後輩が皮にされた③~深淵~(完) 作:無名 後輩が皮にされた…! そんな場面を目撃しながらも、 何も行動を起こせない彼ー。 そんな、彼の決断はー!? --------------------- 文化祭の当日が近づいてくるー 姫奈は”ふつう”だー。 修平に対してもそうー 部長の莉菜子に対してもそうー。 いつもの姫奈にしか見えないー けれどー 「----」 修平は、この数日間、姫奈のことで頭がいっぱいになっていたー。 姫奈のことが好き、とかそういうことではない。 先輩と後輩の間柄としてー 同じ学校に通う仲間としてー もし、姫奈が”誰かに乗っ取られている”ならー 姫奈を助けてあげたかったー。 「--顔色、悪いよ?」 部長の莉菜子が、心配そうに修平の方に近づいてくるー。 「---あ、、いや、ごめん。ちょっと考え事してて」 修平の言葉に、莉菜子は、「ほんとに大丈夫?」と表情を歪めるー ちょうど現在は、 姫奈と、後輩の満田、そして残り2名の部員のシーンが行われているー。 「---……何があったの?」 莉菜子はため息をつきながら、修平の方を見るー。 「良ければ、聞かせて?」 莉菜子の言葉に、修平は莉菜子に相談してみようかとも思うー 莉菜子は口が固いし、 信頼できるタイプの女子だー。 そのことは、中学時代から一緒だったため、よく知っているー。 「---練習終わったら、ちょっと話、聞いてもらえるかな?」 修平が迷った挙句、そう呟くと、 莉菜子は「これで部長だからね。部員の悩みは聞かないとね!」と 優しく笑みを浮かべたー。 今、この場で相談することはできないー 当事者である姫奈もここにいるー 「---…」 姫奈がリハーサルを終えると、 「先輩!」と、微笑みながら修平に近づいてくるー。 「----部長と、何を話していたんですか~?」 姫奈がニコニコしながら言うー。 「--え、あ、いや、別にー」 修平が言うと、 姫奈は頬を膨らませながら「隠し事!ダメですよ!」と、 不貞腐れた様子で言うー。 「--た、、単に文化祭の話を」 修平はそれだけ言うと、莉菜子の方を見て 助けを求めたー 「--ほんとに文化祭の話してただけよ」 莉菜子が微笑みながら、修平を助けるー 「--それならいいですけど~」 姫奈はそれだけ言うと、立ち去って行ったー 「---…ふぅ」 修平は戸惑った様子でため息をついたー。 あの時ーーー 姫奈は確実に”後頭部から引き裂かれるようにして、真っ二つになったー” そして、まるで脱ぎ捨てられた着ぐるみショーの着ぐるみのような状態になってー ”男”が、姫奈を着ぐるみのように”着た” そして、男は姫奈になったのだー そんなこと、現実では絶対にありえないー あるはずがないー。 何度も何度も、修平は”あの時の光景が見間違いであった理由”を 頭の中で考えるー とにかく、何か、何か答えがあるはずだー、と。 けれど、それは見つからないー もし、姫奈を”着た”男が、姫奈の記憶を受け継いでいるのだとすればー 「----」 修平は、満田と話している姫奈を見つめるー ”中身が他人でも” 姫奈として振舞うことは、可能なのかもしれないー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 部活の練習が終わりー 部室には、部長の莉菜子と二人だけー 修平は”絶対に他の人には言わないでほしい”と 前置きしたうえで、 これまでのことを全て話したー 下校中に、姫奈が男に皮にされて、着られて、乗っ取られたように見えたことー 姫奈が、”脅すようなこと”を遠回しに言ってきているような気がすることー 全ての”不安”を、莉菜子に打ち明けたー 現実離れした突拍子もない話でありながら、 莉菜子は、笑うことなく最後まで聞いてくれたー。 そして、話を聞き終えた莉菜子は、難しい表情を浮かべたー 「---じゃあ… 沼澤さんの中には、知らない男の人がいて、 今の沼澤さんは、その男の人にーー 操られていてーーー 見た目は沼澤さんだけど、沼澤さんじゃないってこと?」 莉菜子が確認するように言うー。 修平は、「----信じられないと思うけど」 と、頷くー。 「もちろん、僕が見間違えただけかもしれないけど… どうしてもーー」 修平の言葉に、莉菜子は 「最近、妙に沼澤さん、トイレに行くのよね…」と、呟くー 確かに、部活の練習中に 部室を離れる回数が明らかに増えた気がするー 「---……」 莉菜子はしばらく沈黙すると、 修平の方を見たー 「--信じられないけど…でも、根尾くんが言うなら 本当なのかもね…」 莉菜子はそれだけ言うと 「わかった。明日ー、沼澤さんが部活中に部室から 出ていくときー 何してるか後をつけてみる」 と、答えたー 「えぇっ!?」 修平は驚くー そこまでしてくれるとは思わなかったー。 「---ほら、根尾くんじゃ、トイレの中まで 確認することはできないでしょ? 女子じゃないんだし」 莉菜子の言葉に、 修平は「ま、、まぁ…」と呟くー 「--そんな話聞いちゃうと、わたしも心配だし、 わたしに任せて!」 