ストーカーはお姉ちゃん③~姉妹の絆~(完)
 作:無名


姉の絵梨香とストーカーが入れ替わってから
3週間ー。

姉の絵梨香は妹の萌美を助け出そうと、
決死の行動に出るのだった…。

姉妹の絆の行方は…!!
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「--わ~!お姉ちゃん可愛い~!」
妹の萌美が笑いながら言う。

姉の可愛らしいミニスカート姿を
見て、”お姉ちゃんは美人だなぁ”と思いながら、
出かける用意を続ける萌美。

今日は日曜日。
2人とも高校は休みで、
今日も揃ってお出かけをすることになっていた。

「--ふふふ、萌美も可愛いよ」
絵梨香が嬉しそうに言うと、
萌美は顔を赤らめた。

「--あ、髪の毛にゴミがついてる!」
そう言いながら絵梨香は萌美の髪に
ついていたゴミを取り除く。

「ありがと!お姉ちゃん!
 あ、わたし、部屋に忘れ物しちゃったから
 とってくるね!」

そう言って、部屋に戻って行く萌美。

そんな萌美の後姿を見ながら
絵梨香は、自分の人差し指をペロリと舐めた。

「---くふふ…萌美の髪の毛の味…」
玄関に一人取り残された絵梨香は
自分の人差し指を何度も何度、御
しゃぶっていた。

「んんんん~~~ は~~~♡」
妹の味を堪能する絵梨香。

やがて、萌美が戻ってくると、
「さ、いこっか!」と行って、
2人は手をつないで、玄関から外へと出た。

大胆に生足を露出した姿で街を歩く絵梨香。
絵梨香はスタイルがとてもよく、
ファッションセンスもあるため、
まさに美人と評するにふさわしかった。

妹の萌美は、美少女と、称するにふさわしい雰囲気で、
姉妹合せて、美人姉妹と呼ぶにふさわしい雰囲気だー。

「--(ふふふ…こうして萌美ちゃんと、一緒にお出かけできるなんて)」
絵梨香は涎を垂らしそうになるも、
それを我慢するー

しかもー
自分がこうしてミニスカートをはいて、
美脚を世の中に披露できるなんてー

「ふふふふふふ…♡」
絵梨香がご機嫌そうにしていると、
萌美は「最近、なんだかお姉ちゃん、とっても嬉しそう!」と微笑んだー

萌美は、ふと”ある不安”を思い出したー
あのストーカー男は、自分の前に姿を現さなくなったー
そして、あの直後、姉の様子がおかしいと感じるときもあったが、
今はふつうー
いや、”前よりも強い愛情を感じる”

