デス・マンション②~狂気~
 作:無名


謎の豪邸に閉じ込められた5人の女子高生。

憑依された一人は誰なのか。
戸惑う女子高生たち。

5人のうちの一人が犠牲となってしまい、
残るは4人ー。
そして、2日目の朝を迎えたー。

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綾川 真登香(あやかわ まどか)
生徒会長。心優しい性格。

増本 悠子(ますもと ゆうこ)
ショートヘアーの活発系女子

藤井 早紀(ふじい さき)
気弱な、大人しい女子生徒。

乃木 瑞帆(のぎ みずほ)
協調性に欠ける、自分勝手なお嬢様


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廊下を歩きながら”憑依された少女”は笑う。

「バカなヤツらー」
あざ笑うように、吐き捨てる少女。

壁にかけてある、古びた写真を見つめる。

裕福そうな家族の写真。
父と母と、息子。
息子は、高校生ぐらいだろうか。

「---ボクは、失われた時間を取り戻す」
そう呟く少女は、
スカートの中に手を突っ込んで、
自分の身体の感触を確かめた。

「今はーー”わたし”の身体だもん…
 触り放題…くふふふふふっ♡」

そう呟いて、少女は皆のもとへと向かったー。

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「ね、ねぇ…」
悠子が真登香に声をかけた。

「---なに?」
真登香が振り返る。
いつものような笑顔は、そこには無い。

昨晩ー
閉じ込められた5人のうちの一人、
天然系少女の幸代が死んでから、
真登香は、豹変した。

優等生として振る舞っていた真登香。
しかし、心に余裕が無くなり、
自分が生き残ることしか考えられなくなった真登香は、
隠していた本性を露呈させたー。

人間、緊急時に本性が出る、なんて言われているー。
真登香の状態は、まさにそれだった。

「--昼食…どうしよっか?」
悠子が訪ねる。

昨日、真登香が”みんなの持っている食事を分けて計画的に食べる”ことを
提案した。

だから、悠子は、その真登香にどうするか、聞きに来たのだった。

応接間のような部屋では、
気弱な早紀と、お嬢様の瑞帆が残った食料を前に思案していた。

「ーーは、早く帰りたい…」
早紀が震えながら言う。

「--ー大丈夫よ。助け、来るから」
瑞帆が吐き捨てるように言う。

早紀は、元々臆病な女子生徒。
活発女子の悠子が誘って無理やり連れてこなければ、
ここには居なかった。

「---ま、真登香!」

生徒会長の真登香と活発女子の悠子がやってきた。
昼食について相談するために、悠子が、彼女を呼びに行ったのだ。

「--あら?責任放棄の生徒会長さん?
 ようやくお出まし?」

今日は今朝からずっと寝室の方に引きこもっていた真登香を見て、
瑞帆が蔑むように笑う。

「---うっさいわね」
攻撃的に言う真登香。

真登香は食糧を手に持ち、
「これは、わたしが食べるから」と
残りの3人に告げた。

「え…ちょ、ちょっと…みんなで食べるんじゃ…?」
悠子が戸惑いながら聞くと、
真登香は答えた。

「--あなたたち3人、誰が憑依されてるか分からないでしょ?
 それに、私がいなきゃ、みんなお終いよ?
 一番生き延びるべき人間が食料を食べる、当然のことでしょ?」

