作:夏目彩香(2000年10月6日初公開)
*この作品はジョニーさんの作品である「僕らのレクイエム」の設定を用いています。 *ジョニーさんには許可をとってあります。 主な登場人物 水島棗、川原良雄、池田友彦 夏がく~ればおもいだす~~はるかな尾瀬~~、とお~いそら~ チリリン、チリリンと季節はずれの風鈴が鳴る中、久しぶりの休日を家でのんびりと過ごしている。朝から風が爽やかでとても気持ちがいい、一人暮らしをして半年たつがこんなに穏やかな日ははじめてだった。そんな時に、俺、川原良雄は歌を思わず口ずさんでしまったが、タイトルがわからないので、パソコンのスイッチを立ち上げた。どれどれ、この曲名ってなんだったっけな?ブラウザーを立ち上げるとホームページが開かれた、今時、yahoo!が最初に立ち上がる。カチャカチャッとキーを叩いて、検索ボタンを押した。 ピ~ンポ~ン。ピンポ~ン、ピンポ~ン。画面の中で時計が表示されている間に、家のチャイムが鳴らされた。せっかく楽しい休日の気分がちょっと途切れ、一旦インターネットの接続を切ってから、玄関に向かった。俺の家にはドアホンが無い上に何故かドア窓がない、玄関の戸を明けるまでは誰がいるのかわからないのだ。まぁ、これでもこの辺りではいい物件だったから、こんなことは住んでから気づいたことだ。どちらさま?と言いながら、俺は重たい扉を開けた。そこには……そこには、俺の彼女である水島棗(みずしまなつめ)が立っていた。まず俺は彼女の今日の服装をチェックした。ブラウンのタイトスカートに薄いイエローのブラウスを着ている。足元には、ヒールの高いこげ茶のブーツを履いている。棗の姿を見て、やっぱり秋がやってきたことを実感した。夏の間は白のワンピースに身を包んでいる棗ばかり見ていたせいか、秋色の装いは俺の目に新鮮に飛び込んできた。肩にかかる程度のシャギーを入れた髪もきちんと手入れがしてある。 棗は俺を上目遣いに見るなり、 「よっ、久しぶりだな良雄!上がらせてもらうぞ」 そう言って、ブーツを俺の玄関に投げ捨て、俺の家に入ってきた。 俺は、しぶしぶ棗のブーツをきれいに整えてから、棗に向かって、 「棗、どうしたんだよ、急に」 棗は、テーブルの前にスカートがぴ~んと張った座り方をして俺の質問に応えた。 「急に来て、なんか文句あっかよ。まぁ、無理もないか、久しぶりのことだもんな。とりあえず、飲み物ないか?」 「棗ったら、急にどうしちゃったんだよ。棗が来るときは、いつも連絡くれるじゃないか」 そう言いながら、俺は冷蔵庫から飲み物を取り出した。 「そっかそっか、おまえらうまく行ってるんだな。安心したぞ」 「何言ってんだ棗?んっ。もしかして、お前、友彦か?また棗の体に入ったな」 そう言うと目の前にいる棗は組んでいた足をほどき、背筋を伸ばして座った。 「ばれちゃしょうがないな。俺さ友彦だよ。この前、棗ちゃんの体に入ったのはいつだったっけ。また帰ってきちゃった」 棗(+友彦)は照れ笑いをしながら言った。 「また帰ってきちゃったじゃないよ、友彦ったら。棗の体を何だと思ってるんだ」 「おまえ、うらやましいんだろ。棗ちゃんの体は何度入ってもいい感じだぞ。一度死んでみるか?」 「ボケが!おまえみたいに若いうちに死んでたまるかよ。交通事故なんてよっぽど運が悪すぎるじゃないか」 「あのな~。俺は運が悪かったってことかよ。久しぶりにこの世に帰ってきた奴に向かって言う言葉かよ~」 「まぁ、それもそうだな。でも、棗には悪く思わないのかよ。お彼岸だからって、許されるもんでもないぞ。それに、棗はお前のやってること全部見通してるんんだからな」 「そうだな。それじゃ、またな」 そう言うと棗(+友彦)の体がガクンと抜け落ちた。 それとともに、幽体となった友彦がどこかへ飛んでいくのを俺には感じた。 「おい、友彦……そんなに急がなくてもいいってのに、棗なら許してくれると思うのに、もう少し居ろよ」 俺がそう独り言をつぶやいてる間に、棗の意識が戻ってきた。 棗は起き上がると目をぱちくりとさせた。そして、俺の方を向いて口を開いた。 「友彦君……えっと、池田友彦君がまた私の中に入ってきたでしょ。さっき、友彦君のお墓 にお参りに行ってきたばかりなんだ」 「そっか、じゃあその時にあいつが……まだあいつのこと考えているのか?やっぱ俺じゃ、頼りないかな?」 「ううん。そんなことないよ。友彦君がいなかったら、ヨシくんと一緒にいることってなかったと思うから。だからこのことは忘れちゃいけないと思うよ」 「そうだな。あいつのこと忘れてしまったら。つきまとわされるぞ。棗は特に気をつけないとな」 「は~い。って防ぎよう無いじゃない、友彦君って幽体なんだからさ」 「でも、あいつの出る時期って決まってるだろ。そのときは気をつけろよ」 「もう、ヨシくんったら」 そう棗が言うと、二人は一緒になって笑った。