「恋と魔法の夏休み」
 作・JuJu

 第9話

 夜になり、俺は風呂に入っていた。
「今日はいろいろあったなあ。
 猫娘のユイが押し掛けてきてきたり、ユイにいきなり女の体にさせられたり、夏花と女物の下着を買いに行ったり……」
 夜と言うことや、やっと一人きりになれたということもあり、俺は湯船につかりながら、今日一日の出来事に思いをはせていた。
「ユイが言っていたな。魔法で変身した姿とはいっても、これは本物の女の体なんだって」
 自分の腹のあたりをなでてみる。湯に暖まった肌を、細い指がなめらかにすべってゆく。指で触れた場所は敏感に反応し、腹からくすぐったい快感が走る。
 しばらく腹の周辺で遊ばせていた指を、ゆっくりと上部に向かって進ませた。
「やっぱり膨らんでいる。ブラジャーを買うときに計ったときはずいぶんと小さいと思ったけど、それでも女の子なんだな。
 ということは、ここも……」
 俺の指先は、おそるおそる股間を目指して沈み始めた。
「これはあくまで、俺の体が完全に女の子になっているかどうか確かめるためだからな。やっぱり自分の体だからな。どうなっているのか知っておきたいしな」
 ここは浴室で、この場所には俺以外の人物は存在しない。俺が自分の体のどこに触れようと、それを知る者はいない。
 それなのに、つい言い訳がましい言葉が俺の口から漏れた。こうして勇気づけなければ、これからの行動ができそうになかった。
「自分で自分の体にさわるだけだ。なんの問題もない」
 震える指が、女にとって大切な場所に這いずってゆく。
 ――あとわずかで、大切な場所に触れようとしたその時、風呂場の扉が乱暴に開き、ユイが浴室に突入してきた。
「広海! 湯加減はどう?」
「ユユユ……ユイ!? 違うぞ、これは! けっして俺はやましい気持ちを持っていたんじゃなくて……」
 驚いて、湯船で立ち上がりながら言った。
「って、お前! なんて格好をしているんだよ!?」
 俺の目の前に現れたのは、タオル一枚身にまとっていない素っ裸のユイだった。
 相手が子供とはいえ、女の子が裸で風呂に入ってくればとまどう。
「背中を流してあげようとおもって。これから一週間お世話になるんだもの。このくらいのお礼はさせてよ」
「入ってくるなら、体くらい隠してこいよ」
「いいじゃない。女同士だし。
 あはは、広海顔が真っ赤だ!」
「うるさい! さっさと背中を流して、出ていけ!」
 俺は浴槽から出ると、ユイに背中を向けて、いすに座った。


      ★〜★〜★


 夜も更けて就寝の時刻となった。
「おまえ、本当にここに居着くつもりか?」
「そうよ。だいたいこんな夜更けに女の子一人で夜道を歩かせる気?」
「言っておくが、ふとんはひとつしかないぞ」
「広海と一緒に寝るからいい」
 俺はあきれた顔をしたが、さすがに女の子を床に寝かせることもできず、だからといって自分が床に寝てユイだけベッドに寝かせるのもしゃくだと思い、けっきょくユイの提案通り、ベッドで一緒に寝ることにした。
 タオルケットを自分とユイのおなかに掛ける。
「暑苦しいから、あまりくっつくなよ」
「わかっているって。ただ寝るだけ。なにもしないよ。
 おやすみ広海」


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