憑依されたけど大丈夫①~霊~ 作:無名 肝試しを楽しむ高校生カップルー。 その最中に、彼女が”悪霊”に憑依される瞬間を 彼氏は目撃してしまうー。 しかし…!? -------------------- 男子高校生の倉野 雅史(くぎの まさし)は、 彼女の河井 静穂(かわい しずほ)と共にー ”肝試し”を楽しんでいたー 地元に幽霊な心霊スポットがあり、 そこに、好奇心旺盛な雅史は、静穂を連れて やってきていたのだー 静穂も、最初は「え~やだよぉ~」と言っていたが、 友達の一人に「大丈夫大丈夫、幽霊なんていないよ!」などと 散々押され続けた結果ー ついに折れて、雅史と一緒に、肝試しに やってきていたのだったー。 ”悪霊のトンネル”と呼ばれて 恐れられている心霊スポットー 夜になると、幽霊が出現する、などと噂されていて、 誰も、近寄ろうとしない。 そこに、雅史と静穂はやってきていたー 雅史は、授業態度はまじめで、 どちらかと言うと優等生に属するタイプ。 しかし、好奇心旺盛で こういう都市伝説のようなものを聞くと 確かめずにはいられないタイプー 彼女の静穂は 雅史の幼馴染で、小さいころから雅史と一緒に過ごしてきたー 眼鏡がトレードマークの可愛らしい雰囲気の美少女だー 明るく、なんでもできてしまうタイプであるものの、 守ってあげたくなるようなドジっぷりも時々ある、 不思議な感じ女子生徒ー。 「---ゴクリ」 雅史はトンネルの前にやって来るとー 唾を飲み込んだー 自転車でも通行できるトンネルで、 それほど距離は長くないー。 だが、夜になると不気味なうめき声が聞こえるだとか 幽霊が出現するだとか 色々な噂が飛び交っている悪魔のトンネル…なのだ。 「---ど、どうしたの?だいじょうぶ?」 静穂が、そんな雅史の方を見て、呟くー 「--な、、なんか…いざ見ると怖いなって…」 雅史が苦笑いすると、 静穂も苦笑いしたー 「自分から誘っておいて、入る前にビクビクしちゃうなんて…」 半分あきれ顔の静穂ー とは言え、静穂も、このトンネルから ただならぬ気配を感じていたー 昼間はごく普通のトンネルなのだがー 夜になると、凄く不気味な雰囲気を醸し出すー。 田舎なこともあってか、 夜になると人通りもほとんどなくなるためにー より不気味さを際立たせているー。 「--ちょ、ちょっとトイレ」 トンネルに入る前にトイレ!と、雅史は、トンネルの入り口から 少し離れた公園の公衆トイレに行こうとするー 「--も~!早く済ませてきてね!」 静穂は、眼鏡をいじりながら、 あきれ顔で言うと、 「ここで待ってるから!」と付け加えたー 雅史はぶるぶると震えながら 公園の公衆トイレで、トイレを済ませるー。 「ふぅ~…いざ、目の前にすると緊張しちゃうな…」 雅史はそんな風に思いながらも、 自分に言い聞かせるようにして呟いた。 「しっかりしろ俺! 幽霊なんていない、幽霊なんていない、幽霊なんていない」 雅史はそう呟くと、よし!と頬を叩いて、 そのままトンネルの方に戻っていくー。 時刻は19:30- お互いの両親には、ちゃんとここに来ることは伝えてあるし、 ちゃんと、21時頃までは帰る約束をしているー。 何も、悪いこともしていないー 堂々と、心霊スポットのトンネルを突破してーー 「あれ…?」 雅史が、トンネルの前に戻ると、 静穂の姿がないことに気づいたー 「--あ…あれ?」 雅史が戸惑うー ”先にトンネルに入っちゃった♡” LINEが届くー 「--おい!驚かすなよ…」 雅史は震えながらトンネルの中を見つめるー 周囲には誰もいないー これが、田舎の夜だー。 雅史は、「くっそ~…静穂め…」と苦笑するー 静穂は、急に、お茶目な行動に出ることも多いー 今の行動も、静穂らしい行動と言えたー トンネルに入る前にビビッて、トイレに向かった雅史を見て 雅史をもっと怖がらせちゃお!と、トンネルの中に 先に入ったのだろうー。 雅史は、くそっ、と思いながら さらに追加で届いたLINEを確認した。 ”トンネルの中間ぐらいで待ってる~”と、 静穂からのメッセージ。 「くぅぅ…」 雅史は”静穂に負けるわけにはいかない”と、 持ってきていた小さなライトを手に、 トンネルの中を照らしたー 「(静穂のことだからーきっと……… どこかから急に飛び出してくるぞ…)」 そんな風に思いながら雅史は、 トンネルの中を進むー 一応、照明はあるのだが、 既に古いのか、かなり暗くー昼間は そんなに広いトンネルではないため、ある程度入口と出口から 光が見えるのだが、夜になると、本当に真っ暗に、ちょっとだけライト、 みたいな感じになってしまっているー 心霊スポットとして知られるほか、 ”変質者”が出る場所としても知られているー これだけ暗いと、確かにそういう、 ヤバいやつからすれば、行動しやすいのかもしれない。 「----」 冷たい空気ー 異様な空気を感じるー 外よりも重苦しく、 負の感情すら感じるような、 そんな空気だー 「びびるな、俺…」 雅史は呟くー 外と空気が違うはずがないー トンネルの中だから、若干そういうことはあるかもしれない。 けれどー ”邪悪なオーラを感じる”とか そんなことは、あるはずがないのだ。 「----」 ”心霊スポットにいる” そういう、気持ちが、こういう恐怖心を増長させているのだろうー。 そんな風に、思う雅史ー その時だったー 薄暗いトンネルの先の方に、人影が見えたー 「----」 静穂かーー? それとも別の人間かー? それともーーー? そんな風に思いながらライトで照らすとー 静穂が背を向けて立っていたー。 「--しず・・・---」 静穂に声を掛けようとしたその時ー 雅史は異変に気付いたー 「--!?!?!?」 静穂の周囲に、黒い煙のようなものが 蠢いているー 「(な、、なんだ…?)」 静穂の身体がビクッビクッと時々震えているように見えるー。 やがて、黒い煙は”幽霊”のような形を作りー 静穂の方に”突撃”したー。 静穂が背を向けているため、 黒い煙のようなものがどうなったのかは分からないがー ”消えた” 「--(今、静穂の中に…?)」 雅史はそんな風に思ってしまうー 黒い煙が静穂の口か、目か、鼻かー そのあたりから、中に入っていった気がするのだー。 「---し、、静穂…?」 雅史がライトで静穂の方を照らしながら 恐る恐る声を掛けるー ”悪霊に憑りつかれたー” そんなことがあるはずがないー そう、思いながらー 「----あ、」 静穂が振り返るー 静穂は、いつものように微笑んだー 「雅史~!遅かったね~? 急にわたしがいなくなって ビクビクしながら来たんでしょ~?」と、 冗談を口にしながらー ほっと、胸をなでおろす雅史ー。 静穂に、黒い煙のようなものが入っていったように見えたが 見間違いだったようだー。 「--…あ、、、あのさ」 しかしー ”そう見えた”だけでも雅史は不安だったー 「今…静穂の周りに黒い煙みたいなものがあって、 それが静穂の中に入っていったように見えたんだけどー」 雅史が言うと、 ニコニコしながら、雅史の前を歩いていた静穂が立ち止まったー 「し…静穂…?」 雅史も立ち止まるー 不気味なトンネルの出口付近で、 重い空気が流れるー。 「------見たんだ?」 静穂が低い声で呟くー 「え……あ、、、え…」 雅史の声に恐怖の感情が混じるー 「---クククク……」 静穂が振り返ったー そしてー 目を、一瞬、赤く光らせると、 静穂は呟いたー 「--この女に、憑りついたところを…見たのか?」 静穂がゆらゆら歩きながら近づいてくるー 「ひっ!?」 雅史は思わず尻餅をついてしまうー 「--だったら生かしてはおけないなぁ!!!!」 静穂が大声でそう叫ぶとー 雅史は「うわあああああああああああああ!」と悲鳴を上げて 目を瞑ったー だがー 何も起きなかったー 「--な~んちゃって!」 静穂が笑うー。 「-ーーーひ、、、え???」 雅史が目に涙を浮かべながら言うと、 静穂は笑ったー 「--幽霊なんて、いるわけないでしょ?」 