全人類女体化計画③~我らは文明のある星を侵略しない~(完)
 作:無名


人類の女体化を進める宇宙人ー。

疑念を抱く地球人に対し、
宇宙人たちは”人類の皆さんのため”と、
夢のような技術・科学を、提供し始めるのだったー。

全人類が女体化した先に待つ運命はー?

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世界宇宙連合日本支部のビルの屋上で、
少女のような姿の川熊博士と、
宇宙人の代表を名乗るズーが対面していたー。

「ーー我々には、男女の交わりという概念がないー。
 我らは、君たち人類で言えば、生物学的に”女性”に位置するー。
 それだけで、繁殖もできているし、何も問題は生じていないー。

 地球の皆さんを”女”にしているのは、
 我々の技術を円滑に提供するためだー」

「つまり”男”が存在しない、君たちの星に合わせようとしている、
 と、いうことかねー?」

川熊博士が言うと、
ズーは「その通りー。だが、それは決して皆さんのことを傷つけるためではない」と頷くー。

「我々の侵略を疑うものがいる気持ちも理解できるー。
 だが、どうか安心してほしいー。
 我々は、この星に技術を提供したら、立ち去ると約束するー

 地球は、君たちのものだー。
 我々は決して、他の文明がいる星を侵略したりはしないー」

ズーのその言葉に、川熊博士は嬉しそうに頷いたー。

その日からー
”人類の皆さんの疑いを払拭する”と、
ズーは積極的に自分たちの星の技術を提供したー。

あらゆる病気を一瞬で直す最新鋭の治療薬の提供ー
人間の身体のあらゆる部分を回復させる奇跡の水ー
交通事故を防ぐための、自動車用の最新鋭システムー
電気を無限に生成できる”次元発電装置”ー

人類のあらゆる課題がクリアされていくー。

女体化ロボットによる女体化は
ズーたちの星の”薬”をはじめとするあらゆる技術が
女性向けに作られており、このままでは、人類には対応できないために、
多少の反発は理解しているものの、人類の皆さんのためにー、
と、ズーたちは説明するー。

ありとあらゆる技術により、数か月間の間で、
人類の文明は、飛躍的に進歩したー。

病気は”数か月”で根絶されたー。

宇宙人たちは”我々の全ての技術・知識を提供する”と宣言し、
その言葉に嘘・偽りは無いようだったー。

”文明の発達した我らが、他の星の発展を願うのは、当然のことー”と、
人類に何の見返りも求めようとせず、
ただ、人類の発展を願うその姿に、
人類の宇宙人に対する警戒心は次第になくなっていくー。

もちろん、”女体化”に反発する人間は少なからずいたー。

だが、そうした人間たちも、宇宙人の圧倒的技術の提供により、
生活が飛躍的に便利になったことで、
次第に減っていくー。

数か月後ー
人類の95%は女体化していたー

宇宙人が投下した”女体化ロボット”によって、女体化は
確実に進んでいたのだー。

一部”絶対に女体化したくない”として、
反発している勢力があったもののー
今や、人類は”女性”になりつつあったー。

”子孫の件”に関しても、
宇宙人たちはクリアしてみせたー。

ズーたち宇宙人が持ち込んだ医療技術によりー
”望めば誰でも妊娠する”ことが可能になったのだー。

「ー子孫を残したい人間は、この技術を使えば、
 好きなだけ、子孫を残すことができるー」

その”新技術”を使うことで、
女性一人で妊娠することができ、
男性が存在しない世の中になっても、一人で子孫を残すことが
可能になるのだと言うー。

”受精薬”
それを服用するだけで、妊娠できる世の中ー。
もはや、男女の交わりは不要となりー
また、”結婚相手”がいないような人間でも、
望めば子孫を残すことができるようになるのだと言い、
実際にその効果を、一人の人間で実証してみせたー。

しかしー
全ての人間が、納得することなどないー。

「ーーー総理!これはおかしい!倫理的に何もかもが狂ってしまう!」
城之内官房長官が、目つきのするどい女性の姿で叫ぶー。

既に、ほとんどの人間が女体化していて、
政府関係者も、ほぼ女体化している状態だったー。

「ーー色々不満があるのは分かるー。
 だが、”理想的”だー」

神林総理大臣は、まるでアイドルのような容姿の女性に女体化していたー。

皮肉にもー
”老人ばかり”などと言われる光景が広がっていたその場所はー
今や”花園”のような光景が広がっていたー。

「ーーー少子高齢化もこれで一気に解決できるし、
 子供を産むことに対する負担もないー。
 来年から、受精薬の正式な利用が始まれば、
 世界は大きく変わるだろうー」

