言葉に、 「あぁ」と、順平は答えたー 「身体は優莉だから、噛まれても感染の心配はない」 そう言うと、毅は「わかった」と頷いたー。 理解を得られたタイミングで ゾンビ(優莉)を呼ぶと、ゾンビ(優莉)が、外から入って来るー 毅や、他の4人が警戒を露わにしたもののー ゾンビ(優莉)が「わ、、た、、し…」と、事情を説明すると 毅たちは銃を下ろしたー 「--わかったー。 とりあえず優莉ちゃんの身体はどうする?」 毅の言葉に、順平は、「外に行かれちゃうと、他のゾンビに食われるかもしれない。」 と、毅に対して言うと、ゾンビ(優莉)の方を見て、申し訳なさそうに、 「-優莉の身体は一回、拘束するけど…ごめんな」と呟いたー 勝手に人間の身体のまま、外に行かれては困るからだー。 毅と、元サラリーマンの雄太(ゆうた)が、 協力して、元々読み聞かせ行事のために使われていた部屋に 優莉(ゾンビ)を拘束したー。 「--ちょっと臭くない?」 女子高生の凛子(りんこ)が、ゾンビ(優莉)の方を見てそう呟くー ゾンビ(優莉)は「ご、、ごめ…」と、呟きながらー 図書準備室の方に移動していくー 順平は、そんなゾンビ(優莉)に「元に戻れる方法、すぐ探すから」と、 心配そうに声を掛けたー。 リーダー格の毅と、サラリーマンの雄太は、入れ替わりのことを理解してくれたがー 女子高生の凛子と、元主婦の育枝(いくえ)、そして、フリーターの茂伸(しげのぶ)は、 ゾンビと入れ替わった優莉を迷惑そうな目で見ていたー そんな空気を順平は悟り、早めに元に戻る方法を探そうとするー。 「--もう一度、階段から落ちるってのは?」 毅が言うー。 「--それも試してみる必要もあるかもな」 順平が返事をするー。 だが、外はゾンビが徘徊しているし、 優莉(ゾンビ)とゾンビ(優莉)をあの時のように もう一度階段から落とすのは難しいー。 それに、元に戻れる確証もないー 「-----」 その時だったー 何やら、変な声が聞こえるー。 「--なんだ?」 毅がそう呟くと、順平もその声に気づき、 立ち上がったー そしてー 声のする方に歩いていくとー 読み聞かせに使われていた部屋から、 喘ぎ声が聞こえたー 最初は、凛子か育枝のどちかが、 誰かとエッチをしているのかと思い、 そのまま放っておこうとしたがー すぐにー 喘ぎ声が優莉のものであると気づいた順平は 慌てて部屋に駆け込んだー すると、フリーターの茂伸が、優莉(ゾンビ)と 無理矢理エッチなことをしていたー 「あっ♡ あっっ♡♡」 中身がゾンビの優莉は、無抵抗で、茂伸に好き放題されていたー 「-な、なにしてるんだ!?!?」 順平が叫ぶと、茂伸は笑うー 「--へへ、だってさぁ、中身ゾンビなら、やりたい放題じゃねぇか。 俺だってずっと我慢で溜まってんだ 少しぐらいいいだろ?」 茂伸が、お構いなしに優莉(ゾンビ)の胸を触り、服を触るー 「おいやめろ!!!」 順平が叫ぶー しかしー 茂伸は「お前の彼女は、あっちのくっせぇデブゾンビだろ あっちいけ!」と 声を荒げたー 「--!!」 後から駆け付けた毅も表情を歪めるー 順平が茂伸に殴りかかるのを、毅は咄嗟に止めて、 「ふたりとも、落ち着け!」と、順平と茂伸をなだめたー。 毅は「この部屋の管理は俺が徹底する。だから安心しろ」と 順平に言い放ったー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 夜ー 「---!」 深夜に目が覚めた順平はー 見てしまったー フリーターだった茂伸ー サラリーマンだった雄太ー そして、毅までもがー 優莉(ゾンビ)を好き放題しているのをーー 「俺もたまには発散しなくちゃな!