憑依されたけど大丈夫③~闇~(完) 作:無名 「大丈夫」 彼女は、憑依されていないー。 「大丈夫」 きっと、だいじょうぶー。 ------------------------- 放課後ー 雅史は街を歩くー 「---」 しきりに目をこする雅史ー。 「----はぁぁぁ…」 ため息をつくー。 なんだか、視力まで落ちてきた気がするー、と 雅史は苦笑いするー。 精神的に病むと、視力が落ちることもあるのだと言うー。 自分はそこまで病んでしまったのだろうかー。 そんな風に思いながら、 雅史は家を目指すー。 「---」 スマホを見つめる雅史ー。 ”---出てって!!!” ”出てって!!!!!!!!!!!” 「--!?」 ”また”だー。 やはり、静穂の声が頭の中に響くー 助けを求める、静穂の声がー 憑依されて、助けを求める、静穂の声がー。 「---…静穂」 雅史は不安になるー 「--!!!」 突然、周囲が暗闇に覆われるー 雅史が驚いて周囲を見渡すと、 そこには、笑いながら歩いてくる静穂の姿ー 「--くくくくく♡」 静穂が凶悪な笑みを浮かべながら、 雅史のほうを見つめるー。 「--身体は俺のもの」 静穂が、自分の胸を触りながら笑うー 「--や、、やめろ!」 雅史は叫ぶー そして、周囲を見渡すー。 商店街を歩いていたはずなのに、 真っ暗な何もない空間に、いつの間にか雅史はいたー 「--ふふふふふふふ…あははははははははっ!」 静穂がいつもとはまるで違う狂った笑みを浮かべるー 「--俺はさ…」 静穂がニヤニヤしながら笑うー 「--あの”トンネル”で死んだんだよ」 静穂の声なのにー 喋っているのは、静穂じゃないー 「--なんだと?」 雅史が、何もない黒い空間で 乗っ取られた静穂のほうを見つめるー。 「---知らないか?何十年も前、 あのトンネルで、事故があったことを」 静穂がニヤリと笑いながら、 雅史のほうを見つめるー 「--事故?」 雅史が聞き返すと、静穂は答えたー 「そうさ。事故さー。 毎日毎日過酷な仕事で酷使されてー 疲れ果てた哀れな男がさー、 居眠りしてしまって、トンネルの壁に車ごと激突ー 車はぺしゃんこになって、 運転手の男はー 何も報われないままー この世から去ってしまったーーー」 静穂はそれだけ言うと、目を赤く光らせたー 「---で も ”俺”は消えなかったー 俺は、あのトンネルで、 ずーっと、ずっとずっと、自分の力が強まるのを待ってたんだー ”もっと生きてたかった” ”もっと生きてたかったー” ”もっと生きてたかったーーー”””」 静穂の声帯が壊れてしまいそうなほどに、 静穂が大声で怒鳴るー 「--と、、トンネルの黒い煙はお前か!?!?」 雅史が叫ぶと、 静穂は笑みを浮かべたー 「そうーーーー 俺は生きたいんだよ!! か・ら・だが、欲しんだよ!!! へへへへ ”もう少し”だー もう少しで、、完全に… 完全に”この身体”は俺のものだー!」 静穂が両手を広げて大声で笑うー 「--お前!!静穂を返せ!」 雅史が怒りの形相で叫ぶ。 「--しずほ?」 静穂が笑うー そして、少し考えたあとに 意味を理解して頷くー 「そうかそうか。 はははは、そうかそうかそうか。 ---かわいそうにー」 静穂はそれだけ言うと、 雅史の方に近づいてきたー ”あと少し”だなー とー。 「--なに!?」 雅史が叫ぶと、 その直後ーー 雅史は”商店街”に立っていたー 「-静穂!?」 静穂はもう、いないー いや、本物の静穂は、先に下校していったはずー 今のはー ”幻覚”? 雅史はそう思いながら、静穂にLINEを送るー すぐに静穂から返事が来たー ”大丈夫だよ” とー。 「--静穂…」 雅史は確信するー。 静穂はやはり、憑依されているー。 あの黒い煙が、静穂に成り済ましているのかー それとも、静穂は、”無自覚のまま”乗っ取られているのかー どちらにせよー 静穂を助けなくてはいけないー 空が、赤色に染まっていくー 雅史は、そんな空を見上げてー 「静穂…俺は必ず、静穂を助けるからー」と 決意の眼差しで呟いたー。 ・・・・・・・・・・・・・・・ だがー その夜ー 雅史は震えていたー 急に激しい悪寒を感じたのだー 「くそっ…こんな時に風邪を引くなんて」 雅史は震えるー 「---だいじょうぶ?」 