心の密室①~幽閉~
 作:無名


友達と遊びに来ていたはずの女子高生は、
”遊園地”で目を覚ました。

出口のない遊園地ー

恐るべき真相と、
その裏に隠された憑依とは…?

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「----あれ…?」

ふと、目を覚ますと、
観覧車が目に入ったー。

「---う~ん…」
高校2年生の田上 樹奈(たがみ きな)は、
当たりを見回す。

「遊園地…?」

樹奈はぼんやりした意識の中、
そう呟いた。

自分がなぜ遊園地にいるのか、
自分がなぜ眠っていたのか
状況をイマイチ把握できないー。

「---……」
樹奈が立ち上がる。

昼間の遊園地。
ちょっと曇ってはいるけれど
雨は降っていないー

それなのにー

”遊園地には誰もいない”

人の気配が全くないのだー。

静まりかえった遊園地。
けれども、観覧車は回っているー

アトラクションは、普通に、動いているー。

「…ど、、どういうこと…?」
樹奈は状況を整理しようとした。

今日は土曜日ー。
そう、友達2人といっしょに
遊園地に遊びに来ていたー。

そこまでは覚えている。

最初にあの観覧車に乗って、
ジェットコースターは混んでいたから後回しにして
メリーゴーランドに乗って、
次にパイレーツとかいう海賊船がゆらゆらするやつに乗って、
お昼にしてー

それから…?

樹奈は表情を歪めた。

それからー
どうしたー?

お昼にパフェを食べて
”もう一度ジェットコースターを見に行こうか~
 そろそろ空いてるかも”
なんて会話をした気がする。

それからー?

「---……そ、そうだ」
樹奈はスマホを取り出す。

状況がイマイチよく分からないけれど
とにかく友達の茉鈴(まりん)と佐子(さこ)は
心配しているはず。

とりあえず、連絡をして合流しよう。

LINEの画面を開く樹奈。
そこには、茉鈴と佐子との、
”いつものやり取り”が
表示されていた。

「--」
樹奈は慌てて
”ごめん、今どこ?”とLINEを送った。

しかしー

「あれ…?」
上手く送信ができないのか、
文章を入力し終えて送信しても
トーク画面に表示されない。

「おかしいな…」
ふと、スマホの画面を見ると
ネット接続が出来ていないことに
樹奈は気づいた。

「う~ん…」
困り果てた様子で周囲を見渡す。

けどー
誰もいないー

アトラクションだけが不気味に動き、
人の気配が一切ない。
人の声もしない。

「--な、、なんか…おかしい」
樹奈が呟いた。

そもそも、自分は何で眠っていたのだろう。
遊園地で何か事故でもあったのだろうか。

例えばそうー
テロとか、そういう類の…。

「--え~っと…」
不安になった樹奈は、
スタッフのいる案内所を目指した。

この遊園地は”思い出の場所”

樹奈は小さい頃から
遊園地が大好きで、
よく家族に連れてきてもらっていた。

小さい頃から何度も何度も
通っている遊園地。

それが、ここだー。

だから、場所は良く知っている。
小さい頃も迷子になってしまったときに
案内所で泣きじゃくる自分を
スタッフの人は優しく慰めてくれたー。

「--困ったときは、聞くのが一番」
樹奈はそう呟いて、
案内所の中に入ったー

だがー
そこにも、誰もいなかった。

「えーー…」
樹奈は唖然とする。

”人がいない”

「どういうことー?」
樹奈は時計を見る。

時計の針は2時30分を示している。
一瞬、寝ている間に既に閉園時間を
迎えてしまったのではないか、とも思ったが
そんなことはなかった。

外が明るいということは、まだ昼間ー
つまり、14時30分なのだろう。

「---…と、とにかく、外に行こう」
樹奈はそう呟いた。

”この遊園地にいちゃいけない”
そう思ったー

遊園地の外に出て
誰かに、このことを伝えようー

”遊園地に誰もいないなんて、おかしい”

樹奈は遊園地の出口に向かって
走ったー

そしてー

「----!!」
遊園地の出口ーーー
そこに辿り着いた樹奈は、
困惑したー

「なにこれ…」
樹奈は目の前に広がる光景に
驚きを隠せなかった。

遊園地の出口から先はーーー
”紫色の空間”が広がっていた。

まるで異空間のような入口で、
何もない空間。

地面も途切れていて、
本当に、何もない。

ブラックホールかのように、
不気味な渦巻く紫の空間が
そこにあるだけだった。

「---う、、うそ…」
樹奈は恐怖の表情を浮かべる。

”遊園地の外に出れない”-?

