それでも僕は君と共にいたい③~愛の行方(完)~
 作:無名


悪の組織”ジード”の幹部に憑依されてしまった彼女ー。

それでも彼女を見捨てることはできない、と、
乗っ取られた彼女の下僕として働く彼氏ー。

二人の愛の行方は…!?
その先に待つ、運命は…!?

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次元の狭間に存在する悪の組織”ジード”の
本拠地が爆音に包まれるー。

いかにも特殊部隊、という感じの服装の人間たちが、
ジードの本拠地に、銃を持って迫っているー。

対ジード特殊部隊ー。
次元の狭間に存在するジードの本拠地の場所を特定し、
特殊な技術でここまでやってきたのだー。

人類とて、黙ってジードに屈するほど、
愚かではないー。

「-ーーー愚かな人間どもめー」
ジード首領は、クリスタルに映るその様子を見つめながら、
歯軋りをしたー。

そして、幹部4人に命じたー。

「--侵入した人間どもを、根絶やしにせよ!」
ジード首領の言葉に、
ガオスに乗っ取られた唯花を含む4人は、笑みを浮かべながら頭を下げたー

「っかし、女の身体を乗っ取った途端に、武器を鞭に変えるとか
 悪趣味だなお前は」

唯花に向かって、幹部の一人・ゴリラスが笑うー。

「---ククク…悪の女王様みたいな感じがして、
 楽しいだろう?」

唯花が禍々しい鞭を手にしながら言うと、

「-ま、確かにお前が元々使ってた剣よりも
 ドSな女王様って感じがして、ゾクゾクするけどな」
ゴリラスが笑いながら、通路を歩くー。

「--この手を血で染めてやる…ククククク」
唯花はそう言うと、ゴリラスと別れて、別の方向に向かって歩き出したー

各所で、戦闘が始まるー。

拷問室から出た健司も、
ジード本拠地の中層階の窓から、その様子を見つめるー

「--あれは…人間…!
 ってことはーー」

健司の心の中に、少し希望が湧いたー。

人類が、悪の組織ジードに対する反撃に出たということなのだろうー。
もし、ジードを倒すことに成功すれば、
自分も、唯花も、助かるかもしれないー。

そんな、希望を抱きながらー。

「---」
窓から外を見つめると、
幹部の一人、”悪意を人間にプレゼントする”サタン・クロースが、
戦いを続けていたー。

「--…そうだ…唯花は?」
健司は一気に不安に駆られたー

まさかー
幹部のガオスに憑依されている唯花もー
戦闘をさせられているのではー

そう思ったからだー。

健司は必死に廊下を走り始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーあははははははははっ!」
鞭を振るいながら、特殊部隊を始末していく唯花ー。

悪の女王のようなポーズを取りながら
”今、楽しめる欲望を全て楽しむ”ことがモットーな
幹部ガオスは、唯花の身体で、戦いを続けていくー。

「---助けてほしい?」
唯花が、悪女のような声で、倒れた特殊部隊隊員の頭を踏むー

「た、、た、、たすけてくれ…!」
悲鳴を上げる特殊部隊隊員ー

「-じゃあ…”女王様、たすけてください”って命乞いしてごらん?」
唯花が冷たい声で言うー。

「--く、、、く…」
プライドからか、言葉を口にできない特殊部隊隊員ー

「--おら!死にたいのか?」
唯花が足で乱暴に特殊部隊隊員を踏みつけるー。

他の隊員が、唯花に銃を放つー。

唯花は、バク転してそれを回避すると、
禍々しいオーラを纏いながら、奇声を上げて特殊部隊隊員たちの方に向かうー

邪悪なオーラをこめた鞭で、
悪の女王のような笑い声をあげながら、特殊部隊隊員たちを蹴散らしていくー

「--!」
だがー
特殊部隊隊員はそれなりの人数がいて、
唯花の背後を取ることに成功したー。

両手を上げる唯花ー

「いいの?この身体は、唯花っていう人間のものなんだけど」
唯花がクスッと笑うー。

唯花が憑依されて、健司がここに来てから
既に数週間ー。

元の世界では、唯花と健司の捜索願も出されていてー
”女子大生消息不明”のニュースは、大々的に報じられていたため、
特殊部隊隊員たちもそれを把握していたー。

「馬鹿ね」
クスッと笑った唯花は、その隙を見逃さなかったー。

鞭を振るい、特殊部隊隊員を蹴散らしていくー。

隊員も銃弾を放ったが、それは唯花の肩をかすめただけだったー。

「ふぅんー」
肩から噴き出した血を見て笑う唯花ー

「人間の身体って貧弱なのね」
唯花は指に血をつけてペロリと舐めるー。

「でもーー」
唯花に憑依しているガオスが闇の魔力を用いて、
唯花の身体の傷を強引に修復していくー

「-多少のダメージなら、問題ないー」
唯花はペロリと唇を舐めると、特殊部隊隊員の方を見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

