「恋と魔法の夏休み」
 作・JuJu

 第6話

「ま、待て! 今なんて言った!?
 女になれとか、言わなかったか?
 おい! 怪しい呪文を唱えていないで、質問に答えろ!?」
 だが、ユイから返事を聞き出す前に、俺の体に異変が起き始めた。
 不思議な呪文に同調するように、俺の髪はすべるように伸びて腰まで届いた。さらに根本から金色に染め上げられてゆく。
 変化は髪だけにとどまらない。背は縮み、肩幅も小さくなる。
 胸が大きく膨らんで、腰が細くなった。
 いつのまにか、詠唱(えいしょう)をおえたユイが、部屋の片隅に置いてあった姿見を俺の前に運んできた。
 その姿は、おとぎの国のお姫様のような金髪碧眼の美少女に変身していた。
「な、な、なんだこりゃ? これが俺か?」
「どう、すごいでしょう? これであたしのこと信じてくれる?」
 ユイは、自慢げに無い胸を張った。
「ちょっとまてよ! だれが女になんかなりたいって願った。
 だいたい、女なんかになったら、夏花と恋人になれないじゃないか!」
「女同士恋人、っていうのもアリなんじゃない?」
「ねえよ! とにかく、もとにもどせ!」
「欲張っちゃだめよ。願い事は、一人一回一度きりなんだから」
「よくばってなんかいねえよ! 元に戻せと言っているんだ」
「まあ、クレーマー恐い!!」
「あのなあ」
「でも、いまさら戻せって言われても無理なのよねぇ。解除方法もわからないし」
「それじゃ、どうあっても、俺はこの姿のままなのか?」
「まあまあ。あたしの魔法は一週間しか保たないから。一週間したら絶対にもとにもどるから」
「……」
「そう怒らないでよ。すべてあんたのためにやったんだから。
 広海。あんた夏花のおっぱいを触りたいってつねづね思っていたでしょう?
 その姿なら女の子同士だから、夏花の胸をさわれるはずよ。まずは夏花とお友達になって、それからさりげなく夏花の胸をさわればいいのよ。
 それだけじゃないわ。夏花と一緒に着替えたり、夏花と一緒にお風呂に入ったりできるのよ。
 どう、したかったんでしょう?」
「お、俺は、そんな、夏花にエッチなことを……」
「ホントに? 本当にしたくないの?」
 ユイがいたずらっぽく俺の顔をのぞき込んだ。
「……うるさいな!
 まあ、一週間で元に戻れるというのならば、がまんしてやる。
 この姿ならば、俺だとばれずに、夏花の好きな男のタイプとか知ることができそうだしな。
 決して、同性という立場を利用して夏花の胸をつかんだりとか、女子更衣室で生着替えを見たりとか、一緒に風呂に入って洗いっこをするとか、そういうことをしたいわけじゃないからな。勘違いするなよ?」
 それを聞いて、ユイは小声でぼやいた。
「まったく。素直じゃないんだから。
 夏花にエッチなことがしたいならば、私が手伝って上げるのに。
 なにしろあたしは、広海の願いをかなえるために来たんですからね」


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