もしかしてー

妹の萌美は、どこかでそう思っていた。

けれどー
憧れのお姉ちゃんがこんなにも良くしてくれるし、
萌美によっても、最近の姉妹の関係は理想の関係だった。

「--どうしたの?」
絵梨香が優しく微笑みかけると、
萌美は「あ、ううん、なんでもない!」と答えた。

2人は”まるで本物の姉妹”かのように、
いや、それ以上に
仲良く買い物をしたり、映画を見たり、
昼食を食べたりして、
休日を満喫したー。

「--なんか、雨が降りそう…」
萌美が言う。

「---天気急変に注意、って言ってたし、
 そろそろ帰ろうか」
絵梨香が言う。

自分には来週もある、
再来週もある、
いや、来月も、来年も。

今の自分は、お姉ちゃんなのだから。
その事実に、とんでもなく興奮するー。

今日もわたしが絵梨香。
あしたも、あさっても、わたしが絵梨香なのだからー。

「---萌美!」
背後から、男の声がした。

萌美がビクッとして振り返る。

そこにはー
ストーカー男・和馬の姿があった。

「ひっ…!」
萌美が驚いて、身体を震わせる。

「---ちょっと!もう近寄らないでって言ったでしょ!」
絵梨香が萌美を背後に隠すようにして、
和馬に向かって叫ぶ。

「---萌美!わたしが絵梨香…!
 わたしとそいつ、体を入れ替えられちゃったの!」
和馬が女言葉で声を出す。

「---な、、何を言ってるの…?」
萌美がおびえた表情で和馬を見る。

「---け、警察呼ぶわよ!」
絵梨香は叫ぶ。

”自分は絵梨香だ”
そう思いながらも、絵梨香の中にいる和馬は内心ひやひやしていたー
この”パラダイス”が壊されてしまうかもしれないーと。

人気のない通りー
雨がぽつぽつと降り始めるー。

「--萌美!落ち着いて聞いて!
 私が絵梨香…

 誕生日は6月12日、
 血液型は…」

「--O型ー!」
和馬と絵梨香が同時に叫んだ。

「----」
和馬は表情を歪める。
絵梨香はにやりと笑った。

記憶の一部を読み取ることができているー

和馬の中にいる絵梨香にとってもこれは、
想定の内だった。
自分が、ストーカー男の記憶を一部、読み取れているということは
相手も同じであっても、おかしくはない。

「--お、、お姉ちゃんの個人情報まで調べたの…?」
萌美が震えている。

「---」
和馬の中にいる絵梨香は”次”の作戦に出たー

「萌美…落ち着いて。
 萌美が小学校4年生のころ、
 インフルエンザになったことがあったでしょ?

 あの時、わたし、とんでもないことをしちゃったよね?
 覚えてる?」

萌美が震えながらもうなずく。

「--」
和馬の中にいる絵梨香は少し微笑んだ…。

和馬の記憶を引き出せる、と言っても
大きな部分のみ。
細かい記憶などを引き出すことはできていない。

記憶の一部分しか引きだせていないのだー
それは、絵梨香になったストーカー男も同じハズ。

だったら、それがー
入れ替わりの証拠になる。

小学4年生のころ、インフルエンザになってしまった萌美。
当時、姉の絵梨香は、
両親が留守だったため、必死に妹の看病をしていた。

そんな時、
”風邪を移せば治る”ということばを知っていた姉は、
妹に突然キスをして
「インフルエンザを私が吸い込んであげる!」と
叫んだのだったー

当然、姉もインフルエンザになってしまいー
両親にこっぴどく怒られた。

そんな、エピソードがある。

それはー
自分と、萌美、それに両親しか知らないはずーーー


だった…。

「---でしょ?」
目の前にいる絵梨香が、その思い出を喋った。

「----!!!」
和馬は驚く。

雨が一層強くなる中、
絵梨香が勝ち誇った表情をしている。
絵梨香の中にいる和馬は、
絵梨香とは違い
”全ての記憶を引きだせていた”