戦いはさらに激化するー。

優れた技術力を持つ悪の組織・ジードは、
本来”人類と真っ向勝負を仕掛ければ”確実に勝てるほどの
技術や戦力を有していたー。

だが、”人類侵攻”に分散させている戦力はわずかであり、
また、”人類を遥か格下”と見下していることー、
そして、”人類をいたぶるように、遊び半分で侵略している”ことが、

”仇”となったー。

人類はいつの間にか、ジードに所属する悪魔の組織を崩壊させる
特殊な化学兵器の開発に成功していたー

「--ぐおおおおおおおっ…」
幹部ゴリラスが吹き飛ばされるー。

吹き飛ばされたゴリラスの側に別の隊員が駆けつけて、ゴリラスの頭を撃ち抜くー。

「クリア!」
南側を守っていた幹部のゴリラスが突破されたー。

「---……」
そんなことも知らない健司は、唯花がいる東側に向かうー。

北側では既に、人類に悪夢をプレゼントする幹部、サタン・クロースが、
特殊部隊に死をプレゼントされ、突破されていたー。

本拠地内に特殊部隊隊員がなだれ込んでくるー。

健司は、特殊部隊とは遭遇しないままー
東側にたどり着いたー

「--唯花!」
健司が叫ぶー。

唯花は、鞭を手に、少しだけ苦しそうにしていたー

「---(チッ…さすがに人間の女の身体では、もたぬか)」
はぁはぁ言いながら、唯花は舌打ちをするー。

いかに闇の魔力で、唯花の身体を酷使しようと、
唯花は”普通の女性”でありー
限界を超えて激しい動きをしていたことで、
唯花の身体は激しく消耗していたー。

横たわる特殊部隊隊員たちー。

唯花が、残る隊員たちに、鞭を振るうー。

「--あははははは!死ね!死ね!」
唯花は、とても楽しそうに人間たちを始末しているー

”あんな唯花…僕は見たくない!”
健司はそう思いながらも、唯花の方に向かって行くー。

その時だったー。

パァン!
”健司もジードの一員”と勘違いした特殊部隊隊員の一人が、
健司の足を撃ち抜いたー。

「ぐあっ!」
その場に倒れる健司ー。

「----!」
唯花も、健司が撃たれたことに気づくー

「--ククク…バカな下僕だな」
唯花はそれだけ呟くと、健司から視線を逸らして
他の特殊部隊隊員との戦いを続けようとしたー

しかしー

「------…」
唯花は、少しだけ表情を歪めたー。

「--覚悟しろ」
特殊部隊隊員が倒れた健司に近づくー

健司は、足を押さえながら
「ち、、違う!待ってくれ!僕はー」
と、叫ぶー。

だが、特殊部隊隊員は、聞く耳を持たなかったー

銃を手にー
健司に向かってそれを放ったー

パァン!!!!!!

「--!?」

しかしーー
健司の前に、悪の女幹部のような姿をした唯花が立ちはだかりー
”盾”になっていたー

「--!?!?」
健司が驚くー

撃たれた唯花は、笑みを浮かべると
そのまま、特殊部隊隊員を倒したー。

その場に膝をつく唯花ー

「--え…な、、なんで…?」
健司が戸惑うー。

唯花は、闇の魔術で傷を回復させながら
健司の方を見つめたー

「--何で?”この女の彼氏”なんて立場の
 面白い下僕はもういないからに決まってるでしょ?クククー」
唯花が笑うー

”乗っ取った身体の彼氏”
そんな立場の人間は、健司一人しかいないー。
下僕はいくらでも補充できるー
だが、そういう立場の下僕は、健司しかいないー

だから、助けたー

「---ありがとう…」
健司は、唯花に助けられた気がしてそう呟くー

唯花は少しだけ戸惑ったような表情をしながらー
「--ありがとう、ございます!、だろうが!」と
健司を蹴り飛ばすとー、
そのまま鞭を手に、再び特殊部隊の方に向かって行ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

破壊され尽くした指令室ー。

ジード首領が苦しそうに呟くー

「我は所詮…”数ある実働部隊の司令官”に過ぎぬー」

既に、ジード首領の部屋まで到達した特殊部隊は、
ジード首領に銃撃を加え、制圧を完了していたー

ジード首領の脇には、幹部の一人・パリピーナスが屍となって転がっているー。

「---ジードは……滅びぬ…!」
ジード首領がそう叫ぶと同時に、銃弾が放たれて
ジード首領はそのまま死亡したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---おのれ人間どもがああああああああああ!」
鬼のような形相で、乗っ取られた唯花が、
鞭を振るっているー。

