20××年、地球は狙われていた。 突如九州に現れ、地球侵略を開始した謎の軍団は自らを「両性人類帝国」と名乗り、巨大両生類を操って西日本各地の大都市を破壊し尽くしていった。防衛軍が直ちに出動したものの、その通常兵器はまるで歯が立たない。 福岡、広島、大阪、そして名古屋と日本各地の大都市が、なすすべも無く巨大なカエルやサンショウウオによって蹂躙されていったのだ。 しかも破壊された跡には、恐るべき災厄がもたらされていた。 瓦礫の間には巨大両生類がその皮膚からしたたり落としていった赤いゼリー状の粘液が残されたのだが、それに触れた人間は…… 「ふう、ひどい目に遭ったぜ」 「全くだ。防衛軍はどうしたんだよ」 二人の男が瓦礫の町を彷徨い歩く。 べとっ 前を歩く男の足の裏に何かが張り付いた。 「何だ? このねばねば……うっ、うわぁ~」 赤い粘液に触れた男は、突然顔を抑えてのたうち回った。 「熱い、体が焼ける、う、うううう」 「おい、どうした、しっかりしろ!」 頭を押さえてしゃがみ込んだ男の体は、おろおろと見詰めるもう一人の男の目の前で変化していく。 浅黒い肌は透き通るような白い色に変わり、両手で抱えられた頭髪がざわざわと伸びていく。 肩の線がみるまに細くなり、体全体の線が華奢なものに変わっていく。 そして腰がきゅっと細く絞れ、だぶだぶになったジーパンの股間はみるみる膨らみを無くしていた。 「はぁはぁはぁ……」 (さあ、しもべよ、両性人類軍団の一員として我らに従うのだ) 「はいっ」 立ち上がった男の体はすっかり少女のような華奢な体型に変化していた。そして髭面の男臭い顔も、すっかりかわいらしい女の子に変化している。 彼、いや彼女がぼろぼろになった服を脱ぎ捨てると、その肌はまるで両生類の皮膚のようにぬめぬめと光り、指の間には水かきのような薄膜ができていた。 「お、おい、お前その格好は……」 唖然とする連れの男。 その声に振り向いた少女がにやりと笑う。 「さあ、あなたも仲間になりましょう、ぐふっ」 少女は男に近寄ると、男に口付けをした。そして少女の口から赤いゼリー状の粘液がもう一人の男の中に注ぎ込まれる。 「んぐ~、んぐ~」 接吻されたもう一人の男の体も、その瞬間変化を始めていた。 最初のうちこそ抵抗していたものの、いつの間にかその表情は恍惚としたものに変わり、自ら少女と化した男を抱き締めていた。 そして彼の体も変化していく。 数分の後、そこには抱き合って口付けをする二人の少女がいた。 妖しくも美しいその姿は、二人が両性人類の一員になったことを表していた。 「行きましょう♪」 「うん♪」 手をつないで歩き出した二人は、何処と無く姿を消した。 既に大勢の人間が同じ目に遭い、両性人類帝国の軍団に一人、又一人と組み込まれていく。 各地に出現する巨大両生類の群れと美少女軍団の数は、日を追うに従ってどんどん膨らんでいった。 テレビの現場中継によってそれを目の当たりにした誰もが、このままでは日本人の全てが両性人類になってしまうと絶望した。 だが、ここに決然と彼らに立ち向かう集団があった。 ゼリージュースロボ 第1話 発進!ゼリージュースロボ 作 :toshi9 挿絵:◎◎◎さん 「ようこそ長官」 千葉市の臨海工業団地跡地に建てられた白亜の巨大な研究所の前で、口髭をたくわえた白衣姿の中年の男が制服姿の防衛軍統合幕僚長官を迎え入れる。そして研究所内を案内していた。 「小野君、久しぶりだな。それにしてもこの『ゼリージュース力研究所』大したものじゃないか」 「ゼリージュースで得た利益を少しでも社会に還元できればと建設した研究所です」 「だが今日わしをここに招いたということは、それだけじゃないのだろう」 「はい。