この先に進んだらどうなるのだろう。

明らかに”無事では済まない”雰囲気だ。
遊園地の出口から先の
地面は切れていて、
全てが紫の空間になっている。

落ちたら、二度と上がって来れない気がするー。

もちろん、紫の空間に入れば、
それを潜り抜けて遊園地の外にワープのような
感じで出ることが出来る可能性も十分にある。

けどー。
樹奈は、来た方を振り返った。

「なんだか分からない以上は、
 危険だよね…」

紫の空間に足を踏み入れれば
どうなるか分からないし
そもそも何が起きてるのか
分からないー

もうちょっと、遊園地を調べてからのほうがいいー

樹奈はそう思って
遊園地の方に歩き始めた。

スマホは、何をしても連絡がつかないし
ネットも接続できない。
完全に”外部から遮断”されてしまった感じだー。

メリーゴーランドの馬たちが
不気味に動いているー。

もちろん、そこには誰もいないー

コーヒーカップにも、
おばけやしきにもー
どこにも、
人が、いないー

「---…たすけて…」
不安になってきた樹奈は
LINEの画面を開いて呟いた。

彼氏の清二(せいじ)。

2か月前から付き合っている彼氏だ。
とても優しくー
向こうから告白されて付き合いはじめたー

そんな清二に、助けてほしい。
そう思いながら、
樹奈は清二にLINEを送ろうとした。

”たすけて”

とー。

どうせ送信できないことはわかっている。

けどー

「--!?」
樹奈は驚く。

ダメもとでメッセージを送ったところ、
送れたのだー

すぐに既読がつく。

「--!?!?!?」
樹奈は驚いて、すぐに他の二人の友達
茉鈴と佐子にも連絡を送るー。

が、この2人へのメッセージは
送信することができなかった。

”どうしたんだ!?”

すぐに彼氏の清二から
返信が来た。

「清二…」
樹奈は泣きそうになりながら
すがる思いで清二にメッセージを返した

”遊園地に、閉じ込められてるの”

とー。

”ど、どういうことだ?”
清二はすぐに返事をくれたー

そしてー
心配した清二から、電話がかかってくる。

”どうした?大丈夫か?”
清二の声ー。

「清二…たすけて…
 遊園地に、、、誰もいなくて、、
 外に出ようとしても、外がなくなってて…」

樹奈は泣きながらそう説明した。

”ど、どういうことだ?”

清二は困惑した声で答える。

樹奈の説明を聞いただけじゃ、
当然、理解できないだろう。

”落ち着いて。今、どこにいるんだ?”
清二が言う。

その言葉に、樹奈は
「遊園地の…観覧車の前」と呟いたー

人の気配はないー
虫の鳴き声も聞こえないー

聞えるのは、無機質に動く
アトラクションの音だけー。

”………”
少しだけ沈黙したあとに、清二は答えた。

”わかった!俺もこれからそっちに行く!
 それまでそこでじっとしてるんだ”

清二は叫んだ。

「うん…待ってる」
樹奈は、そう呟くと、
清二の到着を心待ちにしながら
近くのベンチに座るのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ~!楽しかった!」
樹奈の友人、茉鈴が笑う。

「ほんと!ジェットコースターも乗れて
 ラッキーだったね!」
もう一人の友人、佐子が笑う。

時間は17時30分ー
遊園地を満喫した3人は、
帰路につこうとしていた。

「----ふふふ」
そこに、樹奈もいた。

樹奈は笑みを浮かべている。

「そういえば、晩御飯はいいの?」
茉鈴が言う。

樹奈は「うん」と答えた。

佐子は少しだけ首をかしげる。

当初、3人は、遊園地で遊んだあと
晩御飯を食べて解散する予定だった。
晩御飯を食べることを言い出したのは、樹奈だ。

「---このあと、
 た~っぷり楽しまないといけないから…
 ふふふ…」
樹奈は他の2人から分からないように
自分の胸を揉むと、ニヤリと笑みを浮かべた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

