注文履歴 作:無名 「人の注文履歴を覗くと、その人生が見えてくるー」 自らを”注文履歴プロファイラー”と名乗る その男は、憑依能力を持っていたー! --------------------— 安馬 損太(あま ぞんた)は、 ネット通販の注文履歴を覗くことを生きがいとしていたー 2年前、 彼は”憑依能力”を手に入れた。 手に入れるまでの経緯は企業秘密。 その能力を駆使し、彼が始めたことはー 人の身体を乗っ取って犯罪を犯すことでも エッチなことをすることでも 人生を乗っ取ることでもなかったー。 彼が憑依薬を使って始めたことはー ”人の注文履歴を覗くことー” だった。 人の身体を憑依能力で乗っ取り、 その人のネット通販の注文履歴を確認し、 その人の全てを理解するー。 損太は言うー ”注文履歴には、その人の人生が描かれている” とー。 実際、注文履歴からは 色々なことが分かるー。 損太はいつしか、 人の注文履歴を探り、そこから人物像や行動を推測する ”注文履歴プロファイラー”を名乗り、 仕事を辞め、現在では注文履歴を探る人間として 裏社会で名をはせているー。 「----ふふふ♡」 この日もー 彼は、智恵(ちえ)という女性に憑依していたー。 28歳の、人妻だ。 今日、智恵に憑依しているのは 仕事ではない。 損太の個人的な趣味だ。 「むふ…♡」 智恵はイヤらしい笑みを浮かべながら ネット通販のサイトを開く。 途中だった家事を放り投げて ソファーで足を組み、 綺麗な脚を見せつけながら スマホで注文履歴を除いたー。 そこにはー 「--うっ… ふふ♡ そういう趣味か」 智恵は呟いた。 男と男が抱き合っているようなDVDだとか そういうものが多く見受けられたー また、大人のおもちゃもよく購入しているー。 その中にカレーライスや お酒などの日用品も混じっているのが なんともアンバランスで笑わせてくれるー。 「ふ~ん…えっちじゃん!」 智恵はそう呟くと 注文履歴を見ながら ニヤニヤと笑みを浮かべた。 智恵の身体を乗っ取ったまま 智恵は部屋にあったパソコンを起動し、 妖艶に足を組みながら 自分のアカウントにログインをするー。 パスワードぐらいの記憶であれば 損太はなんとか引き出すことができるー そしてー 部屋にあったプリンターで注文履歴を印刷して それを夫の部屋と思われる場所に貼りだした。 「くふふ…わたしの秘密… 丸見え♡」 智恵はそう呟くと、パソコンの電源を切り、 にっこりとほほ笑んだー 損太は、憑依して 履歴を見て、 ちょっとしたイタズラをして 憑依から抜け出すという”遊び”を繰り返しているー。 憑依される側にとっては とんでもないことだったが、 損太にとっては”ただの遊び”だった。 そう、テレビ番組を見るような 軽い気持ちで、イタズラを繰り返している。 「さ、次にいこ~っと!」 智恵は嬉しそうに叫ぶと、 「あ…」と声をあげて、 そのまま糸が切れたように その場に倒れたー 損太は早速次に向かうー。 智恵がどうなってしまうのかは知らないが、 損太に結果を見る趣味はないー。 「--うん、それでね、明日なんだけど、 わたしが先に、うぁっ!?」 彼氏と電話している最中の 女子高生に憑依した損太。 憑依された女子高生・萌奈(もな)は 突然変な声を出して スマホをその場に落とした。 「ん…ふ、、ふふふふ…憑依完了~ 可愛い子だな~」 部屋にあった姿見を見つめて微笑む萌奈。 電話口で彼氏が何か言っていたが そんなことは関係ない。 憑依された萌奈は通話を終了して そのままニヤニヤしながら 大手ネットショップの”注文履歴”を開いたー。 「んふふふ~♡ わたし、何を買ってるのかな~」 嬉しそうに注文履歴を眺める萌奈ー。 「ふんふんふん~ なるほど~♡」 萌奈は注文履歴をひとつひとつ 見つめて行くー。 ごく普通のものしか買っていない。 年頃の女子高生、という感じのものだろうかー。 「----」 萌奈は最後まで注文履歴を見終えると呟いた。 「な~んだ!つまんな~い!」 