それでも僕は君と共にいたい②~悪女~
 作:無名


悪の組織の幹部に憑依されてしまった彼女…

だが、彼は、そんな彼女を前に、
自分も仲間に入れてくれと嘆願したのだった…。

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黒雲に包まれた無気味な城のような場所にやってきた健司ー。

彼女の唯花は、両手を広げて空気を吸うと、
「ーー素晴らしい場所だろう?」と、笑みを浮かべたー。

禍々しい雰囲気に怯える健司ー。

「クククー怯えているのか?人間」
唯花が、健司のアゴを掴んでほほ笑むー。

顔は確かに唯花ー
ほほ笑みも確かに唯花ー

けれど、その邪悪なオーラは抑えることが出来ていないー。

「---ゆ、、唯花…」
顔が近くにあるだけでドキドキしてしまうー。
唯花の”顔”であることには変わりないのだからー

「--ふん まぁ良い。
 ついてこい」

唯花の言葉に、健司は頷くと、
”悪の組織”ジードの本拠地最深部へと向かって行くー

城の中は、RPGゲームや特撮番組などに出てきそうな
ファンタジー世界、とも言えるような風景が
城の中には広がっていたー。

唯花が禍々しい扉を開くとー
そのまま中に入っていくー

健司も意を決して中に入っていくとー

そこには3人の人型の悪魔とー
玉座の前に立つ、”いかにも王”という感じの悪魔がいたー。

「---ククク なんだその格好は?」
座っていた悪魔の一人が笑うー。

「--人間の女の身体だー」
唯花が笑みを浮かべながら返事をすると、
「--へへへ なかなか悪趣味じゃねぇか」と、別の悪魔が答えたー

「--その人間は?」
”ジード首領”が、健司を指さすー。

唯花はクスッと笑いながら、
「--我々の仲間に入りたいのだとか」と、答えたー。

その上で、唯花は自分を触りながら言うー。
「-どうやらこの女の”彼氏”のようでー」
唯花の言葉に、「ほぅ」と、ジード首領は笑みを浮かべるー。

「---……人間よ」
ジード首領が、健司の方を見つめるー

健司はどうしていいか分からなかったが、
とりあえず頭を下げておくー。

「--ふふ」
唯花はそんな健司を見つめると、そのまま奥の方へと歩いて行くー。

「---我々ジードの仲間に入りたい、というのは、本当かー?」
ジード首領の言葉に、健司は「はいー」と頷くー。

「--……」
ジード首領が、健司をじっと見つめるー。

「---あの女を取り戻す機会でも伺おうとしているのだろうがー
 ザンネンだったな」
ジード首領は玉座に座ると、無気味な笑みを浮かべるー

顔を上げる健司ー

「ガオスが使った秘術はー相手の身体も心も完全に支配し、
 ”我が物”とするものー。
 貴様の女は、もう、ガオスのものだー。」

ジード首領の言葉にー
”唯花”と健司は悲痛な叫びを心の中であげながらも、
咄嗟に叫んだー

「それでもーー
 それでも、僕は、唯花と一緒にいたいんだ!」

とー。

「---……」
ジード首領と、3人の幹部が笑いだすー。

「--おかしな人間よの」
ジード首領は、そう呟くと、健司の方を見つめたー

「--中身がまるで別人でも、お前は”愛する者”の側にいたいー
 そういうことかー?」

ジード首領の言葉に、健司は頷くー。

「--僕は…僕は…唯花が…唯花のことを、愛しているんだ…!」

悔しそうに呟く健司ー。

咄嗟に”仲間になる”と叫んだ健司だったがー
どんな状態でも”唯花の側にいたい”と、健司は心からそう思ったー

前に、唯花に健司は約束しているー

”何があっても、僕は唯花の側にいるからー”
とー。

と、いうのも、唯花は小さいころに母親を亡くしていて、
”大切な人”が離れていくことに強い恐怖を抱いている子だったからだー。

だからー
健司は”僕は何があっても絶対に唯花の側にいる”と
付き合い始めたころに約束したのだー。

「---その”愛する者”が永遠に元に戻らなかったとしても、かー?」
ジード首領の言葉に、健司は
「たとえそうだとしても…僕は唯花と約束したんだ!」と叫ぶー。

「---ククククク 素晴らしき愛であるな」
馬鹿にしたように笑うジード首領ー

そしてー
先程唯花が立ち去って行った扉が開くー。

そこから出て来たのはー
