「恋と魔法の夏休み」
 作・JuJu

 第8話

 俺たちはデパートの女性下着売場に来た。
「うわ、すげー。目のやり場に困るな……」
 俺は女性下着売場の前で立ち止まって見渡した。
「こんなのを俺が身につけることになるのか……」
 俺は身を乗り出し、下着売場の中をのぞき込んだ。
「おー、あれが紐パンってやつか。生で初めて見た。
 こっちのは、純白で一見清楚そうに見えるけど、大切なところぎりぎりまでレースになっていて、肌が透けて見えるようになっているのか〜。なかなか大胆だな」
「なんだかんだいって、やっぱりよろこんでいるんじゃない」
 ユイが言った。
「それじゃ、そろそろ突入と行くか」
 俺は男子にとって禁断の楽園である下着売場にむかって足を踏み入れようとした。
 と、そこに、ユイが服の裾を引っ張った。
「こんなランジェリーショップのテナント、高くってあたしたちには手が出せないって。
 あたしたちはこっち」
 そう言われて俺が引っ張られた先は、男物の服や子供服などがならんだ一角にある、女物の下着売場だった。
「うーん。ここもなかなかエロいけど、さっきのセクシーな下着を見た後だと、じゃっかん感動が薄れるっつーか」
 そこに、夏花が尋ねてきた。
「ヒロミさん、カップのサイズはわかる?」
「へっ?」
「胸の大きさよ。やっぱり判らないか」
「そりゃあ、男だったんだし……あいてて、なにするんだよユイ」
 ユイは俺の足を踏むと、あわてて夏花に話しかけた。
「夏花。あのね、さっきも言ったけど、あたしたちの国では、ブラジャーってあんまり普及していないのよ」
「じゃあ、試着室で計ってあげようか」
「計るって、試着室に一緒に入るのか!?」
「だって、計り方わからないでしょう?
 安心して。この店の試着室は広いことで有名なんだよ」
 こうして、俺は夏花に手を引かれて、更衣室に向かった。


      ★〜★〜★


「本当だ、広いな。これならば三人入っても余裕だな」
 試着室に入った俺の口から、おもわず感想がもれた。
「それじゃ、さっそく計ろうか。
 まずは私からお手本を見せるね」
 そういうと、夏花はなんのためらいもなく上半身をあらわにしてブラジャー姿になった。
「うわわわっ!」
「ん? どうしたのヒロミさん」
「い、いいい……いや、なんでも、ない」
『(うふふ。女の子になれてよかったわね)』
 ユイが耳打ちをする。
「なんだかちょっと恥ずかしいな。あんまり見ないでね」
「いいじゃない夏花。あたしたち女同士なんだから。
 ヒロミも、こそこそと横目で盗み見してないで、もっと堂々と見なよ。
 だいたい、夏花の胸が大きすぎるのがいけないんだよ!」
 そういうと、ユイは夏花の胸を掴んだ。
「大きい! あたしの手じゃとても掴みきれない。ほら、ヒロミも夏花に触れてみなよ。ビックリするほど大きいから」
 ユイは俺の腕を掴むと、夏花の胸に押し当てた。
「え? え? なんだ?
 あわわっ! 夏花の胸に俺の手が……」
「ほら。もっとしっかり確かめてみて」
「あん」
「ね。夏花の胸って大きいでしょ?」
「ああああ。そそそ、そうだな」
「もう。ふたりともいやらしいんだから」
 夏花はそういって、上目遣いで照れた。
「それじゃ、そろそろ夏花の胸を計ってあげて」
「ばか! おまえがやれ」
「え〜。でもあたしじゃ背が低いし、腕も回らないもの」
 ユイは俺に耳打ちしてきた。
『(それに、本当は、やりたいんでしょう?)』
『(だって、まずいだろう。俺は、本当は男だし……)』
『(魔法の力を借りたとはいえ、ヒロミは、いまは本物の女の子なんだよ)』
 そういうと、ユイは備え付けの巻き尺を手渡し、背中をたたいた。
「さあ、がんばって!」
 俺は、背中を向けて待っている夏花の背に回った。
「それじゃ、失礼しますっ」
 夏花の下着姿が見られただけじゃなく、こうして胸のサイズまで計れるなんて……。俺は至福の気分で、巻き尺を夏花の胸に回そうとした。
「あ、ちょっと待って!」
「ななな、なんかまずかったですか?」
「ううん。いま、ブラを脱ぐから。
 あのね、説明していなかったけれど、ブラを脱いで直接計るんだよ」
「ええええ!?」
 夏花はそういうと、俺の目の前でブラジャーを脱ぎ始めた。
 さすがに、前に回る勇気はなく、夏花の背中しか見えなかったが、それでも、目の前で夏花がブラジャーを脱いでゆくしぐさはたまらないものがあった。
「それじゃお願い」
「はっ、はい」
 俺はふるえる手で胸を計った。
「うわっ、す、すげぇ。九十センチ超えている」
「やっぱりまた大きくなってる」
「すごい! すごいよ夏花!!」
「ありがとう。でも大きくて、恥ずかしいのよね」
「いいや、そんなことはない! この大きさは男を魅了できるサイズだ。この俺がいうんだから間違いない!!」
「うふふ。ありがとう。ヒロミさんに言われると、なんだか自信がもてる気がするわ」

「それじゃあ、こんどはヒロミさんの番ね。お礼に私が計ってあげる」
「お、お願いします」
 俺は上半身裸になった。
「え〜っと、七十九……ね」
「わー、ヒロミおっぱい小さい〜」
「ツルペタまな板のお前がいうな!!」

 こうして、わきあいあいと下着の購入は終わった。


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