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この力は正義のために①~事件~ 作:無名 その街には、”憑依能力”を持つ警察官がいたー。 彼は、その力を ”正義のために”使い続けていたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 三上 仁悟(みかみ じんご)は、 この街の平和を守る交番勤務の警察官だったー。 「ーーー」 この繁華街では、日夜色々なトラブルや事件が起きるー。 仁悟は、そんな過酷な環境の中、 今日も、少しでも多くの人々を助けたい、 街の平和を守りたいという一心で、働いていたー。 そしてー そんな彼には”秘密”があったー。 「ーーおい!こら!俺の彼女にぶつかっておいて 何だその態度はー!」 金髪の男が、気弱そうなサラリーマンの男に絡んでいるー。 「ーーーあたし~骨折したかもなんだけど~~」 同じく派手な雰囲気の女が、サラリーマンの男に絡んでいるー 「こ、骨折ー、そ、そんなー… それに、そっちからぶつかって来たのにー」 サラリーマンの男が震えながらそう反論すると、 金髪の男は、逆上して声を上げるー。 「ーーー」 警察官・仁悟は、表情を歪めるー。 ”どっちが悪いか”は、なんとなく想像がつくー。 仁悟は”声をかける”ではなく、 ”彼ならではの”別の方法でトラブルを解決させることにしたー。 それがーー 三上 仁悟だけが持つ”特殊”な力ー。 そうー ”憑依能力”だったー。 彼は幼少期から”他人に憑依することができる力”を 持っていたー 何故そのような力があるのかは、彼自身にも分からないー。 けれど、彼は その力を”悪事”には決して使うことはなかったー。 高校時代も、いじめを受けていた女子生徒を助けるために、 その女子をいじめていた、陰険な女子グループの一人に憑依、 内部からそのグループを”崩壊”させて、いじめを受けていた子を 助けたこともあったし、 他にも”憑依”で、色々な人を助けてきたー。 もしも、仁悟が”悪い人間”だったのであれば、 学生時代から、女子に憑依して好き放題していただろうし、 男子にも憑依して”自分に都合の悪い人間”を排除したり、 そういったこともしていたかもしれないー。 しかし、正義感の強い彼は”憑依”を正義のために使い、 決して悪事に使うことはなかったー。 「ーーさて、とー」 仁悟は、気弱なサラリーマンの男に”ぶつかられた”と喚いている 派手な風貌の男女のうち、”女”に憑依することを決めるー。 仁悟自身、下心から積極的に”女”に憑依することはないー。 今も、派手な風貌の男女のうち”女”のほうを選んだのには ちゃんとした理由があるー。 それはー、”ぶつかられた”と言っている女が ”そんなに騒ぐほど、本当に痛いのかどうか”を確認するためだったー 仁悟は物陰に隠れて、その場で自分の身体を”幽体”へと変化させるー。 仁悟の憑依は”幽体離脱”して、自分の身体をその場に放置するタイプではなく、 自分自身がそのまま幽体に変化できるタイプー。 そのため、”無防備になった自分の身体”をその場に放置するような必要もなく、 ”安全”だったー。 そしてー、憑依をする際に 相手の前に姿を現す必要もなく、 少し離れた場所で自分の身体を幽体にして、 そして、そのまま直接相手に憑依することが可能だったー。 「ーーあたし、骨折したんだけーーー ぁ…っ」 サラリーマンの男に絡んでいた女が、仁悟に憑依されるー。 横にいた彼氏が「ーー?」と、少し表情を歪めー、 絡まれていたサラリーマンの男も困惑した表情を浮かべるー。 「ーーー……ーーー」 女に憑依した仁悟は、 女が骨折などしておらず、本当は全然痛くないことを、 女の身体で確認するー 大げさに痛そうにしていた場所に触れてみるー。 が、やはり全然痛くないー。 もし、”本当に”骨折しているなら、 まぁ、それはそれである程度は対応を考えようとは思ったものの、 そんなことはない、ということを女の方に憑依したことで確認できたー。 「ーどうした?」 彼氏の方が、急に言葉を止めた彼女に違和感を抱いたのか そう言葉を口にするー。 「ーーーーあのさ、こういうの、もうやめないー?」 