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この力は正義のために②~活躍~ 作:無名 正義のために”憑依能力”を使う男ー。 その力のことは、周囲の誰にも話さずに、 彼は今日も”憑依”で、 トラブルや事件を解決していくのだったー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーー許さないー…!殺してやるー!」 そんな言葉を口にしながら、ナイフを手に 襲い掛かる男ー。 通報を受けて、その現場に駆け付けた 交番勤務の警察官・仁悟は 少し戸惑いの表情を浮かべながらも 「警察ですー。いったん落ち着いてー」と、 そう言葉を口にするー。 しかしー、女は聞く耳を持たず、 「近付いたら、この男を刺すから!」と、 そう叫ぶー。 男は既に何か負傷しているのか、 座り込んだまま「こ、この女、イカれてます!」と、 そう叫ぶー。 がー、女は「うるさい!わたしを裏切った癖に!」と、 そう叫ぶー。 通報によれば、”ホストと客が争っている”という話で、 ホストの側にも何か原因があるのかもしれないものの、 とにかくまずは、怒り狂った女のほうを止めて 話を聞く必要があるー。 とは言えー、近付いたら本気でホストの男を 殺す勢いで、女は興奮状態にあるー。 「ーーーわ、わかったー。近寄らないー。だから落ち着くんだー」 仁悟はそれだけ言葉を口にするとー ”説得”ーーするのではなく、 「一度、立ち去るから落ち着いてー」と、そう言葉を口にしてから ホストの方に向かっても「とにかく落ち着いてー」と、 そう言い放って、そのまま一旦、二人の視界から姿を消して 建物の影に隠れるー。 「ーまず、物騒なことはやめさせないとなー」 仁悟は物陰でそう呟くと、いつものように幽体になって、 再び揉めている男女の方に向かって行くー。 そして、ナイフを手に叫んでいる女に憑依する仁悟ー 「ーーぁ…」 突然、ビクッと震える女ー。 女に殺されそうになっていたホストらしき男が戸惑うと、 仁悟に憑依された女は「ー殺すなんて…考えたわたしがバカだったー」と、 それだけ言葉を口にするー そしてー、「さっきの警察の人と、ちゃんと話し合わないとー」と、 それだけホストに向かって言葉を口にすると、 ナイフを捨てて、”すぐに拾いに行けない距離”にまで蹴り飛ばすー。 「ーー…~~~」 ホストは、自分を殺そうとしていた女の急な豹変に戸惑いつつも、 少しだけ安堵の表情を浮かべるー。 すぐに仁悟は女から抜け出しー、 また建物の影で、今度は”人間”に戻ると、 何食わぬ顔で姿を見せて、 「とにかく、落ち着いてー」と、もう一度言葉を口にしたー。 がー、先ほどとは違い、仁悟に一度憑依された女は、 正気を取り戻しても、”わたしが自分の意思で落ち着いて、 ナイフを捨てた”と、思っていて、 「ーー…ーーさっきはすみませんでした」と、 そんな言葉を口にする。 「よかったー。じゃあ、二人とも話を聞かせて貰えるかなー?」 仁悟は”憑依”で女の殺意を消してから、 冷静な状況で話し合えるようにし、そして、”話し合い”を始めるのだったー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーーさて、とー 今日はこんなところかなー」 その後ー、 居酒屋にクレームをつけていた男に憑依して、 その男を落ち着かせてー、 さらには女同士の喧嘩を”憑依”で落ち着かせー、 加えて、万引きした少女に憑依して、謝罪させた上で 万引きは二度としないと反省させー、 憑依を使って、今日も色々なトラブルを解決させたー。 もちろん、憑依を使う必要がない場面では、 むやみに憑依することはしないー。 憑依を使わずに解決させたトラブルも、今日もいくつかあって、 ”どんなトラブルでも憑依を使う”わけではないー。 ”使わなくて済むなら”仁悟本人も使いたくない、と、 そんな風に考えていたー 「ーーーー」 仁悟が交番に向かって戻って行く中ー、 背後から、その仁悟の姿を見つめる男がいたー。 「ーーー三上ー…」 その男は、不満そうに仁悟の名前を口にするとギリッと歯軋りをしたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーーただいま~」 同居している彼女の久井 由美が帰宅するー。 先日は先に帰宅していた由美ー。 ただ、最近は仕事が忙しいらしく、疲れた様子を 見せていることも多いー。 「ーー今日も残業かー?」 