”悪女”のようなスタイルになった唯花だったー

髪の一部を赤く染めー
少しきつめのメイクに、
悪の女幹部のような衣装ー

胸元と太ももを強調するかのような服装に変わっているー

「---ククク ガオスよ。なかなかの趣味だな」
ジード首領が言うと、唯花は「--新しい身体に合った格好をしているだけです」と、
妖艶に微笑んだー

その姿に思わずドキッとしてしまう健司ー

禍々しいハイヒールのようなものを履いた唯花が
音を立てながら近づいてくるー

「---どう?生まれ変わった唯花は?」
唯花がクスッと笑うー。

唯花のような口調で喋るガオスー。

「--ゆ、、唯花…」
悲しそうなー
けれどもちょっと興奮してしまっているような表情の健司ー。

「--これからは、健司のことを、下僕として使ってあげるー」
クスッと笑う唯花ー。

「--げ、、下僕…」
健司は表情を歪めながらも、唯花の方を見るー

「--わかったー」
とー。

”僕は約束したー”
どんな時でも、唯花の側にいる、とー。

「--ククク…ははははははははははは!
 馬鹿な男だー!」
唯花は大声で笑うと、「俺は使えるものは何でも使う主義だ」と、叫ぶー

”女の身体を乗っ取ったからには、”女”を武器として使うー

その考えの結果が、
今の唯花の、妖艶な悪女スタイルの格好だったー。

他の3人の幹部が笑うー。

「--じゃあ…俺に…いいや、わたしに忠誠を誓ってもらおうかしら」
唯花は椅子に座ると、足を組んでハイヒールを一つ、乱暴に飛ばしたー

「---ち、忠誠…?」
健司が聞き返すと、唯花は笑うー。

「--わたしの足を お・舐・め」
唯花が高飛車に言い放つー。

「---…」
健司は表情を歪めながら、唯花の綺麗な足を見つめるー

「へへへ」
「ククク」
「きひひひひ」
3人の幹部が、ニヤニヤしながらその様子を見つめるー。

「どうしたの?わたしの下僕になりたいんでしょ?
 だったら、忠誠心を見せてごらん」

唯花の、悪の女王のような言い方に、健司は
少しだけドキッとしながらも、
ドキッとした自分に腹を立てて、唯花の方を見るー

唯花の表情には、悪女の笑みが浮かんでいるー
唯花の意識は、完全に奪われているー。

”唯花ー”
健司は拳を握りしめたー

ずっと一緒にいればー
正気に戻すチャンスもあるかもしれないー
それにー
仮に正気に戻れなかったとしてもー

”わたしを……置いていかないでー”

付き合い始めの頃ー
唯花とデート中に、唯花とはぐれたことがあったー。

やっとの思いで
再会したときー
唯花は泣きながらそう言っていたー

過去に、母を失い、
姉は自分を見捨てて家出していった、と、そう言っていたー

その時の経験から
”捨てられること”を唯花は恐れているー。

「--僕はーー
 捨てたりしないからー」

健司はそう呟くとー
意を決して、唯花の足を舐め始めたー

「クククククー」
唯花がこの上ないぐらいの悪い笑みを浮かべるー。

ジード首領が「ほぅ」と、面白そうにその様子を見つめるー。

唯花の足を舐め続ける健司ー。

この日からー
唯花は、ジードの幹部・ガオスとして、ジードの幹部となり、
健司は、ジードの幹部になった唯花の下僕となったのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--クククククク」

唯花に憑依したガオスの趣味は”拷問”だったー。
時折、人間を捕らえては、拷問を繰り返しているー

「ぐああああああああああああっ!」
電気を浴びて悲鳴を上げる男ー

唯花は嬉しそうにそれを見つめるー

「いい、叫び声ー」
唯花が微笑むー。

唯花を乗っ取ったガオスは
”そのほうが雰囲気が出る”という理由で
女として振舞うようになったー。

”新しい身体”を堪能しているのだー

「--もっと、聞かせてー」
唯花が、男の耳元で囁くー

そして、”下僕”となった健司に指示をするー

「さっきよりも強く、電気を流しなさい」
唯花の言葉に、健司は「は、、、はい」と頷くー

まるで”今までの関係”とは別物ー

「ぐああああああああああああああああっ!!!」
悲鳴を上げながら意識が吹っ飛ぶ男を見て、
唯花は目を輝かせながら
「--唯花、、ゾクゾクする♡」と、嬉しそうに笑うー。