無差別に憑依している損太ー。 ”人に見せられないようなもの”を購入している人もいれば 萌奈のように、特に何も見せられないようなものを 購入している感じはしない子もいるー。 「--ま、いっか、 よいしょっと」 萌奈はニコニコしながら ネットショップで勝手に 過激な衣装を注文すると、 そのままスマホを放り投げた。 「--は~い!つまんない! 次いこ~っと」 壁に叩きつけられたスマホが 音を立てて落下する。 そして、萌奈は うすら笑みを浮かべたまま その場に倒れたー 損太は、次の憑依先を探しに、 萌奈から抜け出したのだったー ・・・・・・・・・・・・・・・・ 「---すー…」 穏やかに昼寝をしている 女子大生・美姫ー。 久しぶりの休日で、 疲れていた美姫は 一人暮らしの自宅で 眠っていたー 「---んあっ…」 穏やかな寝息を立てていた 美姫が突然ビクンとなって 声を上げるー 「---くふ…お邪魔しますぅ~」 今まで眠っていた美姫が 笑みを浮かべながら立ち上がる。 キャミソール姿の美姫は 一直線にスマホの方を目指すと、 早速”注文履歴”を確認し始めたー 「ふひっ…♡」 美姫は思わず笑みを浮かべた。 「きたきたきたきたぁ~!」 美姫は狂ったように声を上げるー。 美姫の姿を鏡で見つめる。 とても大人しそうで清楚な雰囲気の 女性だー。 机の上に眼鏡が置いてあること、 そして視界が悪い事から 眼鏡っ娘であることも分かるー だがー 注文履歴にはー チャイナドレスや SM衣装、 ゴスロリ衣装や バニーガールの衣装など、 過激な衣装が並んでいた。 「くふふふふ… この女、 コスプレ趣味でもあるのかな~うひひ」 美姫は部屋の中を探し回るー。 すると、目につきにくい場所に 綺麗に整理された 過激な衣装の数々が見つかった。 「んひひひひ~♡ これだから注文履歴漁りは辞められねぇ~ きひひひひひひひ!」 美姫が狂ったように笑いながら その服を身に着けていくー。 そしてー スマホで過激な衣装を身に着けた自分を撮影した。 美姫は自分のツイッターの画面を開く。 ログインしたままだったのか パスワードの入力画面は表示されない。 普段の美姫のツイートは やはり大人しい感じだった。 「そうかそうか 隠れてコスプレを楽しんでるんだな~?」 美姫は自分の顔をツンツンと押すと、 そのまま自撮りした 過激な格好の写真を ツイートした。 ”どう?”とだけ言葉を添えてー すぐに反応があったー。 友達が驚いている様子だ。 「んふふふふふふふ~♡ もっともっと見せてあげる~」 美姫は、SM衣装からチャイナドレスに着替えて 写真を撮って再びそれをツイートする。 さらに次の服に着替えてー 美姫は部屋が滅茶苦茶になるまで 自撮りを繰り返しては それをツイッターに投稿した。 「---うふふふふふふふふ~♡ あははははははh…」 最後はー 笑い声をあげたまま 突然電源をオフにされたロボットかのように バニーガール姿のまま、美姫はその場に崩れ落ちた。 損太は笑みを浮かべる。 「さ~て!つぎだ!」 損太は、次々とターゲットを 見つけては、憑依を続けている。 大体、1日に10人以上の 身体を乗っ取っては注文履歴を 確認し、楽しんでいるー。 ”おしゃれになんて興味ないから”と 豪語しているボーイッシュな女子大生に憑依した損太は 注文履歴を見つめて微笑む。 そこにはー 女子力全開のものが並んでいた。 「お~お~、 女子力全開じゃないか~」 ボーイッシュな女子大生はニヤニヤと笑う。 本当は可愛くありたい、ということだろうかー。 「ま、それ以外に面白いものはねぇな」 そう呟くと、特に何もせず、そのまま その身体から抜け出すー。 次に憑依したのは、 現役のキャバクラ嬢ー。 何か面白いものが出てくるかと期待したが、 ごく普通のものしか購入していなくて 詰まらなかったので、なんとなくその身体で エッチなことをして、離脱したー。 次は、40代のキャリアウーマン。 健康食品と、お墓関係の本ばかりで 特に面白いものはなかったー。 