他のやつらには内緒だぞ!」 毅が言うと、 雄太と茂伸が頷いたー。 中身がゾンビになったのをいいことに、優莉の身体がおもちゃにされているー ”テメェら!!!” そう叫ぼうとしたその時だったー 屋上から周囲を見張っていた元主婦の育枝から ”緊急連絡”が入ったー ”ゾンビが集まってきてるー” とー。 順平も、 優莉の身体で遊んでいた毅たち3人も、それに気づき、 屋上に駆け上がるー 交代で見張りをしていた育枝が、図書館の周囲に集まって来た ゾンビに指を差すー。 「---どうしてー ここには、今まで来なかったのにー」 舌打ちする毅ー そんな毅を横目でにらみながら順平が、 図書館の入口のドアを叩きはじめたゾンビたちを見つめたー その時だったー 「たぶん… わ たしの、、せい」 ゾンビ(優莉)が背後から姿を現すー。 ゾンビ(優莉)は言うー ”ゾンビになった自分がここにいるから、 ゾンビが、ここに集まってきている” とー。 ゾンビが、ゾンビを呼び寄せたのだとー。 「--はぁ!?マジ最低!じゃあ、あんたのせいじゃん!」 女子高生の凛子が叫ぶー。 複雑な表情を浮かべる順平ー 「--ゾンビになった彼女なんて連れ込むんじゃねーよ!」 フリーターの茂伸が叫ぶー 「みん、、な、、ごめ、、」 ゾンビ(優莉)が悲しそうに呟くー。 「---もごもご喋りやがって!聞こえねーんだよ!」 ゾンビになった優莉を蹴り飛ばす茂伸ー 「--おい!」 順平が叫ぶも、茂伸は順平のことも睨んだーー 「こんな汚らしいゾンビ連れ込みやがって! 俺たちまで感染したらどうするつもりだ!?」 茂伸の言葉に、順平も茂伸を睨み返すー 「-なんだその目は?やるのか?」 2人が対立しているその時だったー。 ゾンビがさらに増えて、図書館の入口を叩きだすー。 屋上からその様子を見ていたサラリーマンの雄太が 「おい!!!ゾンビに入口が破られるぞ!」と叫んだー。 この数を相手にするのは、 正直、厳しいー 「--くそっ!」 リーダー格の毅も叫ぶー。 その時だったー 「じゅう…かして…」 ゾンビ(優莉)が言うー。 「え?」 順平が首を傾げる。 「--じゅう、、、かして…!」 ゾンビ(優莉)が必死に叫ぶー。 順平は優莉が自殺するつもりなのだと思い、 「だめだ!」と叫ぶー だがー ゾンビ(優莉)を良く思わない、他のメンバーが ゾンビ(優莉)に銃を渡してしまうー 「--早く!ほら!あんたのせいでゾンビが!! 早く!!早く!その銃で死ねよ!」 女子高生の凛子はパニックからか、過激な言葉を投げかけているー 順平はそんな凛子の姿を見て、悲しくなるー 最初にここで出会ったときはーー 凛子は穏やかで優しい子だったのを知っているからだー 長く続く過酷な生活で、みんな、変わってきているー。 「----わたし、、しな、、ない」 ゾンビ(優莉)がよろよろと歩き出しーー 非常階段の方から外に向かって行くー 「おい!!優莉!!?」 順平が叫ぶー その後の光景はー 順平も、他のメンバーも予想していないものだったー。 ゾンビ(優莉)が、ゾンビの群れの方に向かっていくー ゾンビは、ゾンビ(優莉)を、同じゾンビだと思ったのか 全く興味を示さないー。 ゾンビになった優莉は”ゾンビに襲われることなく” 1匹1匹、ゾンビを射殺していくー 撃たれてもー ゾンビは、相手がゾンビだからか、ウロウロするだけで反撃せずにー ゾンビ(優莉)に射殺されていくー 銃の弾が尽きるー。 