『朝のSOS! 〜エッチな妹の作り方〜』(前編) 作・JuJu (一) 五月のあるさわやかな日。 部屋の窓から朝日が射し込み、まぶしい光がベッドで眠っていたひろしに朝の訪れを知らせる。 「う〜ん……」 パジャマ姿のひろしは、上半身を起こすと気持ちよさそうにのびをした。 「あれ?」 股間に違和感があった。 その原因を確かめるため、彼は毛布をまくり上げると自分の股間を見た。 「うわ〜!?」 体の異変に驚いたひろしは、視界から消し去るように、毛布で下半身を隠した。 (二) 数十分後。 ひろしの部屋にノックが響く。 ひろしはあわててベッドに滑り込むと、毛布を頭までかぶった。 「どうぞ……」 ひろしが答えると、ドアが開いて妹のエミが入ってくる。彼女はすでに学校の制服に着替えていた。可愛いことで有名な、女子中学校の制服だ。 「あにき、熊野さんが迎えにいらしたけど」 エミに続いて、高校の制服を着た、体格の良い男の子も入って来た。 親しい級友の名を聞いたひろしは、真っ赤にほてった顔を毛布から出した。まだ小学生といっても通用するような童顔を、耳まで充血させている。 「ね? ごらんのとおり。今朝からずっとこんな調子なのよ。 あにき、朝ご飯を食べに、早く降りて来てよね」 「う、うん……」 あいまいな返答を聞き、エミはあきれたように部屋を出ていった。 ドアが閉まると、ひろしは熊野を見て言った。 「ぼく、今日は学校を休むから、ハルコ先生にそう伝えといて」 「どうした? 病気か?」 巨体を揺らして、熊野は心配そうにベッドに駆け寄った。 「これって病気……なのかな。 ……元気すぎて困っているくらいだけど」 「元気ならば、仮病なんてつかっていないで学校に行こうぜ。 もしかして学校で嫌なことでもあったのか? 俺に出来ることならば手助けするぜ?」 そう言って、ひろしが抑える間も与えず、熊野は毛布を剥ぎ取った。 そこには、パジャマの股間をふくらませているひろしの姿があった。 (三) 「わーっ! わーっ! わぁーっっっ! こっ、これは……、その……、あの……。 エ、エッチなことを考えていたんじゃないんだ、本当だよっ!?」 「おちつけ。 それで、いったいどうして学校に行きたくないのか話してくれないか」 「じ、実は、朝目が覚めたら、これが立っていて、いつまで待っててもおさまらないんだ。 こんなの立たせたままじゃ学校に行けないよ! ――ねえ、どうしよう?」 「なんだ。それで学校に行きたくないと言っていたのか。 そんなの、ただの朝立ちじゃないか」 「朝立ち?」 「安心しろ。それは健康で若い男子ならば誰にでもおこる生理現象だ。通常は時間の経過と共に自然とおさまるものだが……。たしかに、なかなかおさまらない時もあるな。 しかし、ひろしはその歳で朝立ちは初めてなのか? まあ、ひろしならば朝立ちをしたことが無くても不思議ではないな。なにしろ童顔だし、背も低いし、肌は色白で体の線も細いし……。つまりひろしは、女子っぽいというか……」 「ちょっと、それは言い過ぎ」 「いや、すまんすまん。 とにかく朝立ちは自慰行為……オナニーをすれば収まる。 一発抜いて、さっさと学校に行こうぜ」 「そうなんだ……。 うん、わかった」 安心したひろしは、元気よくベッドから立ち上がった。 床に四つんばいになるとベッドの下に腕を伸ばし、何かを捜すように動かす。 「あれ? おかしいな」 ひろしは焦りながら、その腕を隅々まで這わせた。 とうとう、あわてふためいた面持ちで本棚の引き出しから懐中電灯を持ち出すと、その懐中電灯でベッドの下を照らし、ほおを床のカーペットに押し付けながらのぞき込んだ。 (四) 「――だめだ! オナニーできないよ」 ひろしは、いまだ信じられないといった表情で力なく立ち上がると、熊野に背を向けたままつぶやいた。 「なんだなんだ? いったいどうしたんだ? さっきも言ったが、朝立ちもオナニーも、男の生理現象だ。