仁悟が少し心配そうにそう言葉を口にすると、 由美は「うち、ブラック企業気味だしー」と、苦笑いするー。 その言葉に、仁悟も苦笑いすると 由美は「でも、仁悟も大変なんだし、わたしも頑張らないとね」と、 そんな言葉を口にするー。 「ーー由美こそ、倒れたりするなよ~?」 この前、由美から”あまり無理しないでね”と心配されていた仁悟は 今度は自分が心配する番と言わんばかりにそう言葉を口にするとー、 由美は「ーあはは倒れない倒れないー」と、それだけ言葉を口にしながら、 仕事に持って行っているバッグから荷物を取り出し始めるー。 ”ー由美もー…俺が”他人に憑依できる”なんて知ったらー… 怖がるだろうなー…” 仁悟は、時々”不安”になるー。 この力を”由美”にー、そして、周囲の人々に知られたら どうなってしまうのかー、とー。 今の自分の人生が”壊れてしまう”のではないかー、とー。 が、そんな不安を振り払うかのように首を横に振ると、 「ー俺はこの力をいいことだけに使うんだー。今までも、これからもー」と、 自分に言い聞かせるかのように、静かにそう言葉を口にしたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 数日後ー パトカーでのパトロール中に、 暴走車を発見した仁悟と、同じ交番勤務の先輩女性・晴美は その車を追跡していたー。 「ーーまずいわー…このままだと事故が起きるー」 晴美が少し表情を歪めるー。 逃亡中の車は、何としても捕まりたくないのか、 信号も無視して爆走しているー 「ーー…ーー先輩ー。俺、迂回しますー」 助手席にいた仁悟がそう言葉を口にすると、 「迂回?」と、晴美が運転しながら不思議そうに言うー。 「ーー俺に任せて下さい」 仁悟はそれだけ言うと、晴美にお願いして パトカーから降りるー。 そして、すぐに物陰に隠れると、”幽体”になるー。 パトカーから降りたのは、”晴美のすぐ横で幽体になるわけにはいかない”ためだー。 幽体の状態だと、素早く移動することもできるー。 仁悟は、交通状況や先回りー、そして幽体の速度を利用して 何とか暴走車に追い付くと、 車の中を確認するー。 暴走しているのはー、若いツインテールの女だったー。 てっきり運転手は男だと思っていた仁悟は 少し意外に思いながらも、”とにかく、止めないと”と、 ”憑依するタイミング”を見計らうー。 暴走している車を、事故を起こす前に止めるには ”運転手に憑依して止めてしまう”のが一番だと、そう思ったのだー。 ただ、”憑依するタイミング”は重要で、 タイミングを間違えてしまうと、大事故に繋がってしまう可能性もあるー。 だからこそ、慎重にそのタイミングを見極めていたー。 ”よし、直線ー…周囲に車もいないー。このタイミングならー” 仁悟は、今が憑依のチャンスだと感じ、 暴走車を運転しているツインテールの女に自分の幽体を重ねるー。 「うっー」 ビクッと震えるツインテールの女ー。 すぐに身体を支配した仁悟は「ーって、すごい速度だなー…くそっ!」と、 女の声で言葉を口にすると、そのままブレーキをゆっくり踏んでいくー。 ”憑依した他人の身体で車を運転”したことは これまでに何度かあるものの、 結構、危ないー。 何故ならー、足の長さや感覚が人によって違うし、 体格や手の感じの違いで、ハンドル操作の感覚もかなり違うのだー。 初めて”憑依した身体”で運転した時には 危うく事故を起こしそうになったのを、仁悟は今でも覚えているー。 運転中の人間への憑依は、色々な意味で危険なのだー。 「ーー…と…ここでいいなー」 が、それも最初の頃の話ー。 今は運転中の人間への憑依も経験を重ねて大分上達したー。 「ーーーよし」 ツインテールの女の身体で、無事に車を停車させると、 仁悟はそのまま安堵の息を吐き出しながら、女の身体から抜け出したー。 決して、”ついでに1回胸を揉んでおこう”だとか、 ”ついでにこの身体で変な言葉を喋ってみよう”だとか、 そんなおかしな真似もしないー。 あくまでも仁悟は、”憑依”の力をトラブルの解決のため、 事件を解決するためー、人々を守るためだけに使っているー。 やがてー、仁悟は少し離れた場所で幽体から人間の姿に戻るー。 しばらくして、先輩女性刑事・晴美のパトカーが 到着すると、晴美は運転席で戸惑いながらも 「ーわたし…何て危険なことをー」と、 自分の暴走行為を悔いるような言葉を口にしていた ツインテールの女の確保に成功するー。 聞けば、無免許で彼氏の車を運転していたことからー パトカーを見てパニックになり、爆走をしていたのだと言うー。 