和馬の記憶は一部しか引き出せず、
絵梨香の記憶は全部引き出されたー

その境界線は何だったのだろうかー。

絵梨香になった和馬は”前向きに”絵梨香として生きて行こうとしている。
しかし、和馬になった絵梨香は”元に戻ること”ばかりを考えている

それがー
記憶の流入に、影響を与えていたー

「う…うそ…
 どうしてそれを知ってるの?!」

和馬が叫ぶ。

絵梨香は
「当然でしょ?わたしが絵梨香なんだから!」と叫んだ。

萌美も、和馬に対する敵意をむき出しにする。

「---はぁ」
和馬はため息をついて、カエル柄のピンク色のスマホを出した。

そこにはー”最後の手段”が保存されているー

あの日、体が入れ替わってしまった瞬間、
それを録画した映像だー

たまたま、近くで遊んでた不良たちが、
”修羅場”として、面白半分で撮影した動画ー

ピンク色のカエルのスマホに拒否反応を示す萌美。

そこにはー
雷鳴と共に倒れる2人ー
目覚めた二人の様子が明らかにおかしいことー

「--僕が…萌美ちゃんの…
 お姉ちゃん…?
 ふふふふ…
 ふほ、うへへへへへへへへ!」

という絵梨香の言葉が映し出されていたー

「こ…これは…」
萌美は、姉の絵梨香の方を見る。

絵梨香の表情からは先ほどまでの笑顔が
消えて、表情には焦りが浮かんでいたー

「--萌美!騙されないで!
 わたしが、絵梨香!」

目の前にいるストーカー男・和馬がそう叫ぶ。

「お姉ちゃんー」

萌美は呟いた。

「---そ、そんなもの、
 いくらだって、、合成できるでしょ…!」
絵梨香が裏返った声で言う。

明らかに苦し紛れな言い訳ー

2人が入れ替わっているのは、
もう、ほぼ確実だった。

それでもー

萌美はここ1、2週間のことを考えた。

大好きなお姉ちゃんとさらに仲良くなれて
毎日がとても楽しかった。
今までよりも楽しいと感じたし、
仮に中身が、ストーカー男だったとしても、
その楽しい日々は事実だったし、
姉は、本当に自分を心配してくれているー。

そしてー
目の前にいるストーカー男の和馬を見る。

「--萌美…」
和馬は目に涙を浮かべて萌美を見ている。

正直、”気持ち悪い”
そう思ったー

小太りの男が、目に涙を浮かべながら自分の名前を呼ぶ。

生理的嫌悪を感じたー。

仮に、
仮に中身が姉の絵梨香だったとしてもー

”気持ち悪い”
心からそう思った。
吐き気がする。

入れ替わっているという話は本当なのか?
萌美は頭をフル回転させる。

恐らく本当だー。
あの日、少しだけ姉の様子がおかしかった。
まるでストーカー男のように感じた。

けれど、最近は違うー
毎日が楽しい。

もしもここでー
ここで入れ替わったことを認めたらー?

横に居る姉の絵梨香はーー
中身がストーカー男の絵梨香は、どういう態度を示すのだろう…?

それにー
2人は元に戻ることができるのだろうか?
もしもできないなら、自分は、気持ち悪い男と一緒に
暮らすことになる?
中身が姉だと分かっていてもー気持ち悪いー
そんなのは嫌だ…絶対に…。

「お姉ちゃん…わたしを…守ってくれる?」

萌美は答えを出せないまま
そう呟いた。

「--当たり前でしょ…。萌美…!」
和馬が微笑みながら言う。

吐き気がする―

「---萌美…わたしを信じて」
横にいる姉の絵梨香が優しく微笑むー


萌美は決意したー
例え、中身が誰であれー
わたしはーー耐えられないー

”ごめんねーーお姉ちゃん”

萌美は心の中でそう叫んだ。

萌美は、横にいた姉の手を握る。
絵梨香は少し驚いたような表情を浮かべたー

そして、萌美は叫ぶ。

「もう、わたしたちに近寄らないで!」

ーーーー!!!

和馬は驚きの表情を浮かべた。

「---え…も、、、萌美…?」
信じられなかった。
入れ替わった瞬間の映像を見せたのにー

どうして?

「--これ以上付き纏うなら…わたし、、
 絶対に、、絶対にあんたを許さない…!」

萌美は目に涙を浮かべながらそう叫んだ。

「---も、、萌美…!わたしが、、わたしが絵梨香なの!」
和馬の中にいる絵梨香は必死に叫んだ。

ふと、絵梨香を見るー。
絵梨香は、勝ち誇った表情で妹の手を握っていた。

「---これ以上、私たち姉妹に近寄らないで」
絵梨香が言うー。
中身は、和馬の絵梨香が言うー

雷が鳴り響いて、
大雨が3人を濡らすー

「---どうして」
雨が降りしきる中、
和馬は地べたに手をついた。

「萌美…どうして…
 どうして…」
ぽたぽたと涙をこぼす和馬。

「---……お…」
萌美は”お姉ちゃん”と叫ぼうとしたー

でもー
横にいた絵梨香が萌美を優しく抱きしめた。

”はぁ♡ はぁ♡ もえみちゃん♡ ははぁああああ♡”

絵梨香の中にいる和馬は興奮を
抑えながら呟いた。

「--わたしが、守るからー」

その言葉に、萌美は、もう考えるのをやめたー。

涙をこぼしながらそれを受け入れて、
萌美は「お姉ちゃん…」と呟く…

入れ替わったのだとしてもー
お姉ちゃんの記憶を持っていて、
今まで以上にやさしくしてくれるー
だったら、それは、もう、お姉ちゃんだよね…?