ゾンビ(優莉)はまるで泣いているような雄たけびを上げながらー ”他のゾンビ”を食い殺したー 「すげぇ…!」 リーダー格の毅が叫ぶー。 図書館に集まってきていたゾンビは、 ゾンビ(優莉)によって、全滅したー。 ゾンビ(優莉)が戻って来るー 順平は、悲しそうにゾンビ(優莉)の方を見つめたー 「--すげぇ…!すげぇな、優莉ちゃん! これからはどんなゾンビがやってきても、優莉ちゃんがいれば 安心だ!」 リーダー格の毅は、嬉しそうに叫んだー 「--最強の生物兵器、誕生ね」 主婦の育枝が笑うー。 雄太、茂伸、凛子も嬉しそうだー 「-----------」 順平は表情を曇らせたー。 その夜ー。 「あっ♡ あっ♡ あぁあ~~~♡」 優莉(ゾンビ)の身体が、 毅、茂伸、雄太にたらい回しにされながら 弄ばれているー 中身がゾンビだからか、何も抵抗することなく 快感に身を委ねて、何度もイカされている優莉(ゾンビ)-。 そこにー 順平とゾンビ(優莉)がやってきたー 「--!なんだよ!」 フリーターの茂伸が叫ぶー。 「--俺たちは最高の大人のおもちゃと、最強の優莉ちゃんを 手に入れたんだ。 これからは、ちっとはマシな生活をー」 リーダー格の毅の言葉に、 順平は言い放ったー 「--俺たち、ここから出ていくことにした。 世話になったな」 とー。 ”もう、ここにはいられない” 順平は、ゾンビ(優莉)と相談して、そう思ったー 優莉の身体をおもちゃにしてー ゾンビになった優莉を生物兵器として扱うなんてー もう、耐えられなかったー 「---はぁ?待てよ!この身体は置いていってもらうぜ!」 フリーターの茂伸が優莉(ゾンビ)を指さすー 「滅茶苦茶ヤリまくってやるんだ!」 茂伸の言葉にーー ゾンビ(優莉)が茂伸に近づいて、 腕を掴んだー ゾンビの歯でーー 茂伸を噛もうとするーーーー 仕草だけしたゾンビ(優莉)は、 茂伸を睨みつけるー 「ひっ………」 ゾンビの身体になった優莉に噛まれれば、 感染するー 茂伸は恐怖して、その場に尻餅をついたー 毅と雄太は、もう何も言わなかったー 「いこう」 順平は、ゾンビ(優莉)に声を掛けると、 「うあ~~」と叫ぶ、優莉(ゾンビ)の手を引っ張りー 図書館から外に出たー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「--これか、、、ら、、 どぅ、、、する…の?」 ゾンビ(優莉)が不安そうにー いやー 表情も分からないー とにかく、そう呟いたー 「----わからない」 順平は銃を握りながら呟くー 安全な場所なんてどこにもないー しかも、優莉(ゾンビ)を連れた状況で、行動しなければならないー もしかしたらー 1時間後には、自分たちも屍になっているかもしれない極限状態ー けれどー 「--俺は絶対に、優莉を守って見せるからー」 順平は、ゾンビ(優莉)に向かってそう言い放つとー ゾンビ(優莉)に顔を近づけてーーー キス、、、をする仕草だけしたー ”感染”してしまったら、優莉を守れないー だから、今はキスはできないー 優莉(ゾンビ)の方も見つめながら、 順平は「絶対に、元に戻して見せるから」と、 優しくほほ笑んだー 絶対に彼女を元に戻してー 彼女と共に生き延びて見せるー もしもー もしもーー 1時間後に屍になっているとしてもーー その時はー 最後の1秒まで、優莉を守るために、戦うー。 そう決意して、順平は、ゾンビ(優莉)と 優莉(ゾンビ)と共に、地獄のような街を歩き始めたー おわり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |