デス・マンション①~幽閉~ 作:無名 肝試しを楽しむ5人の女子高生。 しかし、朽ち果てた豪邸に入った5人は、 そこに閉じ込められてしまう。 怯える5人に、声が聞こえてきた。 ”君たち5人の中のひとりに憑依した” とー。 脱出する方法はひとつ。 ”憑依された子を見つけ出し、残りの4人で、その子を殺すこと” ------------------------- 夜の人気のないところで、 女子高生5人がワイワイと騒いでいた。 夜ー、と言っても、 まだ19時。 親の許可を5人ともとっていたし、 非行に走っているわけではない。 彼女たちは、肝試しをするために、 町はずれの山林地帯へとやってきていたのだった。 綾川 真登香(あやかわ まどか) 生徒会長で優等生ー。誰にでも心優しい人物。 増本 悠子(ますもと ゆうこ) ショートヘアーの活発系女子で、今回の肝試しの立案者。 藤井 早紀(ふじい さき) 気が弱く、いつもおどおどしている女子生徒-。 乃木 瑞帆(のぎ みずほ) 協調性に欠け、自分勝手で気の強いおてんば女子高生。 富村 幸代(とみむら さちよ) 天然系女子。突然の爆弾発言で周囲を困惑させることもしばしば。 この5人が、肝試しを楽しんでいた。 「あ~楽しかった!」 活発女子の悠子が言うと、 「悠子ちゃん、一人でずっと騒いでたもんね」 と生徒会長の真登香が優しく微笑む。 「--もうこんな時間だよ~」 天然系女子の幸代が言う。 「そうだね。そろそろ帰ろうか」 真冬ー 日が沈むのが早いこともあり、 5人は、2時間ほど前から肝試しを楽しんでいた。 「---・・・」 早紀が、何かを見つめているのに他の女子が気づいた。 「---どうしたの?」 真登香が訪ねると、早紀が「あれ・・・」と指をさした。 そこにはー 朽ち果てた豪邸のようなものがそびえたっていた。 「な・・・なにあれ?」 山岳地帯の奥底にある朽ち果てた豪邸。 いかにもな雰囲気に、 5人は不気味さを感じた。 「---ふふっ、ちょうどいいじゃない」 高飛車でプライドが高い瑞帆が、 髪をかきあげながら、その豪邸の方に向かう。 「ちょ、ちょっと瑞帆?」 悠子が瑞帆を呼び止めるも、 瑞帆は止まらない。 「まだ、30分ぐらい平気でしょ? 朽ち果てた豪邸・・・ 肝試しにぴったりじゃない」 入口の扉に手を触れる瑞帆。 扉はー 開いているようだった。 「--ちょ、ちょっと・・・やめようよ」 臆病な早紀が震えながら声を出す。 早紀は、活発女子の悠子に無理やり つれてこられて、今回の肝試しにも参加している。 最初から、乗り気ではないのだ。 「--いいじゃない。少し中を見るだけよ」 瑞帆の強引な提案に、 他の4人の女子も仕方が無く豪邸の中に足を踏み入れた。 「----」 豪邸の中には、人がいない。 だがーー 奥の扉から、明かりが漏れ出ていた。 「--だ、誰か居るの?」 生徒会長の真登香が不気味そうに言うと、 「--おばけがいたりして~!」 と天然女子の幸代が笑った。 「こ、怖い事言わないでよ」 ーーその明かりのある部屋に向かう5人。 そしてーーー 「--なにこれ」 瑞帆が、表情をゆがめる。 その部屋には、 まるでこれから誰かを祝うかのように、 豪華な食事が並べられていた。 食卓の上には蝋燭ー。 そして、食卓には、”5人分”の食事が並んでいる。 まるで、彼女たちがここにやってくることを 知っていたかのようにー。 「---や、やばくない?」 悠子が言う。 誰も居ないはずの廃墟の豪邸に、 食事が用意されている。 しかも、自分たちの人数分。 「か、帰ろうよ・・・」 早紀が消えてしまいそうな声で言う。 「--そ、そうね」 流石におてんば女子・瑞帆も気が引けたのか そう言った。 その時だったー 突然部屋の照明が消える。 「きゃあああああ!」 ”誰か”の声がした。 5人は混乱するー。 「な、、何よ・・・!」 慌てふためく5人。 そしてーー。 ”ようこそ ボクの屋敷へ…” 機械音声のような、男の子の声が聞こえた。 照明が灯る。 「な、、何…何なの?」 真登香が慌てた様子で言うと、 機械音声の声は答えた。 ”ボクはこの屋敷のマスターだ。 ずっと人が来てくれなくてさびしかったんだよ” 早紀が涙ぐんだ目で周囲を見渡す。 瑞帆は困惑した表情を浮かべているー。 天然女子の幸代は何故か楽しそうだー。 活発女子の悠子は「こわ…」とつぶやいている。 ”きみたちを歓迎するよ” 出会いを記念して、食事も用意したから 食べて食べて” 無邪気な様子で言う男の声。 「-----」 いきなり、こんな不気味な場所で食事を振る舞われて、 喜んで食べる女子高生など、居るのだろうか。 彼女たち5人は、沈黙した。 ”冷たいなぁ・・・ あ、そうそう この屋敷に入ってきた君たちには 僕と”ゲーム”をしてもらうよー。 脱出を賭けたゲームだ” 男の声は笑った。 「な・・・何言ってるのよ!」 真登香が声を荒げる。 「---真登香・・・?」 悠子が心配そうに真登香を見る。 普段優しい真登香が声を荒げるのを初めて見て、 不安になってしまったのだ。 ”君たち5人のうちの”ひとり”の身体ー ボクが貰ったよ ケケケ・・・!” 「---!?」 5人は、それぞれ、周囲の仲間を見渡す。 ”君たちがこの屋敷から脱出する方法はひとつ! ボクが憑依して操っている友達を見つけ出して、 その友達を君たちの手で殺すことだ” 「--はぁ?ふざけないでよ!」 瑞帆が叫ぶ。 「こ・・・怖い・・・」 早紀が涙を目に浮かべて震えている。 ”ボクはーー残りの4人・・・ 君たちを罠にかけて殺していく。 君たちは、殺される前に、ボクに憑依された友達を 見つけ出して、殺さなくてはならないー。 逆に、僕は、君たち4人に正体がばれる前に、 君たちを殺さなくてはならない そしてー勝った方が屋敷から出れるんだ! どうだい?楽しそうだろう! これがデスゲームだ!うひゃひゃひゃ” 音声アナウンスの男の声が笑う。 ”タイムリミットは3日間ー。 それまでに、ボクがどの子に憑依してるか 気づけなかったら”ゲームオーバー”だ” 「--・・・」 5人の女子高生たちは恐怖を目に浮かべていた。 ”くくく…ボクが憑依した子… いい身体してるね…くふふ・・・ 早く脱出して、女の子として生きたいなぁ~” 男の声がそう言うと、 最後に一言加えた。 ”君たち4人で、ボクに憑依された一人を見つけ出すこと 君たちが生き延びる方法は、それだけだ” そう言うと、 ジーと、音がして、放送が途絶えた。 どうやら、録音だったようだ。 「--わ、、わたしたちの一人が、 今の男に憑依されてるの…?」 生徒会長の真登香が言う。 5人とも、友達の顔を見比べる。 誰がー 憑依されたのか。 「…と、とにかく、ここから出ましょう」 生徒会長の真登香の言葉に、 他の4人が頷いた。 ”人に憑依する” そんなこと、できるはずがない。 ただの、脅しだ。 「---開かないよ!」 活発女子の悠子が言う。 入口の扉が開かなくなっていた。 そしてー 窓はすべて何かの板で封鎖されていて、 開けることができない。 「ど…どうしよう…」 大人しい早紀が、目に涙を浮かべて動揺している。 「--ふん」 ワガママ女子の瑞帆が、 スマホを取り出す。 しかし、電波が届いていないのか、 外に連絡することができない 「チッ」 瑞帆は不満そうに舌打ちした。 5人は一旦、食事が置かれている部屋へと戻った。 「--いい?必ず助けは来る。 だからみんな、慌てないで」 生徒会長の真登香が他の4人に対して言う。 「---そ、そうだね」 活発女子の悠子もそれに応じる。 生徒会長の真登香はこんな時でも冷静で頼りになる。 真登香が居てよかったー。 女子たちのうち何人かは、そう思った。 「まぁ、とりあえず、お腹もすいたし、 この料理食べようと」 天然女子の幸代が言うと、 「ダメ!」と真登香が叫んだ。 「--へ?」 幸代が美味しそうなパンを持つ手を止めて、 首をかしげた。 「ーー毒でも入ってたらどうするの? こんな怪しいところの食べものなんて 食べたらだめよ」 真登香が幸代からパンを取り上げると 幸代は不満そうに「でも、美味しそうなんだけどなぁ~」と呟く。 「---みんな、何か食べ物持ってる?」 真登香の言葉に、 何人かが頷いた。 お菓子だとか、昼間に残したパンだとか そんなものばかりだった。 「--これを分け合って食べるしかないわね。 助けが来るまで少し時間がかかるかもしれないから、 計画的に食べましょう」 生徒会長の真登香が、他の4人の統制を取り、 少女たちはなんとかパニックを抑えていたー。 今日、5人が帰宅しなければ、 5人のうちの両親の誰かが、あるいは複数が、自分たちを 探し始めるはず。 そうなれば、必ず助けは来る。 真登香は、そう思っていた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 夜ー。 色々脱出手段を考えて、 館の中を探したものの、 脱出手段は見つからなかった。 真登香は、団体行動を提案したー。 何故なら、複数に分かれて行動すればー、 ”もしも本当に誰かが憑依されていた場合” 危険が生じるからだ。 2:3で行動していて、 二人で行動しているうちの一人が憑依されている子だったらー? そのもう一人は間違えなく危険な目に遭うだろう。 そう考えて、真登香は、5人全員での行動を提案していた。 そして夜ー。 3人ずつで交代に見張りながら寝ることを提案した。 豪華なベットが5人分用意された部屋で、 5人全員が寝るのはまずいー。 何かされるかもしれないからだ。 しかしー 「私は寝るから」 ワガママ女子の瑞帆が言う。 見張りをする気は、彼女にはないようだ。 「ちょっと、こういうときぐらい協力しなよ!」 活発女子の悠子が反論するも、 生徒会長の真登香がそれを止めた。 真登香はやむを得ず、二人ずつでの交代で 見張りをしながら寝ることを提案した。 ”何かあれば、すぐに全員を起こすように”と。 深夜2時ー。 天然女子の幸代と、 気弱な早紀が見張りをしていた。 「--ねぇねぇ、本当に誰か憑依なんてされてるのかな?」 幸代が言う。 「--ど、、どうなんだろう…」 早紀が困り果てた様子で言う。 真登香、悠子、瑞帆の3人は寝静まっている。 「--憑依されるって、どんな感じなのかなぁ~ むかし、漫画で読んだことあるんだけど、 体奪われちゃうってヤツ… ちょ~っと、どんな感じだか気になるなぁ~」 天然な幸代は不謹慎なことを口にした。 「すーっ・・・すーっ」 ふと気づくと、一緒に見張りをしていた早紀が 寝静まっていた。 「--あらら、寝ちゃったのね。 ま、早紀ちゃん、今日は1日疲れただろうしね」 そう言うと、幸代は不気味にほほ笑んだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ガシャン! もの凄い物音で、真登香は目を覚ました。 「---!な、なに?今の?」 真登香が周囲を見渡す。 他の”3人”も驚いている。 「---さ、幸代は?」 天然女子の幸代が居ないことに気付く。 ガラン! 食堂の方から凄い物音が聞こえる。 「---!」 真登香は寝室から飛び出した。 そしてー 食堂で倒れている幸代を見つけた。 「--さ、幸代!」 真登香が慌てて駆け寄ると 幸代が苦しそうに口を開いた。 「--や、、、やっぱ、、、毒・・・」 幸代はそれだけ言うと、白目を剥いて 痙攣し始めた。 