母親が雅史を心配するー 「--大丈夫だよ」 雅史はそう呟きながらも 激しい悪寒に苦しんでいたー 「---そう」 母親がにやりと笑うー。 不気味な笑みを浮かべて、 目を赤く光らせる母親ー 雅史は、それに気づかないー。 「---そうね…大丈夫よ」 母親が呟くー 「--大丈夫… あなたはもうーー ”眠りなさい”」 母親が、静かにそう呟いたー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 翌日ー 雅史が、学校に向かうー 静穂を助けなくちゃー と、そう思いながらー 街中に、人がいないー 雅史はそれにも気づかずー 学校に向かうー 空が黒い煙に包まれているー ”そんな… やめてよ!!!ねぇ!!” 静穂の声が聞こえるー 「---」 雅史は、”今、助けるから”と学校に飛び込むー 学校に入ると 「だいじょうぶだよ」 「だいじょうぶだよ」 「だいじょうぶだよ」 と、周囲の同級生や先生、後輩たちが 雅史のほうを見て、みんなそう呟くー 「--何が大丈夫なんだ!」 雅史は叫ぶー 寒い 寒い これは、 なんだ??? 雅史が教室にたどり着くと、 そこには、静穂がいたー 「--静穂から出ていけ!」 雅史が叫ぶー 「----」 静穂が雅史のほうを見たー 静穂が、泣いているー 「もう、、やめて!!!」 静穂が叫ぶー 「--そんな演技に騙されるか!!」 雅史が大声で叫ぶー 教室はー いつの間にかー 消えーー 不気味な、精神世界のような空間で、 静穂が雅史のほうを見ているー 「--お前を、、静穂から、追い出してやる!」 雅史が静穂を押し倒すー そしてー 静穂の上に乗り、 静穂から出ていけ!!!!と叫ぶー 「--やめて…やめてってば!」 静穂が泣き叫ぶー 「---やめてってば!」 静穂が泣き叫んだー。 その場所はーー ”心霊現象が起きると言われているトンネル” 「---ふ~~~~」 静穂の上に乗っている雅史が目を赤く光らせたー 「---もうすぐ”完全に支配”できる」 雅史が笑うー 悲鳴を上げる静穂ー 「---ククククク…お前の彼氏の雅史クンはな、 今、自分の”精神世界の中”をさまよってるんだー」 雅史が笑みを浮かべたー 今までの光景はー ”憑依された雅史”が見ていた夢ー 雅史の精神世界での出来事ー 現実は、違うー 雅史が、トンネルに入ったあとー ”重苦しい空気”を感じた時ー 雅史は、憑依されたー そこで、雅史の意識は、既に途切れー 雅史は精神世界で”自分の記憶を元に再現された映像”を 見続けているー トンネルの中で静穂が憑依された光景もー 静穂とファミレスに行ったのもー そのあとの数日間もー 全て、乗っ取られた雅史が、見ている映像ー。 時々雅史が聞いていた ”たすけて”という声は、 現実世界で、静穂が叫んでいた声ー ”雅史を助けて!!”と 叫ぶ、静穂の声の一部ー 「--ひひひひ…こいつの意識は、、間もなく消えて 身体は完全に俺のモノだ」 雅史が笑うー 静穂が「やめてよ!!!」と泣き叫ぶー。 雅史が静穂の首を絞めるー 「---静穂から、出ていけ!!!」 雅史の意識は、まだ”夢”を見ているー 静穂を助けようとー 静穂の首を絞めて、叫んでいるー。 「---静穂から、、出ていけ!!!!!」 乗っ取られた雅史の意識はー ”自分”が乗っ取られていることに気づいていないー 静穂が乗っ取られていると思い込んでいるー 静穂が苦しそうにもがくー 「雅史…目を、、、目を、、覚まして…」 冷たいトンネルの中ー 乗っ取られた雅史が、 静穂の首を絞めているー 静穂は、涙を流しながら、雅史のほうを見るー ”だいじょうぶ” ”だいじょうぶ” ”だいじょうぶ” 雅史はまだ夢を見ているー 周囲がみんな、そう言うー だいじょうぶ だいじょうぶ だいじょうぶ とー そっか、だいじょうぶなんだー。 雅史は、静穂から手を放すー 安心して微笑む雅史ー 気づけば雅史は、いつも通りの教室にいたー。 「--だいじょうぶだよ、雅史」 雅史の精神世界ー 乗っ取られて、心の奥底に追いやられた雅史ー。 雅史以外の存在は 雅史の記憶と、 そして悪霊が作り出した”偽りの世界” 「--だいじょうぶだよ、雅史」 静穂は笑うー。 