数年前に偶然やつらの存在を知った時から、活動を阻止するための研究を秘かにスタートさせたのです。でもこれほど早く動き始めるとは思いませんでしたよ」 「うむ。で、被害の状況は聞いたか?」 「はい、ひどいものですね」 「全くだ。あの巨大両生類を阻止できない我が防衛軍も情けない限りだが、しかしやつらの目的は何なのだ。未だに要求一つ出さずに日本列島を席巻し続けている」 集中オペレーティングルームでゲストチェアに腰掛けた長官がテーブルに拳を押し付け、わなわなと体を震わせる。 「あの巨大両生類が分泌している粘液の成分は、赤のゼリージュースに非常に似ています。しかも西日本に現れたあいつらの動きを解析すると、西から東に、いや一直線にここに向かっています」 「ふむ。どういうことだ?」 「目標はこの研究所なのでしょう。狙っているのは、多分こいつです」 小野博士がパチンと指を鳴らす。 「新庄君、開けてくれ」 「ラジャー」 オペレーティングパネルを操作していた3人の美人オペレーターうちの1人、ショートカットの新庄彩がキーボードを叩く。 するとオペレーティングルーム正面の巨大スクリーンがゆっくりと上昇していった。 そこに現れたのは…… 「な、なんだこれは」 強化ガラスのはめ込まれた壁の向こうには、3機のメカが直立していた。それぞれ15mほどはあろうか。赤、白、黄色にそれぞれカラーリングされた機体は戦闘機というよりは角ばったロケットといったシルエットであり、お世辞にも流麗とは言えないものの、力強い雰囲気をたたえている。 数人の整備員が取り付いている様子は、どうやら最終点検を行っているようだ。 「これが『ゼリージュースマシン』です」 「『ゼリージュースマシン』だと!?」 「はい。ゼリージュースを超エネルギーに転換するゼリージュース転換炉を搭載した究極のスーパーマシンです」 「なんと!」 驚嘆の表情でガラスの向こうの3機のマシンを見上げる長官。 小野博士が片手をポケットの突っ込んだまま、もう一方の手をパネルのマイクに伸ばす。 「お前達、スタンバってるか?」 「いつでもOKだぜ」 「博士、この日が来るのを待ってました」 「パパ、早いとこあいつらをぎったぎたにしちゃおうよ」 スピーカーから2人の少年と1人の少女の声が小野博士に答える。 「慌てるな、お前達も実戦は初めてなんだ。くれぐれも油断するんじゃないぞ。北村君、あいつらは今どこにいる?」 「御殿場を通過中。間もなく箱根の首都圏絶対防衛ラインに到達します」 小野博士の問いに、ポニーテールの美人オペレーター・北村春香が振り向いて答える。 「うーむ、あそこを超えられると何の障害物もない関東平野だ。どこまで被害が拡大するか」 頭を抱える長官。 「もうぐずぐずしていられないという訳ですね。いずれにしてもあいつらをこの研究所に近づける訳にはいかないな。よし、おまえたち、いけ!」 「「ラジャー」」 「ゼリージュースマシン、発進準備!」 「ラジャー、発進準備に入ります」 ガラスの向こう、即ちゼリージュースマシンの格納庫で、機体から整備員が離れる。と同時に3機の機体に向かって同じデザインのパイロットスーツを着た少年少女が駆け寄ると、滑るようにコックピットに乗り込んだ。 赤い機体と白い機体に乗り込んだのは少年、黄色い機体に乗り込んだのは少女だった。 それぞれの機体に乗り込んでスイッチ類やパネルの状態を素早く確認しながら、3人はコックピットのディスプレイでお互いを確認する。 「出力正常、計器に問題無し」 「にいちゃん、何か緊張するな」 「シュミレーションマシンでずっと訓練してたけど、まさか博士の言う通り本当にあんな敵が現れるなんてな。