萌美は、自分にそう言い聞かせたー

あんな気持ち悪い男と一緒に過ごすことはできないー
例え、中身が姉の絵梨香だとしても。

「----行こう…お姉ちゃん」
萌美は涙をふきながら、姉の絵梨香にそう告げた。

「うんー」
絵梨香は、”萌美ちゃん可愛すぎるよぉ”と思いながら
萌美の手を優しく握り、
雨の中歩き始めた。


「---うああああああああああっ!」
一人残された和馬はピンク色のスマホを投げ捨てて
大声で叫んだ。

「萌美…!萌美…!!!!!
 ああああああああああああああああああ!」
大雨の中、雨の音をかき消すぐらいの大声で
和馬は叫んだ―

”わたしが絵梨香なのにー”

和馬は、大雨のことも忘れて、
その場で泣きつづけたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから数日が経過した。

絵梨香は部屋の中で、
萌美の写真を見て、
写真に向かってキスをしていたー

「ありがとう、萌美…
 ”わたし”を選んでくれて―」

絵梨香は萌美の写真に何度も何度もキスをするー

「---わたし…
 萌美の理想のお姉ちゃんになれるように頑張るからー」

絵梨香の中にいる和馬は決意したー
絶対に、萌美を守るー
”お姉ちゃん”としてー
これからもずっとー。

萌美の前では、ちゃんとお姉ちゃんとして振る舞うと。

「---う~~~ん♡」
萌美の部屋から持ち出した洋服のニオイを嗅ぐと、
絵梨香は顔を赤らめて、嬉しそうに微笑んだ・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後。

萌美は姉とLINEのやり取りを終えると、
笑顔で歩き出したー。

もう、中身がどうだっていいー。

今のお姉ちゃんはお姉ちゃんだー

それだけで十分ー。

萌美は、難しい事を考えるのをやめて、
あの日のことも、忘れようとしていたー

「--ー今日の晩御飯、何かなぁ~」

そんな風に呟きながら歩く萌美ー。

萌美が公園の前を通過するー。


「もえみ…」

その公園からー
男が萌美を見つめていたー

和馬ー。
姉の絵梨香が中にいる和馬だったー

「もえみ…もえみ…!」
うつろな目で和馬は萌美を見つめるー

「もえみー…わたしが…まもるから…」
和馬はあの日以降、萌美をずっとつけていたー。
気付かれないようにー

たとえ、妹に拒まれても、
わたしが絵梨香だー。
わたしが、萌美を守るー

和馬はそう決意してー
萌美を遠くから見守りつづけることを決意したー

そう、和馬になってしまった絵梨香は、
新たなストーカーと化したのだ…。


”ストーカーはお姉ちゃん”


おわり

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コメント

ストーカーはお姉ちゃんの最終回でした!!

最終回の結末は、色々悩んだのですが
このような形になりました!!

もしも皆様がこの作品の妹の立場だったら
どのような選択をしたでしょうか~?
ちょっぴり気になります笑

私だったら……

……。

悩みますネ…笑

ちなみに、この作品は
ツイッターのフォロワー様から頂いたリクエスト

(↓原文)

”仲良し姉妹の妹の方がストーカー男につき纏われ、姉に相談する。
姉はストーカーに、妹にこれ以上近づかないで、さもなくば警察を呼ぶと警告。
しかし、その場でストーカーに体を入れ替えられてしまう。
姉(ストーカー)はその立場を利用して妹の入浴中に風呂場に入ってきたり、
妹の体をべたべた触ったりやりたい放題。
一方、ストーカー(姉)は姉(ストーカー)の魔の手から大切な妹を守るために立ち上がる……。”

(↑ここまで原文★)リクエスト*飛龍様

を元に作った作品でした!

現在、リクエストは色々な事情で停止してしまっていますが、
結果的に、このリクエストは、いい形で形にできたかな…?と思っています!

ここまでお読み下さりありがとうございました!

解体新書様の入替モノ祭りでは、
新作の入れ替わりをご用意していますので、
開催の際には、ぜひそちらもお楽しみくださいネ~!