後輩が皮にされた①~目撃~ 作:無名 下校中の男子高校生はー ”信じられない光景”を目撃してしまう。 それはー 後輩の女子が、”皮”にされる瞬間だったー。 --------------------— 「--今日はもう遅いから、ここまでにしましょう」 文化祭目前ー 高校では、演劇部の劇の練習が進んでいたー 「ふ~、今日もお疲れ様でした!先輩!」 後輩で、1年生の女子生徒・沼澤 姫奈(ぬまざわ ひめな)が微笑むー 「--沼澤さんも、お疲れ様」 2年生の男子部員・根尾 修平(ねお しゅうへい)が、笑いながら返事をするー。 もうすぐ文化祭ー。 修平や姫奈が所属する演劇部では、 連日、放課後に劇の練習が行われていたー 毎年、文化祭直前にもなると、 文化祭で何か出し物をするような部活は、忙しくなる。 修平らが所属する演劇部も、そんな部活の一つだった。 「あ、根尾くん!ちょっといいかな?」 部長の島崎 莉菜子(しまざき りなこ)に呼ばれた修平ー。 修平の役の台詞に少し修正を加えたい、 ということで、莉菜子が申し訳なさそうに、 修平にお願いをするー。 そうこうしているうちに、 「--あ、じゃあ、わたしはお先に失礼します~!」 と、後輩の姫奈は、帰る準備を終えて、先に部室から出ていくー 他数名の部員も、姫奈の後に続くー。 「--うん…じゃあ、やってみるよ」 修平が言うと、 莉菜子は「ごめんね」と両手を合わせて、申し訳なさそうに 台詞に変更を加えたー。 莉菜子は、小さいころから色々な小説を読んでいるタイプの女子で、 それ故か、物語を作るのがとても上手だった。 去年のおわりぐらいまでは、顧問の先生が脚本を考えていたのだが、 今年に入り、莉菜子が部長になってからは、 先生にお願いされる形で、莉菜子が脚本を担当しているー 「---あ、呼び止めてごめんね」 莉菜子が言うと、 修平は「全然問題ないよ」と、答えながら 部室の片づけを莉菜子と共に始めたー ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「遅くなっちゃったなぁ~ でもまぁ、こういう時間も楽しいし」 修平は、スマホの時計を確認すると、 そう呟きながら、家へ向かって歩き始めたー。 「-----」 修平が、いつものように、家への道を 歩くー 特に何も起こらずー そのまま帰宅するだったはずの修平ー しかしー 「きゃあああああああああああ!」 悲鳴が、聞こえたー。 「--え」 修平が、悲鳴の聞こえた方向を見つめるー。 近くの路地からだー。 「---……」 修平は一瞬”そのまま聞かなかったことにしようかどうか” 迷ったー。 誰だって”危険”に自ら身を投じることに、躊躇するのは 当たり前のことだー。 しかしー 修平は、すぐに首を振ると、 その路地の方に向かって歩いて行ったー スマホを手にー いざとなれば、すぐに通報するなり、 動画を撮影するなり、出来る準備をしてー 「----!!!!」 修平が、裏路地を覗き込むとー そこに広がっていた光景は、 修平が予想もしない”恐ろしい”光景だったーーー 「--あっ…あっ…あぁああっ…」 「---!!!!」 しかもーー 驚いたことに悲鳴をあげていた女はーー 修平と同じ演劇部に所属する女子生徒・姫奈だったー。 「--ああ、、、あ」 姫奈がもがくー。 姫奈の背後に男が立っているー 修平は、あまりの出来事に 驚いて、声も出ずー スマホを握りしめたままー その様子を見守ることしかできなかったー 人間、あまりの恐怖に直面してしまうと、 身体が動かなくなるー と、聞いたことがあるー。 修平の今の状況は、まさに”それ”だったー 「----お前はーー 俺の”ファッション”になるんだ!」 男の声が聞こえたー 「---!!!!!!!!!」 修平は、さらに信じられない光景を目の当たりにしたー 男が、姫奈を壁際に押し付けてー 二人とも、修平が覗いている位置からは、 背中が見える状況になったー そしてー 姫奈が後頭部から”引き裂かれたー” 「--!?!?!?!?!?!?」 