でもこのマシンを使えばあいつらなんてあっという間に撃退できるさ」 「そうよあたしのパパが作ったマシンだもの、あんなのに負けるわけないわ」 そんなことを言い合いながらも、素早くチェックを終える3人。 「発進準備OK」 「同じく」 「いつでも大丈夫よ」 「よし、ゼリージュースマシン、はっしん」 マイクを持った小野博士の合図に、腰まで髪を伸ばした美人オペレーター・九条京子がパネルを操作する。 「ラジャー、第一、第二、第三ゲートオープン、オールグリーン、レッドマシンどうぞ、続けてブルーマシンどうぞ。イエローマシンはセーフティ解除したら続いてください」 「よっしゃあ、レッドマシン、GO!」 開いた格納庫の上部のハッチから赤い機体が飛び出す。続いて白と黄色の機体が飛び出し、3機で編隊を組むと箱根方面に向かって飛んでいった。 「頼むぞ、お前達」 西の空に飛び去るゼリージュースマシンを、小野博士は感慨深げに見送っていた。 「おい、見えるか?」 赤い機体のパイロット清水亮が、白い機体のパイロット、弟の清水勇人に尋ねる。 ちなみにレッドマシンが赤い機体、イエローマシンが黄色い機体だが、ブルーマシンは白い機体である。その理由はいずれ語られることになるだろう。 「そろそろ箱根上空だぞ。おっ、いたいた」 ![]() 彼らの眼下で、芦ノ湖畔を10mを越すかと思われる数匹の巨大なカエルとサンショウウオが東に向かって進撃していた。 「意外と少ないな。それに美少女軍団とかはどうしたんだ?」 「各個撃破のチャンスじゃないのかな」 「今のうちってことね。あんなの、早いとこやっちゃいましょう」 黄色い機体のパイロット、小野優希‥小野博士の娘である‥が編隊を乱して機体を前に出そうとする。 「優希、待て、油断するんじゃない」 高度を下げるイエローマシンを制止する亮。 「ふん、あんなのこれでイチコロよ。ねっ、九条さん、いいでしょう」 操縦桿の上部バックルを親指で開く優希。 そこには赤いボタンがある。 バックルを開くと同時に、機体上部からミサイル発射台がせり出す。 「待ちなさい、優希ちゃん。もっとよく相手を観察して」 「だって、あんな鈍重な相手……きゃあ」 「どうしたの? 優希ちゃん」 「カエルの奴が舌を伸ばして、くそ、優希のやつ安易に近づき過ぎだよ」 イエローマシンは、カエルの長い舌で空中で絡め取られていた。 グエッ カエルが「馬鹿め」とでも言うかのように口を歪め、一声鳴く。 「優希ちゃん、フルスロットルで振り切るのよ」 「やってるわよ。くっくっそ~、駄目、逃げられない」 「仕方ないわ、亮君、勇人君、合体するのよ」 「え? イエローがあんな状態なのにか?」 「だからこそよ。あなたたちならできるわ」 「九条さん、簡単に言っちゃってくれるね。よし、勇人、行くぞ!」 「OK!」 長い舌に絡め取られ、空中に静止している黄色の機体に向かって急降下した亮の赤い機体と勇人の白い機体は、黄色い機体を挟むように下と上に回り込む。 そして2機は上と下から黄色のマシンに強引に合体した。 「チェエエエンジ、ブルーハワイ、スイッッチィーーオン」 勇人が叫ぶ。 途端に角ばった機体がみるみる変形を開始する。 「な、なんだ、あれは」 「ゼリージュースロボです」 「ゼリージュース……ロボ!?」 ゼリージュース力研究所のオペレーティングルームでディスプレイを見ていた長官が驚愕の声を上げる。 それに小野博士は落ち着いた表情で答えた。 彼らの目の前で、合体した3機は端正な顔立ちの女教師型の巨大ロボット=ブルーハワイに変形したのだ。 ![]() ![]() 左手にチョークを、右手に青い出席簿?を持っている。 黄色い機体に巻き付いていたカエルの舌は、変形後はブルーハワイのウエストの部分に巻きついたようになっていた。 「勇人君、ブルーハリケーンよ」 ブルーハワイのメインコックピットに座った勇人に、九条が指示する。 「わかった、ブルーハリケーーーン」 勇人の声と同時に、ブルーハワイがカエルの頬ッ面を出席簿で引っぱたく。 ![]() 「ゲ、ゲコ、ゲコ」 「駄目だ、こいつしぶとい」 ほっぺたを真っ赤に腫らした巨大カエル。だが巻きつけた舌を放そうとしない。 「勇人君、ボトルクラッシャーを使いなさい」 「ラジャー。ブルーハワイ、いくぜ。ボトルクラッシャー!」 勇人が叫ぶと同時に、左手のチョークが膨らみペットボトルのような形に変形したかと思うと、超高速で回転を始める。そしてウエストに巻きついたカエルの舌を突き刺した。 「グェエエエ」 カエルが舌がちぎれ飛ぶ。 「よっしゃあ、自由になったぜ」 空中でホバーリングしたまま、巨大カエルと対峙するブルーハワイ。 舌の先端を失った巨大カエルはその姿をうらめしそうに見上げていた。 「勇人君、ゼリージュースカッターよ」 「よし、とどめだ。ゼリージュースカッターーー!!」 ブルーハワイが右手に持った出席簿をカエルに投げつける。それは高速で回転すると、カエルの体をまッ二つに分断してしまった。そしてブーメランのように再びその手に戻る。 「まったく、油断するからだ。優希、大丈夫か?」 「ごめん。ちくしょう、あたしにもやらせて」 「わかった、オープンボトーール」 3機は合体を解くと、今度は地上に白の機体が着陸し、その上に赤、そして黄色の機体が次々と合体する。 「チェエエンジ、パイナップル、スイッッチィーーオン」 合体した3機は、メイドそっくりの姿に変形した。かわいらしくガッツポーズするメイドロボ=パイナップル。 「九条さん、いいでしょう?」 「はいはい。優希ちゃん、桜島大根おろしを使って」 イエローのコックピットのディスプレイに映った九条がため息をつきながら答える。 「いっけ~~」 優希の声と共に、パイナップルのスカートの中からブワっと大根おろしのような白い液体がカエルに向かって吹き出す。と言っても、勿論それは本物の大根おろしではない。ゼリージュースのミストだ。 「サ・ク・ラ・ジ・マ・大根おろしぃーーー! ミストの奔流が巨大カエルを巻き込み、その巨体を空中に舞い上げる。 「とどめよ、うぉぉおおおおお~」 パイナップルがスカートをまくり上げると、中から極太のミサイルが1本、そしてもう1本ミストに巻き込まれて身動きできないカエルに向かって打ち出される。、 ![]() ![]() 「ゲ、ゲコ~」 どご~ん 2本のミサイルの直撃を受け、巨大カエルはミストの中で消滅してしまった。 恐るべし、桜島大根おろし。 「よっしゃ。サンショウウオは俺に任せろ。オープンボトーール」 亮の声を合図に、3機は再び合体を解く。 「チェェエンジ、ストロベリー、スイッッチーーオン」 飛行する3機は、今度は赤の機体を先頭に白の機体、黄色の機体と一直線に並び合体した。 白い機体から腕が出てくる。黄色い機体から脚が伸び、同時に赤の機体はネコミミのような突起の生えた女子高生のような顔立ちに変形する。 腕がさらに伸び、拳が袖口から出てくる。ネコミミがピンと立ち、黄色い機体はさらにプリーツスカート状のスクリーンを広げ、その中からすらりとした脚が伸びていった。 巨大ロボット=ストロベリーの姿はセーラー服の女子高生そのものだ。 ![]() ![]() 合体変形するゼリージュースロボを、長官は驚愕を通り越して、呆れた表情で見ている。 