戦国憑依物語③~元の時代~
 作:無名


戦国時代で、ゆきという娘に憑依した状態で
生活を続ける修ー。

彼は、元の時代に戻る方法を探りつつ、
この時代にいる間は、この時代で楽しもうとしていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーんっ…♡ ふふ…♡」

ゆきが、色っぽい笑みを浮かべながら
その身体を男に委ねているー

何の穢れも知らないような雰囲気だった
この娘に、こんなことをさせているー

そのことに、ゆきは…
ゆきに憑依している修は興奮しながら、
その興奮を糧に、さらに甘い声を漏らしていくー。

これはー
”くノ一”としての任務ー

今川義元に敵対する大名の一人を
色仕掛けで落とし、情報を探っているのだー。

「ーーねぇ…この前の件だけど、本当に力を貸してくれるの?」
ゆきが甘い声を出すー。

こんな子が、こんな声を出せるなんてー、と
修は激しくゾクゾクしながらも、
”早く元に時代に戻って須美ちゃんに憑依してこういうことしたいなぁ!”と、
心の中で元の時代に戻るため意思を膨らませていくー。

最近は”女の身体”を利用した
情報収集などを中心に、任務を続けているゆきに憑依した修ー。

”女の身体を楽しみたい”修が、
今川義元に自ら提案したのだー。

その結果ー
最近ではゆきの身体をこうして任務中に楽しむことができているー。

「ー時代劇のヒロインに出てきそうな清楚な貧しい娘を
 こんな風に穢してると思うと、興奮するぜ」

ゆきは、そう呟きながら任務を終えて城へと戻るー。

この時代にやってきてから数か月ー。
ゆきに憑依した修は”元の時代に戻るための方法”をこの時代で
何とか作り上げようとしていたー。

元々、この時代にタイムスリップしてしまった原因は、
憑依薬完成の際に、浮かれて別の薬品を混ぜていたのを忘れて
予期しない科学反応が起きてしまったことによるものだー。

化学反応を起こしたのは”未来を見るための薬”ー
それが、化学反応を起こし、何らかの原因で
未来を見るどころか、こうして修を過去に飛ばしてしまったのだろうー。

それを応用すれば、
元の時代に戻ることが、できるかもしれないー。

順調に勢力を広めていく今川義元ー。
史実とは異なり、桶狭間で破ったからだろうかー。

織田信長の軍勢が勢力を増すことはなくー、
今川義元は武田信玄(たけだしんげん)や上杉謙信(うえすぎけんしん)と
言った名だたる大名たちとの戦いが中心になっていたー

織田信長が、破竹の勢いで天下統一に向かうー。
そんなことは、この世界では起きなかったー

「信長が天下人にならない…ということはー」
ゆきは、一人、自分の屋敷として提供された
小さな屋敷で、自分の太ももを触りながら
一人呟くー

「秀吉も家康も出世しないー…と
 考えた方が良さそうだなー」

二人とも、信長の元で、力を蓄えた人間だー。
特に秀吉は、信長が大きな勢力にならなければ、
大人物になることも、ないだろうー。

今川義元の元で”憑依の力”を使い、
多くの勝利をもたらしたゆきは
小さいながらも”自分の屋敷”を提供されていたー。

おかげでー…
”あること”に没頭できるー。

「ーーーー……」
ゆきは険しい表情で、この時代で手に入る素材を使って
”未来に戻るための”薬を作ろうしていたー。

化学に関する知識は”異常”なまでに持っている修は、
実現不可能レベルの薬を既に作り上げているー。

他人への憑依もできたー
不可抗力だったとは言え、こうして過去にも飛ばされたー。

元の時代に戻るための薬だってー、
俺に作れないはずがないー。

そう、修は考えていたー

「ーー早く、元の時代に戻って存分に楽しみたいからなー」

屋敷を貰った今ー
この時代でも、ゆきの身体を使って”お楽しみ”をすることはできるー。

だがー
やはりー
必要なものが足りないー

この時代でも、楽しむことはできるー。
だが、元の時代に戻って憑依を堪能すればー
もっともっと、楽しむことができるはずだー。

とは言えー…
元の時代に戻れるようになるまでは、
ここで楽しむしかない。

「ーわたしはゆき…わたしはゆき…わたしはゆき…
 ふふっ…へへへへー」

自分の名前を名乗って興奮するゆきー。

”自分の身体で自分の名前を名乗るー”