「---バカ!何で食べたのよ!」 真登香は食卓の上の食べかけのパンを 見つめた。 やはり、屋敷に用意されていた食べ物には、 毒が入っていたー。 「---ねぇ!死んじゃダメ!」 真登香が幸代の心臓マッサージを始めた。 他の3人も、遅れて食堂へと駆け付ける―。 「ねぇ!!戻ってきて!ねぇ!」 次第に真登香の手つきが荒くなる。 「--ねぇ!早く!救急車!」 真登香が叫ぶ。 「--真登香・・・救急車は・・・呼べないよ」 活発女子の悠子が目に涙を浮かべながら言った。 この屋敷から外部への連絡は出来ないー。 「--な、なんとかしなさいよ!ねぇ!」 真登香がパニックを起こしている。 「--もう、無理よ」 ワガママ女子の瑞帆が真登香の手をつかんだ。 心臓マッサージをしていた真登香が手を止め、 その場に泣き崩れる。 「----」 泣きじゃくる真登香。 仲間の死に、気弱な女子の早紀も泣き崩れている。 活発女子の悠子は目に涙を浮かべ、 ワガママ女子の瑞帆は、険しい表情をしている。 「---殺さなきゃ」 泣いていた真登香がつぶやいた。 「え?」 悠子が不思議そうに聞き返す。 「---私たちが、殺される前に、殺さなきゃ・・・ あなたたち3人のうちの誰かが ここのマスターに憑依されてるんでしょ?」 真登香が泣きながら笑っているー。 生徒会長の真登香はー、 真面目で優しい生徒ー しかし、それは”他人に嫌われたくないから” そう振る舞っていただけ。 本当の彼女はー 自己中心的で、臆病で、傲慢だったー。 緊急事態を前に、かろうじて保っていた理性がー、 仲間の死によって壊れた。 「ふふふ・・・憑依されているバカをぶっ殺せば わたしたち、生きて帰れるんでしょ? なら、そいつを殺せばいいじゃない」 真登香が狂ったように笑いながら言う。 「--や、、やめてよ・・・」 早紀が泣きながら言う。 「--ま、真登香、落ち着いて… 誰かが憑依されてるって決まったわけじゃないでしょ?」 悠子が言う。 「--そうよ、アンタ、パニックにならないでよ」 ワガママ女子の瑞帆が言うと、 真登香が笑みを浮かべた。 「そうだね…ごめんね」 そう言うと、真登香は寝室の方に戻っていく。 そしてー 寝室からヒステリックな叫び声と暴れる音が聞こえてきた。 「--真登香」 悠子は目に恐怖を浮かべながら言った。 「--恐怖で、壊れたのね」 瑞帆がため息をつく。 こういう状況において、正気を失うやつが一番厄介だ。 瑞帆はそう思いながら首を振った。 ”頼りになる生徒会長”はもう、居ないー 「どうしよう…どうしよう」 臆病な女子の早紀は、この先どうすれば良いか途方に暮れる。 「・・・・・」 活発女子の悠子は、”もう真登香には頼れそうにない”と 頭の中で考えた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2日目ーー 早朝。 一人の女子が、鏡の前で不気味にほほ笑んでいた。 「--まず一人…うふふ♡」 彼女は、鏡に写った自分の舌をペロリと舐めると、 妖艶にほほ笑んだ…。 ②へ続く コメント お祭り以来、解体新書様では、 久しぶりの作品掲載となりました~! 今回は「この中で憑依されているのは誰だ!?」という 感じの憑依モノデス~! こちらは、2018年に執筆した作品で、 既に3年ほど経過しているので、 今回、解体新書様で掲載されるにあたり、 改めて私自身も読み直してみました! 残念ながら、3年経過した今でも、 誰が憑依されているのかを覚えていたので(笑)、 そのドキドキは味わえませんでしたが、 細かい部分は忘れている部分もそこそこあったので、 新鮮な気持ちで楽しめました! 誰が憑依されているのかも想像しつつ、 続きもぜひお楽しみくださいネ~! |