「ゼリージュースロボか、凄いものだな。しかし何だね、あの姿は」 「はあ、由紀の発案です」 「柳沢博士のか?」 「はい。正義の味方たるもの、人々に安らぎと安心を与える姿でなければならないと」 「それが女教師とメイドと女子高生なのか?」 「……まあ、そういうことですな」 小野博士はポリポリと頭をかきながら答えた。 「九条さん、一気にいくぜ」 「了解、ゼリージュースビームの使用を許可します」 「ターゲット、ロック・オン。いくぜ、ゼリージュース・ビイイイイム」 ストロベリーがセーラー服の裾をまくり上げる。 顕わになったおへその部分がキュっと広がり、ビーム発射口が開く。 そして巨大サンショウウオに向かって赤い光線が発射された。 ![]() 「グギガァ」 ビームの直撃を受けた巨大サンショウウオは、赤一色に包まれる。 「グ、グエエエエエ」 光に包まれた巨大サンショウウオは、みるみる小さくなり、皮膚は両生類のようにてかてかしているものの、10代前半のかわいい少女の姿に変わってしまった。 「キャアアア」 裸の胸と下腹部を押さえて逃げ出そうとする女の子。 だがビームを浴び続け、その姿はさらに変わりはじめる。 ほっそりとした小柄な女の子から、むくむくと筋肉が隆起し始め、肩幅が広くなっていく。 押さえていた胸の膨らみがみるみる萎み始め、反対に股間の奥からは男の物が伸び出てくる。 「俺の体……も、元に戻った」 20代と思われる裸の男は己の体を見下ろし、安堵していた。 尤も街の真ん中に裸で立っている現実に気がつき、慌てて駆け去っていったのだが。 「おいおい、巨大サンショウウオが女の子に、いや男になったぞ。どういうことなんだ!?」 「あれがあの巨大サンショウウオの正体でしょう。いいえ、正体というよりやつらに変身させられていたのね。ゼリージュースビームの力で元の姿に戻ったのよ」 亮の呟きに、ディスプレイの中の九条が答える。 「そんな。あたしがさっきぶっとばしたカエルも、まさか人間だったんじゃないでしょうね」 優希が不安そうにディスプレイの九条を見る。 「大丈夫よ。カエルは本物のカエルだったみたいだから」 「九条さん、信じていいのね」 「春香が解析したから間違いないわ。人間が変身させられていたのはサンショウウオだけよ。ナビゲーションはあたしに任せてあなたたちは戦うことに集中しなさい」 「は~い」 「と言っても、どうやらその辺りにはもう敵はいないようね。3人とも帰還しなさい」 「「ラジャー」」 ストロベリーは合体を解いて3機のゼリージュースマシンに戻ると、箱根上空を飛び去った。 「小野博士、見事だ」 「いえいえ、ゼリージュースロボの力はあんなものではありません。パイロットの3人もまだまだ未熟です。それにやつらもまだ姿を現していないのですから」 「自分たちは姿を見せずに人間を変身させて地球侵略の手先に使うとは、全く許せん相手だな。ところで、さっき君はゼリージュースロボはゼリージュースをエネルギー源にしていると言ったが」 「はい。ゼリージュースロボの心臓はゼリージュース転換炉です。ゼリージュースを転換炉の中で素粒子転換させると、とてつもないエネルギーを生み出すのです。妻と一緒に偶然それを発見した時、あまりの凄まじさに全ての資料を焼却しようかとも思いました。でも両性人類を名乗るあいつらの存在を知った時、奴らの力に対抗できるのはこの超ゼリージュースエネルギーしかないと思い、ゼリージュースロボの開発を進めたのです」 「すさまじいエネルギーと言うのか」 「はい。ゼリージュース1本で地球を吹き飛ばせるだけのエネルギーの生み出します。