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この力は正義のために③~怒り~(完) 作:無名 憑依能力を使って 事件やトラブルを解決させていく交番勤務の警察官ー。 決して悪事や私利私欲のためには力を使わない彼を 待ち受けている運命はー…? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーー三上…仁悟!!」 背後から仁悟のことをここ数日、尾行していた男が、 ナイフを手に、仁悟に突進してくるー。 「ーー!!!」 振り返った仁悟は、咄嗟に身を守ろうとするも、 間に合わずにそのまま突進されてしまうー。 「ーぐっ…」 仁悟は少しだけ表情を歪めるー。 がーー すぐに男の腕からナイフを叩き落とすと、 そのまま男の腕をねじって、 地面に押し倒し、無力化するー。 「ーぐっ…くそっ…三上ィ!」 声を上げる男ー。 仁悟はその男の顔を確認すると、 「ー鶴田(つるた)ー」と、声を上げたー。 鶴田 壮介(つるた そうすけ)ー。 男は以前、窃盗の罪で仁悟が逮捕したことのある男だったー。 が、そのことを逆怨みして、自由の身になってから ずっと、仁悟に復讐する機会を伺っていたのだー。 「ーーくそっ…!三上!!殺してやる…!殺してやる!」 もがく壮介ー。 が、仁悟は壮介に手錠をかけると、 すぐ近くの物陰に移動して、壮介に”憑依”したー。 「ーもう殺しなんてしないー…復讐なんて無意味だー」 と、何度か呟いてから、そのまま壮介から抜け出すー。 すぐに正気に戻った壮介は「くそっー」と、 それだけ言葉を口にすると、先ほどより少し大人しくなるー。 仁悟の”憑依”は、相手の思考に干渉することもできるー。 あまり”必要以上に”それをしたくない気持ちはありつつも、 場合によっては、止むを得ず、それをすることもあるー。 もちろん、誰かを守るためー、事件を防ぐために、だー。 「ーー…はぁ…はぁ… 鶴田ーー…今度こそ、ちゃんとやり直してくるんだー」 壮介にそれだけ声をかけると、 ふらふらしながら立ち上がる仁悟ー。 仁悟の腹部には、壮介に刺された傷があるー。 そして、そこから血が流れだしていたー。 「ーー由美ー…」 同居している彼女の由美の名前を口にしながら、仁悟は その場に倒れ込むのだったー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーーもうー心配したんだからねー」 由美がそう言葉を口にするー。 数日後ー。 仁悟は無事に病院に搬送されて”無事”だったー。 彼女の由美がお見舞いに駆け付けて、 仁悟にそんな言葉を口にしているー。 「ーはは、ごめんごめんー 残業続きなのに、あまり無理するなよー?」 仁悟が、残業続きで忙しい由美が お見舞いに来てくれたことに対してそう言葉を口にすると、 由美は少しだけ笑いながら 「ーー仁悟こそ、無理しちゃだめー。 たまにはゆっくり休んでねー」と、そんな言葉を口にするー。 仁悟は「はははーわかった」と、それだけ言葉を口にすると、 腹部の傷のあたりに少しだけ手を触れながら ”死ななくて、よかったー”と、そんなことを思うのだったー。 同じ交番勤務の年配の刑事・力斗や、先輩の女性刑事・晴美も お見舞いに来てくれて、順調に回復していく仁悟ー。 入院中にも、セクハラをしている患者に こっそり憑依してそれを止めたりー、 病院の屋上で自ら飛び降りようとした少女に憑依して、 それを食い止めたりー、 ちょっとしたトラブルがあったものの、 憑依でそれらを解決しつつー、人助けをこなしたー。 そんなある日のことだったー もうすぐ退院を迎えたある日ー 交番すぐ近くのお店で”立てこもり”事件が起きたー。 その様子を、病室のテレビで見つめていた仁悟ー。 「ーー」 しかも、立てこもりが起きているのは、 よく仁悟も休憩中に利用したりしている ラーメン店だったー。 「ーーーー嘘だろー…そんなー」 仁悟はそう言葉を口にすると、病室内に誰もいないことを確認しながら 自分の身体を”幽体”へと変化させるー。 その状態のまま、病院の外へと飛び出すと、 ラーメン店に幽体のまま向かうー。 ラーメン店の店主が人質に取られているようでー、 その犯人は、40代の中年男性のようだったー。 「ーーーーくそっ!!!あいつらめー 俺は絶対に捕まらねぇぞー」 どうやら、無銭飲食をした男が 店主に詰め寄られて、そのままナイフを手に 店主を人質に取った様子だったー。 仁悟は、その男に憑依するー 「ーーうっ…」 男の身体を乗っ取った仁悟はすぐに 「ーもう…これ以上はもたねぇかー」と、 その男本人のフリをして、そう言葉を吐き出すと、 そのままナイフを捨てて、 店の外に出ていくー。 