こうやって棗と話すのはなんだかひさしぶりの感じがする。仕事に集中していたためか、最近、二人っきりの時間を持てなかった。だから、こうして二人でいられる時間をあいつがが作ってくれた、そんな気もしていた。 「ねぇ、ヨシくん。今日はこのままここにいていい?」 「んっ?いいに決まってるよ。どうせ、棗もここに来る予定だったんだろ」 棗は首を縦に振り、結局今日は俺の家で二人っきりで過ごすことになった。 一人っきりじゃ寂しかったし、丁度よかったんだ。 ちりんちりん。季節はずれの風鈴は秋風に吹かれて囁いている。 この音を聞いてるうちに俺はあることを思い出した。 「そういえばさ、棗。この曲のタイトル知ってる? 夏がく~ればおもいだす~~はるかな尾瀬~~、とお~いそら~ って曲なんだけど」 相変わらず俺の居間のテーブル前に座っている棗は表情を変えながら、 「それって、なんだっけ?そこだけはなんとなくわかるんだけど。曲名はわかんない。ヨシくんの力になれなくてごめんね」 「別に謝ることないさ、なんとなくさっきっから気になっていて、パソコンで調べようとしてたんだ」 棗は感心した面持ちで、 「へぇ、パソコンでそんなことまで調べられるの?わたしなんか全然使えないから、ヨシくんってやっぱりすごいね」 「こんな奴どこにだっているよ。インターネットで検索すればすぐに答えが見つかると思ったんだけど、それを調べようとしていたら棗、正確には友彦の幽体が取り憑いた棗がやってきたんだよな。だから、パソコン起動しっぱなしで、今、画面どうなってる?」 そういうと棗は俺のパソコンの画面を覗き見るため、立ち上がってパソコンの前まで歩いった。画面を見ると棗は顔を赤らめて言う。 「ヨシくんって、こんなにわたしのこと考えてるんだ。わたしの写真でいっぱいじゃない」 俺は棗の肩に手を載せながら、 「へへぇ。この前の旅行で撮ったデジカメ写真を使って、デスクトップに散らしてみたんだけど、気に入ってくれた?」 「パソコンって、こんなこともできるんだね。知らなかった。今度、わたしに使い方教えてくれない?」 「いいよ。棗にだったら無料で教えてあげる。とりあえず、今はパソコンの前に座るから」 そう言って俺は、パソコンの前に座り、今度は棗が俺の肩を載せる格好になった。 「そっか、調べるんだったよね。さっきの曲名」 「そうそう。まずはブラウザーを起動させて~、検索したい内容を入力して~、そして、このボタンを押す」 カチャッとしたマウスの音が響いた瞬間、俺の後ろにいる棗が「あっ……、あっ……」と苦痛に近い声をあげながら小刻みに震えていた。検索結果が画面に表示されたところで、棗の手がパソコンの電源にのばされた。一気に画面は色を落としたのだった。 チリ~ン、チリリ~ン。 俺は棗のふとした行動にちょっとだけ腹を立てながらも冷静さを保って、言った。 「棗ったら、まったく。電源は切らないでくれよ。いくらなんでもそのくらいはわかるだろっ」 棗を見るために振り返ると、ニヤッとした表情の棗が、 「パソコンするよりも、良雄、いやヨシくんと一緒にいいことやりたいと思って。だから、わざと消しちゃった。ごめんね!」 そう言いながら、棗はブラウスを脱ぎだしたのだ。 「おい棗、まだ昼も過ぎてないってのにいいのかよ」 目の前に形のいいブラジャーに包まれたものを見ながら、俺は言っていた。 「いいのよ。良、ヨシくんだってそろそろたまってるでしょ。棗はとってもやりたい気分だからさ」 棗はそう言いながらカーテンを閉めていた。 「う~ん。しょうがないな~。棗がその気になっているなら俺も断れないし、最近やってなかったからな、いつ以来だったっけ?」 俺のベッドの方に向かって行った棗の体が一瞬硬直したように見えた。 「いつって、わたしが忘れちゃうくらい前だよね、ヨシくん」 「わざとわかんないふりしたのに。先週の話も棗って忘れちゃうのかよ」 ちょっと焦りながらも棗はスカートのホックを探している。ようやく見つけたかと思うと、それを外しストッと床に落ちた。 「そうだった。わたしもわざと忘れたふりしたんだけどな。わかんなかった?」 俺は下着姿の棗と一緒にベッドに落ちていった。 「棗もなかなかの演技派なんだな。俺いままで気づかなかったよ。じゃあ、はじめるよ」 「いいよ、良雄」 いつもの棗とは違った表情がそこにあった時、ようやく俺は気づいた。 「おまえ、友彦だろっ。まだここにいたのかよ」 棗は舌をペロッと出して微笑んだ。 「まだいて悪かったな。今までお前たちの会話を聞いていたらいてもたってもいられなくて、ああいう展開ならやっぱりこうだろってな」 そう言うと俺は棗(+友彦)のおでこを軽く叩いた。 「勝手におまえが決めるなよ。これは俺と棗の気持ちの問題なんだからな」 「やっぱり俺とはできないのか、だから、いつまでたっても成仏できないでいるんだぞ」 棗(+友彦)はそう言いながら手で胸を揉んでいた。 