ただしゼリージュースマシンに搭載している転換炉は分割炉で1基では機能を100%発揮しません。ゼリージュースロボに合体して初めて本来の転換炉の働きをするのです」 「なるほど、そういうことか。で、あのパイロットたちは?」 「まだ現役の高校生ですが、由紀が見込んでスカウトしてきたんですよ。尤もあのうちの1人は……」 「君たちの娘か」 「はい、お転婆で困ったものです。全く誰に似たのか」 「活発でいいお嬢さんじゃないか」 オペレーター席の九条たちが顔を見合わせてくすくすっと笑う。 「こ、こほん、奴らが狙っているのは、間違いなくゼリージュースマシンに搭載されたゼリージュース転換炉です」 「それじゃあ、あいつらゼリージュースロボを」 「はい。ゼリージュースロボに転換炉が搭載されていることをやつらが知っているかどうかまではわかりませんが、もし知ったら力づくで奪取しようとするでしょう。でもさせませんよ。やつらを倒すために完成させたゼリージュースロボですから」 小野博士がにやりと笑い、マイクを持つ。 「お前達、戻ったら訓練だぞ!」 「ええ!?俺たち、ちゃんとやったじゃないか」 「そうよパパ、褒めてくれてもいいじゃない」 「バカモン! お前が一番悪い」 「ちぇ~っ」 コックピットの中で優希が頬を膨らませる。 「「あっははは」」 優希の顔が映り、コックピットとオペレーティングルームは笑いに包まれた。 こうして彼らの最初の戦いは終った。 だが両性人類との戦いは、まだ始まったばかりだ。 がんばれゼリージュースロボ、負けるなゼリージュースロボ! (了) 2008年6月23日 脱稿 後書き ◎◎◎さんから「ゼリージュースロボ」の連作イラストをいただき「オープニング」の形に加工しましたが、無性に本編の話を書きたくなり一気に書き上げてしまいました。◎◎◎さんにお見せしたところ、ストロベリー、ブルーハワイ、パイナップルの活躍を描いた数枚の挿絵をいただいたので、それに合わせて細部を調整して完成させたのがこの作品です。いろんな巨大ロボットものや変身もののテイストが入ってますが、楽しんでいただければ幸いです。 ◎◎◎さん、イラスト本当にありがとうございました。 登場人物 清水亮 =レッドマシンのパイロット。高校3年生。清水兄弟の兄。 清水勇人=ブルーマシンのパイロット。高校2年生。清水兄弟の弟。 小野優希=イエローマシンのパイロット。小野博士の娘。高校2年生で、 勇人とはクラスメイト。 小野博士=ゼリージュースの生みの親。ゼリージュースが超エネルギーに 転換できることを知り、ゼリージュースマシンを開発する。 柳沢博士=小野博士の妻。その思考パターンは夫の小野にも理解できない 九条京子=「ゼリージュース力研究所」のオペレーター3人娘の1人。 ロングヘア。ゼリージュースマシンをナビゲートする。 新庄彩 =「ゼリージュース力研究所」のオペレーター3人娘の1人。 ショートカット。所内の情報管理担当。 北村春香=「ゼリージュース力研究所」のオペレーター3人娘の1人。 ポニーテール。外部の情報管理担当。 伊吹長官=防衛軍の統合幕僚長官。小野博士の理解者。 ゼリージュースロボ ストロベリー=亮が操縦する。女子高生の姿をしている。 必殺技は「ゼリージュースビーム」 ブルーハワイ=勇人が操縦する。女教師の姿をしている。 必殺技は「ブルーハリケーン」、「ボトルクラッシャー」、 「ゼリージュースカッター」 パイナップル=優希が操縦する。メイドの姿をしている。 必殺技は「桜島大根おろし」・・何て名前だ(笑 両性人類帝国 巨大両生類を操り、人類を強制的に両性人類に同化させようと 目論んでいる。その目的は謎。 |