真登香が愛想なく早口で言う。

「--ちょっとアンタ!いつからそんなにワガママになったの!」
瑞帆が叫ぶ。

「--あら?瑞帆には言われたくないんだけど?
 落ちこぼれのクセして、わたしに意見しないで!」

普段は人の意見を尊重する真登香ー。
しかし、恐怖に支配された真登香には、
そんな余裕は無かった。

「---何その態度!それがアンタの本性ってわけ?」
瑞帆が言うと、
真登香が瑞帆を睨んだ。

「ーーーわたしに口ごたえするってことは…
 瑞帆、アンタが憑依されてるんじゃないの?」

真登香は壁にくくりつけられていた包丁を手にする。

館のマスターが、”憑依されている人間”を殺せという意味で
置いたのだろう。
館のそこらじゅうに武器が設置されている。

「---ちょっと、やめてよ!」
早紀が泣きながら叫ぶ。

「--いいじゃない、こんな落ちこぼれ!
 憑依されてようが、正気だろうが
 ぶっ殺せば!」

真登香がそう叫んで、瑞帆の方に向かう。

「--やめなよ!」
活発女子の悠子が真登香をビンタした。

「---ねぇ、どうしたの真登香?
 いつもの優しい真登香はどうしたの?」
戸惑いながら言う悠子。

真登香は、学校でいつも優しく振る舞っていた。
その本性に、残る3人は、困惑しているー。

いやーー
もしかすると、真登香が憑依されているのかもしれない。
残りの3人は、そう思った。

「---もう!わたしだって生きて帰りたいの!」
包丁を部屋の端に投げつけて叫ぶ真登香。

「怖いの!!死にたくないの!!ねぇ!助けてよ!」
真登香が泣き叫びながら悠子にすがりつく。

「お…落ち着いてよ真登香・・・ねぇ…やめてよ!」
悠子までパニック気味になる。

「--もうやだ!出して!助けてよ!助けて!」
館の放送機の方を向いて叫ぶ真登香。

「---綾川さん…落ち着いてよ…」
早紀も泣きながら言う。

”頼りになる生徒会長”の仮面は崩れて
周囲にパニックを伝染させている真登香ー。

恐怖は、拡散した。

”うへへへへへへ…
 どうだい、屋敷での生活?”

突然、音声アナウンスが流れた…。

「ひっ…」
早紀がおびえた様子で放送機の方を見る。

残りの3人も、恐怖の表情で放送機を見た。

”まだ、見つからないみたいだねぇ、ボクが誰に
 憑依しているか、分からないのかい?”

挑発的に言う館のマスター。

「ーーーうるさい!黙って!
 わたしのお父さんとお母さんが、必ず助けに来てくれる!」

真登香が叫ぶ。

しかしー

”健気だねぇ…
 でもさ、残念だけど、
 君たちの親は助けには来ない”

マスターが笑う。

「ど…どうして!」
真登香が泣き叫ぶ。

”さぁねぇ”

マスターがそう言うと、音声は途切れた。

ーー4人のうちの一人が、
ポケットに手を入れて”何か”を操作していた。
”あらかじめ録音した音声”を再生するために、
小型の端末で何かを操作しているのだ

(ーーーくくく…この綺麗な体が、もうすぐ、ボクのものに)

少女は、残りの3人に気付かれないように
笑みを浮かべた。

「くそっ!娘のわたしがこんな目にあってるのに!
 あのクソババアとジジイ、何してんだよ!」

真登香が乱暴な口調で発狂している。

恐怖が、ますます真登香を狂わせていたー

4人のチームワークは、簡単に崩れた。
”誰かが憑依されているかもしれない”という疑念ー
そして、パニックを起こして豹変した真登香ー・

自分のことで、皆精一杯だった。

4人は、それぞれ、脱出する方法を探すー。
しかし、館のどの部屋からも、出られそうにはなかった。

やはり、館のマスターに憑依されているのが誰かを
見つけて、その命を奪わなければ、脱出は
できないのかもしれない。

真登香がパニックを起こす中、
残りの3人は、比較的冷静だった。

もちろん、3人とも、怖がってはいる。
けれど、ギリギリのところで、理性を保ってはいた。

「スマホは、定期的にチェックしたほうがいいよね…」
早紀が、震えながら言う。

「そうね。もしかしたら急につながるかもしれない」
瑞帆が言う。

「--でも、今日ももう夜になっちゃったね」
悠子が時計を見る。

時間は既に23時。

”タイムリミットは3日間”