「それじゃ成仏できるわけないよな。とにかく、俺は友彦とはやりたくないからな。棗から出てってくれ」 そのまま俺は棗(+友彦)の手を抑え込んだ。棗(+友彦)はちょっと考えるような表情をしてから切り替えした。 「そんなに嫌だって言うなら、俺にも考えがあるからな。とりあえず、棗ちゃんからは出てくよ」 友彦の幽体が抜け出すすのを俺は感じた。そして、気を失っていたようになっていた棗が、目を開け俺の顔を見るなり、 「また入られちゃった。わたしって鈍感なんだね」 「いいや、そんなことないさ。今日はお彼岸だからしょうがないさ、明日にはもう大丈夫」 「でも、友彦君考えがあるって聞こえたよ」 「まぁ、あいつのことだから、また出てくるだろうな。そんなの考えてもわかんないさ。とりあえず、俺たちこれからどうする?」 「いいよ。ヨシくん」 そう棗が言ったのを了解した上、友彦の気配がないことをなんとなく確信した俺は、棗の下着を脱がし始めた。またもそんな時…… ここは良雄が住むアパートの隣、一人暮らしの女性が住んでいる部屋だ。幽体となっている俺にとっては願ってもない獲物だ。だいたい幽体として現れることができるのも年に数回しか許されていない。だから、このタイミングを見計らっては良雄の奴に会いに行くのだが、いつも棗ちゃんの体を借りてばかりいる。さっきはあんなこと言われたし、だから、隣の部屋に短大生が住んでいるって聞いたことがあったので覗いてみた。するとどうだろう。とってもきれいな人だ。部屋の中だからと白いTシャツを着て、下は白いチノパンを履いている。どうやら部屋の片づけをしているようだ。そんな様子を観察しながら俺はお姉さんの背後からソッと体を重ね合わせていった。 「あっ……あっ……」と言葉が小さくでていた。それと同時に小刻みに震えるお姉さんの体の感覚が徐々に俺に伝わってきた。そして、目をぱちくりとしてみるとドレッサーの前には白いTシャツ姿の彼女が立っていた。この格好じゃ面白くないので、洋服ダンスを探してみると就職活動用に使っているらしいチャコールグレーのスーツを取り出して着てみた。これでちょっと良雄にかまをかけられる。まぁ、これでばっちりだろ。いつも出かける時に使っているらしいショルダーバックを肩からさげ、これも就職活動で女の子がよく履きそうなつま先の丸い黒のローヒールに足を通した。玄関の鍵をかけてバックの中に入っていた免許証から彼女の名前が高橋敦子(のりこ)だということを知った。そして、俺はこのまま隣の川原良雄と書いてある玄関のチャイムを押した。 またもそんな時……棗とのお楽しみをはじめようとしたその時、玄関チャイムが鳴った。慌てて玄関の戸を開けると、そこには、隣に住んでいる敦子さんが立っていた。リクルートスーツ姿ってことは、今日も就職活動ってところかな。なかなかしっかりしてるね。敦子は俺の顔を見るなりにこやかに笑って、 「こんにちは!今日は秋晴れですよね」 そんなことをわざわざ言いにきたのかと思いながらも俺も返事を返した。 「そうだよね。こんな日に出かけると気持ちがいいだろうね。敦子さんはこれから就職活動ですか?」 「そうなのよ。これから面接に行ってくるんだけど自信が無いんだ。それで行く前に川原くん顔が見たくって~」 はきはきとした喋り方で敦子さんは言ってくる。 「そうですか、じゃあ頑張って面接行って来てください」 そういいながら俺は、玄関の戸を閉めようとした。が、敦子さんは間に手を挟んで抵抗する。そして、ついには玄関に入ってきてしまった。敦子さんに棗が気づかれないようにするだけで俺は必死になっていた。 「俺に何か用事があるんですか?あるなら言ってみてくださいよ」 そう言うと、敦子さんは玄関に叩きつけるようにパンプスを脱いで俺の部屋に上がってきた。それから、テーブルの前に正座をする。すっと背筋が伸びた姿はとても魅力的だ。 「だから、川原くんとちょっと話でもしようかなって思って」 すると、ベッドルームから棗が顔を出して来た。さっきまでとは違って、不満に満ち溢れた表情を取り繕っている。着替えもしてしまったようで、ブラウスとスカートに戻っていた。そして、棗は敦子さんに対して、 「こんにちは、ヨシくんの彼女の棗です。はじめまして。面接に行かなくて大丈夫なんですか?これからわたしたちデートしようと思ったところなんですけど。お取り込み中にじゃまをしに来たんですか?」 棗は敦子の前に座り言い放った。 「じゃまなんかしに来てないわ。隣で住んでいるといろいろとあるのよね。あなたたちの様子だって窺えるんだから。ちょっと冷やかしに来ただけ。心配しないで、あなたの川原くんには指一本も触れてませんよ」 「それならいいんですけど、あまり長居しないで下さいね」 俺は棗からは女の執念を感じていた。それに比べ敦子さんはいやに冷静に思えた。 「棗も敦子さんも抑えて抑えて、お互い仲良くやりましょうよ」 俺の提案に二人は、どう反応したものか。