憑依して乗っ取った、派手な風貌の女の身体でそう言葉を口にすると、 彼氏は「あ???な、なんだよいきなりー?」と、 少し不満そうに言葉を口にするー。 「ーーーーこんなことしてたら、いつか、あたしたち 捕まっちゃうかもしれないでしょ?」 女の身体でそう言葉を口にするー 昔は、憑依した直後に普段”わたし”と言っている子の身体で 俺と言ってしまったり、”わたし”と言うのが恥ずかしかったり、 色々あったけれど、小さい頃からずっと”憑依”を使いこなしてきた 今の仁悟にとっては”乗っ取った相手の身体”で、 その人間のフリをその場でするのは、朝飯前だったー。 「ーーーんだよー…サツになんかびびってんのか?」 彼氏がうんざりした様子で言うー。 しかしー ”この女”と、横にいる男は見た感じはカップルー そう分析していた仁悟は、女の身体ですぐさま言葉を続けたー。 「ーーびびってないよー でも、捕まったら、二人、一緒にいられなくなっちゃうかもしれないー。 あたしは、それが嫌なの」 彼女の身体で、”あたしは、いつまでも一緒にいたいからー”と、 そう言って見せるー。 すると、彼氏は少し不満そうにしながらも 「ーーー…そこまで言われちまったらー…仕方ねぇ」と、 それだけ言葉を口にすると、 急に”やめようよ”と言い出した女と、その彼氏を見つめながら 困惑していた気弱そうなサラリーマンのほうを 彼氏は見つめたー。 「ーーだってよー。命拾いしたなー」 捨て台詞を吐き捨てる彼氏ー。 「ーやめなよ」 女の身体で、仁悟がそう言うと、彼氏はもうそれ以上は言わず、 サラリーマンの男を解放したー。 ”ーーーこれでよし、とー” 仁悟は、女の身体でサラリーマンから離れるまで ゆっくりと歩くと、その場で女の身体から抜け出したー 「ーー!」 女が一瞬ピクッと震えるー。 が、彼氏のほうは それには気付かず、そのまま歩くー。 「ーーったくー、急にあんなこと言い出すから驚いたぜー」 派手な風貌の彼氏がそう言葉を口にすると、 ”仁悟”に憑依されていた女は、 少しだけ困惑するような表情を浮かべたものの、 すぐに答えたー 「だって、あんたと一緒にいられなくなったら嫌だもんー」 とー。 その様子を、物陰で人間の姿に戻った仁悟が見つめるー。 「ーーははは、俺のことそこまで好きでいてくれるとは思わなかったぜー」 彼氏がご機嫌そうに言うー。 そんな彼氏に対して派手な風貌の女は 「ーあんな気弱そうなやつに絡んで、捕まったら損じゃん?」 と、まるで”憑依されている間”の記憶があるかのように、 そんな言葉を口にするー。 しかもー、彼女は先ほどまで”そんなこと”は思っていなかったー。 彼氏である男と一緒になって、 気弱そうなサラリーマンから金を巻き上げることだけを考えていたのにも 関わらず、今はまるで違うことを口にしているー。 「ーーこれで、大丈夫そうだなー…」 警察官の仁悟は、物陰からそんな様子を見つめつつ、 そう言葉を口にしたー。 仁悟の”憑依”は、憑依された側に ”憑依されている間にしていたこと”の記憶が残るタイプー。 しかしー”憑依されていた”ということを自覚するわけではなく、 憑依されていた間に”したこと”は、 ”自分自身が自分でしたこと”だと、認識するー。 そのため、今、サラリーマンに絡んでいたカップルの女は、 自分の意思で、”こういうことやめようと”と言い放って、 その理由を”彼氏と一緒にいたいから”と、そう話したと 思い込んでいる状態だったー。 ”脳”が、憑依されている間にしたことも、自分がしたことだと 誤認することにより、起こる作用だー。 そのため、使い方によってはこうして ”憑依をやめたあと”のその人間の行動にも”ブレーキ”をかけることが できるのだー。 だからこそ、仁悟はサラリーマンと揉めていたカップルを 口頭で注意するのではなく片方に憑依してトラブルを解決させたー。 注意するだけでもその場のトラブルを押さえ込むことはできるー。 が、警察官である仁悟が立ち去れば、 あの二人はまたトラブルを起こすかもしれないし、 さっき絡まれていたサラリーマンを逆怨みして、 再び絡む可能性もあるー。 が、憑依して、カップルのどちらかの考え方にも 影響を与えてしまえば、こうして同じようなことを 繰り返す可能性は下がるー。 