カワノゲーム③~真相~(完)
 作:無名


謎の人物によって、謎の施設へと連れ去られた状態で
目を覚ました男子大学生。

色々な人間の”皮”を着て、部屋ごとの謎を解き、
なんとか最後の部屋にたどり着いたものの…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最後の部屋に待ち構えていたのは
彼女の真理恵だったー。

「ーククク…さぁどうする?」

真理恵の姿ー
真理恵の声ー。

けれどー…

「ー”人を皮にする力”ーーーー」
真理恵は、そう言いながらもう一つ、部屋に置かれていた
チャイナドレス姿の美女の”皮”を手にして笑みを浮かべるー。

「ーーひ、人を…皮に…?」
達平が戸惑いながらそう言葉を口にすると、
真理恵は「まぁ、口で説明するより、見た方が早いだろうー」と、
そう言葉を口にしたー。

すると、真理恵は突然、チャイナドレスの女の”皮”に注射器のようなものを
打ち込むー。

すると、その”皮”が、うめき声を上げながら
人間の姿に戻り始めたー

ペラペラで、明らかに”着ぐるみ”のような状態から、
ちゃんとした人間の姿に戻っていくー

「ーーな……な、なんだこれ…」
達平は呆然としながら、その様子を見つめるー。

チャイナドレスの女は、人間の姿に戻ると
困惑した表情を浮かべながら周囲を見渡すー

「わ…わたしーー… えっ!?」
自分の格好を見て、悲鳴を上げるチャイナドレスの女ー。

すぐに、達平と真理恵に気付き、
「あ、あなたたちはー…だ、だれですか?!」
と、怯え切った表情で叫ぶー。

しかし、真理恵は再び、何も言わずに
その女の首筋に注射器を打ち込むー。

するとー
すぐに、再びチャイナドレスの女はうめき声をあげながら
”皮”になっていくー

真理恵はにやりと笑みを浮かべるとー
「興奮しちゃうー」と、小声で呟いてから、
達平のほうを見つめたー。

「ーーー今、見た通りー。
 これが”人を皮にする力”ー
 つまり、お前がこの部屋にたどり着くまでに着ていた”皮”はー」

真理恵がそこまで言うと、
達平は呆然としながら「ーー本物の…人間ー?」と、言葉を口にしたー

「そうそうー察しがいいな」
真理恵はそう言うと、「お前の彼女もー、この通り」と、
自分の身体を見せびらかすようにして、笑みを浮かべるー。

「ーくっ…くそっ!真理恵を返せ!」
達平がそう言うと、
「ー最後のこの部屋を突破できたらなー」と、真理恵が笑うー。

「ーー最後の部屋の突破条件ー
 それは、俺を倒すことー」
真理恵がニヤニヤしながら言うー。

「な…なに…!?俺に真理恵と戦えってのか!」
達平がそう叫ぶと、
真理恵は「無理ならゲームオーバーだけど?」と、
冷たい口調で言葉を口にするー。

「ーーーーく…」
達平は邪悪な笑みを浮かべる真理恵のほうを見るー。

そしてーー

「ーーーお前は、誰なんだー?」
達平は、ふとそんな言葉を口にしたー。

「ーーーーー」
真理恵は笑みを浮かべるー。

普通に家で寝ていたはずの達平を、
こんな謎の施設まで運び込み、
”カワノゲーム”を挑んだこの男の正体は、誰なのかー。

「俺に何の恨みがあるー…!
 俺は、誰かに恨まれるようなことをした覚えなんてー!
 
 そ、それとも真理恵のほうを恨んでるのか?
 答えろ!」

達平がそう叫ぶと、
真理恵はクスクスと笑いながら、
「恨みなんて、ないー」と、だけ呟くー。

そしてーーー

「ーまぁ、俺に勝ったら全て教えてやるよ!」
と、チャイナドレスの女の皮を指差したー

「ーーわたしは~”女”だから~
 このまま戦ったら不利ー

 だからァ…達平もその皮を着て、女になってねぇ?」

真理恵のフリをしているのか、真理恵がそう言葉を口にすると、
達平は、今、”皮にされた”チャイナドレスの女を見つめるー

「ーお互いに、女同士ー
 フェアで戦わないと、ねー?」

真理恵の邪悪な笑みに、
達平は「だったらー、お前が真理恵を脱いで、男同士で戦おうじゃないか」と、
言葉を口にするー。

真理恵はニヤッと笑いながら
「それはできない相談だなー…ルールは俺が決める」と、だけ答えたー。

達平は舌打ちするー。

だが、真理恵を支配している男が、達平の言葉に応じる気配もなくー
仕方がなくチャイナドレスの女の皮を着るー。

真理恵は「ふふー、可愛い」とだけ呟くと、
「ルールは簡単!相手を戦闘不能にした方が勝ちだ!」
と、叫びながら、ナイフで襲い掛かってきたー

”真理恵の中にいるやつの戦闘能力が分からないけどー
 きっとヤバいやつに違いないー”