お互いに黙りこくってしまった。気まずい空気がここには漂っていた。 「じゃあ、これで失礼するわ。川原くんありがとう。あなたの彼女に会えてごちそうさまでした」 敦子がすっと言いながら席を立ち上がった。ちょっと足がしびれているようだが、 そのまま玄関によろめきながら向かう。 「何よその言い方、むかつく~。わたしのことなんだと思ってるのよ」 棗もすっかりご機嫌な斜めになっていた。そして、敦子は、 「棗の怒った顔って最高だよな。なぁ、良雄」 と俺に向かって言ってきた。それでようやく事態に気づいた俺は、 「敦子さんってそんな人だったっけな?友彦。おまえ調子に乗りすぎてるぞ」 と敦子(+友彦)に言い返した。すると機嫌を崩していた棗が、 「えっ、もしかして敦子さんじゃなくて友彦君なの?」 「そうだよ棗ちゃん。ほんと久しぶりだよな。いつも体には入ってるけど、こうして棗ちゃんと話をしようと思って」 敦子(+友彦)が言ってみせる。 「なんだよ友彦。おまえったら相変わらず女の体に入っちゃって。それじゃ、説得力無いぞ」 俺は呆れ返るようにして言ってみせた。 「そんなことないって、俺は決してやましい考えじゃなくて。さっきはちょっとからかってみただけだろう」 すると棗が、 「二人ともいい加減にして、別にいいじゃないの友彦君だって長くこの世に居られるわけじゃないんだし。それにわたしにとっては久しぶりのことだから。もう少し話しようよ」 棗はすっかりと気を取り戻したようだ。久しぶりに友彦(今は敦子の姿をしているが)に会っているという安心感からだろう。なので俺は、 「棗にそう言われちゃ、しょうがないな。だから今日のところは目をつぶっておいてやるよ友彦。」 「ありがとうヨシくん」 そう敦子(+友彦)が言うと、みんなでテーブルを囲んだ。 俺の横に棗がいて、俺たちの前に敦子さんの姿をした友彦がいるって格好だ。敦子(+友彦)は何故か正座、棗も正座、俺もしぶしぶ正座で揃えてしまった。こうやって座った後で最初に声を出したのは敦子(+友彦)だった。 「ほんと、棗ちゃんと良雄ってうまく行ってるみたいだな。さっきは棗ちゃんの体に入って言ったけど、安心したぜ」 すると棗が顔を赤らめながら、 「友彦君ったら。そんなこと言ったら照れちゃうよ。ヨシくんのことを好きになれたのは友彦君がいたからよ」 「そうか、そりゃあ早死にして損はしてないな。おまえたちのことこれからも見守ってやるから」 そういうと敦子(+友彦)は力が入ったのか、大きく股を開いてスカートが太ももを捕らえた。そして、俺はそのスカートの間に目が行った。 「おい、友彦見えてるぞ。ちょっとは気をつけてやんないと……敦子さんが可哀想だぞ」 「そうだな、悪い悪い。じゃあ、これでどうだ」 そう敦子(+友彦)は言いながら股を閉じた。そのとき隣にいた棗はどうやら何か言いたそうだった。棗に話をするように促すと、 「友彦君って、あとどれくらいここにいられるの?」 しんみりとした質問が俺の部屋に溶け込んでいく。 「真夜中には帰らなきゃならないな。だいたいのことしかわかんないけど、今日が過ぎるとまたこれるかどうかもわからない。まぁ、俺は死んじまったんだからここに戻って来れるだけ幸せなんだよな。だから、おまえたち別れちゃ駄目だぞ」 それに対して棗が続ける。 「どうかな。わたしだってヨシくんと違う人と付き合っちゃうかもしれないよ。どうしても駄目なの?」 「あぁ、駄目だ。俺の帰ってくるところがなくなっちゃうだろう?」 「ふ~ん。そう言う事なんだ。なかなか深いね。わたし、友彦君のことなんだか少しわかったような気がする。でも、ヨシくんと話すときはまたわたしの体に入っちゃうのかな?どうなの?」 「いや、これからは別の体に入るようにして戻ってくるよ。そのときは、気づいてくれよな」 敦子(+友彦)の顔がだんだんと寂しげになっていたので、俺は、 「それってまた敦子さんだったりしないだろうな?」 「そうかもな」 そう言って、みんなで笑った。 「ところで、友彦。この曲名知らないか?」 俺は、今朝から気になっている曲の話を持ちかけた。すると敦子(+友彦)は、 「それな、知ってるぞ。『夏のおもいで』だろ」 すると敦子(+友彦)は急に歌い始めた。敦子さんの声で歌っているせいか、とって上手になっている。本来の友彦だったらこんなに音感があるはずがないのに、いつの間にか俺も合わせて歌っていた。もちろん、棗も。一緒に過ごした夏の記憶は、ひとりひとりが違う思い出として残っているんだろう。その微妙なずれがあるから人生は楽しいだろうなって。俺はそんなことを友彦に教えられたようだった。 チリ~ン、チリンチリン。チリリン。 歌い終わると、いつの間にかみんなで床に横になっていた。棗と敦子(+友彦)の間に俺がいる。ただゆっくりと時間だけが過ぎていく中で、俺たちは何を感じているのだろう。