「--あなたは、もう、何にも考えなくてー」 静穂は満面の笑みで雅史を抱きしめるー 「----あなたはーーー 憑依されたけど、大丈夫ー もうー 大丈夫ー 身体は代わりに、使ってあげるからー」 雅史は、もう、何も考えられなかったー ”そっかー” そんな風に思いながらー 雅史の意識は、永遠の眠りについたー 「----くくく」 トンネル内部ー 雅史が静穂から離れて 笑みを浮かべるー 首を絞められていた静穂が、雅史のほうを見るー 雅史は笑ったー 「--支配が、完全に、終わったョ」 とー。 「--そ、、そんな…」 絶望の表情を浮かべる静穂ー ”精神世界”で必死に戦っていた雅史本人の意識が たった今、完全に乗っ取られてしまったー。 精神世界の中で、静穂が憑依された!と必死に駆け回っていた 雅史は、皮肉にも、自分自身が憑依されていたのだ 「ーーー雅史を返して!」 静穂が叫ぶー。 「--ははは、もう無理だよ。 まぁ、お前の声もこいつに、ちょっとは響いていたみたいだけどな」 乗っ取られた雅史が笑うー 精神世界に閉じ込められた雅史に、 静穂の声も何度か届いていたー けれどー 雅史本人はその意味に気づけなかったー そしてー ついに、自分が乗っ取られていくことに気づけないままー 完全に乗っ取られてしまったー 「--ははははは、俺はこれからこの身体で生きていくー やっと、やっと、身体を手に入れた」 雅史が自分の身体を見つめながら笑うー 静穂は「雅史を返して…」と悲しそうに呟くー 「--ーーーいやだね。せっかく乗っ取った身体だー これから俺はまた、人間として生きていくんだ」 凶悪な笑みを浮かべる雅史ー 静穂は、雅史にすがりつこうとするも、 雅史は静穂を振り払ったー 「--お前のことは、助けてやるよー。 どうせ、ここでの出来事を誰かに話しても 信じてもらえやしないー」 雅史はそれだけ言うと、 トンネルの外に一人、歩いていく。 静穂が「待ってよ!」と叫ぶー。 「正気に戻って!!」と 雅史に泣き叫ぶー。 だがー その声は雅史には届かず、 乗っ取られた雅史は、そのまま トンネルの外へと姿を消したー。 その後ー 雅史は、数日後に”失踪”したー。 雅史の両親が必死に雅史を探したもののー 雅史が見つかることはなかったー あの悪霊が、雅史の身体で新しい人生を 送り始めたのだろうー。 静穂は、教室の、”雅史の机”を見つめたー 雅史はもう、そこにはいないー 「---雅史…」 けれど、静穂にはもう、どうすることもできなかったー。 ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「----…あれ」 雅史の意識はー 暗闇に幽閉されていたー もう、何もないー 空が真っ黒に染まりー 周囲も真っ黒に染まりー 目も見えないー 途中で、最近、目の見え方が悪いと感じたのはー 視覚も、あらゆる感覚も、乗っ取りが進んでいたからー 「-----」 何も考えられなくなった雅史は、 精神世界の中で目を閉じたー ”だいじょうぶ” 呪いのように、その言葉が聞こえるー 「----…はは」 雅史は安心したかのように微笑むと、 そのまま目を閉じたー 雅史の自我が、完全に乗っ取られてー ”消滅”した瞬間だったー。 おわり ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ”憑依されたけど大丈夫”の最終回でした~! 実は憑依されていたのは……!? と、いう展開のお話でした! 私の作品は、Hなことを欲望のままに…!な、作品も もちろんありますが、 それ以外の部分にスポットを当てた作品もそこそこあって、 今回のお話も、そんな作品の一つでした…☆ ひたすら身体を楽しめ!という皆様ももちろんいるとは思いますが たくさんの作品を書いているので、 これからも色々な方面の憑依や入れ替わり(もちろん欲望まみれの作品も…!) 書いていければ、と思います~!☆ ちなみに、 ②の時のコメントで消した内容は ”前に書いた「心の密室」もそうでしたが、 こういう不気味な世界観の作品は時々 書きたくなります~!” という内容でした~☆ これを言うと、心の密室を読んだことがある皆様は 悟ってしまう気がして、消し消し…笑 次回こそ、 ”最近は涼しくなりましたネ~!”と言えることを祈りつつ、 今月もありがとうございました~! |