莉菜子の言葉に、 修平は心強く思いながらも、 少し、不安を感じたー 「-----------------」 部室の入口の扉が少しだけ開いていたー 「ーーーーーー」 ギリッー 部室を覗いていた姫奈が歯ぎしりをするー ピキッ… 姫奈の後頭部に亀裂が入るー 姫奈の目が、ぐるんと、白目になって、 中から男が出て来るー 「--俺の邪魔をするなー」 男が呟くー 姫奈は、修平が見た通りーー 男に乗っ取られていたー 男は、姫奈の記憶を読み取り、 姫奈として振舞いー 女子高生ライフを送っていたー ”ごく普通の女子高生ライフを送りたい” それが、男の目的ー 男は、別に悪さをするつもりはないー ”沼澤 姫奈”として、 ただ、生活を送りたいだけだー 姫奈を狙ったのは”たまたま可愛かったから” それだけー。 「---」 男は、再び姫奈の皮を完全に着込むと、 部室の前から立ち去りながら呟いたー 「--”邪魔”をするならー 消えてもらうしかないですよぉ… ふふふ」 ”女子高生として平穏な生活を送りたいー” それを、邪魔するのであればー ”抹殺”するしかないー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 翌朝ー 修平は、姫奈を呼び出していたー ”表向き”は文化祭の相談ー しかし、”裏”はー。 修平はーーー 思い切って口を開いたーーー ”部長の莉菜子が、姫奈を尾行する”ということを 莉菜子にさせたくなかったー 莉菜子の身に危険が及ぶ可能性があったからだー。 莉菜子に相談したのは、修平自身だが、 まさかそこまで助けてくれるとは思ってなかったし、 あまり、莉菜子に危険が及ぶようなことは させたくないー。 その前に、ケリをつけたかったー。 「---僕、見たんだー」 修平は警戒しながら、姫奈に対して全てを打ち明けたー。 「------」 姫奈の表情から笑顔が消えているー 「----ふふっ」 話を聞き終えた姫奈は笑ったー 「--先輩。よく考えてくださいー ”仮に”先輩が見た光景が現実で、わたしが乗っ取られているとしてもー ”誰か”悲しんでいますか? わたしは、わたしですー。 今のままなら、友達も、先生も、家族もー 誰も、悲しまないー でもーー もしも、もしも、わたしが乗っ取られていてー そのことを周囲が知ってー わたしが、ボロボロにされるようなことになればー 家族も、友達も、先生も悲しんじゃいますよ? 娘が、皮にされて、乗っ取られているーーーー な~んて、知ったら家族は、どう思うと思います?」 姫奈は淡々とそう語ったー。 「----今のままならー ”誰も”悲しまないー 先輩が、全てを飲み込めばー それで、解決するんですー ”本人”以外は、誰も悲しまないー わたしはー ”姫奈”として、ずっと生きていくー 誰も気づかなければ、誰も悲しまないー」 姫奈の悪魔のような笑みにー 修平は声を上げて叫び出しそうになったー 「---な~~~んて、言うと思いましたか?ふふっ 先輩に怖い顔は似合いませんよ~!」 姫奈はクスッと笑いながら手を叩いたー。 「---先輩が見た光景は、夢ですよ夢! 先輩はいつも、頑張ってますし、疲れてたんですよぉ~! わたし、あの日もスーパーでお買い物して 普通に帰りましたし!」 姫奈の言葉に、 修平は戸惑うー 夢ー そんなわけないー でもーーー 「---このままにしてれば、誰も傷つかないのにー それを暴こうとするー それってー 先輩の”自己満足”ですよねー?」 姫奈は耳打ちするかのように、そう呟いたー。 「---って、、もしわたしが乗っ取られてたらいいそうですよねぇ~ふふ」 姫奈は笑いながら、空き教室から立ち去っていくー ”僕はーー 僕はーーーどうすればーー” 姫奈が乗っ取られている可能性は高いー でも、確証はないしー もし、本当にそうだとしても、 ”秘密”を暴こうとすれば、周囲が傷つくかもしれないー 例えば、皮にされた姫奈がもう元に戻らないのならー 秘密を暴くことで、 姫奈の両親は、娘の無残な姿を見ることになるー 仮に今の姫奈が乗っ取られているのだとしてもー 奴は、”姫奈として振舞う”つもりで、 悪さをするつもりはあまりなさそうに思えるー 本当に乗っ取られていたとしてもー 修平の勘違いだとしてもーー 黙っているほうが、利口なのかもしれないー ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 明日は文化祭ー 部活の練習が始まるー 最後のリハーサルが行われている。 部長の莉菜子も、最終調整に忙しいー 後輩の満田と、修平のシーンのリハーサルが 行われている最中ー 「--あ、ちょっと失礼しますね」 姫奈が部室の外に出るー やはり、今日も、トイレなのか、 何なのか、部室から抜け出すことが多いー。 