特殊部隊隊員の数が多くー
唯花を乗っ取ったガオスの魔力による
回復も追いつかなくなっていたー

「--はぁ…はぁ…はぁ… ぐっ…
 所詮は小娘の身体か…」
唯花は、表情を歪めて膝をつくー。

「---ーおわりだ」
特殊部隊隊員の一人が銃を唯花に向けるー。

「--さっきも言ったけど…この身体は…人間…
 俺を殺せば…この女も、、、死ぬ!」
唯花が笑いながら言うー。

特殊部隊隊員は一瞬躊躇したー。

だがー

「--………それしか、その子を救う方法はないー」
特殊部隊隊員は、唯花を撃つ気だったー。
そうしなければ、この子の身体は、永遠に悪用され続けるからだー。

「---ま、、待って…くれ…」
戦いの巻き添えを喰らい、既にボロボロになっていた健司が、
ふらふらと、膝をついた唯花の前にやって来るー。

「--君も人間だな?どくんだ」
特殊部隊隊員が言うー。

だがー
健司はどかなかったー。

「---唯花を…唯花を…殺さないでくれ…」
嘆願する健司ー。

唯花は笑みを浮かべるー。

「--ククク…下僕!そうだ!わたしを助けなさい!」
唯花の心ない言葉ー。

健司は、傷つきながらも、
それでも唯花を守ろうとしたー。

「--どくんだ!」
特殊部隊隊員が叫ぶー。

「--僕…約束したんだ…
 何があっても唯花の側にいるってー
 何があっても、唯花を守るってー」

健司が涙を流しながら特殊部隊隊員たちの方を見るー。

「--ククク…バカなやつ」
唯花が低い声で呟いて笑うー

「-------」
健司は両手を広げて、唯花を守るようにして立ちはだかったー

たとえー
唯花がどんな姿になってもー

たとえー
唯花がどんなになってもー

それでも、唯花の側にいたいー

特殊部隊隊員の一人が、「ジードの首領を始末した」と、遠くから叫ぶー。

「了解した」
唯花に銃を構えている隊員が返事をすると、
健司の方に銃を向けたー。

「-ーー5秒以内にどくんだー。
 君の気持は分かる。
 だが、ここで引けば、そいつの思うつぼだー
 
 君が引けないようにー
 我々も引くことはできない」

特殊部隊隊員にも、強い決意があったー。
健司と、同じようにー。

「-------」

「---5、4、3,2--」
特殊部隊隊員は本気で撃つ気だー。

健司は、静かに目を閉じたー

”もういいよー”

健司が、ふと目を開くー。

そこには、”いつもの穏やかな唯花”がいたー。

「--もういいよ…健司ー。
 わたしのためにー
 ごめんなさいー。

 もう、十分だからー」

唯花は涙を流しながら、
健司の方を見つめたー。

健司は、周囲を見渡しながら、
唯花の方を見つめるー。

「--ずっとそばにいるって、約束したからー」
健司が言うと、
唯花は、悲しそうにー
けれども、嬉しそうに微笑んだー

「--これからは、ずっと、いっしょだよー」
唯花の言葉に、健司は、優しくほほ笑むと、
そのまま、光に包まれて、穏やかな表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「-------クリア!」
特殊部隊隊員がこの場を制圧したことを確認して、叫ぶー。

「--------」

悪の組織ジードを壊滅させたー。

いや、ジード首領の言葉から、
また、別の部隊がやってくるのかもしれないー

だが、その時は、またー。

「-------」
特殊部隊隊員は、
最後まで彼女を守ろうと立ちはだかった健司の方を見つめたー

健司は、悪女のような恰好をした唯花と、手をつないでー
そして、満足そうに倒れていたー。

ジードの幹部・ガオスに乗っ取られたまま倒れた唯花もまたー、
最後の表情は穏やかそうだったー。

そんな二人の亡骸を見つめて、
特殊部隊隊員は、静かに”来世では幸せになれよ”と
祈りをささげたー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最終回でした~!
最後の最後で、ほんの少しだけ、
希望が見えたような…そんな切ないエンドでした~!

脇役の怪人も含めてジード(悪の組織)はあっけなく
崩壊してしまいましたネ~笑

次に解体新書様で皆様にお会いするときには
もうすっかり年末!という感じの時期になっていると思いますので、
その時期にふさわしい作品を今から選んでおきたいな…★と、思っています~!

クリスマスか、年末年始か、まだ分かりませんが、
のんびり考えます~!★

…こうお話したことを忘れて、
何事もなかったかのように普通のお話を出しちゃうかもしれませんケド…笑

今月もありがとうございました~!
この先もさらに寒くなると思うので、体調を崩さないように気を付けて下さい~☆!