樹奈は、ひとり、誰もいない遊園地で
彼氏の清二が来てくれるのを待っていたー

いつもは賑わっている遊園地。

しかし、そこには、誰もいないー。

観覧車も、
メリーゴーランドも、
ジェットコースターも動いている。

けれどもー
そこにはー
誰も、いない。

「---うっ!?」
樹奈は突然、自分の身体に
ゾクゾクっという得体の知れない感覚が
走って、変な声を出してしまう。

「--な、なに、今の?」
とっても気持ちよく、不気味な感覚。

樹奈は、さらに不安になる。

清二の到着を待てず、
樹奈は不安になって周囲を見渡す。

不気味なアトラクションの音だけが
響き渡るー

人のいない、遊園地ー。

2時30分を示す時計ー。

ふと、樹奈は不思議に思う。

”時間が進んでいない?”

「---時計、壊れてるのかな?」
遊園地内の時計がさっきから
進んでいない。

樹奈は、自分のスマホの時間を確認するが、
やはり、2:30を示したままだった。

相変わらず、友達の茉鈴と佐子とは
連絡がつかない

”--もうすぐつくからな”

彼氏の清二からLINEが届く。

早く来てー。
樹奈は、祈るようにして
清二の到着を待った。

「んっ…♡ あぁ… あっ♡ あっ♡」

突然、得体の知れない快感に
再び襲われる。

何もしていないのに、
アソコにものすごい刺激を感じるー

必死にこらえる樹奈。

しかしー
樹奈のアソコは濡れはじめてしまっていた。

「んんん…な、、な、にが起きてるの…?」
樹奈は目から涙をこぼしていたー

あまりの恐怖に狂ってしまいそうだった。

「--お待たせ」
背後から、聞き覚えのある声がした。

「--清二!」
樹奈はすがる思いで振り返る。

そこには、彼氏の清二がいた。

「大丈夫か?」
清二は樹奈を心配しながら近づいてくる。

樹奈は清二に抱き着いて、
友達と一緒にいたはずなのに目が覚めたら
こんなことになっていたことー
そして、遊園地に誰も居ないことー
外に連絡もつかないことー
自分の身体が何かおかしいことー

不安なことを全て、清二に伝えたー

清二は優しく、冷静に
パニックになっている樹奈を慰めた。

「--確かに、こんなところじゃ、怖いよな」
清二は呟く。

そしてー
清二は優しく樹奈の手を掴んだ。

「--でも、もう大丈夫。
 いっしょにここから出よう」

「--うん」

樹奈は清二の手を掴んで
清二と共に歩き出したー

遊園地の出口に向かって歩く2人。

「--そういえば、ここの出口から先が
 紫色の渦みたくなってて
 外の世界がないみたいな感じになってたんだけど…
 清二が来るときは、何ともなかった?」

樹奈が不安そうに聞くと
清二は「確かに何かヘンな感じだったな…」と答える。

樹奈はその言葉に不安を感じながらも、
清二が入って来れたということは
外に出れると言うことだと、
そう感じたー

そしてー
樹奈と清二は、
遊園地の出口に辿り着いた。

そこにはー
先ほどと同じように、出口の先の世界が
まるで途切れてしまったかのような
”紫色の無”が広がっていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自宅ー

時計は20:30を示しているー

彼女は自分の身体を机の角に押し付けて
大声で喘いでいたー

「んあぁぁっ♡ きも、、きもちいいぃ♡ えへへ♡」

喘いでいるのは、樹奈ー。
樹奈は別人のように、顔を真っ赤にして
歪んだ笑みを浮かべていたー

そして、呟いた。

”そろそろ、邪魔だな… 消しちゃうか”

とー。

②へ続く

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コメント

「心の密室」をお読み下さりありがとうございます~!

解体新書様では月に1度ほど、作品を掲載させて
頂いていますが、あっという間にこの前から1か月が
経過してしまいましたネ…!
時間の経過の早さを感じます!

今回のお話はちょっと不思議な感じの憑依モノで、
不気味な雰囲気の漂う作品ですネ~!

いつも通り、掲載作品を選ぶ際に、
私自身も読み直してみましたが、
不気味な感じが漂っていて、
読んだあとは(私の作品なのに)妙な気分に…☆

憑依モノなので、何が起きているのかなんとなくお察しの
皆様も多いと思いますが、
”不気味な遊園地”の正体をぜひ、次回の②で、
見届けて下さいネ~!

ありがとうございました~!