マスターの言葉を思い出す。

「--3日経つと、わたしたち、どうなっちゃうのかな…」
早紀が不安そうに言う。

「--べ、別にどうもなりやしないでしょ?」
瑞帆が言う。強気な発言とは裏腹に、その表情には
恐怖が宿っている。

「---」
活発女子の悠子は思うー。

もしも明日の夜までに脱出できなければー。
憑依されている子を殺すしか、やっぱり道は…

「---今日は別々に寝ましょう」
生徒会長の真登香がやってきて、そう告げた。

「--別々?で、でも…」
早紀がおびえた様子で言う。

この屋敷には個室もいくつかある。
それを利用することを、真登香は提案した。

「--それぞれの部屋で、鍵をかけて寝た方がいいわ。
 だって、誰が憑依されているか分からないでしょ?
 人数も減ったし、瑞帆は非協力的だから、
 当番制で見張りも出来ないし」

真登香が愛想なく言う。

「---そうね。じゃ、そうしましょ」
瑞帆もその提案に乗った。

「--ちょ、ちょっと…!」
一人になるのが怖い早紀は慌てた様子で言う。

けれどー
関係がぎくしゃくしている今、
そうするしか道はなかった。

「そうね。じゃ、わたしはあっちの部屋で寝るから」
悠子が部屋の一つを指さす。

2日目の夜―。
4人は別々の部屋で寝ることになった。

それぞれの部屋に向かう3人ー。
その後ろ姿を見ながら生徒会長の真登香が
壁に掛けてあったナイフを手にして、ほほ笑んだ。

「--ふふふ…」
真登香の瞳が、狂気に染まっていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ、、あれ…乃木さん…?」
気弱な早紀が、部屋とは違う方向に向かう瑞帆に声をかける。

悠子も立ち止まって瑞帆の方を見る。

瑞帆が、壁にかけてあった槍のようなものを手にした。

「--ちょっ…アンタ、何やってるの!」
突然、凶器を手にした瑞帆を見て、悠子も早紀も恐怖を感じた。

「--わたし、これからシャワー浴びるから。
 護身用よ」

そう言うと、瑞帆は槍を手に、シャワールームへと向かう。
この屋敷には、シャワールームもあった。
幸い、お湯は出るみたいだし、毒も仕込まれていないようだ。

「--こんなときにシャワーなんて、のんきねぇ」
悠子が呆れた様子で部屋の方に向かう。

「---おやすみ、早紀」
悠子がそう告げた。

「お、おやすみなさい」
早紀は、悠子の部屋から少し離れた個室で
寝ることにして、悠子と別れた。

早紀は思うー
今、”おやすみ”と告げた悠子の口元が
歪んでいたように見えたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シャワーを浴びながら、瑞帆は
自分の身体を見つめていた。

「ふふふ…綺麗なからだ♡」
瑞帆は笑うー。

なんて、スタイルのイイ体なんだろう…。

男がわたしのことを放っておくはずがない。

シャワーで自分の身体を流し終えると、
瑞帆は鏡に向かってほほ笑んだ。

「--ふふ、わたしったら可愛い♡」

そう言うと、彼女は満足気にシャワーを止めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

早紀は、自分の部屋で、布団に入っていた。

「-----」
何故だか、眠れない。

心がとても、高揚している。
こんな状況なのに。

その時だったー。
部屋の鍵が、ガチャガチャと音を立てはじめた。

「---だ…だれっ?」
早紀がベットから起き上がり、
怯えた様子で部屋の入口を見つめる。

部屋の扉が開くー。
そこにはー真登香の姿があった。

「あ・・・綾川さん」
早紀が言うと、真登香は笑った。

「ねぇ、早紀ちゃん」
真登香はそう言うと、刃物を手にして笑った。

「--死んで!」
真登香が凶器の笑みを浮かべて、早紀に襲い掛かったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----」
悠子が部屋で、他の3人のことを考えていた。

明日の夜―
”全てが終わる”

なら、その時、自分はーー

「きゃああああああああ!」

早紀の悲鳴が聞こえた。

「えっ…?」
悠子が慌てて、早紀が寝ているはずの部屋へと向かう。

早紀の部屋の前の廊下では、
二人の女子がもみ合っていたー。

「--ねぇ、わたしのために死んで!」
真登香が早紀に刃物を押し付けて
今にも早紀を殺そうとしている。

「--わたしは死にたくないの!
 憑依されている子を殺さなきゃいけないの!!
 でもね、どんなに考えても誰だか分からない。
 だから、みんなみんな殺すことにしたの!
 みんな殺せば、わたしは助かる!