両手を上げて、警察官たちの前に姿を現すと、 立てこもり犯は、そのまま警察官に確保されたー。 ”よしーー” 仁悟はそう思いつつ、立てこもりの男から抜けると、 そのままラーメン屋の店主の無事も確認して、 霊体のまま病室へと戻り始めるー。 がーーー その時だったー。 「ーーえへへへ♡ わたしには卓也(たくや)しかいないもんー」 聞き覚えのある声が聞こえて、 霊体の状態のまま、仁悟は振り返ったー。 そこにはーー 同居している彼女の”由美”と、知らない男が一緒に歩いていてー 由美はその男の腕にしがみつくようにして甘えているー。 普段は着ないような男を誘惑するような服装でー、 甘えた声を出している由美ー。 「ーへへ、入院中の彼氏はどうした?死んだか?」 卓也と呼ばれた男が言うー。 「ーう~ん、せっかくいい機会だったのに、無事だったの~ いっそのこと殉職してくれちゃえば、 簡単に別れられたのにねー」 由美は、そんな言葉を口にするー 「ーーーーゆ…由美ーー」 霊体のまま、呆然とする仁悟ー。 今日も由美は”残業”だと、LINEでそう言っていたー。 がー、由美は”残業”などしていなかったのだー。 由美は、会社の先輩で年上の卓也という男と浮気をしていたー。 「ーーーーー~~~」 震える仁悟ー。 由美は男に対して”今日は仁悟いないから、家に来れるよ”と 嬉しそうに卓也を誘うー。 そして、信じられないことに卓也と一緒に家の中に入っていくー。 仁悟の”憑依”の力は、霊体のまま行動することもできて、 こうして尾行や情報収集にも使えるー。 ずっと霊体のままでいると体調を崩すため、限界はあるものの ある程度なら、霊体のまま行動できるため ”悪い人”がこの力を持っていたら、覗きでも何でもし放題になってしまうー。 最も、仁悟はそんなことを一度もしたことがないし、 する気はないー。 ただー、今日はーー 家にやってきた由美は、浮気相手の卓也の前で下着姿になると、 そのまま二人で欲望の時間を過ごし始めるー 「ーーー」 浮気相手と彼女のHを目撃してしまった仁悟は震えたー。 由美は嬉しそうに喘いでー、 仁悟の前では見せない姿を晒しているー。 そもそも由美は”こういうことが苦手”と言っていたし、 仁悟もその意思を尊重してきたのに、 本当はそうではなかったのだー。 「ーー卓也ーー♡」 甘い声で嬉しそうに微笑む由美を見て、 仁悟の心の中には強い怒りが芽生えたー。 由美に憑依して、由美を滅茶苦茶にしてやろうと思いー、 その場で霊体を由美に重ねるー。 「ーーうっ…」 ビクンと震える由美ー。 「ーどうした?へへー」 浮気相手の卓也が笑うー。 「ーーーーちょっと、トイレー」 由美に憑依した仁悟はそれだけ言葉を口にすると、 ゆっくりと立ち上がるー。 彼女の由美に憑依したことは、これまでに一度もなかったー。 由美がトラブルに巻き込まれたり、どうしても事件を解決するために 必要な場面がこの先あれば、憑依することもあったかもしれないー。 けれど、私利私欲のために憑依するつもりは全くない仁悟は、 彼女の由美には、一度も憑依したことがなかった。 「ーーーーーー」 由美の身体のまま目を閉じるー。 由美にずっと裏切られていたことを知った仁悟ー。 それどころか”死んでくれればよかった”などと言われた仁悟ー。 しかも、家に定期的に浮気相手を連れ込まれていたことにも気づいた仁悟ー。 仁悟は、そんなことを考えつつー 由美の身体で目を閉じたまま大きく息を吐き出したー。 そのまま、乗っ取った由美の身体で家を飛び出すー。 由美に怒りをぶつけるかのように、笑いながら 胸を揉んで街の中を歩くー。 繁華街のど真ん中で由美の身体を滅茶苦茶に堪能してー、 欲望の限りを尽くしー どよめく周囲も無視して、繁華街の真ん中で 由美の身体を最後まで堪能したー。 人前でイってしまった由美の人生は滅茶苦茶ー。 憑依の力があれば、何でもできるー。 笑いながら、由美の人生を滅茶苦茶にしてやったことと、 そう思いつつ、仁悟は由美から抜け出すー。 正気を取り戻した由美は、繁華街の真ん中で悲鳴を上げるー。 仁悟はそんな様子を見つめながらー、 ”どうしてー…どうして裏切ったんだー…”と、そんな言葉を口にするー ーーーそんなーーー… ”想像”をしたー。 由美に憑依して、”トイレ”と浮気相手の卓也に言い放ちー、 玄関の前までやってきていた由美を乗っ取った仁悟ー。 仁悟は、由美に対する怒りから、 このまま家の外に飛び出して、繁華街のど真ん中で由美を 滅茶苦茶にする場面を頭の中に思い浮かべたー。 がーーー 「ーーーーー」 由美は、卓也の方に戻って行くー。 仁悟はーー、 人生で初めて”憑依”を私利私欲のために使おうとしたー。 