けっして恥ずかしいことじゃない。 あ、そうか。俺がいるから出来ないって言うのか? そんなの便所でやってくればいいだろう? ここでやりたいのならば、その間、俺は部屋を出ているが? 俺は男のオナニーを見て悦ぶような趣味は持っていない。のぞき見なんてしないから安心してエンジョイしろ」 「そうじゃないんだ。事態はもっと深刻なんだよ」 ひろしは、熊野に背を向けたまま、うつむいた頭を左右に振った。 (五) 「なんだと!? エロビデオを捨てられたのか?」 「しーっ! 声が大きいよ。そんな大声で『エロビデオ』とか叫ばないでよ。近所の人に聞かれでもしたら、ぼくとても恥ずかしいよ。 それで、どうやらぼくのいない間に、エミが部屋に入ったらしいんだ。 まんがを借りに、勝手に部屋にはいってくることがあるんだ。あるいは、掃除をしに来たのかもしれない。 とにかくその時に、ぼくがベッドの下にエッチな本やビデオなんかを隠してあるのを見つけたらしい。 それで、全部捨てちゃったらしいんだよ。 ねえ、これを見て! ベッドの下に入っていたんだ」 そう言うと、ひろしは紙切れを熊野に突き出した。 熊野が手に取ると、そこには〈エッチなのは全部処分した。あにきの不潔!〉と書かれていた。 「ぼくの大好きな、女の子から男の子にエッチなことをしてくれる『ご奉仕物』がごっそりと捨てられちゃったよ。 ぼくの宝物だったのに……。 一生懸命集めたのに……」 ひろしは悔しそうにうめいた。 「それに……、ぼくはエッチな本とかエッチなビデオとか、そういうおかずを見ながらじゃないとオナニーできない体質なんだ!! おかずもなしに、どうやって朝立ちをおさめたらいいんだろう!?」 「うむ。わかるぞひろし! 男にとってエロアイテムとはまさに命。 エロ本は男たちの血。エロビデオは男たちの肉。 おまえの悲しみは、同じ男子として痛いほどわかる。 血の繋がった兄妹とはいえ、なんてことを……ぐぐぐ」 熊野は天を仰ぐと、歯を食いしばった。その目元には、無念の涙が光っていた。 「いや、さすがにそこまでは……。悔しいことは悔しいけれど。 それにいまは、朝立ちをなんとかしなくちゃ……。 って、ねえ? ぼくの話聞いてる?」 「すまん、そうだったな。 失った物は実に名残惜しいが、目下(もっか)の可及的(かきゅうてき)な課題は、ひろしの朝立ちをおさめることだったな」 「うんうん。よかった。ちゃんとぼくの話聞いていてくれたんだね」 「ひろしは、おかずがないとオナニーが出来ない。 俺が今から家に戻ってエロビデオを持ってくることもできるが、その場合遅刻することになる。俺の家はここから遠いからな。 このままでは、遅刻をするか、あきらめて朝立ちをしたまま学校に行くかの、二者択一だ。さあ選べっ!!」 「そんなの、どっちも嫌だよ〜。 遅刻した理由が、朝立ちをおさめるためにオナニーをしていましたなんて、ハルコ先生にはずかしくて言えないよ。 だいたい熊野くんは、獣姦物しか持っていないじゃないか! ぼく、そんなんじゃ抜けないよ!」 「となれば、朝立ちをしたまま学校に行くしか残された道はない。 しかし獣姦の良さがわからぬとは、ひろしもまだまだ青いな」 「獣姦の良さをわからなくちゃならないならば、ぼくは一生青いままでいいよ。 それよりどうしよう。股間をふくらませたまま教室に入ったら、クラスのみんなになんて言われるかわからないよ。 ううん、それ以前に、おちんちんを立たせたまま町に出て、それを誰かに見られでもしたら、ご近所の笑い者だよ。 ねえ!? このまま、一生、ず〜っと立ったままだったらどうしよう? 外にも出られない、学校にも行けない。 ああ、ぼくの人生は、もう終わりだあ!!」 「むう。仕方ない。 そこまで思い詰めているのならば、奥の手を出すか。 妹さんはまだ家にいるな。 ひろしはここで待っていろ。すぐに戻ってくる」 熊野はそう言い残すと、ひろしの部屋を出て行った。 (続く) |