この中にひとり、元男がいます②~自白~(完)
 作:無名


”60分以内に、4人の中に潜む元男を見つけ出すこと”

それが、謎の男が提案したデスゲームのルール。

4人の、運命はー?
そして、女体化男子は、誰ー?

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残り時間の表示が着々と”0”に近づいていくー。

先程、タイマーは”15分”を切ったー。
謎の男・鈴木に仕掛けられたデスゲーム。

”この中にひとり、元男がいます”

そんなことを突然言われても、戸惑ってしまうー。
困惑してしまうー
冷や汗が、止まらないー。

気の強そうな友美恵も、
さすがに焦って来たのか、先ほどから口数が少なくなっているー

モデル体型の麗子も、沈黙したままー

大人しい性格の眼鏡女子・梓は、自分の眼鏡の掃除を始めて落ち着かない様子ー

お母さんオーラの強い笹香もは、他の3人を見つめながら
”どうしよう”と言う感じだー。

そしてー

”このまま黙っていたら…どうなるんだろう…”

”女体化して女子大に通っている”
そんな彼女は、困惑していたー。

女子大に入学したのは、決して下心からではないー。
けれどー、
他のみんなからすれば、そう思うだろうし、
確実に嫌われるー

だから、言い出すことが出来なかったー。

正直なところーー
鈴木という謎の男が仕掛けて来た”ゲーム”に勝つためにはー
”女体化した過去を持つ本人”が自白するしかないと、
彼女自身は思っていたー

他の3人が”あんただったのね!”なんてことは、ありえないー
黙っていれば、絶対に分からないからだー。

しかしー
先程、鈴木は言ったー。

”君たちの答えは”4人の中にそんな子はいない”という
 答えのようだがー
 ザンネンながら、君たちの中にひとり、
 元男がいるー。

 残り30分ー
 見つけることが出来なければ、君たちは”罰ゲーム”だー。

 ここから一生出ることは出来ないー。
 嘘ではない、私は本気だー。
 
 ゲームは死ぬ気で挑めー
 敗者に待つのは、罰のみー”

とー。

鈴木という男は、どういうわけか”女体化”の過去を知っているー。

そしてー
もしもこのまま隠し通せばー
”罰ゲーム”が待っているー

謎の男・鈴木の仕掛けて来る罰ゲームとは何かー。

「----------」
大したことがないものなら、別にそれでもいいー

でもー
もしも本当にここから”生きて返す気が”ないとすればーー

(……)