「ーすみませんー確保できてよかったですー」 仁悟は、何食わぬ顔で、遅れて到着したことを 先輩女性刑事の晴美に対して詫びるような言葉を口にすると、 晴美は「三上くんー…どこに行ってたの?」と、 少し戸惑ったような表情を浮かべながら、 仁悟のほうを見つめたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーーお疲れー。事故が起きなくて幸いだったよー」 年配の刑事・高塚 力斗が二人を出迎えると、 仁悟は「先輩のおかげですー」と、自分の憑依のことは 一切口にせず、手柄も全く主張する様子もなく、 パトカーを運転していた晴美のお手柄だと、 そう言葉を口にするー。 仁悟は、”憑依”で他の刑事をサポートして 事件を解決したりした場合、 自分の手柄を一切主張することもなかったー。 何故ならー… とにかく”事件”が解決すればー、 ”トラブル”が解決すれば、それでいいー、と そう考えていたからー。 そのためには、自分の手柄など二の次だと、 仁悟はそう考えていたー。 「ーお疲れ様でしたー」 その日の勤務を終えて、仁悟は帰路につくー。 「ーーよしー今日も、平和を守ることができてよかったー」 仁悟は満足そうにそう言葉を口にすると、 ゆっくりと家に歩いていくー。 もちろん、自分一人では世界の全ての人を守ることなんてできないー。 一人の力には限界があるし、自分は神でもなんでもないことは よく理解しているー。 いくら、普通の人間が持っていない力を持っているからと言って、 そこまで己惚れるつもりもないー。 「ーー」 ただ、彼女の由美と、そして自分の手の届く範囲の人々を守りたいー、と 彼はただその一心で日々、必要とあれば”憑依能力”を利用していたー。 ”ーーーーーー” そんな彼の背後から、一人の男が、仁悟に対して視線を向けていたー。 「三上仁悟ー…」 恨みに満ちた目で、仁悟を見つめる男ー。 しかし、仁悟はそれには気付かずに帰宅するとー、 彼女の由美はまだ帰宅していない状態だったー ”今日も、残業で遅くなっちゃうー…ごめんね” そんな由美のメッセージを確認して ”大丈夫だよーお疲れ様”と、そう返事を送ると、 仁悟は少し息を吐き出しながら 「ー由美のために、家のことも片付けておくかー」と 帰宅したその身体で、今度は家事をこなし始めるー。 二人とも働いている現状ー、 家のことは”その日手が空いている方がやる”ということで、 特に揉めるようなこともなく、上手く家のことをこなしているー。 仁悟は、この先もこの幸せな日々が続くと、 信じて疑わなかったー。 そしてー、それから数日後ー。 繁華街でナイフを持って暴れる男ー。 最悪なことに、その男は女を人質にしているー。 仁悟は、その現場に駆け付けると、物陰に隠れて 幽体になり、その男に憑依ー。 すぐに人質を逃がしー、ナイフを捨てると その場にしゃがみ込むー 「もういい!俺を確保しろ!」 その男の身体でそう叫ぶと、仁悟はその男から抜け出しー、 幽体のまま物陰に移動すると、人間の姿へと戻るー。 そして、物陰から飛び出すと、 刃物を手に暴れていた男を確保したー。 「ー犯人を確保しましたー」 無線で、後から現場に駆け付ける 勤務先の交番の中では一番年配の力斗にそう連絡を入れると、 仁悟は安堵の息を吐き出しながら 「お怪我はありませんかー?」と周囲の人々に対して、 そう言葉を口にしたー。 がーー 警察署勤務の警官に犯人の身柄を引き渡して 交番に戻る最中だったー。 夜の繁華街で、背後から忍び寄る男の影ー 先程逮捕された男ではなく、少し前から仁悟のことを 監視していた謎の男が、迫っていたー。 「三上…仁悟ー…」 その男は、鋭いナイフを手に仁悟の方に向かって行くと、 仁悟もそれに気づき、振り返るー。 が、男はナイフを手にしたまま 仁悟の方に突進していくのだったー ③へ続く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 現実でもしも”憑依”の力を使える人が 増えたら、 ”良いこと”に使う人の方が多いのか、 それとも”悪いこと”に使う人の方が多いのか、 使うのを思いとどまる人が多いのか、 何だかちょっぴり気になっちゃいます~!! どのみち、本当に憑依が使えるようになっちゃったら、 法整備的な部分とか、 色々大混乱しちゃいそうなので、 そういうところを考える怖いですネ~! やっぱり、自分だけ憑依できるようになっちゃった~!!が 一番いいのかもしれませんネ~笑 次が最終回デス~! 最終回もぜひ楽しんで貰えると嬉しいデス!! |