神林総理大臣が言うー。

”全人類女体化”をこのまま進めるとー。

理由は明白だったー。

「宇宙人の優れた技術」は人類発展に欠かせないことー。
既に、病気はほぼ地球上から消滅し、他の分野でも、
未来から技術を提供されたかのように、色々な問題が解決しているー。

そしてもうひとつー。
”宇宙人との衝突は避けるべき”であるとー。

確かに、全人類が女体化すれば、社会のシステムを根本から
変えなくてはならないー

それに対する不安は大きいし、
色々問題は起きるだろうー。

しかしー

”これだけの技術”を持つ宇宙人に逆らい、
万が一ズーたちを怒らせてしまえばー
地球は滅ぶかもしれないー

「色々苦労はあるし、戸惑いも最初はあるだろうが、
 豊かになるのは事実だー。

 それに、こんな技術がある宇宙人に勝てるはずはあるまいー。

 ”多少戸惑いはあっても、現状を受け入れる”
 それしか、ないのだー」

神林総理大臣の言葉は、現実を見据えていたー。

仮に反発しても、勝ち目はないー。
それに”戸惑いはあれど、悪い話を強要されているわけではない”
だから、このまま受け入れよう、と
神林総理大臣は考えていたー

だがー
そんな、神林総理大臣の意に反して、
その日ー
城之内官房長官や、一部の他国が同盟を結びー、
宇宙人の艦隊に、最新鋭の巨大爆弾による爆撃を仕掛けたのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「バカな!?」
いつの間にかそばかすだらけになっていた
川熊博士ー。

研究に没頭し、すっかり視力は落ち、
ボサボサ頭のオタク少女風になっていた
川熊博士は助手の報告を聞いて叫んだー。

「ー宇宙人を攻撃しただと!?!?!?!?」

「ーーはい」
おしゃれに目覚めた助手は、今やモデル顔負けのスタイルを
誇る女性に身も心も成り果てていたー。

「ーーわたしも、驚いたのですけど、事実のようでー」
振る舞いも、口調も女になった彼がそう言うと、
川熊博士は、怒り狂った様子で叫び、ただちに、
宇宙人の代表・ズーに連絡を入れるー。

爆撃を受けても、宇宙人の艦隊は無傷だったー。

だが、ズーたちが怒り狂ってしまえばーーー
人類は終わりだし、
友好関係も終わってしまうー。

既にー
城之内官房長官らは捕らえられ、
ズーたちの元に送られたー。

人類側が、ズーたちを怒らせることを恐れたのだー。

”ーー人類の不安は理解できる。申し訳ないー”

ズーは、そう答えたー。

宇宙人たちは、怒り狂うこともなく、
捕らわれた城之内官房長官や、反対派の各国の首脳を
手厚くもてなしー、
そのまま解放したー。

「ーー不満があれば、我々はいくらでも聞くー」
ズーは、城之内官房長官らの前に、頭を下げたー。

「ーー不安を与えて、申し訳ないー。
 だが、我々は、人類の皆さんと争うつもりも、
 他の文明が存在している星を侵略するつもりもないー。
 全ての技術を伝えたら、この星を去るー。
 だからどうか、信じてほしいー

 我々は、あなたたちと”友達”になりたいだけだー」

城之内官房長官が表情を歪めるー。

「ーふざけるな!得体の知れないロボットたちを
 放ち、我々を女にして!ふざけるな!
 お前たちは人類を見下して弄んでいるのであろう?」

城之内官房長官の言葉にも、
宇宙人の代表・ズーは「申し訳ない」とだけ呟き、
その場で土下座のようなポーズをしたー。

「ーー我々には”男”という概念がないー
 故に、我々の星の文明は、全て
 地球で言う”女”向けー。
 だからー、皆さんに女性になって貰わないと、
 我らの技術を与えることができないのだー」

ズーはそう呟くー

城之内官房長官や、ズーたちに反発する他国の代表はー
土下座しているズーを見つめるー。

「ーーーただ、我らは、同じ宇宙に住む仲間としてー」

ズーと、その周囲にいた宇宙人たちが、顔を上げて
目に涙を浮かべたー。

「ーーー共に協力して、友人になりたいだけなのだー。
 我々は、今までにも地球以外の星を訪れてきたー

 けれどー
 その星に住む人たちを、一度たりとも傷つけたことはないー
 文明のある星を侵略したことはないー
  
 どうかー
 どうか、信じてほしいー」

ズーは、泣いていたー

その涙に、城之内官房長官らは、複雑そうな表情を浮かべー
そのまま、何も言わずに立ち去ったー。

”爆撃されても”
寛大な対応をしたー。

宇宙人たちの誠意が、人類に伝わりー、

人類はついに、正式にズーたち宇宙人の言葉を聞き入れたー。

全ての人類が女体化しー、
ズーたちは、持っている全ての技術を人類に伝えー、
人類は飛躍的に成長したー。

宇宙航行に欠かせない”ワープドライブユニット”の技術も
地球に提供ー、
地球での実用化は、まだ数百年はかかる、とのことだったが、
ズーたちが提供した技術があれば、必ず、人類はいずれ
太陽系を飛び出し、地球滅亡の際には、
人類は色々な星で暮らしているだろう、と、ズーたちは語ったー。

