最後の聖夜①~永遠の別れ~ 作:無名 クリスマスイブ…。 2人は幸せな時間を過ごしていたー。 それが、最後の聖夜になることも知らずー。 -------------------------- 12月24日夜ー 大学生カップルが、二人でクリスマスを楽しんでいたー。 友川 雄吾(ともかわ ゆうご)と 花岡 由美(はなおか ゆみ) 2人とも、同じ大学に通う大学生で、 付き合い始めて1年のカップルだー。 イルミネーション輝く広場で、2人は談笑していたー 「---綺麗だね…」 由美が呟く。 ”由美の方がきれいだよ” などと恥ずかしいセリフが雄吾の中に浮かんできたが 雄吾は、それを抑えて呟いた。 「--そうだね」 と。 付き合い始めたのが今年の1月。 これが、二人にとって、初めてのクリスマスー。 目を輝かせながら由美は イルミネーションを見つめる。 イルミネーションを見つめる由美の目元に 涙が浮かぶ。 目元のほくろのあたりで輝く涙を見て 雄吾は言う。 「--そろそろ行ってあげなよ」 と。 本来、雄吾と由美は、クリスマスイブとクリスマスを 2人で過ごすつもりだったー けれども、 それは出来なくなったー。 入院していた由美の祖父が、危篤状態になってしまったのだー。 大学生になって上京してきていた由美は、 急遽、北海道に戻ることになっていたー。 「---うん。ごめんね」 由美が涙を流しながら笑う。 「--大丈夫。僕たちには来年もあるだろ? おじいちゃんと由美の時間の方が、大事だよ」 雄吾が優しく言うと、 由美はうなずいた。 「--ほら、早く行ってあげなよ」 雄吾が言うと、由美はうなずいた。 雪が降り出してきた。 由美は、少し歩くと、雄吾の方を振り返ったー。 「--また来年も、一緒にクリスマス、楽しもうねー」 とーー イルミネーションのように輝く笑顔ー けれどー それがー 雄吾が見た、彼女の”最後の笑顔” 翌日、12月25日ー。 雄吾は廃人のようになりながら、一人 テレビのニュースを見つめていたー そこにはーーー 飛行機の墜落した映像ーーー そしてーー 犠牲者の名前が表示されていたー ”花岡 由美” とー。 「由美… 由美…」 涙を流しながら雄吾はそう呟いた。 彼女の笑顔はーーー 消えてしまったー 永遠に…。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12月24日ー 雄吾は、自宅にやってきた由美を出迎えた。 「雄吾の家に来るの、2回目だね!」 由美が”お邪魔します~”と呟きながら 中に入ってくる。 雄吾も、由美も一人暮らしだ。 「---襲ったりしないから安心してよ~」 雄吾が笑いながら言う。 「--大丈夫~! 超草食系の雄吾は、そんなことできないもんね~!」 笑いながら由美が冗談を返す。 雄吾と由美は、今年の1月から付き合っていて これが、初めてのクリスマスだった。 クリスマスイブとクリスマスを2人で過ごすことにした由美は こうして、雄吾の家に泊まりに来ていたのだ。 「--たいしたもの、ないけど…いいかな?」 雄吾が笑う。 テーブルの上にクリスマスケーキやクリスマスチキン、 お寿司などが並んでいるのを見て、 由美は苦笑した。 「こんなにたくさん、食べられるかなぁ~?」 平和なクリスマスー そうなるはずだった。 しかしー それは、急に訪れたー。 「---!?」 由美が突然、身体を震わせる。 「由美?」 雄吾は不思議そうに由美の方を見ると、 由美は体を震わせながら青ざめていた。 「--あ、、、あ…あふっ♡ あ… な、、、何かが…入ってくる…!」 由美が青ざめた表情で、 雄吾の方を見て助けを求めた。 「な…?何かって!?え…ちょっと!」 雄吾が由美の方に駆け寄る。 しかしー 由美は体を震わせてうつぶせになり、 激しく痙攣し始めるのだった。 「--由美!由美!」 雄吾が必死に由美を呼びかける。 が、痙攣が止まないのを見て、 雄吾は机に置いてあったスマホを手にして 救急車を呼ぼうとした。 「---呼ばないで!」 由美は叫んだ。 「---え」 雄吾がスマホを持つ手を止めて、 由美の方を見る。 痙攣していた由美が、こっちを見ている。 もう、痙攣はしていない。 「---も、、もう大丈夫なの?」 雄吾がそう聞くと、由美は言った。 「---お願い。落ち着いて聞いて。 私はーーー今夜…死ぬわ」 由美の言葉に、 雄吾は沈黙したー 時計の時刻は18:30-。 「---は?」 雄吾が言うと、 由美は言った。 「お願い!信じてー わたしはーー未来から来たわたし…。 今夜の飛行機が落ちて、 わたしはーー死ぬの」 由美の言葉に、雄吾は混乱しながら言う。 「は、、、ははは・・・ 由美、、どっきりは良くないよ… びっくりするじゃないか」 雄吾が言うと、由美は叫んだ。 「お願い!信じて! 今夜、わたしのおじいちゃんの容体が急変して わたしは北海道に戻ろうとして、飛行機に乗るの!」 由美は目から涙をこぼしながら叫ぶ。 「その飛行機が落ちて…わたしは…! それで…雄吾…ずっとわたしのことで 悲しんで…ずっとずっと、雄吾、泣いてるの…」 その場に泣き崩れてしまう由美。 「ちょ…ちょっと!」 雄吾が由美を抱きかかえる。 由美は言うー 「---わたし… 死んだ未来の由美… お願い…わたしを、、助けて」 由美の言葉に、雄吾は、ごくりと唾を飲み込んだ。 