自分が、”女体化薬で女体化した元・男子”であることを言うかー
それとも、隠し通して罰ゲームを受けるかー

どちらにしても、彼女にとっては、破滅の道だったー。

そんな風に考えていると、豪邸の一室にセットされた
タイマーの表示が残り5分を切ったー。

「---」
「---」
「---」
「---」
4人とも、沈黙しているー

他の3人を見て、彼女は思うー

”みんな、友達を信じてるってことよね…”
とー。

残り5分でゲームオーバー…
そんな極限状態でも、誰一人として
”誰なの!?”と、周囲に問い詰めるような人間はいなかったー。

きっと、みんなー
”友達”を信じているからー
問い詰めないのだろうー

(わたし…どうしたら…)
落ち着かない様子でため息をついた彼女は
今一度、タイマーを見つめるー

残り、3分ー。

気の強い友美恵が立ち上がると、
インターホンに向かって叫んだー。

「この中に元男なんていない!!!
 いい加減にわたしたちをここから出して!」
とー。

”いる”
鈴木は断言したー。

「---残念ながら、いるんだよ」
4人の女子大生を幽閉した部屋のカメラを見つめながら、
鈴木は笑うー

”人の個人情報”を徹底的に調べ上げるのが
趣味の一つでもある鈴木はー

”女体化薬”を購入して、女体化しー
女子大生として、女子の中に溶け込んでいる人間の
正体を知っているー

そう、”いる”のだー。
他の3人からしてみれば受け入れがたい現実だろうー。

「ーーーさぁ」
女子大生たちがいる部屋に通じるマイクの電源を落とすと、
鈴木は笑みを浮かべたー

「--君が自ら”わたしがそうなの”と言うしか
 君たちが、このゲームに勝つ方法はないぞー」

鈴木は、4人がそれぞれ映し出されたモニターのうち、
一つを見つめながら笑みを浮かべたー

鈴木が凝視するモニターには、
眼鏡をかけた大人しそうな女子大生のーー
梓が映し出されていたー

「--君は、”元男”だろうー?
 女体化薬を飲んで、女になったー。」

女体化した元・男は、
内藤 梓ー

大人しい性格で、眼鏡をかけた女子生徒ー

高校時代に女体化薬を手に入れて
女体化しー
以降、名前と経歴を隠して
女子高生・女子大生として過ごしてきたー

高校時代までは、停学になるほどのワルでー
女体化してからは”真逆の自分”に快感を感じているのか
大人しくて優しい眼鏡女子を演じているー。

「---」
鈴木は笑みを浮かべると、立ち上がるー。

「---------!!!!」
友美恵たち4人がいる部屋に、鈴木が姿を現したー

「さァ、残り1分30秒だー。
 4人のうちの、誰が女体化した元男子なのか、
 答えは出たか?」

鈴木の言葉に、
困惑する4人ー

「-ククク、まぁそうだろうな。
 そいつは、完璧に女体化しているー
 本人から、言い出さない限り、無理だろうなー」

「--さァ どうするー」

鈴木は狂気的な笑みを浮かべたー

”中沢 昭”---

”鈴木”が、この4人を選んだのには、
もう一つ、理由があったー。

このようなデスゲームを仕掛けたのには、
もう一つ、理由があったーー

それはーーー
高校時代のー
女体化する前の梓ー
まだー”中沢 昭”という名前だったころの梓にー

鈴木は、街中で絡まれて殴られたことがあったのだー。

ゲーセンでたむろしていた当時の梓にー
まだ男だったころの梓に、理不尽に絡まれて殴られたのだー

だからこそー
鈴木は、梓と、仲良しの3人を拉致したー。

そしてーー
梓が”わたしは本当は男なの!”と親友3人の前で
自白せざるを得ない状況に追い込んでいるー

梓が親友3人に、自分は”元男”であることを自白すればー
3人の親友を恐らく失うだろうー

自白しなければ、その時は、この4人を処分するまでだー。

「--ククク あと30秒だー」
鈴木が叫ぶー

友美恵が拳を握りしめるー

「-おっと、やめとけ」
鈴木が、友美恵の方を見つめるー

「実力行使は、無駄だ」
鈴木が部屋の隅を指さすと、
そこには”自動で発射される機銃”のようなものが
セットされていたー。

「-金があれば、なんでもできるんだよ」
鈴木が笑みを浮かべるー

「-私に一歩でも、暴力を振るおうとすれば
 君たちに待つのは”ルール違反”による
 ゲームオーバーだけだ!

 さぁ、あと15秒ーーー!

 女体化した元男子を当ててみせろ!

 それとも、自分から、”わたしは男なの!”
 って、言うかァ???」

鈴木が大声で叫ぶー

”わたし…わたしーー”
”みんなを、騙すつもりなんてー”
”このまま黙っていたらどうなるんだろうー”
”信じてくれたみんなを裏切ることになるなんてー”