仁悟は”憑依で解決させた方がいい”と、思う時には そうすることにしているー。 「ーーーー」 その後も、パトロールを続ける仁悟ー。 酔い潰れているサラリーマンの男に憑依ー、 その男の身体になったことで自分も酒の影響を 受けながらも、そのまま近くのネットカフェに宿泊させて、 そこで解放するー。 もちろん、その男は自分の力で自力でネットカフェに移動したと思い込むために、 本人がパニックになる心配はないー。 家出した少女を見つけ、憑依して 家庭環境を軽く探った上で、その身体で家に戻したー。 家庭環境次第では安易に家に戻すとトラブルの危険性があるため、 その場合は親の方にも憑依して、トラブルを未然に防ぐ必要が あるものの、今日、憑依した子の場合は、 家出した子側の一方的な理由であったため、 そのままその身体で帰宅させたー。 喧嘩している男女の両方に憑依して 喧嘩を止めて、そのまま帰らせたー。 そんなー、”憑依”を使ってトラブルを解決させていく仁悟ー。 ”俺のこの力は”おかしい”ー。 普通じゃあり得ない力だー 人を傷つけようと思えば、いくらでも傷つけることができてしまうし、 悪事に使おうと思ったら、いつでも使うこともできてしまうー。 でも、だからこそー 俺はこの力を絶対に悪いことに使わないし、 良いことに役立ててみせるー” と、仁悟はそう考えているー。 こんな得体の知れない力をどうして自分が持っているのかー、 それは、仁悟自身にも分からないー。 けれど、仁悟は時々思うー。 ”この力を持っているのが、俺で良かったー” とー。 もしも”憑依”の力を悪事に使うことを躊躇わない人間が この力を持っていたら、大変なことになるー。 「ーーお疲れー」 同じ交番に勤務する中年の刑事、高塚 力斗(たかつか りきと)が、 そう言葉を口にするー。 「あ、お疲れ様ですー」 パトロールを終えて交番に戻ってきた仁悟が、そう言葉を口にすると、 「ーあ~~三上くんーお疲れ様ー」と、先輩の女性刑事・ 安村 晴美(やすむら はるみ)も、奥から出てきてそんな言葉を口にしたー。 二人と、パトロール中の出来事を”憑依”のことを伏せた上で話す仁悟ー。 ”憑依”のことは誰にも口にしていないー。 こんな力のこと、そう簡単に誰も信じてくれないだろうし、 何よりも、こんな話をすれば混乱するし、周囲は怖がるだろうー。 仁悟自身、絶対に悪用するつもりはないー。 けれどー、例えば仁悟が”憑依”と関わりなく生まれていて、 周囲の人間が”俺、他人に憑依出来るんだー”なんて言って来たら やっぱり不気味に思うだろうし、 ”自分もいつか憑依されるんじゃないか”と、不安に思う気がするー。 だから、誰にも憑依のことは説明していなかったー。 「ーあ、おかえり~!」 同居している彼女の久井 由美(ひさい ゆみ)にもー。 「ー今日はどうだったー?」 先に仕事を終えて帰宅していた由美がそう言うと、 仁悟は「まぁー、今日も色々あったよー。場所が場所だしー」と、 繁華街の近くにある交番だからこそのトラブルを口にするー。 「あははー大変だねーホントにー」 由美がそう言葉を口にしながら 「あまり無理しないでね」と、心配そうに呟くー。 「分かってるー。由美を悲しませるようなことにはならないように 頑張るから」と、仁悟はそう言葉を口にしたー。 ”憑依能力”を正義のためにー。 そう信じて、仁悟は突き進むー。 けれどーーー ”その先に待つ運命”を、仁悟はまだ知らないー。 ②へ続く ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 皆様おはこんばんにちはデス~!!! やっと、やっと、涼しい日も増えてきましたネ~!!! 先月のお話の時のあとがきで、 次回は”最近涼しくなりましたネ~!”って言いたい~!って 書きましたケド、 ちゃんと言うことができる涼しさになってきました~! 最近涼しくなりましたネ~笑 今回のお話は、”憑依”の力を 正義のために使っている主人公のお話デス~! 憑依できるようになると、悪いことに使っちゃう人も (物語では)多いですケド、 いいことに使う人もいると思うので、こういうお話も~~!! ①は、どんな日常を送っているかのお話でした~! ②以降も楽しんでくださいネ~!! |