当然、そんなことをして、
興奮する人間はほとんどいないだろうー

修が
”俺は魚沼 修”と何度も呟いただけで
興奮してイってしまうー…
なんてことは起こらないー。

しかしー
こうして”他人の身体”で”自分の名前”を名乗ると興奮するー

「わたしはゆきー」
と、名乗るだけで、興奮できるー

逆に、
「俺は魚沼 修」
と、”ゆきの口で”名乗らせるのも
また別の味わいがあるー。

「ーーふふふふっ…わたしの全て…みせてあげるー♡」
我慢できなくなったゆきは、屋敷の中で一人、
お楽しみを始めたー

・・・・・・・・・・・・・・

破竹の勢いで勢力を伸ばす今川義元に対し、
宿敵であるはずの武田信玄と上杉謙信が
波状攻撃を仕掛けて来たー。

史実においては、信長の敵としても戦った
強大な勢力だー。

「ーーなるほどー
 これは、本来は起きぬ歴史であったということだな?」
今川義元がゆきに確認すると、
今日も忍の格好をしたゆきが「はい」と頭を下げるー。

「ーーふむー
 まぁ、儂が桶狭間で死んでいたというのであれば
 確かに、このようなことは起きなかったのであろうなー」

義元は、ゆきのほうを見つめるー

その視線に”暗い雰囲気”をゆきは感じ取ったー

”くそっ…歴史が変わったことによって
 義元にとって、俺の利用価値が無くなってきているーってことか…”

ゆきは心の中でそう考えるー。

”憑依”と”未来を知る”修ー。
それ故に、今川義元は自分を側に置いている、ということぐらいは
理解しているー

そして”用済み”になった途端に、修のような
”得体の知れない人物”は処分される可能性が高いー

それが、戦国時代というものだからだー。
この時代では、家族ですらも、謀略によって
殺し合う時代ー。

「ーーご安心下さいー。今川様ー」
ゆきはそう呟くと、義元に向かって笑みを浮かべるー。

「この先の未来が変わっても、
 俺がいればー
 何も問題はありません。
 何十、いや何百、何千の大名であろうと、
 俺が憑依して、葬り去って見せますー」

ゆきが悪い笑みを浮かべながら言うと
今川義元は「頼もしいー。そなたがいれば、儂は安泰だなー」と
笑みを浮かべたー

そしてー
その目には輝きが戻った気がするー

”修に対する利用価値”を、再度認識させることができたー。

ゆきは、そのまま「大勢に続けて憑依するためには
精神を集中させた方が良いので」と、自分の屋敷に
向かっていくー。

「ーーーーー」
ゆきが立ち去ったのを見て義元は笑みを浮かべるー

「ーー殿」
背後から、ふと”影”のようなものが姿を現すー。

「ーー案ずるなー。
 あの者にはまだ利用価値があるー。
 それだけのことよ」
義元は、自らの護衛を務めている”闇”の異名を持つ忍に
そう呟くと、
”闇”はそのまま姿を消したー。

家臣たちには修は桶狭間のあとに処分したと伝えてあるー。
義元本人や”闇”、そしてごく一部の人間しか、
”ゆき”=”修”であることを知らないー。

「ーー儂の夢を果たすまでー
 あやつには、”我が武器”となってもらうー」

義元は、自らの野望をその瞳に映しながら
静かに笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーぅ…」
屋敷に戻ったゆきが、その場に倒れ込むー。

”あまり長時間になると、この娘が目を覚ますからなー”
ゆきから抜け出した修は、
手始めに武田軍の陣営へと向かうー。

そしてー
軍略会議中の武将に憑依しー、
その場で武器を振るいー、
続けて兵士に憑依し、兵糧に火をつけー、
さらには、武田信玄の側近にも憑依し、
信玄を負傷させたー。

修の”憑依による攻撃”に、
武田軍はなすすべもなく撤退していくー。

その時間は、わずか30分ー。
今川軍は、”誰一人”兵士を使わず、
修がたった一人で、武田信玄の軍勢を撃退したー。

「ーーー……こ、ここはー…?」
屋敷では、ゆきが正気を取り戻して、
自分の格好を見て悲鳴をあげていたー

”おっとー”
戻ってきた修が、ゆきに憑依するー

「あっ…」
ビクンと震えて、再びゆきは、修に支配されると、
「ーー仲間がいりゃ、見張りも頼めるんだけどな」と、
ゆきの身体で苦笑いするー。

”さて…と、次は上杉かー”