そしてー
半年後ー。

ズーたちは、受精薬の実用化を見届けて、
地球を去ることになったー。

「ーーーこれで、望む人が子供を持てる時代になるのだなー」
神林総理大臣が言うと、ズーは頷くー。

受精薬を服用後、1か月で妊娠、出産ができるのだと言うー。
ただし、生まれてくる子供は、ズーたちの星の成分を使っている以上、
みんな、女になるだろうー、とのことだったー。

この半年で、人類は変わったー。

ズーたちがやってくる前では、信じられないほどに、文明は発達したのだー。

病気もー
事故もー
人類のあらゆる課題が解消された、夢のような世界へと、進化していたー。

「ーーまた、逢えるのか?」
宇宙に帰ろうとするズーたちを見送ろうと、
女体化して、今やオタク少女のような状態になった川熊博士が
ボサボサの髪に、猫背の姿で近づいてくるー。

「ーー我らは、地球のような他の星にまた、技術を分け与えたいー。
 当分は、地球には戻ってこれないがー
 いずれ、また、必ずー」

ズーはそう言うと、宇宙船の方に向かって歩いていくー。

「ーーーー」
川熊博士は、「おい!坂部!」と叫ぶと、
坂部に脚立を用意させてー、
ズーの身長に合わせて握手を求めたー

今度は、ぴょんぴょん飛ぶ必要もないー。

「ーーありがとう、友よー」
川熊博士がそう言うと、
ズーは、その握手に応じたー。

「ーー地球の発展に貢献できて、我々も嬉しく思うー。」

そしてー
ズーたち宇宙人は、宇宙へと戻って行ったー。

「ーーー人類の新しい歴史の始まりだ!」
川熊博士は、嬉しそうに「これから忙しくなるぞ~!」と
宇宙人に提供された技術の研究を再開しようと、笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・

人類は、滅んだー。

200年後ー。

ズーたち宇宙人は、地球を再び訪れたー。

残っていたのは、植物に支配されつつあった、地球ー
人類が、消えた世界ー。

「その星に住む人たちを、一度たりとも傷つけたことはないー
 文明のある星を侵略したことはないー
  
 どうかー
 どうか、信じてほしいー」


ズーは、200年前、自分が言った言葉を思い出すー。

「ーーー我は、誰も傷つけてはおらぬー。

 我は”文明のある星”は、侵略せぬー」

約束は、破っていないー。

200年前ー。
人類の前で見せた”受精薬”は確かに本物だったー。

だがー、
人類には”あえて”偽物を手渡したー

結果ー
全人類が”女”になっていた人類はー
ズーたちが提供した技術・科学力で
これまでにないほどの最高の暮らしを堪能したがー…
子供は一人も生まれず、
そのまま、その世代で、滅んだのだー。

”静かなる侵略”

相手も、自分たちもー
”一切血を流すことなく、惑星を支配する”

それが、この宇宙人たちのやり方ー。

その惑星ごとに、平和的に歩み寄り、”繁殖”の要因を絶ちー
穏やかに絶滅させるー。

人類も、騙されたことには気づいてはいただろうー。

だがー、
”200年前、生きていた人間”は、最後の瞬間まで、
自分の人生を送ることができたはずだー。

「ーーー安楽滅亡ー」
ズーは、そう呟くと、
「ーー”地球”は我らの手に落ちたー。
 ”使用者”のいない惑星を、どうしようと、我らの自由だー」
と、仲間たちに向かって勝利宣言をするのだったー。

おわり

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最終回でした~~!☆
人類を全て女体化させて、撤収することで
子孫を残すことが出来居ない状態にして、
争わず、人類を滅亡させる…

そんな、恐ろしい宇宙人の目論見でした…☆!

この宇宙人たちは寿命も長いので、
人類が繁殖できずにそのまま最後を遂げるぐらいの時間は
人間で言う”10年ぐらい待つ”ぐらいの感覚でした~!
(10年でも長いですケド、惑星が一つ手に入ると思えば…☆笑)

今回はこれでお別れデス~!
次回、皆様にお会いするときは、
すっかり春本番になっていて、
私も目をかゆかゆしながら、過ごしている…気がします~笑

お読み下さりありがとうございました~!