人類は、なぜ消えたのか②~理由~(完)
 作:無名


タイムマシンを完成させた天才科学者ー。

しかし、彼がタイムマシンで移動した1000年後の未来では
既に”憑依”によって人類が滅亡していたー。

それを知った彼はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」
1000年後の未来ー…
3025年にやってきた天才科学者・恭平は
廃墟となった街を歩き回りながら、情報を収集していたー。

”あははははははっ!
 これが、これが俺の新しい身体ー!はははははっ!”

女子高生が嬉しそうに胸を揉んでいる動画が
そこには残されていたー。

どうやら、この子も”憑依”されてしまったようだー。

”ーへへへへー俺は今から死ぬぜ”
別の動画では、憑依された男が自らそう宣言して、
命を絶つ記録も残されていたー。

「ーーー…なんて恐ろしい世界だー」
恭平は呆然としながら、人類がいなくなった街で、
何が起きたのか、残された情報を記録していくー。

「ーーーー」
アイドルのライブ映像のような記録も残されていたー。

ライブの最中に4人組のグループの一人が、
突然服を脱ぎだして
”お前らの好きなこの女は、俺のものだ!”と、叫ぶ様子が
映し出されているー。

残りの3人が逃げ惑う中、さらに一人が憑依されて
そのままステージ上で、憑依された2人のアイドルが
キスをしたり、Hなことを続ける映像ー。

恭平は、少しドキッとしてしまいながらも、
「いや、ドキッとしてる場合じゃないー」と、
恐ろしい未来に、恐怖すら覚えるー。

どの記録も、”2400年”頃から、2428年”頃の記録になっているー。

恭平が色々調べた結果、
確認できるのは、この範囲内で
”憑依薬による混乱”が始まったと推測されるー。

ただ、2402年の新聞記事らしき破片から、
”既に憑依薬はその前から存在していて”
2400年ごろに流出、悪用され始めたことが分かったー。

元々は医療の分野など、限られた分野で憑依薬は使われていて、
それが、悪意のある者によって一般層にも流出、
誰にでも使える状況になってしまったことで、
世界は大混乱に陥ったようだー。

そしてーー
「ーーーーー何を見ても、2429年以降の記録がないー」

恭平は、そう呟きながら表情を歪めるー。

”確認できるもの”を見る限り、
2428年の映像や、新聞、カレンダーの表示などは
確認できたものの、2429年以降の情報が全くないー。

人類は、2428年に滅んだのだろうかー。
あるいは、2429年以降にはもう映像を残したり、
そういうことができる余裕がないほどに人類は減っていたか、
追いつめられていたのかもしれないー。

いずれにせよ、社会がギリギリでシステムを保っていたのは、
2428年までで、それ以降は、そう遠くないうちに人類は
滅亡したものと考えられるー。

「ーーーーー」
恭平は、”3035年”の時代に立ち尽くしながら、
「ーいったん、2025年に戻って、2428年頃を見に行くかー?」と、
険しい表情を浮かべるー。

がー、すぐに「いや」と、首を横に振ると、
「それは意味がないーやめておこうー」と、言葉を口にするー

”阻止”するのが目的なら、2025年の時代に戻ったあと、
憑依薬が流出して混乱が始まる2400年の周辺に行き、
憑依薬の流出を阻止するか、
あるいは、憑依薬が開発された西暦を調べて、
その時代に行き、憑依薬自体の開発を阻止するかー

それがベストだー。

2428年に行って、既に流出した憑依薬の脅威を止めることは難しいし、
そもそも恭平自体が憑依されるリスクもあるー。

「ーーー…よしー、もう少し情報を集めてから、
 いったん、2025年に戻ろうー」

そう言葉を口にする恭平ー。

やがて、一度ポッド型タイムマシンの元に戻ると、
時間移動をオフにしたまま、さらに別の場所を探索するー。
タイムマシンから降りて周囲を見渡しながら、移動を始めるー。

やはり、どこを見ても同じような光景で、
特定の場所だけ滅んだのではなく、
人類自体が既にもう、この世界には存在していないようだったー。

”憑依薬がどこから洩れだしたのかは不明ですがー、
 ーーー依然として危険な状況でーー あっ!?!?”