このまま一緒にいられたら。俺はそんなことを感じていた。そうして、短い昼が過ぎるまで俺は寝ていた。……窓からの日差しを目に受けながら、俺は目をゆっくりと慣らしていった。ようやく目のピントが合ってくると、俺は部屋を見回した。俺の横に居たはずの二人がいない。今までのは夢だったのか?そんなはずがないはずだ。とにかく、敦子さんの家を訪ねてみよう。そう思った俺はすぐに行動にでていた。とりあえず、隣の部屋ということでTシャツに短パン姿になって、サンダルを履き。玄関のチャイムを鳴らした。 ピンポ~ン、ピンポ~ン。 扉の向こうからの足音が大きくなってくる、この部屋には玄関窓がついているので、きっと敦子さんはあそこを覗いてるんだろうなと思うと、俺はちょっとだけ緊張していた。そして、ガシャッと重い扉が開いた。扉の向こうには敦子さんがいた。しかも、さっきのリクルートスーツのままだ。敦子さんの姿を見て、俺はさっそく聞いてみた。 「こんにちは、敦子さん。今日、俺の家に上がりませんでしたか?」 敦子さんは、なんだかわけがわからない感じで、 「川原君のところに行くはず無いじゃない。隣だからって棗さんに悪いし」 「そうですか、じゃあ棗に会いませんでしたか?」 「さっき、会ったよ」 「それってどこで?」 「面接から帰ってきた時にね。川原君の家から出てったみたいだったよ」 「そうですか」 ガクッとしながら、俺は家に戻りかけた。そのとき、目の前から棗が現れた。それを見るなり俺は一気に元気がでた。 「おい、棗。さっき、さっき」 そう言うと、俺は棗の耳元でこっそりと友彦のことについて聞いてみた。すると棗は、 「そんなことなかったわよ。ヨシくん、わたしがチャイム鳴らしても全然気づかなかったんだからね」 「そっか。それは謝るよ。わざわざ俺の家に来てくれたのに、ここで寄っていかないのもつまんないだろう。家に上がってけよ」 それを見ていた敦子さんがなんだか、手を差し伸べるような表情を見せて、 「ねぇ、二人ともわたしの家に上がってよ。面接うまく行かなかったから、ちょっと無茶苦茶してて一緒に話でもしましょう。」 そうするといつの間にか俺と棗は敦子さんの部屋にいた。台所から敦子はコーヒーを落としながら二人に聞いてきた、 「ところでさ、さっき二人で何の内緒話してたのかな?わたしにも聞かせてくれない。」 俺は、ビクッとしながらも聞き返した。 「言ったら怒らない?大丈夫ならいいけど。」 「大丈夫ですって、秘密聞くのって面白いし、何があっても大丈夫」 どうやら敦子は本気で大丈夫のようだ。俺は、意を決して目が覚める前にあったことをすべて話した。すると、 「じゃあ、わたしの中にその友彦君ってのが入ってたってゆうのね。ふ~ん。おもしろい夢だよね、それって。川原君って幽霊とか信じるんだ」 「信じるも信じないも実際に友彦が死んじゃってから、何度かあいつと話してるんでね。わかってくれないとは思うけど」 すると敦子は俺を励ますように。 「信じてあげるよ。今度そいつがわたしに入り込んでくるかもしれないなんて、スリルあるからね。ねぇ、ちょっと棗さん借りていいです?奥の部屋で話たいことがあるので」 「棗が嫌じゃないんならいいさ。俺には関係ないことだし」 「じゃあ、ちょっと待っててくださいね。それまでコーヒーどうぞ」 敦子と棗はそう言って、奥の部屋に入っていった。 そういえば、あの二人ってそんなに仲が良かっただろうか?敦子さんに見られたことはあったとしても、名前すら教えていないはずだ。それとも、無意識の内に言ってしまった事があるんだろうか?一体どうしたものか……敦子さんの入れたコーヒーをそそりながら俺は、一人可愛らしい部屋に取り残されていた。男が一人こんな所でコーヒーを飲んでるなんて端から見ればなんとも寂しい絵である。二人は奥の部屋で何をしてるんだろうか?さっきから奥の部屋では物音すら聞こえてこない、そこが不思議でもあるが、何をやってるんだろう。待っててと言われたものの、そう言われると気になるのが人間の浅はかなところ。ちょっとぐらいいいだろうと思って、奥の部屋の扉にこっそりと近づき、戸を少しだけ開いてみた。そこには…… 俺の横には棗と良雄が二人揃って寝そべっている。俺も姿は敦子さんだけど、一緒にいる。こんな時間もあと数時間で終わってしまうんだよな。まぁ、本来ならこれはおまけの人生?なんだから最後にたっぷりと楽しまないとな。とりあえず、良雄の奴はぐっすりと眠っているようだから、敦子さんの部屋で次の作戦を考えますか。そうして、俺はゆっくりと起き上がり、良雄の部屋からでていこうとした。このままそうっとそうっと、足元の感覚は慣れなかったものの、音を立てずに玄関までは来れた。そして、玄関をゆっくりと閉めてようやく脱出が完了した。そのまま敦子さんの部屋に俺は入った。靴を脱ぎ、緊張感がときほぐれたと思ったそのとき、玄関のチャイムが鳴らされた。