 みんな、みんな、わたしのために死んで!
 うふふふふふ、ふふふふふふふっ!」

真登香が早紀に馬乗りになって
あおむけになった先の喉元にナイフを向ける。

「ちょっと!やめなさいよ!」
悠子が叫ぶ。

悠子の声に、真登香が悠子の方を向く。

真登香の髪はぼさぼさになり、
目の下には隈が出来てー
顔色は青白い。

まるでー
心優しい真登香とは別人

「ま…真登香・・・」
あまりの豹変に悠子は困り果ててしまう。

「---早紀がハズレだったら、
 次は悠子ちゃんの番だから!」
真登香はそう言うと、低い声で笑いながら
早紀の方を見た。

「---やめなさいよ!!!ねぇ!!!!」
悠子が叫ぶ。

早紀が泣きわめいている。

真登香は、早紀の喉元に向けて、
ナイフを振り下ろした。

「--ぐええええええっ…!?」
醜い悲鳴が聞こえた。

悠子は驚いて、目を見開く。

刺されたのはーー
早紀ではなく、生徒会長の真登香だった。

真登香の背後には、槍を持った瑞帆が立っている。

そして-、
瑞帆の持つ槍は、真登香の胴体を貫いていた。

「---かっ…」
真登香は驚いて目を見開いている。

槍を引き抜く瑞帆。

「--あんたみたいのが居ると、迷惑なのよ!」
瑞帆が叫んだ。

「--し…死にたく…ない」
真登香は血を流しながら床に崩れ落ちる。

「しにたく…ない…しにた…く…」
呪文のようにそれを繰り返して真登香は息絶えた。

「--いやあああああああっ!」
早紀が悲鳴をあげてパニック状態になってしまう。

「---ふん」
瑞帆はそのまま槍を投げ捨てて、
自分の部屋の方へと向かっていく。

「--ちょっと!」
悠子が叫ぶ。

早紀は泣き叫びながら部屋の方に戻っていく。

「---もう、滅茶苦茶じゃん…!」
悠子はそう呟いて、途方に暮れた…。

”おはよう!みんな!ゴキゲンはいかがかな?
 今日がゲームの最終日!
 日付が変わる0時00分までに、ボクを見つけ出せなければ、
 君たちの負けだ”

館内にアナウンスが流れる。

「---」
そのアナウンスを聞きながら、少女は微笑んだ。

制服をはだけさせて、
胸を触りながら、少女は涎を垂らしている。

「くふふふ…♡ もうすぐ…もうすぐだぁ…
 あぁん♡ あっ♡ あぁ♡」

少女が、スカートの中に手をつっこみ、
顔を赤らめながら
いつもとはまるで違う笑みを浮かべる。

「くふっ♡ あぁん♡ 気持ちいい♡ あっ♡ あっ♡ あぁ♡」
少女は色っぽい声を何度も何度もあげる。

「--はぁっ…はぁっ…」
少しして、少女は落ち着くと、
いつものような表情に戻り、
部屋から出た。

「おはようー」

廊下に出た少女は、残りの二人に対して
いつものような笑顔をふりまいた…

③へ続く


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コメント

誰が憑依されているか分からないまま
こういう空間に閉じ込められたら…を、
想像してみると、
やっぱり怖い気持ちになりますネ~…!

小説なので、皆様に直接イメージを伝えるのは
難しいですが、
私がいつもお話を作るときには、
頭の中に、その場面場面の風景も浮かんでいるので、
もし脳内のイメージ映像を読み取って映像化できる技術が
あったなら、すぐに映像作品にできちゃうぐらいには、
色々、想像(妄想?)しながら作っています~!

それを文字だけで、どこまで伝えることができるのか、は
なかなか難しいところですネ~!

②もお読みくださりありがとうございました!
次回が最終回デス!