由美に憑依して、由美に復讐しようと思ってしまったー けれどー、頭の中でそれを思い浮かべただけで、 思いとどまると、 「ーーやっぱ、トイレいいやー」 と、由美の身体でそう言葉を口にしてから、 仁悟は由美に何もすることなく、そのまま由美の身体から抜け出すー ”あんたなんて嫌いよ!”と、由美の身体で浮気相手に言い放ちー、 ”わたしには仁悟だけいればいいのー”みたいなことを由美の身体で 何度も言えば、由美は仁悟のことをまた好きになってくれるだろうー。 でもー、それもしなかったー。 ”ーー”恐ろしい力”を持つ者は、それを正しく使わないといけない” 仁悟は、由美に裏切られたショックと悔しさに涙を流しながらもー、 そのまま大人しく病院に戻ると、 病院で元の姿に戻り、大きくため息を吐き出したー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーー別れよう」 仁悟がそう言葉を口にすると、 由美は驚きの表情を浮かべたー。 退院後ー。 仁悟は、由美と別れることを決意していたー。 「ーー浮気ーーしてるんだろー…? ”同僚”が見たってー」 仁悟は”嘘”をついたー。 幽体の状態で彷徨っている時に偶然見かけて後をつけたー、とは 言えなかったー。 「ーーーそ、そんなことしてないよーわ、わたしー」 由美はそう言葉を口にするも、 仁悟は「いいんだー」とそれだけ言葉を口にすると、 「ー俺は由美のこと、大好きだったー。今でもそうだし ずっと支えていきたいって思ったー。 でも、由美は俺に死んでほしいって思ってたみたいだし 他に好きな人がいるならー…俺とこれ以上いても、由美は幸せになれないー」 と、そう言葉を続けるー。 由美は震えるー。 そんな、由美に対して仁悟は「今までありがとう」と、それだけ言葉を口にすると、 由美は複雑そうな表情を浮かべながら、浮気していたことを認めたー。 「ーでも、先輩が言い寄って来たからー わたし、本当は仁悟のことがー!」 由美がそう言い放つー。 けれどー、あの日の態度を見ていれば分かるー 由美は本気で浮気相手の方が好きだし、ましてや 脅されていたなんて感じでは絶対にないー。 「ーーーごめんー。 俺はもう一緒にはいられないー。 由美は、その人と幸せにな」 仁悟はそれだけ言うと、 「あ、これ以上、浮気はするなよー」と、 ”俺にはいいけど、この先、他の人に対してはやるなよ?”と、 そう警告すると、そのまま立ち去っていくー 「ーーー何よー」 由美が不満そうに背後で言葉を口にするー。 「ーいい人ぶっちゃって!! 何か文句のひとつでも言えばいいのに!」 由美がそう叫ぶー。 が、仁悟は、一言も由美を責めなかったー。 怒りも、悲しみも、色々あったけれどー、 もう、何も言わなかったー。 一人残された由美は悔しそうに涙を流すと、 そのまま、仁悟の前から姿を消しー、 浮気相手の卓也を頼って、そのまま卓也と同居を始めたようだったー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 半月後ー。 「ーーお疲れ様ですー」 今日も、仁悟はいつものように交番勤務を続けていたー。 先輩の女性刑事・晴美と言葉を交わし、 パトロールを交代する仁悟ー。 そして、今日も街の平和を守るために 街を見回るー。 「ーー!」 そんな中、3人組の女が、一人の女を裏路地で 脅している姿が見えたー。 「ーー早速トラブルかー」 仁悟はそう言葉を口にすると、”やれやれ”という様子で、 当然、人助けのためにその方向に向かって走っていくー。 もちろん、トラブル解決のために、 必要とあれば”憑依”もするー。 あの日ー、由美に裏切られていることを知った日だけー、 仁悟は道を踏み外しそうになったー。 己の復讐のために憑依能力を使ってしまいそうになったー。 けれど、思いとどまったー。 ”この力は、正義のためにしか使わないって決めてるんだー” 仁悟は、心の中でそう言葉を口にすると、 派手な風貌の三人組の女たちに向かって「そこで何をしているんだー?」と、 そう声をかけるのだったー おわり ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 最終回でした~! 今回は…最後まで道を踏み外すことなく、 憑依の力を正しく使い切る結末でした~! 私のお話は、最後に捻りを入れたり、 あえて捻りを入れなかったり、 容赦なくバッドエンドにしたり、 逆にハッピーエンドにしたり、 たくさんお話を書いているので、 結末がワンパターンにならないように いつも色々と考えてます~☆笑 今回は最後まで道を踏み外さない結末でした…! 次回、皆様にここでお会いするころには 涼しいを通り越して寒くなってるかもですネ~!! 今月もありがとうございました~!! |