再びゆきから抜け出すと、ゆきは気絶しー、
その場に倒れ込んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

武田信玄と上杉謙信の同盟軍をいとも簡単に
憑依により壊滅状態に追いやり、
予想以上の打撃を被った武田信玄と上杉謙信は
撤退に追い込まれたー。

「ーふははは…素晴らしいー」
今川義元は、修の憑依能力を利用して、
さらに勢いを強めるー。

既に壊滅状態にあった織田の軍勢に自ら
攻撃を仕掛けると、
ゆきに憑依している修に、更なる憑依を命じたー。

「ー儂に逆らうものは、誰であろうと許さぬ」

”力”は人を狂わせるー。
今川義元という人物が、元々こういう人物だったのかー
それとも、修の”憑依”という力に触れて
暴走し始めていたのかー。

ゆきにはー、
ゆきに憑依している修には分からなかったー。

元々の彼のことを知らないのだからー。

ある日ー
いつものようにゆきの身体から抜け出し、
修は武田・上杉と並ぶ有力大名の北条(ほうじょう)家との
戦に臨んでいたー。

と、言ってもいつものように命を懸けるわけではなく、
修自身は霊体として、北条家を攪乱するだけだー。

案の定、北条の軍勢と言えども、憑依の力の前に
対策を講じることなどできないまま、
そのまま壊滅状態に追いやられ、撤退に追い込まれたー。

「ーーーうっ…」
ゆきがうめき声を上げるー。
修が戦を終えて、ゆきの身体に戻ってきたのだー

「ーふ~~…これだけ長い間、この子の身体を使ってると
 自分の身体のように思えてくるなー」

そんな風に呟きながら、ゆきが部屋から外に出ると
今川義元の配下の兵士が、”殿がお呼びです”と、
伝えに来たー

「ーわかりましたー。すぐに向かいますー」
表向きは今川義元に仕えるくノ一として活動しているゆきが、
そのまま屋敷の方に向かうー。

そしてー
今川義元が待つ部屋に入ると、
ゆきは、信じられないものを目にしたー

「ーい…今川様…?」
ゆきの視線の先にはー
部屋の中に倒れ込んでいる今川義元の姿があったのだー。

「ーーーな…!?え…?」
ゆきは焦りの表情を浮かべながら
周囲を見渡すー

この部屋に、他に誰かー?

”な、なにが起こったんだー?
 い、いや、それよりもこの状況はまずいー
 まるでこれじゃ、俺が今川義元を手にかけたようじゃないかー?”

もちろん、ゆきの身体を捨てて逃げることはできるー。

だが、”元の世界に戻るため”、
この時代にある薬草や薬品ー
あらゆるものを使って、完成を目指している
”元の時代の戻るための薬品”は、
ゆきの屋敷にあるー。

ゆきの身体を捨てればまた1からやり直しで、
戦国時代からいつまでも、元の時代に戻ることはできないー。

「ーー!」
ゆきが身構えるー。
人の気配がしたー。

するとー
部屋の奥から、見知らぬ町娘のような女が姿を現したー。

「ーーーだ…誰だ!?」
ゆきが思わず叫ぶと、
その女は笑みを浮かべたー

「ーーーーそう驚くでないー。
 儂だー」

か弱い雰囲気の女はそう呟くと、
笑みを浮かべながら、今川義元が普段座っている場所に座ったー。

「ーーーな…今川様ー?」
戸惑うゆきに対して、女は笑みを浮かべながら呟いたー。

「ー憑依ー
 そなた以外にも、できるようだなー?」

にやりと笑みを浮かべる女のほうを見て、
ゆきは、驚きの表情を浮かべたー。

④へ続く

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いつもなら「最終回でした~☆」な、③ですが
今回は④まであります…☆!

戦国時代を舞台としたお話は以前にも、
”最初から戦国時代にいる人”たちのお話で
書いたことはありましたが
現代の人間が戦国時代に行ってしまって
そこで憑依とか入れ替わりとかをするお話は
これが初めてだった…と思います
(もしかしたら忘れてるだけかもしれませんケド…笑)

なので、私自身もとても新鮮な気持ちで書けましたし、
何作品書いても書いても、
まだまだ新しい世界が生み出せる喜び(?)みたいなものも
感じることができました~!☆

と、書いているうちにまた新しいネタが浮かんできましたが
それはまたいずれ…☆

今日もお読み下さりありがとうございました~!