アナタに訊きたいコトが・・・・ 9
「一年ぶりの日本か・・・」
俺は東京ドームのスタンドに立ち、ふと懐かしくドームのグランドを眺めた。サッカー選手ではなくて、野球選手のICHI○に密着してアメリカに渡り(というか、助け上げられた船で知っている日本人といったらICHI○しかいなかったので、彼の矢指に付け込んでアメリカまで引っ付いていったのだった)。今回、ICHI○がベースボールクラシックで、日本選抜選手として日本に帰る事になったのにくっついて帰ってきたのだった。
俺が居ない間も、あいつは野球ばかりではなく、パフォーマンスでも目立っていたようだった。
「早くもとに戻らなくては・・・」
俺は、いかにして、あいつから身体を取り戻すか悩んでいた。あの時飲んだドリンクは手に入らず、ほかのドリンクも、あとちょっとという時に、必ず邪魔が入り、手に入れることができなかった。いつの頃からか、俺は戻ることをあきらめだしていた。
と、その時、ドームのオーロラビジョンにCMが流れ出した。綺麗なマリンブルーのボトルドリンクを飲んだ若い男女が、身体からオーラらしきものを出して、相手の身体に、そのオーラを飛ばしてアーチを作ると、お互いのオーラの色が変わり、二人の身体が入れ替わった。
『ファイナル・ポンポコジーⅩⅡ ポーション。新発売!』
そのCMを見つめていると、近くに居た若い数人のグループの男性たちの会話が聞こえてきた。
「あれすごいんだよなぁ」
「ああ、あのポンポコジーだろう。本当に入れ替われるんだよな」
「俺なんか、この間美佐と入れ替わって・・・女っていいよなぁ」
「お!お前もか。俺もだよ」
「いいなぁお前ら。俺なんか頼んだら張り倒されたよ。あれ、男同士でも効くのかなぁ?」
「お前男と入れ替わりたいのかよ」
「いや、ジャニーズ系の男と入れ替わって、入れ替われる女を捜そうと思ってさ」
張り倒されたといった男が恥ずかしそうに言った。
「だめだよ。あれは異性間じゃないと効かないらしいぞ」
俺は自分の耳を疑った。入れ替われるドリンクがある?それも発売されている。一体どこで手に入るんだ。俺は、はやる気持ちを抑えて、彼らに近づいた。
「そのドリンクって、どこで売ってるの?」
俺はできるだけかわいらしく彼らに聞いた。男たちはなにを勘違いしたのか。いやらしい笑いを浮かべながら俺の周りに集まった。
「彼女!男になりたいの?俺が変わってやろうか」
「いや、俺が!」
「俺が!」
男たちは、自分が、自分がと争いだした。俺は彼らがどうなろうが関係ないが、知りたいことをまだ聞いていないので、いい争いを止めた。
「わたしが使いたい人はほかに居るの。どこで売ってるの?」
俺の怒ったような様子に男たちは静かになり、俺に売っている場所を教えてくれた。俺は、彼らに礼を言うと、東京ドームを飛び出して、ドリンクを売っているコンビニへと急いだ。
だが、このとき俺は知らなかった。このドリンクの効果にタイムリミットがあることに・・・・