ドア窓を覗いてみると棗がいる。俺は、すぐに重い扉を開けた。棗が部屋に上がりこんできて、久しぶりに棗と二人っきりになっていた。すっきりとした部屋の中に二人が向かい合ってたたずんでいる。 「友彦君、死んでしまうってどんな感じなの?」 棗は重い口を開き始めた。なんだか、思いつめている様子。 「俺にもよくわかってないよ。ただ、おまえたちに会えなくなるってことだよな」 そういうと、棗は自然に俺の胸に頭を寄せてきた。 「あったかいよ。友彦君の胸。ドキンドキン言ってる」 そんな棗を俺は抱きしめていた。 「棗ちゃん、幸せになるんだよ。良雄とはきっとうまく行くよ。そうじゃなきゃ、また化けてでるからな」 「ほんとに?今だって十分化けてるよね」 「そうか?」 「そうよ。敦子さん!」 「敦子さんか、そうだよな」 ここで二人は初めて笑顔で笑った。そして、棗が話を続ける。 「ねぇ、友彦君。あと数時間で帰っちゃうんだよね。敦子さんやってみようよ」 「????。何言ってるんだ棗は?」 「ヨシくんが棗のこと大事にするように協力してくれない?ってこと」 「う~ん。何だかわかんないけど、やってみるよ。棗ちゃんて結構変なとこあるんだね」 「まじめすぎるけど、たまにはこんな棗もいいでしょ。ちょっと子悪魔になった気分。これがたまにはおもしろいのよ」 「それで、俺は何をやったらいいの?」 「それはね。……」 そうして、俺と棗の最終計画が実行された。 コーヒーカップを置いて、俺は二人のいる奥の部屋の前に立っている。そして、こっそりと戸を開けると、そこには……着替えをしている二人の姿があった。棗がどうやら敦子さんの服を着ている、その服装はと言えば蛇皮のタイトスカートに襟の大きな青いカッターブラウスを着込んでいた。何故かサイズが丁度いいみたいだ。敦子さんはどうやらパジャマに着替えようとしている。戸をそっと閉め、俺はここから先を見ることなく二人がでてくるのを待った。しばらくたってから、棗が出てきた。さっきと格好は変わっていないが、どうやら化粧もしてきたらしい、いつものおしとやかな感じの棗と言うよりも今日は妖しげな魅力を覗かせている。そんな棗に俺はちょっとドキッとした。なんだかんだと時間がたってもう外は暗くなっている。ということは、これからどこかへ出かけたいという棗の意思表示だと俺は思った。 「ヨシくん、待ってた?」 ずいぶんと久しぶりに棗の声を聞いたような気分だ。 「待ってたよ。ところで、敦子さんは?」 「もう寝ちゃったよ。今日の面接でだいぶ疲れちゃってるみたい。二人でどこかに行ってきたいって言ったら、敦子さんにこの服借りちゃった」 「そんなこと言ったって、俺……金ないぞ」 「大丈夫、今日は最後の夜だから。私のおごりね」 「で、どこ行きたいの?」 「まずはヨシくんと食事したいなぁ。それからいいことしようよ」 「よし、それで決まり。車の前で待っててくれよ。すぐに行くからさ」 「うん。早く来てね」 そう言うと棗は車を置いてある駐車場へと向かった。俺は、一旦部屋に帰って、棗とのデートに向かうことにした。誘ったのはいくらでもあるが、棗の方から誘われるのは初めてで、ちょっと緊張していた。 階段を降りていくと、車の方にスリットから見え隠れする棗の脚が見えた。今日はどうやら、いつも以上に俺のことを誘っているらしい。 「お待たせ」 そう言って俺は車の鍵を開けた。助手席に棗が乗る。運転席に俺が乗り込むとさっき棗が言っていた目的の店へと向かった。前にも一度行ったことはあるが、あそこって結構高かったよな。一体、棗は何を考えているのか。まぁ、棗がその気になってるなら俺もそれに応えてやらないとな。走り出して初めて止まった交差点で俺は運転席から棗を見ていた。こんなときの棗はとっても色っぽいよな。な~んてことを思いながら運転を続けていた。 目的の店の駐車場に車を停めると棗はだいぶ疲れているらしく、俺は優しく体をゆすって起こしてやった。目を半開きにしながら棗は、 「ヨシくん。着いたのね」 と言った。俺もここに車では緊張のしっぱなしだったので、この一言でだいぶ疲れがとれてしまった。 レストランに入るなり、美しい人が出迎えてくれた。ネームを見るとそこには高橋とかかれている。敦子さんとどことなく似ているようだ。赤いチャイナドレスを綺麗に着こなしており、長めのスリットから見える脚がとても綺麗だ。 「川原様と水島様でいらっしゃいますね。お待ちしておりました。私は本日テーブルを担当させていただきます。高橋彩香(さやか)です。よろしく……」 彩香さんはそこまで言うと一瞬、苦しそうな表情を見せたが、すぐに立ち直り、 「うんうん、よろしくっ。えっとな、ご注文は承っておりますので、あちらの席でお待ちください。(こんなんでいいかな?)」 彩香さんはそう言って俺たちを席へと案内した。彩香さんの後姿を追うようにして俺たちは席へと向かった。