『朝のSOS! 〜エッチな妹の作り方〜』(中編)
作・JuJu




 (六)

「熊野くん、早く帰ってきてよ〜」
 ひとり部屋に残されたひろしは、心細そうに壁に掛けてある鳩時計を見る。時が過ぎるだけで熊野が戻る気配はない。
 熊野を探しに行こうにも、屹立(きつりつ)している股間を妹に見られるかも知れないと考えると、部屋から出ることができない。
 結局今のひろしには、やきもきしながら、ただひたすら熊野の帰りを待つことしかできなかった。
 と、そこに、ドアが開いた。
「どこに行っていたんだよ。こんなことを相談できるのは熊野くんだけなのに」
 ひろしは、熊野に駆け寄った。
「待たせたな。だが、妹さんに飴(あめ)をなめさせるのには成功したぞ」
「飴?」
「ああ。――これだっ!」
 熊野は力強くうなづくと、自慢げに透明な小袋を見せつけた。
 ひろしは目の前に突きつけられた袋を手に取る。封の開いた袋の中には、緑色のキャンディーが一粒だけ入っていた。
 袋の表面に目をやると、カラフルな字で
〈【TSゼリー・ジュース・キャンディー】 濃厚ピーチ&濃厚ゴーヤー味(一組(二個)入り)〉
と書かれていた。
「TS……ゼリー……ジュース……キャンディー……?
 それで、このTSゼリー・ジュース・キャンディーと、ぼくの――って、これゼリーなの? ジュースなの? キャンディーなの?」
「そのことなら、袋の裏に書いてある」
「えっと……なになに? 『大人気のゼリー・ジュースを おいしいキャンディーにしました』? じゃあキャンディーでいいのかな。まぎわらしいなあ」
 ひろしは袋から目を離して、熊野を見た。
「それで、このキャンディーと、ぼくの股間と、どんな関係があるの?」
「それはだな……」
 熊野はそう言うと、ひろしから袋を取り上げて、中に残っていた緑色のキャンディーを口の中に放り込んだ。
「もぐもぐ。
 ……ずいぶんと味が濃いな。さすが濃厚。
 それじゃ、ちょっとおまえの寝台を借りるぞ」
 そういうと、熊野はベッドに横になり、体に毛布をかけると目を閉じて寝てしまった。
「ええ〜っ!?
 なに二度寝しているの?
 起きてよ、僕の人生はどうなるんだよ」
 ひろしは熊野を揺り起こそうとする。だが、熊野はまるで意識を失っているみたいに眠り続けた。

 (七)

 必死に熊野を揺り起こそうとしていたひろしは、背後に人の気配を感じた。
 あわてて振り返ると、妹のエミが部屋に入って来ていた。
 熊野を起こすことに夢中になっていたために、いままで気が付かなかったのだ。
「な、なんだよ。入るならばノックくらいしろよ!」
 ひろしは先ほどのようにベッドに潜り込もうとした。
 だが、ベッドには熊野がいた。
 詰めれば寝られないこともない。が、シングルベッドに男の子が身を寄せ合って寝てる姿は、同性愛っぽい雰囲気があり、そんな姿を妹に見せたくなかった。その上、そんな状態で自分が勃起していることがばれでもしたら、もう生きては行けない。
 そう思ったひろしは、仕方なく熊野にかかっていた毛布を掴むと、ふくらんだ自分の股間に押し当てた。
 股間を毛布で隠しながら前屈みで立っている姿は、自分でも不自然だとひろしは思った。しかし、この緊急事態ではしかたがないと、自分に言い聞かせた。
 そんなひろしを後目(しりめ)に、エミはずかずかとベッドに向かって歩いた。寝ている熊野を見て、満足そうになんども頷く。
 そのあと、制服姿のエミはひろしの目の前に立つと、スカートの裾を掴んだ。
「さあ。これで抜くんだ!」
 エミは一気にスカートをまくり上げた。ちょっぴり背伸びしたデザインの白いパンツがあらわになる。それどころか、おへそまで見えている。
「な、何しているんだよ、エミ」
「何って、この体でオナニーをさせてやろうとしているんじゃないか。
 減る物じゃなし、パンツを見せるくらいならいいだろう」
「ばか! なに言っているんだ!」
「ひろしの妹さんには悪いが、男にとって命の次に大切なエロビデオを勝手に捨てたんだ。これくらいの罰は受けて当然だろう」
「ビデオを捨てたのはエミじゃないか! それに! それに……。えっ? えっ?」

 (八)

「――それじゃ、本当に熊野くんがエミに憑依しているの?」
「ああそうだ。
 偶然、憑依が出来る魔法の飴玉を手に入れてな。
 俺も半信半疑だったのだが……」
 ベッドの端に大股で座っているエミが言った。
「さっき見せた袋には二色の飴が入っていてな、桃色の飴を食べた者にたいして、緑色の飴を食べた者が憑依できるんだ。
 だからさっき、妹さんに桃色の飴を舐めさせて来た。
 それから俺も緑の飴玉を舐めた。
 そして気がつくと、俺はおまえの妹さんになっていたんだ」
「う〜ん。信じられない話だけど、憑依でもされなきゃ、エミがぼくにパンツを見せるなんてことはありえないし……。
 でもやっぱり信じられないな〜。う〜ん」
 体を操られてるエミを見ても、いまだに信じられない様子のひろし。そんなひろしに業を煮やしたように、エミは腰掛けていたベッドから立ち上がった。
「とにかく時間がないんだ。
 さっさと抜いて、学校に行くぞ」

 (九)

 エミは背を向けると尻を突き出してスカートをまくる。
「だめだめ! 妹相手じゃ、性欲なんかわかないよ。
 どんなにパンツを見せられたって、妹じゃだめだよ」
「仕方ないだろ。手近なところにいる女性は妹さんしかいなかったんだから」
 エミはあきれた顔をして、ひろしの方に向きなおりながらスカートを掴む手を放した。
「このキャンディーは抜けた元の体から二十メートルくらいの範囲にいないと、憑依が解けてしまうらしいんだ。しかも、憑依時間は十五分しかない。
 ちなみに、妹さんは意識を失った状態になっている。だから憑依されている時のことは憶えていない。俺とひろしだけの秘密だから、遠慮なんてしなくていいぞ」
 その時、鳩時計が時報を知らせた。
「むっ! 憑依していられるのは、あと十分っ!
 それに、もたもたしていると、学校を遅刻してしまうぞ。
 時間がないんだ! 
 早くこの体でオナニーをしろ!
 さあ、さあ、さあっ!!」
 スカートの前面をまくると、エミはパンツを見せつけながら、ずんずんとひろしに迫った。
「だから、妹相手じゃむりだってばっ!
 たとえ裸を見せられたって、妹じゃ性欲がわかないよぅ〜」


(続く)