修平は、 姫奈が刃物か何かで引き裂かれたー つまりー ”人殺し”の現場を目撃してしまったと思ったー だがー それにしては何かがおかしいことに気づくー 修平は、あまりの光景に スマホは握りしめたまま、動画を撮影することも、 通報することも出来ないままー ゴクリと唾を飲み込んだー そうー おかしいー 刃物で姫奈が真っ二つに引き裂かれたのならー 血が出たりするはずだが、 姫奈の身体から血が出る様子はなくー しかもー 着ぐるみショーの着ぐるみのように、 姫奈の身体が、布のようなー そんな質感になってー 地面に崩れ落ちたのだー まるで、 ”脱ぎ捨てられた洋服”のようにー 男は一人、背中を向けたまま笑うと、 「--くくく…お前は俺のファッションだ」と、 一人呟いたー。 それからはー ”さらに現実離れした光景”を 見てしまうことになったー 男が、”着ぐるみのような状態”になってしまった 姫奈をまるで、着ぐるみを着るかのように、 身に着けていくー (な…何をしてるんだ…あいつ…?) 修平は、そう思いながらもー ”沼澤さんを助けないと…”と思いながらも、 身体が恐怖で動かなかったー やがてー 姫奈の”皮”を男が着終えるとー 男は、姫奈そのものの姿になったー 拳を握りしめたり、開いたりー 脚を動かしたりー 「あ、、、あ~」と、まるで”マイクテスト”をするかのように 声を何度か出してみたりー 「---ククク…よし」 姫奈が、そう呟いたー 「---え…」 修平は、尻餅をついてしまうー (変な男が、沼澤さんを着ぐるみのようにして 男が沼澤さんを”着て”沼澤さんになったー?) 「---はぁ~~~あ、 これで俺も明日から女子高生だ! ひひ、、うひひひ、ひゃははははははは!」 聞いたこともないような、姫奈の不気味な声ー 姫奈が、振り返ろうとしたー 修平は、あまりの恐怖に その場から猛ダッシュで逃げたー。 人生で、一番必死に走ったかもしれないー そんな風に思えてしまうほどに、 本当に、肉体の限界まで走ったー 帰宅した修平は、 無意識のうちに身体を震わせていたーー 修平は、特別臆病な性格ではなく、 ごく普通の男子高校生だー だがー 見てしまった光景が、 あまりにも現実離れしていてー あまりにも、受け入れがたいおかしな光景だったことからー 修平は、恐怖を感じてしまったー 「---ぬ、、沼澤さん…」 修平は、不安に思いながら、姫奈に対してLINEを送ってみるー ”あのさ、、文化祭のことだけど…” と、他の話題を振るようにしてー 「----」 姫奈から返事はないー 既読もつかないー 「--さ、、さっきのは…」 修平は震えるー 何かの見間違いであってほしいー 普通に、いつものように、返事を送ってきてほしいー そう願っているとー 「---!」 3分ほどして”既読”がついたのだー 「---!」 そして、すぐに返事が来たー ”どうかしましたか~?” ごく普通の返事ー 姫奈と特別親しいわけではないが、 時折、雑談のやり取りをしたり、 部活の相談をしたりすることはあるー。 特に、それらの時と、姫奈の雰囲気は変わらないー ”あ、いや、僕の台詞、部長から言われて変更があったからさ、 沼澤さんとの会話シーンでも、僕の台詞いくつか変わってるから 一応連絡しておこうと思って” 修平は、そう返事を送るとー ”わざわざありがとうございます!どのシーンですか?” と、顔文字つきで返事が来たー ”----” 修平は、姫奈とやり取りしながら思うー ”いつもの沼澤さんだー” とー。 何も、違わないー 何かあったならー 誰かに襲われたならー こんな普通にやり取りはできないはずだー。 修平は、そう思いながら 姫奈とのやり取りを終えるー ”おやすみなさい!” 姫奈からの最後の返事ー。 男が姫奈を着てー まるで、姫奈を乗っ取ったように見えたー だがー 今の一連のLINEでのやり取りに ”おかしな部分”は存在していなかったー ”ごく普通の”会話だったー。 他人が姫奈に成り済ましているのであれば このような自然な会話は出来ないはずだー。 「----…僕が何か見間違えただけか…?」 修平はもう一度、先ほどの光景を思い出すー だがー どう考えても答えが見当たらないー 「----」 ”きっと僕は疲れているんだ” そんな風に思いながら、修平は、その日、眠りについたー ・・・・・・・・・・・・・・・・ 翌朝ー 学校に登校してきて、廊下を歩きながらも 修平の表情は曇ったままだったー。 