「・・・あのさ」 雄吾が呟く。 「さすがに、笑えない冗談だよ、それ」 雄吾がため息をついて、ケーキのほうを見つめる。 部屋の隅に飾ったクリスマスツリーが むなしく点灯している中、 由美は続けた。 「---本当なの…! 信じてもらえないだろうけど…信じて! 死んだ後に過去に来て、こうして 過去のわたしに憑依してるなんて、 非現実すぎるとはおもうケド… でも…!」 由美が涙を流しながら言う。 半分、パニックになっているようにも見える。 雄吾は「なら…」と呟く。 「ボクがこれから由美に渡すプレゼント、わかる?」 雄吾が聞くと、由美は涙を流しながら微笑んだ。 「ーーちょうど先週、わたしが壊しちゃった 音楽プレイヤーでしょ?」 雄吾は驚くー あたりだった。 「え…な、、何で知ってるの?」 「--未来から来たから」 由美の言葉に、雄吾は驚く。 「---ほ、、、本当なの?」 雄吾が言うと、由美はうなずく。 「---ほ、、本当だとして どうすればいいんだよ?」 雄吾はそう言いながらも 「温めたクリスマスチキン、醒めちゃうなぁ」などと思いながら テーブルの上を見つめた。 「--わたしと…エッチして」 由美が言った。 「えっ…えぇ!?!」 雄吾が驚いて飛び上がる。 雄吾と由美は、付き合い始めて1年近くになるが エッチの経験はない。 由美がそういうの苦手そうだったし、 雄吾にとっても一緒に居られればいい、という理由で エッチをしたことがなかったのだった。 「---そ、、そんなこと言うなんて! 由美じゃないな!」 雄吾が叫ぶ。 「--お、、お前は誰だ!」 雄吾は思うー さっきの由美の苦しみ方は芝居なんかじゃないし、 悪ふざけするにしても、こんなに長々と悪ふざけを するような子じゃない。 「---だ、だから由美だってば!」 由美が叫ぶ。 「---違う!エッチをしようなんて由美は言わない!」 雄吾が叫ぶー。 「-わたしさ…ずっと、雄吾となら…って思ってたんだよ…! でも、雄吾が何も言ってくれないから…!」 由美が涙をこぼしながら叫ぶ。 そして、由美は時計の方を見つめた。 「あと10分で、わたしのおじいちゃんの容体が 急変した、って電話が私のスマホに来るの」 「---」 雄吾も時計の方を見つめる。 「その連絡に、わたしが気付かないように… わたしとエッチして…。お願い…」 由美が真剣な表情で呟いた。 「---」 雄吾は、返事をしない。 もしも、今、話している相手が 本当に未来から来た由美ならー? この由美の言うとおり、 祖父が急変し、由美は飛行機で北海道に戻る途中にーー 死ぬーー。 「--ごめん。これ以上は……もう…」 そう呟くと、由美の身体から、何か光るものが飛び出した。 そしてー 由美の姿をした幽霊のようなものが現れた。 由美の身体が倒れる。 「お…おい!由美!」 雄吾が駆け寄り、呼びかけると由美はすぐに目を覚ました。 「あ…あれ?雄吾…?わたし…」 由美は無事だった。 「--ーーー」 由美の無事を確認すると、雄吾は、横に居る ”未来の由美”の幽霊を見つめたー 「---どうしたの?」 雄吾の見つめている方向を由美が見つめる。 しかし、由美には、未来から来た自分の幽霊が見えていないようだ。 ”はやく!はやくわたしをエッチに誘って!” 幽霊の由美が語りかける。 雄吾は幽霊の由美の目を見つめて、 考える仕草をしたあとに、微笑んだ。 「---由美、そろそろ食べよう?」 と。 クリスマスの食卓の方に、由美と共に移動する雄吾。 立ち尽くす未来の由美の亡霊。 そのときーー 由美のスマホが鳴った。 「--ちょっと待っててね」 由美の言葉に、雄吾が頷く。 そしてー 通話を終えた由美が、目に涙を浮かべて、言った。 「--ごめん… おじいちゃんが、急変したって… 今すぐ、病院に行かなくちゃ…」 由美の目元から涙が零れ落ちたー。 傷もにきびも何もない綺麗な顔が、 涙で濡れているー 「---由美…」 雄吾は由美の言葉を聞いて確信したー。 ”未来から来た由美”の言うことは本当だと。 そんな雄吾を見つめていた”未来から来た由美”の幽霊は 叫んだ。 ”わたしを行かせないで!早く止めて” とー。 その言葉を聞いて、 雄吾は静かに首を振った。 「---わかった。早く、おじいさんのところに 行ってあげてー」 雄吾は、そう由美に伝えたのだった…。 ②へ続く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 皆様こんにちは~! 今日はクリスマスイヴですネ~! メリークリスマスデス~☆ 予定のある皆様も、仕事のある皆様も、 無の境地に達している皆様も、 寒いので体調を崩さないように気を付けて下さいネ~! 私は明日の当日はお仕事デス…!!笑 今回はちょうどクリスマスの時期ということで、 クリスマスモノを選んでみました! 解体新書様では、今年最後の作品になります~!☆ 2018年のクリスマスの時に執筆した作品なのですが、 書いてから4年も経っていると、 どんな結末になるのかを程よく忘れていて、 読み返す時に、私も読む側気分をたっぷり 味わうことができました! …もちろん、最後まで読んだ後には 思い出しましたケド笑 明日の②で、どんな結末を迎えるのか、 ぜひ楽しんでくださいネ~! |