「ーーー」
2401年のニュースの映像を見つけた恭平は、
それを確認するー。

”へへへへへー
 いい女ゲットぉ~”

突然、女性リポーターの様子がおかしくなるー。

恭平は険しい表情でしばらくそれを見つめていたもののー、
やがて、憑依された女がカメラの前で
胸を揉み始めたところで映像が途切れたー。

「ーー…憑依薬の流出を阻止するのは難しいかー」
恭平は静かにそう呟くー。

仮に、2400年の憑依薬の流出を阻止したところで、
また、別の時代に憑依薬が流出するかもしれないー。

2500年に流出するかもしれないし、2635年に流出するかもしれないー。
恭平がそのすべてに対処することは難しいー。

「ーー憑依薬の完成自体を阻止するしかないー、か」
恭平は、いったん2025年に戻り、助手の美羽にこのことを話した上で、
美羽と協力して”憑依薬が完成する時代がいつなのか”を突き止めて、
そして対応にあたるつもりだー。

「ーーしかし、”憑依”なんて信じて貰えないだろうなー」
そう言葉を口にすると、恭平は
”アイドルグループがイベント中に憑依された映像”を手に、
それを持ち帰ろうとするー。

あまり過激なものを見せても、美羽は驚いてしまうだろうー。
そのため、警察署内での映像や、男が自ら命を絶つ映像ではなく、
アイドルグループの憑依の映像を選んだー。

「ーーーさて、一旦戻ろうー」
恭平がそう言葉を口にして、
タイムマシンの元に戻って来るー。

が、その時だったー

「ーー!?!?」
タイムマシンから、煙が出ていて、バチバチと火花が散っているー。

「ーーーな、なんだこれはー!?」
恭平は驚くー。

タイムマシンが破壊されているー。
何者かによってー

「ーーー!?!?!?!?」
人類は絶滅したのではなくー、
まだ”生き残り”がいるのかもしれないー

そう思って、
背後を振り返ったその時だったー。

「ーーー!!!!」

そこにはーーー
”ライオン”がいたー。

「ーーーー!?!?!?!?!?!?!?」
恭平は驚くと同時に咄嗟に走ったー。

人類がいなくなったこの世界ではー、
動物たちは野生化していたー。

恭平のタイムマシンも、動物によって破壊され、
使用できない状況にされてしまったー。

「ーぐっ…くそっーこれでは私は元の時代に戻れないー」
恭平は表情を歪めるー。

何とか、ライオンから身を隠してやり過ごした恭平ー。

「ーーーはぁ…」
大きくため息を吐き出しながら、
恭平は「ど、どうするー?」と、壊れたタイムマシンがある方角を見つめるー。

「ーいや、落ち着けー。
 私なら、この時代で修理することもできるはずだー」
恭平は平静を取り戻し、壊されたタイムマシンは修理すればいいと考えるー。

が、電気も通っていないこの時代では、
修理はなかなか難しいー
時間はかかるだろうー。

けれど、この映像を再生する球体もそうだし、
この時代には未知のエネルギーがあるー。

それを流用すれば、何とか、元の時代には戻れるはずだー。

「ーーたとえ10年かかっても、2025年に戻ることはできるからなー」
恭平はそう言葉を口にすると、
ゆっくりと歩き出すー。

とにかくまずは、2025年に戻らなくてはならないー。
安全な場所を見つけて、
タイムマシンを修理し、そして2025年に戻りー、
助手の美羽と共に、
憑依薬が開発される時代を突き止めて
それを阻止するー。

そう思いつつ、恭平は早速行動を開始するー。

”新たに開発された”憑依薬”は医療の分野に
 大きな進歩をもたらしましたー。

 患者さんの健康状態を医師が直接体験することにより、
 正確な診断が可能になったほか、
 子供の治療時に、患者に憑依することによって
 治療中に暴れたりする事故を防ぐことも可能となっていますー。

 また、注射や治療が不安な患者様にも、
 憑依によってスタッフが代行することで、
 患者の皆様は、治療の恐怖や痛みを感じることなく、
 医療を受けることができるようになりましたー”

「ーーー」

そんな、”医療用憑依薬”のPRとも言える
動画を発見した恭平ー。

「ーーー最初は、こんな風に正しく使われていたのだなー」
そう呟きながら、動画を確認するー。

球体のような端末は、電気が無くても稼働できる
未来の技術のようで、そこに、この映像が保存されていたー。

「ーーー…」
が、その映像を確認していた恭平は表情を歪めたー。

”2042年”ー

球体に映像データが保存されたのは、2307年と書かれていたものの、
元の映像自体は2042年ー

医療用憑依薬のPRの動画が、2042年に撮影されているということはー…

「ーーーー…あ、あと20年もせずに憑依薬が完成するのかー?」
恭平は青ざめるー。

それを阻止しないと、人類はやがて、滅びるー。
確かに、医療用憑依薬によって人類は発展を遂げるのかもしれないー

けれど、それを阻止しなければー

”ーー医療用憑依薬を開発したーーー”