「-----」 莉菜子はそれを確認すると、修平のほうをチラッとみて頷くー ”危険だから” と、止めようとも思ったが 後輩・満田とのリハーサル中であるため、 修平は身動きを取ることができなかったー ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「♪~~~」 姫奈はご機嫌そうにお手洗いに向かっていたー 放課後の演劇部の練習中、 西校舎にあるトイレを使う人間は まずいないー。 「---ふふ、せっかく女の子になったんだから…」 姫奈はトイレに入ると、嬉しそうに胸を揉み始めるー ”普通の女子高生として生活したいー” その一心で、姫奈を乗っ取ったー けれどー ”普通”に生活しながらー こういうこともしたいー。 昼間はさすがに、他の生徒にバレるリスクが高すぎるし、 姫奈の家では、家族の仲がとてもよく、 悪く言えば家族間のプライバシーが守られていないタイプで、 隠れて自分の部屋でヤルのは、なかなか難しいー だからー 放課後の学校でー 姫奈がスカートの中に手を入れて、 気持ちよさそうな笑みを浮かべているー 当然、姫奈を乗っ取った男は ”誰かが”このトイレを使う可能性は 視野に入れているー だから、個室の中でお楽しみをしているしー 喘ぎながらも、物音には注意しているー この付近は、放課後は人通りもないから 誰かくれば分かるのだー 「---へへへへ」 あまりの気持ちよさに姫奈の頭がぱっくり割れてー 中から男が出て来るー 「ふへっ…ふへへへへ♡」 姫奈の顔の部分だけ半分割れた状態ー その時だったー 「---!」 「---!」 個室の扉が、開いたー 鍵までは、かけていなかったー 「---あ、、、」 姫奈の顔半分が割れた状態で、男の顔が少し見える状態ー 慌てて瞬間的に、姫奈を再び着こんだがーーー 見られたかもしれないーー 部長の莉菜子にーー 莉菜子は、気配を殺して、こっそりと尾行 してきたのだったー 姫奈に何が起きているのかを、知るためー。 「-------」 姫奈が、冷や汗を掻きながら驚いているとーーー 「---ふぅん」 と、莉菜子は、姫奈に対して何かを呟いたー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 部室に戻って来る莉菜子と姫奈ー。 「---何ともなかったみたい」 莉菜子が、修平にそう告げるー。 「--そ、そっか、よかった」 修平がそう言うと、 莉菜子は続けたー 「---たぶん、気にしすぎじゃないかな? このまま”普通”にしてればいいと思うー 何かあったら、先生なり警察に言えばいいし、ね? わたしも沼澤さんにおかしなところがあったら 伝えるから、それでいいでしょ?」 莉菜子の言葉に、 修平は少し安心した様子で頷いたー 「--さ、明日は本番!がんばろ!」 莉菜子が修平の肩を叩くと、 修平は”僕の気にしすぎ…なのかな”と、 少しだけ、前向きな気持ちになって、 リハーサルに臨むのだったー 「-----」 姫奈が少しだけ震えていたー。 トイレでの会話を思い出すー。 「”わたしは”3年前からー」 「---え?」 「--”わたしは”3年前からー この女として生きてるのー ふふー ”記憶”も受け継いでー ちゃんとうまくやればー 誰にも気づかれずに 女の子として生きていけるー。 でもねー あんたは、やり方が下手ー。 遠回しに脅したりせず、”ふつうに”してなさいー ”ふつうにー”」 莉菜子の信じられない言葉に、姫奈は震えたー 「---ま、、まさか、、部長も… い、、いえ、、あなたも俺と同じで、女を乗っ取…」 姫奈の言葉に、 莉菜子は壁ドンしたー 「---”ふつうに”してろー あの修平とかいう餓鬼を脅したりするなー ”ふ・つ・う”にしてろ そうすりゃばれないー そうすりゃ女の子として生きられるー お前がへますりゃ、もしかしたら俺にも影響が 出るかもしれないー お前が誰だか知らないが、 ふつうにしてろ。」 莉菜子はそう言い放ったー 「---ひ、、は、、はい…!」 そんな姫奈を見て、莉菜子はほほ笑むー。 「ーーーうん。よし。 じゃあ、沼澤さん、わたしは、何も問題なかった、って 報告するから、 これからは、普通に沼澤さんとして生活するのよ? わかった?」 莉菜子の言葉に、姫奈は「は、、はい!」と、嬉しそうに返事をしたー たとえ中身がかわってもー その”中身”が、以前の”中身”の記憶を全て受け継ぐことができてしまったらー? 周囲の人間はその変化に気づくことはできないー。 もしかしたらーーー 身の回りにも、知らぬ間に”中身”が 変わっている人間が、いるかもしれないー おわり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 最終回でした~! 最終回にはまさかの…★ もしかしたら、この世界では 他にも、皮にされて 何食わぬ顔で生活している子が いるかもしれませんネ~…! 前回、お話を掲載した時期と比べると 大分暑い日も増えましたし、 熱中症や、ゲリラ豪雨に注意しながら 皆様も過ごしてくださいネ! また次の作品もぜひ、楽しんで下さい~! (その頃にはもうすっかり夏になってそうな気がします…★) |