そう思いながらナイフを必死に避ける達平ー。

チャイナドレスという慣れない格好だからか、
動きにくいー。

このままじゃ、すぐに刺されてしまうー。

がーーー

「ーー!?」

「ーーあぅ」
真理恵の動きは、思ったよりも”戦い”のようなー
そういう行為に慣れてない感じで、
ナイフを思ったよりも簡単に叩き落すことに成功した達平は
表情を歪めるー

「ーふふふ…ふふふふふふー」
真理恵が髪を振り乱しながらまた襲い掛かって来るー。

チャイナドレスの女の皮を着た達平の胸を
突然触りながらー
「気持ちいいだろ?」と、笑う真理恵ー。

確かに、ゾクゾクするー

だがーー
それ以上にーー

「ーーふざけるなー」
達平は、可愛い顔に、ありったけの怒りを滲ませながら叫んだー。

「ーーー気持ちイイとか、そんなことよりもー
 俺には、真理恵の方がー、ここから出ることの方が、大事なんだ!!!」

そう叫びー、真理恵を突き飛ばすと、
達平は、チャイナドレスの女の姿のまま、
真理恵に近付くー

「ーわたしに、暴力を振るうのー?」
攻撃されそうになった真理恵がそう言い放つー。

達平は、一瞬戸惑ったもののー、
「それで迷ってちゃ、真理恵は乗っ取られたままだろー?
 真理恵を助けるためなら、俺は何だってするしー、
 あとで真理恵に怒られたら、俺は土下座でもなんでもするさ!」
と、言い放ちー、チャイナドレスから覗く生足を晒しながらー、
真理恵に回し蹴りを食らわせたー

「ぐ…」
吹き飛ばされて床に転倒された真理恵が起き上がろうとするー。

しかし、達平は、チャイナドレス姿の女の足で、
真理恵を行動不能にする固め技のようなものをかけると、
真理恵はついに、床を叩いてそのまま「ま、負けだ!」と、叫んだー。

達平は「ーー全てを話すと約束するか?!」と、真理恵を睨むー

真理恵は「もちろん…!もちろん!」とだけ言うと、
達平はそのまま真理恵の腕を離して、
チャイナドレスの女の皮を脱ぐとー、
真理恵のほうを見つめたー。

「ーーーまずは、真理恵を解放しろー」

達平が真理恵に向かって言い放つとー、
真理恵はクスクスと笑いだしたー。

「ーまずはその前にー…こっちで話をー」
真理恵はそう言いながら立ち上がると、
第10の部屋の奥ー、
モニターが並ぶコントロールルームのようなところに
達平を案内したー。

どうやら、謎の男は、ここから達平に電話を掛けていたようだー。

「ーーー達平ー。
 どうして、夜、普通に寝たはずなのに、こんな場所に連れて来られたと思うー?」

真理恵のそんな言葉に、
達平は表情を歪めるー

「ーそうか…お前が真理恵の身体を乗っ取って、俺の部屋に入ったんだなー…?
 真理恵は俺の部屋の合鍵を持ってるー。」

達平がそう言い放つと、
「ーーー…それで、俺をその注射器で皮にして運び出したー…そうだろ?」と、言葉を付け加えるー。

合鍵を持つ真理恵を支配し、真理恵の合鍵と身体で、夜間に
達平の家にこっそりと入り、そして、達平に”人を皮にする注射器”を使い、
達平を皮にして持ち出したー。

そして、この施設に運びこみ、達平を人間の姿に戻したー。

そこまで言うと、真理恵は笑いながら「すごい推理力」と、言葉を口にするー

「ーでも…大事なところが間違ってる」
真理恵はそこまで言うとー、
「ーーーわたしが、達平の部屋に入って、達平を皮にして持ち出したー」と、
言葉を口にしたー

「ーー…な、何を言ってるー…?
 真理恵のフリをするのもいい加減にーーー」

達平がそう叫ぼうとすると、
真理恵は小さな装置を手に、「ー男っぽい声はこうして出していた」と、
電話の向こうから聞こえて来た男の加工音声のような声で喋ったー。

「ーー!!!」
達平が表情を歪めるー。

「ーーふふふふ…わたしは正気ー
 さっきは、”男に乗っ取られたわたし”のフリをして勝負を挑んだけどー
 最初から最後まで、わたしは正気ー」

真理恵の言葉に、達平は困惑の表情を浮かべるー。

さっきー…
真理恵に”男同士で戦おう”と提案したときに
真理恵は”それはできない相談”だと言ったー。

真理恵が誰かに着られているのではなく、正気なら、確かにそれはできない相談だー。

「ーーー……ほ、ホントに真理恵なのか?」
達平が言うと、真理恵は「後頭部、見る?チャックないから」と、笑いながら
自分の頭を指差すー。

「ーーわたしの家はお金持ちで、わたしはお金持ちのお嬢様だってことは
 知ってるよねー?
 この施設も、途中で会った人たちも、わたしのお父さんのお金で
 用意したのー。
 施設は古い研究施設を買い取ってー、途中の部屋にいたチェーンソーの男とか、
 メイド好きの男は金で雇ってー ね」

