「檻〜ORI〜」 序章・白い檻(三)
作:JuJu



 偽物の指がわたしの大切なところから離れた。快感がもっと欲しいと体がうずいている。わたしは精いっぱいの理性で、体のうずきを抑え込んだ。
(見知らぬ人に、体を縛られて犯された。それも女の子同士で)
 そう思うと、快楽の余韻が消え、替わりに悔しいと言う気持ちが沸き上がってきた。
「あなたは誰? 何者なの!?」
 わたしは叫んだ。
「まだそんなことを言っているの? わたしはあなた。いま、その証拠を見せて上げるわ」
 偽物はそう言って立ち上がると、わたしの前で服を脱ぎはじめた。スカート、ブラウス、シュミーズと、微笑みながら脱いでゆく。膨らみかけた胸、幼さを残すお腹の形、自慢の細い足、すべてわたしにそっくりだった。気にしているほくろの数や位置まで。
 偽物はためらいもなく、パンツ一枚で立っている。
「これでわかったでしょう? わたしはあなた」
 偽物の姿が隅々まで自分にそっくりだと言うことにも驚いたが、それと同じくらい驚いた事がある。それは、わたしの偽物が穿いているパンツが、変な形に盛り上がっている事だった。
「ここが気になるの?」
 わたしの視線に気が付いたらしく、偽物はパンツを脱ぎ捨た。アソコに、黒い棒のような物が刺さっていた。
「これはね、バイブっていうの」
 偽物は股間に刺さっている棒を抜き始めた。それを動かすたびに、偽物は短い嬌声を上げて熱い息を吐いた。
 偽物は、それをわたしの目の前持ってきて見せつけた。
 バイブと言うのは棒のような形をしていた。取っ手の部分が黒く、大部分を占めるその先の部分は暗い赤色をしていて、たくさんのぼつぼつが生えていた。小な音を立てて震えている。偽物の体内に入っていたために、表面はヌメヌメと濡れていた。
 頭の中で、バイブと言うのものがどんな道具なのか気が付いた。これは、男の人のアレの代わりなのだ。
「とても気持ち良いのよ。あなたにも入れてあげる」
「こんな太い物を、わたしに入れる? 入るわけがない!」
 だが、どんなに嫌がろうとも、体が束縛されている以上逃げることが出来なかった。偽物はわたしの顔の前にお尻を見せるように、体の上に被さった。
 わたしは驚いた。さっき抜いた物と同じバイブが、お尻の穴にも刺さっていたからだ。目の前のバイブは、くぐもった低い音を立てていた。
 お尻の穴のバイブに気を取られていると、閉じていた脚を、両手でむりやり広げられてしまった。
 わたしのアソコに何かが当たる感覚がした。バイブだ。
「やめてお願い!」
 わたしの願いもむなしく、バイブはゆっくりとわたしの中に入って来る。太いバイブが、わたしの体をこじ開けて入り込んでくる。痛みも強かったが、それ以上の恐怖感がわたしを襲った。
「ちょっと痛いけど我慢してね。すぐに気持ちよくさせてあげるから」
 バイブの侵入は続いていた。もう全部入った頃だと思っても、バイブはさらに奥に入ってくる。
「ほら、全部入った。今、感じる場所に当ててあげる」
 やっと終わったと思ったのもつかの間、今度はバイブを左右にグリグリと動かし始めた。アソコの中でバイブが暴れまわる。
「もうやめて……あっ!」
 動き回るバイブが、快感の強い場所をつついた。そのため、つい声をあげてしまった。
「やっぱりここが一番感じるのね?」
「……」
 わたしは返事をしなかった。偽物はさっき声を上げた位置にバイブを当てたままにした。
「それじゃ、スイッチオン!」
 偽物のかけ声と共に、バイブが小刻みに震えるのを感じた。わたしのアソコから、弱い電撃に似た、甘い快感が伝わってきた。
「あっ、あっ、あっ……」
 声を出したくないのに、口から勝手に声が出ていく。
「ああっ……もういやっ……ああっ……やめて!」
 偽物は体を半回転させて、今度はわたしの目の前に顔を向けた。
「もっとやって、の間違いでしょ? ごまかしてもだめ。あなたの感覚は、わたしには手に取るようにわかるんだから。
 うふふ。なんだか、エッチなあなたの顔を見ていたら、わたしも感じて来ちゃった。
 ね、一緒にいこうか?」
 偽物はわたしに覆い被さると、自分の胸をわたしの胸にこすりつけた。
「どうして? どうしでわたしに、こんなことをするの……?」
「それはあなたが、可愛かったからよ。どうしても、あなたの体を調教したかったし、その調教の感覚も知りたかった……ああん、やっぱりあなたの体はすごい。もう、だめ。い、いく……」
 やっとわたしを捕らえた理由を聞き出したのに、わたしはすでに考えがまとまらなくなっていた。
 偽物の指が、体が、脚が、わたしの体中にからみつく。
 気持ちのよさに頭の中が真っ白になって、偽物の放つ言葉の意味を考えているのが辛い。頭の中に快感が充満していて、何も考えられなくなっていく。
「あああ……」
「あああ……」
 わたしと偽物は、互いにハーモニーの様に声を上げ続けた。
 体と頭の中にあふれた快感は、わたしの心も喰らい始めた。
 気持ちいい……何も考えられない……、考えたくない……。心の中まで、この部屋のように真っ白になっていく……。心の中も、体の中も、すべてが真っ白な世界になっていく……。気持ちいい……。

     *

 気が付くと、わたしは白い部屋で横たわっていた。
 快感のあまり、気絶していたらしい。
 体は縄で縛られたままだが、アソコに刺されていたはずのバイブは抜かれていた。
 わたしの体はさらなる快感を欲してうずいていた。
「初めていった感じはどう?」
 声のした方を向くと、偽物が立っていた。
「あんなに嫌がっていたのに、今じゃまた、エッチをして欲しくて体がうずいているんじゃない? あなたさえよければ続きをして上げるわよ?」
 偽物はわたしにバイブを見せつけた。形、臭い、微動する音、それらすべてが、わたしの体のうずきが高まらせた。
(さっきの快感……したい……)
 だがわたしは、残った自我で必死の抵抗をこころみた。誰だかわからない、わたしの偽物。こんな奴に、むりやり犯されたのだ。
「そ、そんな物はいらないわ!
 そんな事より、あなたは何者なの? 正体を現しなさい!」
 偽物は、ため息をつくと首を左右に振った。
「精神の強い子ね、もう落ちたと思っていたのに。でも、ますます気に入ったわ。
 ――いいわ。教えて上げる」
 偽物はわたしに背を向けると、ゆっくりと数歩あるいた。それから振り返ってわたしを見た。
「わたしをよく見ていて」


「序章・白い檻」おわり/「本章・皮の檻」につづく