胸元を誘惑するかのように見せつけー
太ももから下を大胆に晒している唯花を横目で見ながら
健司は悲しそうな表情を浮かべるー

「-ー水」
唯花が言うー。

「え」
反応が遅れた健司ー。

「--水!!」
唯花が”水を持ってこい”と促すー。

健司は「は、はい!」と、水をすぐに持ってくると、
唯花が、首を動かして”その男にかけろ”と指示をしたー

男に水をかけると、
男が再び意識を取り戻すー

「--あ~~~~~~楽しいぃ~」
唯花が男に近づいていき、男をグーで殴りつけるー。

「--人間を拷問するのってーーーー
 本当にーーー最高♡」
興奮した様子の唯花ー

はぁはぁ言いながら、唯花は、再び電流を流すように指示をするー。

「--こ、これ以上やったら、死ーー」
健司が戸惑いながら言うー。

唯花ー
いや、唯花を乗っ取ったガオスの”拷問”に付き合うのは
これが初めてだったー。

囚われている男は、明らかに死の一歩直前、ともいうべき状況で、
これ以上続けたら、死んでしまうのは火を見るより明らかだったー。

「---やれよ」
唯花が健司を顎を掴むー

「お前は唯花の下僕でしょ?唯花の言うこと、何でも聞くんでしょ?」
唯花が笑うー。

ガオスに憑依されている唯花は、
怒らせると、わざと一人称を自分の名前にして
”お前の彼女は乗っ取られているんだ”ということを
健司に改めて知らしめようとするー。

「-唯花の気が変わらいないうちに、早くやれよ。ほら
 下僕なんて、いくらでも変えられるんだから」

唯花の脅すような口調に、健司は目を閉じるー。

「--ごめん…」
囚われた男に目を瞑りながら電流を流すー。

その男の断末魔の悲鳴が上がりー
男は、絶命したー。

唯花が嬉しそうに狂気的な笑い声をあげるー。

「人間の悲鳴ー…
 たまらなく興奮するー」

唯花の声はー
本当に、興奮しているということがよく分かるような声だったー。

健司に近づいてきた唯花は、
「最初からそうしろ!クズが!」と健司を蹴り飛ばすと、
「そのゴミを片付けとけ!」と、叫んで、そのまま立ち去って行ったー。

「----」
一人残された健司は、死んでしまった男性の近くで、
悲しそうな表情を浮かべたー。

”どんな状態になっても、唯花を見捨てることはできないー”
健司は、そう思っていたー。

”僕が諦めたらー
 唯花は永遠にガオスとかいうやつに乗っ取られたままー”

「---…そうだ…僕しかいないんだー」
唯花を助けることができる人間は、自分しかいないー

事情を知っている人間も自分しかいないしー
この場所を知っている人間も、おそらくはほとんどいないー。

健司が諦めてここから逃げようとすればーー

成功しても、唯花はずっと乗っ取られたままだし、
失敗したら、健司は死に、唯花は乗っ取られたままー。

どちらにしても、唯花は助からないー。

そしてー
唯花は乗っ取られ続けるー。

ガオスとかいうやつが”飽きた”としても、
そうしたら唯花は恐らく始末されるだろうし、
ガオスというやつが唯花ごと倒されてしまっても、
唯花は助からないー

「くそっ!」
健司が床を叩くー。

その時だったー。
悪の組織”ジード”の本拠地に爆音のようなものが響き渡ったー

「なんだ!?」
健司が叫ぶー。

”人類の反撃”

悪の組織ジードと戦闘を繰り広げている特殊部隊が、
ジードの本拠地を突き止めて、
奇襲攻撃を仕掛けて来たのだー。

時空の狭間に存在するこの場所にやってきた特殊部隊ー

「-----ククク」
本拠地の上層階から、その様子を見つめていた唯花は、
「愚かな人間どもよ…悪夢を見せてやるー」と
凶悪な笑みを浮かべながら、そう囁いたー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第2話でした~!
今のところ、憑依された彼女に
振り回されっぱなしの状態…

そんな中、特殊部隊までやってきて…と、
かなり危機的な状況ですネ~!

次回が最終回なので、
ぜひその結末を見届けて下さい~☆!

私の作品は全2話だったり、全3話の作品が多いのですが、
こういう作品(変な組織が出て来るものなど)は、
どうしても色々詰め込みたくなってしまって、
無駄に細かい部分を描写したりすることも時々、あったりします~!
(例えば今回の作品は、
 次回の③で、出て来なくてもいいような悪の組織の幹部が出てきたり…笑)

そういう本筋から外れた部分も、少しでも楽しんでいただければ
嬉しいデス~!

今日もありがとうございました~!