映像が続くー。
恭平はその先の映像を見て、目を見開くー。

がー、
その時だったー

背後から、”声”が聞こえたー。

恭平が振り返ると、そこには”ライオン”がいたー。

恭平が声を上げると同時に、
ライオンは容赦なく、恭平に喰らいついたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2025年ー

「ーー…10秒経っても帰ってこないー」
恭平が1000年後の未来に向かったのを見送った美羽は、
ため息を吐き出すー。

”1秒後には帰って来るかも”と、そう言っていた博士ー。
しかし、彼は10秒経ってもー、
その後、1日、1週間、1ヵ月経っても、
戻ってこなかったー。

”博士のことだし、未来が楽しくて住みついちゃったんだろうなぁ”
美羽はそう思いながらも、
自分が研究していた”人の嘘を確実に見分けることができる装置”を見つめるー

未来に旅立つ前の博士に
「こんなもの見せられたら、わたしの研究がちっぽけに見えて来ちゃいますねー」と、
口にしていた美羽は、
ふと笑うー。

「わたしも、博士に負けないようなすっごい研究しなくちゃ!」
そう言葉を口にする美羽ー。

そしてー、
美羽はーーー
1年後ー、”憑依薬”の研究を始めてしまったー。

博士がタイムマシンを完成させて”未来”へと向かったのを見てー、
美羽は”嘘を確実に見破ることのできる装置”などよりも
さらにスケールの大きな研究をしたい!と考えー、
その結果、”憑依薬”の研究を始めてしまったのだー。

祖母が、極度の病院嫌いかつ、
治療や注射への強い恐怖があったことで、
結果的に治療の開始が遅くなり、命を落としてしまったー

そんな、苦い経験を持つ故の、
”医療用憑依薬”ー

そして、美羽はここから15年以上かけて、
2040年には憑依薬を完成させてしまったー。

それから、数百年は”美羽の願い通りの使われ方”をしていたものの、
2400年頃にそれが、一般社会に流出、大混乱を起こし、
人類は数十年持たずに絶滅してしまうー。

好き放題の憑依を繰り返し、大勢の犠牲者が出て
社会システムは崩壊ー。
生き残った人間も略奪を繰り返したり、その犠牲になったりして
人口は激減し、
もはや食糧調達すらも困難になり、絶滅したのだー。

もちろん、美羽はその時まで生きておらず、
”自分の研究が人類を滅ぼすことになる”ことは知らないまま
世を去っているー。

しかしーーーーー

未来に飛んだ恭平は
ライオンに食われる直前、知ってしまったー

”ーー医療用憑依薬を開発したーーー
 雨澤 美羽 博士ーーーー”

残されていた映像で、憑依薬の開発者が助手の美羽であることを
知った恭平ー。

そしてーー

”わたしの師匠でもある天藤博士がー
 タイムマシンを開発したのを見て、
 わたしも、スケールの大きな研究をしたいなって思いー、
 この憑依薬の開発に着手したんですー”

と、映像の中で美羽は嬉しそうにそう語っていたー。

ライオンに食われる直前ー
恭平は悟ったー。

”ーーー私が、タイムマシンを完成させたせいでーー
 ーー未来は変わってしまったーーー?”

そうーーー
恭平が、タイムマシンさえ開発しなければー
美羽はーー、”スケールの大きな研究をー”などと
考えることはなかったー。

憑依薬が開発されることはなかったー。

”ーーー私が、人類をーー?”

ライオンに食われる瞬間、恭平は
人類の消えた理由を悟ったのだったー…

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最終回でした~!★

人類が滅んでしまった理由は…
博士自身でした~★!

こんな風になってしまうと大変ですネ~!!!

タイムスリップが絡むお話は、
何となく(?)書くのが好きなので、
時々、憑依や入れ替わりと絡めて
ついつい書いちゃいます~!笑

これからも、時空を超えるお話も
たま~に登場するので、
そういうものが好きな人は
楽しんで下さいネ~!!!

…次に皆様とお会いする時期も
まだまだ寒い季節が続いていそうなので
体調には気を付けて下さいネ~!