1年生の姫奈は、2年生の修平らとは 普段は接点はあまりないー 1年生と2年生の教室の位置は違うし、 演劇部の活動以外では、顔を合わせない日もあるー。 だがー どうしても気になってしまう。 昨日、見てしまった まるで”悪夢”のような光景が どうしても頭の中に浮かんでしまうー。 ”何かの見間違いだー” そうは、思いながらも、 自分の目が、 自分の耳がー 実際に見て・聞いた、あの光景を 忘れることが、どうしても出来ないー。 「----」 昼休みに入ると、修平は1年生の教室がある東棟へと向かったー。 そして、姫奈のいるクラスを覗くー。 「---」 姫奈はーー 普通に、教室にいた。 友達と楽しそうに雑談しているー 「--あ!満田(まんだ)くん」 修平が、偶然通りかかった演劇部メンバーの一人・満田を 見かけて、声を掛けるー 「あ、先輩!どうしたんすか?」 姫奈と同じクラスの満田は、修平が1年生の教室の近くに 来ていることを不思議に思ったのか、少し驚いた表情を浮かべたー 「--沼澤さん、いるかな?」 ”いる”のは確認したが、 何食わぬ顔で聞く修平ー。 「--え?あぁ、いますよ。 あ、まさか先輩!沼澤さんのことー」 人を揶揄うのが好きな後輩・満田が ニヤニヤしながら修平を見つめるー 修平は少し顔を赤らめながら 「違うって、そういうのじゃなくてさ、 僕の台詞が変わったから、修正の台本、 渡そうと思って」 と、理由をつけたー。 これは”嘘”ではないー。 本当は部活の時に渡せばいいのだが、 ”用件がある”風を装うために、 わざわざ台本をちゃんと持ってきたのだー 「あぁ、それなら、俺が渡しておきますよ」 満田の言葉に、 修平は”いや、僕が自分で”と、言いそうになったが、 あんまりここで食い下がっても逆に変に思われてしまう、と 考えて、「じゃあ、お願いするよ」と 修正の台本を手渡したー。 「---じゃ、また放課後、練習で」 満田が、修平に対して言うー。 修平は「うん」と答えながら、 立ち去ろうとする満田にもう一度声を掛けたー 「--あ、沼澤さん、今日、変わったことない?」 とー。 どうしても、聞かずにはいられなかったー 「え?」 と、満田は首を傾げながらも 「--別に、ないっすよ」と答えて そのまま教室に戻っていったー ”やっぱりー 僕の見間違えだよな” 修平は、そんな風に、自分で自分を納得させるー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 放課後ー 演劇部の練習が始まるー 姫奈がやってきて 「先輩!昼休みは台本、ありがとうございました」と 礼儀正しく頭を下げるー 心なしか、顔が少し赤らんでいるような気がしたが きっと、気のせいだろうー。 「--あぁ、うん。問題ないよ。 もう文化祭も近いし、少しでも早くって思って」 修平が言うと、姫奈は嬉しそうに微笑んだー その様子を後輩の満田がニヤニヤしながら見つめているー 満田は、別に姫奈と特別な関係ではなくー 先輩である修平と姫奈のことをむしろー応援、いや、 揶揄うような感じで、楽しんでいるー。 「---ところでさー」 修平は、少しだけ躊躇ったあとに ”ずっと気になっていること”を口にしたー。 「--沼澤さん、昨日、何かあった?」 修平は、”いつまでも気にするより、直接聞くのが一番早い”と 考えた結果、 そう、言葉を口にしたのだったー 「---え」 姫奈は一瞬驚いたような顔を浮かべると、 「--ふふっ」 と、笑ったー 「---」 修平は、緊張した面持ちで姫奈の言葉の続きを待ったー ”何も、ないですよ” 姫奈が、そう言ってくれることを、願ってー。 ②へ続く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 解体新書様では初めての”皮”モノの掲載になりました~! 最初は別の”憑依”を考えていたのですが 「そういえばまだ解体新書様のページの方では皮モノを出してなかった…!」と 気付いたので今回は皮モノにしました~! (ちょうど最近、憑依も続いていましたからネ…!) 今回のお話は、 少し王道の皮モノとは異なり、 ”後輩が皮にされる場面を目撃した”けれど、 翌日以降もその子は普通に振る舞っている…という 不気味で怖い感じのお話デス…! どうなっていくのか、次回以降もぜひ楽しんでください~! |