歩くたびに右へ左へ動くお尻が目の中に飛び込んでくる。でも彩香さんの歩き方はどことなくぎこちない。ハイヒールが高すぎて慣れていないってわけでもないだろう。これは何かありそうな予感がしていた。 「こちらへお座りください。ごゆっくりとご寛ぎくださいませ。(こんなんでいいのかな?)」 俺と棗が席に座ると、彩香さんは棗に軽く目で合図を送ってから、厨房の方へと消えていった。彩香さんの香りがかすかに残る中、料理はまだまだ運ばれてこないようなので、話を切り出してみた。 「なぁ、棗。ここって予約したのか?」 「予約?ヨシくんが入れてくれたんじゃないの?わたし全然知らないよ」 「でも、もう注文は終わってるって言ってたから」 「ふ~ん、そういうところになのよきっと」 「そうなんだ。それにしてもさ、彩香さんてきれいだよね」 「棗のことはどうでもいいの?」 「そういうことじゃなくて、大人の色気を感じるよ」 「棗だって大人だけど、もの足りない?」 棗は少しふてくされた表情をして見せた。 「なんか誤解してるだろ。棗の方がずっと素敵な人だよ。そんな顔見たくないぞ。それに彩香さんてなんかおかしなことがあると思わない?」 そう言うと棗の表情は穏やかな感じへと戻った。棗と話をしているとあっという間に時間がたつようだ。最初の料理が運ばれてくる。彩香さんがお膳を運んできた。料理を出し終わると、彩香さんは俺の前に立ち。 「川原君だよね。わたしのこと知ってます?」 突然、そんなことを言われると俺の目は丸くなった。 「えっ?知らないですよ。どこかで会ったことありましたっけ?」 「河原君の隣に住んでいる敦子って、わたしの妹なのよ。これさっき知ったことなんだけどね。手帳見たらそう書いてあるんだもの。奇遇よね」 「手帳って、それ見なくちゃ妹さんのことわかなんないんですか?」 俺は不思議に思ったので聞いてみた。すると横から棗が、 「それってヨシくんの名前を手帳で確認したってことよね」 それに合わせるようにして、彩香が続ける。 「そうそう、下の名前は良雄君だよね。あっ、そろそろ厨房に戻ります。次の料理が来るまでごゆっくりしてください」 彩香はちょっと慌てるようにして厨房に向かったせいか、途中でヒールが脱げてしまった。脱げたヒールを履きなおすために、屈むとチャイナドレスの中に隠された彩香さんの脚が見えそうだった。そんなことはさておいて、さっそく料理を食べ始めた。それから、料理を運んでくるたびに彩香さんは俺たちのことを異常に気にしていた。特に棗に対してはとっても好意的な印象を受ける。またも、俺だけ仲間外れにされてしまった気分できたのだ。ここのコースが終わるまでおよそ1時間半ほど、すべてを食べ尽くしたところで、会計へと足を運んだ。 お腹がいっぱいになったところで、俺たちは車で俺の家へ戻っている。今日の最終舞台で夜のお楽しみをするためだ。結局の中華料理を食べている間、誰かに見られているような気がして食事を楽しめなかったが、今度は二人っきりなので何も心配することはない、相変わらず棗は車に乗ると眠ってしまうようだ。それにしても、さっきの、彩香さんには参ってしまった。俺たちのことをよく知っているらしくってやたらと話してくるわりには、どことなく行動が妖しい、そして、お会計では妹が俺の隣に住んでいるというだけでずいぶんと割引をしてもらった。ちょっとだけ、特をした気分だ。そんなわけで、棗を助手席に乗せて、来た道を逆に進んでいる。俺の家に戻ったら、一日の締めくくりをしないとな。そんなことを考えているうちに駐車場に車が停まっていた。相変わらず寝てしまった。棗をゆりおこす。 「棗、着いたぞ。疲れてないか?」 「ううん、ヨシくんの方こそ疲れてない?今日、やっても大丈夫?」 「大丈夫だ」 そう言って、俺たちは家に到着した。俺はそのままベッドに潜り込む。 「もういいだろう?早く来いよ」 「う~ん、どうしようっかな?シャワー浴びたいけど……も我慢できないし。そうだヨシくん、一緒にシャワー浴びようよ」 そう言うと、棗は服を着たまま浴室へ入っていった。俺もそのあとを追って、服を着たまま棗の待つ個室へと入った。 「今日の棗って、なんかおかしいぞ。いつもだったら。きちんと手順踏むのに?」 「いいのよ。今日はなんだか特別な気分なの。(最後の夜になるからな)」 「そうなのか、それじゃあこのまま始めるけどいいね」 そう言うと、俺は棗の胸を強く愛撫し始める。激しいながらも優しく触っていく、 「あっ、あっ、あ~ん」 棗の声が風呂場の中で響いている。エコーがかかってこっちの気分を昂揚させる。まだはじまったばかりだと言うのに、いい感じのスタートだ。 「気持ちかい?」 そう俺が聞くと、棗は素直に首を立てに振った。 「良かった。じゃあ、棗の大事なところも攻めるよ」 俺は、蛇皮のスカートの中に手を入れて、棗の太もも伝いに大事なところを探していた。