さらに続いて学校の若い女教師に 憑依したー。 「これはやべぇな…」 ショタ趣味でもあるのだろうか。 注文履歴を見て、 ”いつかこの女教師、何かしそうだな”と 呟きながら、”私はショタです”と身体に マジックで刻んでからその身体から離脱したー 「さて…そろそろ今日も終わりにするか」 さすがに疲れてきた。 次の身体で注文履歴覗きを 今日は終わりにしようと思いながら 損太が次にターゲットに定めたのは 子供2人と、夫がいる、 幸せそうな家庭ー。 20代後半か30代前半の 穏やかそうな母親に憑依した。 「---ふっぁっ?」 優しそうな母親・薫(かおる)が 苦しそうに声を上げた。 だがー 家族は誰も気づかなかった。 もう夕方だから子供たちも家に帰ってきている。 「---さーてと」 薫はカレーを作っている最中だった。 薫はカレーを作るのをやめて、 そのまま、家族の見ていない場所に向かう。 「んっふふふ~♡ さぁ、秘密を見せてもらうよ~」 薫はニヤニヤしながら ネットショップの注文履歴を開くー。 すると、そこにはー 信じられないものが 写しだされていたー 「うっほ!」 思わず薫は笑みを浮かべてしまったー 劇薬や、 ナイフや包丁、 危険なものが注文履歴に並んでいるー そしてー 薫のスマホには 浮気相手とのLINEや 夫への不満をつづったツイッター、 ネットの閲覧履歴には 人を手にかける方法まで 刻まれていたー 「--あ、もう、あるじゃん! うひひひ、悪い女だな~!」 薫は部屋にあった劇薬を見つける。 これを、どうするつもりだったのだろうかー。 「--あ~…」 薫の裏垢には ”明日が勝負”だとか ”わたしを満足させられない夫と、 夫の子供をこの世から消しま~す!”と 書かれていた。 それを見た薫は立ち上がった。 劇薬やナイフ、法律上グレーなものまで そういったものを鞄に詰め込むと 薫は作りかけのカレーをそのままにして、 外へと歩いていく。 「--どこへ行くんだ?」 それに気づいた夫が声をかけた。 薫は振り返って笑みを浮かべた。 「--人助け」 と。 損太は人に憑依して 悪い事をすることもあるが 気まぐれで人を助けることもあるー そう、今回のようにー 薫は、警察署の前までやってくると にっこりと笑みを浮かべた。 「わたしは悪い女だから、 自首しちゃいま~す! うふっ♡」 そう言うと、薫は警察署に入っていき、 自らしようとしていたことを 自白するのだったー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 安馬 損太は、 今日のおたのしみを終えて 自宅へと戻ったー。 「くく…今日もなかなかのメニューだったな」 注文履歴を覗くことは、 人の人生を覗くことであると 損太は思っている。 注文履歴からは 多くのことを覗くことができるー。 損太のスマホに着信が入る 「はいー。」 損太が電話に出ると 電話の向こうの、低い声の男が言った。 ”ひとり、調べてほしいやつがいるー” とー。 「---分かりました。 この注文履歴プロファイラーにお任せ下さいー」 損太はニヤリと笑いながら 電話を切った。 今日の仕事のはじまりだー。 そう呟くと、 損太は、”依頼をこなすため”に また誰かへと憑依しに向かうのだったー。 おわり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 皆様こんばんは~! (他の時間帯の皆様はこんにちは~ おはようございます~!) 今回は”憑依”でその人の注文履歴を覗くという 少し変わったスタイルの憑依モノをご用意してみました~!★ こういう風に使われてしまうのも恐ろしいですネ~…! 私も覗かれちゃわないように気を付けます~笑 だんだんと暖かさを感じる日も増えてきましたが 私は風邪を引いてしまいました! 気温が上がったり、下がったり…体調を崩しやすい状況だと 思うので、皆様も気を付けて下さいネ~! 今月もお読み下さりありがとうございました~!! |