「檻〜ORI〜」 本章・皮の檻(七) 作:JuJu 店を出た後、俺はこの俺が調教するだけの価値がある、理想の体つきを持った女を捜した。そこで見つけたのがお前だ。尾行して、お前の家を探し当てた。深夜になるのを待ち、部屋に忍び込んだ。 お前は熟睡していたが、念の為に揮発性の薬を嗅がせた。ゼリーと共に購入した即効性の睡眠薬だ。服を脱がし、裸になったお前の全身にゼリーを塗っていった。 ゼリーが乾くまで、俺はベッドに横たわったお前の体を見つめていた。ゼリーに包まれたお前の体は美しかった。この理想の体を、毎日調教出来るのだと思うと、柄にもなく胸が高鳴った。 しばらくすると、ゼリーがお前の肌の色に染まった。店の親父の説明に寄れば、これでゼリーが固まった事になる。どんな仕掛けでゼリーが皮になるのかはわからない。また、そんな事に興味もない。俺にとって大切なのは、皮が造れる点だけだ。俺は丁寧にゼリーで出来た皮を剥がすと、この部屋に持ち帰った。 ――それが、今から約三ヶ月前のことだ」 わたしはそんなゼリーが本当に存在するのだろうかと思った。が、信じない訳には行かない。なにしろこの男がわたしに化けていたのを、この目で見ているのだ。 「じゃあ三ヶ月もの間、あなたは私に成りすましていたわけ? 私の姿でどこにいったの? 誰と会ったの? 何をしたの?」 「お前の姿でどこにも行っていない、誰にも会っていない。 多忙な身なのでね。つまらない事に貴重な時間を裂くことは出来ないし、また、そんな事に興味もない。 俺の目的はただ一つ、『調教』だ。 俺はこの部屋で、お前の体の調教にいそしんだ。なにしろ、理想の体を自分の思いのままに開発できるのだ。しかも、調教の感覚、肉体の変化、進行具合までわかるのだ。これほ効率の良い調教方法はない。それに、万一調教していることが知れても、お前の姿ならば自分で自分の体を調教しているとしか見えないから、俺の身は安全と言う訳だ。 「……じゃあ、この体が疼く理由は」 「そうだ。皮が憶えているのだ。皮に施した調教は、すべてお前に受け継がれた。 あの時、お前が皮を着た瞬間、お前は調教済みの体になったのだ」 わたしは、一瞬で調教された体になったと聞いて、絶望的な気分になった。そして男の言うとおりならば、二度とこの皮を脱ぐことは出来ない。わたしは一生涯この調教された体のままなのだ。 「なに、気に悩むことはない。調教された体の影響を受けて、やがてお前の心も調教されていくだろう。心と体は切っても切り離せない物だからな。 心まで調教されたその時こそ、その体を与えた俺のことを感謝するだろう。なにしろ、この俺が時間をかけて作り上げた理想の体だからな」 「感謝なんてする訳が無いじゃない!」 わたしは男に向かって叫んだ。 男はバイブのリモコンのボタンを押した。 「ひぃっ!? いやああっ!」 アソコに入っているバイブの振動が、一気に激しくなった。さっきの振動とは比べ物にならないほど激しい。 「これが最大の振動だ」 男は言った。 しゃがんでいたわたしは、堪えきれずに床に突っ伏した。目の前に革の靴が見えた。突っ伏したまま頭を上げると、目の前に男が来ていた。 「どうだ気持ちがいいだろう? これが俺が調教した体だ」 男の言うとおり、想像を絶する快感がわたしを襲っていた。本来のわたしだったら、間違いなく快感に気を失っていただろう。少なくとも、まともに言葉など喋れないはずだ。だが、今のわたしは違った。こうして意識を保っている。わたしの意識を支えているのはただ一つ、この男への怒りだった。 「そんなに調教がしたいならば、好きなだけしなさいよ! 私の姿でもなんでも使って良いから、勝手にすればいいわ! でも、わたしまで巻き込まないで!」 「うむ。俺も最初は、お前の体だけが目的だった。お前自身になど興味もなかった。 だが、それでは駄目なのだ。 俺がお前の姿をしても、それはお前の姿をした俺に過ぎない。本物のお前でないと、完全な完成品とは言えないことに気が付いたのだ。 先程も言ったが、肉体と精神は切り離せない。それを証明するように、お前の皮はお前の精神に、よく馴染んでいる。これでこそ、俺が求めていた、完成された調教の姿だ。 快感が堪らないだろう? こんな素晴らしい体に成れたのだ。どうだそろそろこの俺に感謝したくなって来たか?」 「ふざけないで! 誰があなたになんか感謝するっていうのよ!」 「バイブの出力を最大にしても、まだ威勢があるのか。これだけの快感に襲われれば、意識など失ってしまうと思っていたのだが。たいした精神力だ。やはり、本物の持ち主だからこそ、堪えられるのか。 だが、つまらない物だな。こうして完成してしまうと、それ以上、手を加える事は出来ない。完成された物に手を加えると言う行為、それは破壊でしかない。俺は、せっかく自分の手で完成させた物を、今度は自分の手で破壊しようとしているのかもしれないな。まあそれもいい」 男はそう言うと、懐に手を入れた。懐から出てきた手には、バイブが握られていた。わたしのアソコに刺さっているのと同じ大きさくらいのバイブだ。 「まだバイブを隠し持っていたなんて……」 男は黙って足の方に回ると、バイブをお尻に近づけた。 「やめて、二本も入るわけがない!」 「安心しろ。入れるのはこっちだ」 そう言うと男は、バイブをお尻の穴に当てた。 「!! そこだけは! そこだけは嫌ーっ!」 わたしは必死に逃れようとしたが、快感と体力を消耗した体では、男の腕力を相手に、わずかな抵抗さえ出来なかった。 (つづく) |