時々、棗の脚がびくっと動く。もう感じてるのかな。そう思っているうちにショーツに手が引っかかる。 「そろそろ脱がすよ」 そう言って、俺は棗がスカートを履いたままショーツを棗の体から剥がしていった。足元まで持ってくるとそのまま後ろの方へ放ってやる。と同時に上の方では青いカッターブラウスを乱暴に脱がしていた。中からと外から脱がしている快感をより一層感じるため、俺はそのまま棗の胸に顔を埋めた。そして、そのまま舌を使って、棗の薄ピンク色の肌を舐めだした。両手は割れ目の方を広げたり、掻き毟っている。 「あああん。んんっ、んんっ。あ~ん」 響きわたる声を聞くだけでも俺の性欲はますます増していた。そして、俺はスカートのホックを外して、スカートを足元に降ろしていった。そして、くるぶし辺りまで行った所でそのままに放置したのだ、両足の自由が効かない棗に対して、今度は可愛い割れ目の周辺を舐め始めた。ちょっと舌が触れるだけで、棗の脚はビクッとする。 「や~ん。ヨシくん。すっ~ご~いん。すごすぎる」 そのまま調子に乗ってきた俺は、胸を覆っているものまで外してあげた。 「これで楽になったよね。でもね」 そう言うと、俺は再びスカートを腰に巻きつけた。そのままスカートの中に顔を入れてみる。棗の股に入ってる絵を想像するだけで、とても興奮すると言うのに、現実にやってしまった。 「今度こそ。楽にしてあげるね」 そうして、遂に棗の着ていたものはすべてばら撒かれた。俺も棗にいつの間にか服を脱がされていて、モノはびんびんになっていた。 「これあげるかい?」 モノを指差しながら棗に聞いてみる。 「良雄の欲しい!」 それを聞いた瞬間、俺のモノは、いやそれだけでなく俺の体の興奮は冷めてしまった。 「もしかしてお前、友彦か?なんで棗の中にまたいるんだよ」 そう言うと、棗は言い返した。 「何言ってるの?わたしは棗よ。また友彦君のこと考えているんだね。ヨシくんって。そんなに俺のこと気になるか?」 「やっぱり友彦だったんだな」 俺はがっくりと来てしまった。友彦に対して興奮していたなんて、なんて愚かなことだと思ってしまったからだ。 「俺なぁ。もう少しであの世に逆戻りなんだよ。最後に行かしてくれよ。俺のことを本当の棗ちゃんだと思ってさ。お願いだから」 お願いだからのところはどうやら棗の口調を真似ていた。しかし、俺はやっぱり棗とじゃなきゃ嫌だ。でも、友彦だってこれから先いつ会えるかわかったものじゃない。どうしよう? 「おい、良雄やってくれないのか?何考え事してるんだよ」 棗(+友彦)は執拗に応えを迫ってくる。あんまりしつこいので、俺は思わず棗(+友彦)の頬に手の平で叩いてしまった。次の瞬間に棗(+友彦)の目から涙が零れ落ちた。 「ヨシくん。ひどいよ。わたしのこと何だと思ってるの。棗の大事な人だと思ってたのに……」 それを聞いたとき、俺は目の前にいるのが棗だと確信した。 「棗。ごめん友彦がいけないんだ。そして、俺も頼りなくてごめんな」 いつの間にか俺は棗の唇に自分の唇を重ねていた。そのまま全身が再び点火をしはじめる。棗もさっきより積極的になってくれた。俺の愛情を体で受けるたびに艶っぽい声をだして俺の興奮を高めてくれた。そして、二人はそのまま絶頂を迎えた。 ・・・・・・・・・・・・ シャワーを上がってから、二人はベッドの上にいる。 「なぁ、さっきの気持ちよかったな。また今度やろっか」 「うん、今度なんてできないよ」 棗の拒否反応に対して、俺は執拗に迫る。 「どうして?やろっ~てば~。そしたら、ますます棗のこと好きになるからさ」 その返事を聞くなり棗はキョロッとした顔を見せ、 「よかった。その一言聞いて安心したよ。これで棗と約束を果たせたからね。おやすみなさい」 「おやすみ、ゆっくりと寝ていいからな」 そう言っている間に、棗は深い眠りに入ってしまったようだ。よっぽど疲れていたらしい。それにしても、今日、友彦と一緒に過ごしたような気がするんだけど、やっぱり夢だったのかな?それにしては、一日いろなことがあったよな。棗と敦子さんが仲が良くて、敦子さんの姉である彩香さんにも会ったし、人との関係って難しいよな。まぁ、いいさ俺には棗がいるんだから。それでいいよ。おやすみ、棗。 次の日の朝、俺は棗の体から友彦の幽体がでていく夢を見ていた。やっぱり、この世に帰ってきてたんじゃないのかな?まぁ、友彦が帰ってきたとしたら心よく出迎えてやるさ。たとえどんな姿であろうともな。なぁ、棗。窓を開けるとさわやかな秋風が吹きぬける。昨日の出来事を改めて考えてみると夢のような現実のような、どちらともいいにくい不思議な一日だったことは確かだ。そして、今日もまた、チリリンチリリンと、季節はずれの風鈴が俺の部屋に響き渡っていた。 (終わり) |
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