笑う静穂ー 「-ーーーな、、な、、な、、なんだよ!びっくりさせるなよ!」 雅史が言うと、 静穂は「ごめんごめん」と苦笑いしたー 「---で、、でも…黒い煙みたいな…幽霊みたいなやつは…」 雅史が震えながら言う。 あれは、見間違いではない。 確かに、静穂の周りに黒い霧のような「幽霊」のような 謎の物体が存在していて、 それが静穂に入り込んだのを見たー。 「---ーーわたしの周りをウロウロしてたやつだよね?」 静穂が笑う。 やはり、静穂にも見えていたのだー。 「-や、、やっぱ静穂…幽霊に憑りつかれたりされたんじゃ…?」 雅史が震えるー 「--いやいや、ただの煙でしょ~?」 静穂が笑いながら、雅史の肩を叩く。 その手はひんやりと冷たいー。 雅史は、そんな”怯える必要のないこと”にまで怯えてしまうー 「--え、、ほ、、ほら、幽霊に憑依されるとか… そういう…」 雅史がさらに続けると 静穂は笑ったー 「--ホラー映画とか見すぎなんじゃない?」 とー。 「-そ、そ、そ、そんなことねぇよ」 雅史は、そこそこホラー映画やホラーゲームの類が好きだー そのせいで、”静穂が憑依されたのではないか”などと おかしな妄想をしてしまうのかもしれないー。 「---憑依されたけど、大丈夫」 静穂がにっこりと笑うー。 「---え」 雅史は震えながら静穂のほうを見た。 「-な~んちゃって。 ただの煙だよ~!砂ぼこりとか、何かじゃない?」 静穂は笑いながらトンネルの出口の方に向かっていくー。 雅史も「お、置いていかないでくれよ!」と震えながら 静穂についていくー ようやくトンネルから出た雅史と静穂。 雅史は「大丈夫か?本当に何ともないのか?」と 不安そうに静穂のほうを見るー 静穂に”黒い霧”のようなー 幽霊のような物体が入っていったように見えるー もしこれがホラー映画だったら 静穂は悪霊か何かに乗り移られてー …なんて、展開になるのだろうー。 「だいじょうぶだってば~!わたし、何ともないよ? 自分から誘っておいて、そんなに怖がるなんて…」 静穂は苦笑いを浮かべるー。 「--ほ、ほんとに??? 憑依されたりとか、されてない?」 雅史がなおも静穂を心配するー 「--大丈夫だってば~~!! もしあの黒いのがオバケとかそういうのだったとしても ほら、わたしは元気だし、正気だよ!」 静穂が身体を動かしながら微笑むー 「な、、ならいいけど…」 雅史は不安に思いながらも、 それ以上は確認せずに、深呼吸してようやく落ち着きを取り戻したー 「---はぁぁ…緊張したらお腹空いてきた」 雅史のそんな言葉に、静穂は 「久しぶりにごはん!いいねいいね!いこっ!」と 微笑んだー 雅史は、時計を見るとー ”ファミレスか何かで静穂とご飯を食べてから帰宅すれば だいじょうぶだな”と、心の中で考えてからー 静穂と共にファミレスに向かったー 雑談しながらファミレスに向かうふたりー その最中ー 雅史はふと、さっきの静穂の言葉を思い出すー ”久しぶりにごはん!いいねいいね!いこっ!” ファミレスの入口にたどり着いたところで、 雅史は思わず立ち止まるー ”久しぶりにごはん!” ひさしぶりにーーーー ごはんーーー????? 雅史は、目の前で微笑む静穂を見て 凍り付いたー ②へ続く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 皆様こんにちは(?)デス! 先月からあっという間の1ヵ月でしたネ! 確か、先月に「来月も暑い暑い言ってる気がします」と 書いたような気がしますが、 やっぱりまだ暑いですネ~笑 でも、少しだけ最近はマシになったような気も…?? 今回のお話は”憑依されたけど大丈夫”というお話デス! 彼女が憑依されているのか、 本当に大丈夫なのか、イマイチ分からない状態の 不穏な空気のまま②へ…☆ ちょうど夏ですし、ちょっぴりホラーな感じの 作品を選んでみたので②以降もぜひ、 不気味な空気を楽しんでくださいネ~! |