様々な考えが頭の中を巡るー

そしてーーー

残り5秒のタイミングでーー

ついに、梓は、観念したー
このまま、黙っていたら、鈴木という男に殺される可能性があるー。

命には、代えられないー。

梓が叫ぶー

「--みんなごめん!!!女体化薬を飲んで、女になったのは、わたしなの!!」

「--ごめん!わたし…男なの!」

「--わたし…女体化薬を飲んでー」

「…みんなを騙すつもりはなかったの!信じて!」

ーーーーー

ーーーーーーーーー

「--え」

「へ?」

「あ?」

「!?」

4人が表情を歪めるー

「---……なに…???」
”ゲーム”を仕掛けた鈴木も唖然としているー。

「---え???ど、、どういう…?」
友美恵が言うと、
”元男”である梓も「え…」と震えているー。

残り5秒のタイミングでー
自分が元男であると自白したのは、
梓だけではなくー

友美恵、麗子、笹香ー
4人全員が、自白したのだー

「---え?あんたも?」
「--え?みんなも?」
「--嘘?マジ?」
「-俺たち、全員女体化男子??」

4人が戸惑うー

「-わ、、わたしは大学に入る前に女体化薬で」
友美恵が言うー。

「--え…わたしは高校時代、JKになりたいって思って…」
眼鏡女子の梓が言うー。

「うそぉ…!?わたしは中学の時、海外旅行で買った薬を飲んだら
 こうなっちゃって」
モデル体型の麗子が言うー。

「--わ、、わたしはネットで女体化薬をー」
お母さんオーラの強い笹香が言うー。

「なんだよ!俺たち全員元男だったのか!」
大人しい雰囲気を捨てて、眼鏡を置くとゲラゲラ笑いだす梓ー

「--マジで~~!すっご~~!」
気の強い友美恵も笑いながら言うー

「--え?お前の元々の名前は?」
「梓って、高校時代そんなだったのかよ~!」

「ねぇねぇ、せっかく女体化してるんだから、いつもみたいに女子モードで話そうよ」
「--おう!そうだな、、じゃなくて、、そうね!うん!そうしましょう!」

4人の女子が盛り上がっているー。

4人はー
全員、元男の女体化した男子だったのだー。
偶然中の偶然ー

デスゲームを仕組んだ鈴木は唖然とするー。

「--馬鹿な…」
鈴木が知っていたのは”梓が元男”ということだけだったー

しかしー

「----でさ、どうすんの?」
大人しかった梓が笑いながら言うー。

「-このゲームは、わたしたちの勝ちよね~?」
お母さんオーラの強い笹香が言うー。

「--あ……ぅ」
鈴木はその場で凍り付いて、4人の女子を見つめたー

「ーーーわたしたち、帰ってもいいのよね?」
モデル体型の麗子が言うと、
鈴木は、放心状態で頷いたー。

”じょ、、女体化した男子が、4人も、いただとー?”
鈴木は、そんな偶然あるものか、と思いながらも、
”似た者同士、無意識のうちに引き寄せあったってことか?”と、
頭の中で、拉致した4人が全員、元男子だったことを何度も何度も考えては、
頭を抱えたー。

麗子、梓、笹香が、鈴木の豪邸から出ていくー。

最後に残った気の強い友美恵は、鈴木の方に近づくと、
鈴木の胸倉をつかんだー。

「--元々男だったとしても、
 わたしたちは今、真剣に女子大生として生きてるんだから、
 二度とそれを弄ぶようなこと、すんじゃねぇぞ」

友美恵に低い声で睨まれて、
鈴木は「はひっ、、」と声を出して、
そのまま尻餅をついたー

「友美恵~!早く帰ろうよ~!」
手を振る梓ー。

梓に向かって「うん!今行く~!」と手を振る友美恵ー。

一人残された鈴木は、表情を歪めるー。

「女体化って、そんなに簡単にできるものなのかー?」
鈴木は思うー。

事前に、”梓”が、女体化した元男子であることは知っていたー。

だが、友美恵、麗子、笹香までそうだとは全く知らなかったし、
最後に、全員が自白するまで、全く気づかなかったー。

つまりー
言われなければ、全く分からないー

「クク…はははははははは!」
鈴木は、目覚めたー。

「-ーー女体化…すばらしい!」
鈴木はそう叫ぶと、一人、ネットで女体化薬を探し始めたー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真相はなんと全員が… な、お話でした~!★

実は①の時点から
”元男子の子”の心理描写が何度かありましたが
1回1回”別の子”の心理描写になっていて、
よく見てみると言っていることに食い違いが生じています~!
(もしかしたらこの時点で、”これは一人じゃなさそう”と
 気づいた方もいるかもしれませんネ~笑)

見破った皆様はおめでとうございます~(?)★!

いつも、創作をするときには、ついつい結末にも
拘ってしまう私なのでした!
(たまにあえてあっさり終わらせてみたり、
 あえて何もひねりナシにしてみたりも…笑)

ゾクゾクな部分も、結末の部分も、
色々楽しんでいただけると嬉しいデス~!

今回もありがとうございました~★!