真理恵はそこまで言うと、
呆然とする達平に向かって行ったー。

「ーわたし、小さい頃から逃げ惑うアリを見るのが好きだったのー」

その言葉に、達平は恐怖心を覚えるー。

「アリの巣に、水を流したりー、
 アリの触覚を1本だけ抜いたりー。

 知ってる?
 アリの触覚抜くとね、アリはその場でくるくる回転したりして
 おかしな動きを見せるのー」

真理恵は、笑みを浮かべたー。

「ー今まで、3人の彼氏と別れたって前に言ったよねー?
 あれ、わたしが振られたんじゃないのー。

 わたしー」

真理恵はそこまで言うと、クスクスと笑いながら言葉を続けるー

「ーわたし、相手のことが好きになればなるほどー
 相手を壊したくなっちゃうのー…
 相手が戸惑いながら、逃げて、逃げて、逃げてー
 でも生きようと頑張る姿を見てるとー

 えへ… えへへへへ…
 えへへへへへへへへへへ…♡」

真理恵は”イカレて”いたー
普通じゃないー。

普段はとても穏やかで優しい雰囲気なのにー
それは、偽りの仮面ーー

「ーーーう、嘘だ!お前…!早く真理恵を解放しろ!」
達平は、”謎の男”が、真理恵を支配していると信じてー
いいや、そう信じたくて、そう叫ぶー。

けれどー

「ーーだから…」
真理恵は声を変える装置を手に、
「ーーお前に話しかけていた”俺”は架空の人物さー」と、笑みを浮かべながら
男の加工音声で答えたー

真理恵が黒幕ー

だとすればつじつまは合うかもしれないー。
夜中に達平の部屋に侵入することもできるしー、
達平を皮にすれば連れ去ることもできるしー、
お金持ちのお嬢様である以上、こういう設備も用意はできるー。

それにー、
今までの彼氏たちはーーー

「ーーー……ち、ちょっと待てー…
 今までの三人の彼氏は…元カレたちはどうしたんだー!?」
達平がそう言うと、
真理恵はニヤリと笑いながらー

「ー小さい頃、アリをいじめたときー、
 最後にはどうしてたと思うー?」

真理恵はそう言うと、背後に用意されていたケースから
アリを一匹掴むと、触覚を1本、むしって、それを床においたー。

アリがおかしな動きをしているー。

「ーーえへへ…♡」
真理恵は嬉しそうにそれを見つめながらー
最後にー
足でアリを踏みつぶしたー

「ー”玩具”は最後にお片付けするのー」
真理恵のそんな言葉を聞くと同時に
達平は恐ろしい殺意を感じて、咄嗟に逃げ出そうとしたー。

しかしー

「ふふふー”人を殺したり”なんかしないよー」
真理恵のそんな言葉と同時に首筋に注射器が突き立てられるー

「がっ… ぁ…」
達平は自分の身体が”皮”になっていくのを感じながら
真理恵のほうを振り返るとー、
真理恵はクスクスと笑ったー

「ーまた、新しい彼氏を作らなきゃ」
そう、囁きながらー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー!!!!」
達平が、目を覚ましたー。

「ーーあ…… え???」
そこは、自分の家ー。

そういえば、何だか悪夢を見ていた気がするー。

「ーーーーーー…」
達平は、頭を押さえながら
「そうだー…」と、時計を見つめて
「このままじゃ寝坊するー」と、
大学に向かって走り始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーおはよ~!」
真理恵が達平に声を掛けるー

「え?あ、おはようー」
達平はそれだけ言うと、他人行儀でそのまま立ち去っていくー

真理恵は、そんな達平の後ろ姿を見つめながら笑うー。

”使い終わった玩具はちゃんと片付けなさいー”

小さい頃、親からそう教わったー。

だから、いつもそうしているー。

使い終わった”アリ”という名のおもちゃは、
踏みつぶして始末するー。

けど、”人間”という名のおもちゃは、
始末すれば犯罪になってしまうことぐらい、真理恵も理解しているー。

だからー
遊び終えたら”皮”にして、それを着て、
”自分に対する記憶”や”思い出”を全て消してお片付けしているー。

今の達平は、もう真理恵との思い出を覚えていないー。
”同じ大学に通う子”としか、認識していないー。

「ーーーーー」
達平の後ろ姿を見ながら、真理恵は少しだけ笑うとー、
「また、いたぶる玩具を探さなくちゃー」と、静かに笑みを浮かべたー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最終回でした~!★

私の皮モノの中では
一応、主人公も解放されてるので、
比較的穏やかなエンドかもしれないですネ~

皮モノは、私の中では
どうしても、ダークな結末にたどり着いてしまうことが
多いので、
今回のカワノゲームも、決してハッピーエンドとは言えませんが
まだマシなエンドだったかも…しれません★!

彼女はこれからもまた、誰かを遊び道具にして、
同じようにカワノゲームを挑んで楽しむ日々を送りそうデス…!

ここまでお読み下さりありがとうございました~!

次回、解体新書様で皆様とお会いする頃には、
少し涼しさを感じる気候になっていることを祈りつつ、
残りの夏を過ごします~笑

皆様も熱中症に気を付けて下さいネ!