どう?

作:Tira
イラスト:あさぎりさん
 
 

「好きなんでしょ、香織の事」

「ま、まあな……」

「ふ〜ん、それならいっそ、香織になっちゃえば?」

「は、はぁ?何訳の分からない事言ってんだよ、永子」

「だってさ。栄治って、ほんとは香織が好きなんじゃなくて、香織の体がほしいんでしょ。
 前に女の子の体になってみたいって言ってたじゃないの」

「ち、違うってさ。香織さんとは……ただ……付き合いたいだけだし。
 お前ってどうしてそんなに極端な考え方するんだよ」

「別にぃ〜。きっとそうなんだろうなって思って。違う?」

「それは……そんなことないさ。だって香織さんは……俺にとって天使なんだから」

「て、天使!?アハハハッ!おっかしぃ〜!天使だなんて信じられない発想だわっ」

「わ、笑うなよ。それだけ純粋……真剣に思ってるんだからさ」

「今時そんな奇麗事を言う男がいるなんて思ってなかったわ。ハハハッ……お、おかしすぎるぅ〜っ」

「う、五月蝿いなぁ。お前は関係ないだろっ」

「はぁ、はぁ……笑いすぎてお腹が痛い……ふぅ、関係ないことないじゃない。
 だって香織と私は親友なんだから」

「それじゃあ香織さんと俺の仲を取り持ってくれるのか?」

「そうねえ。幼馴染の私としてはちょっとくらい協力してあげないわけじゃないけど」

「そうなのか?それなら頼むよ。それとなく香織さんに俺の気持ちを伝えてくれないか?」

「だ〜め、そんなことくらい自分で言いなさいよ」

「何だよ、協力してくれるんじゃないのか?」

「協力してあげるわよ。ふふ、香織のすべてを教えてあげる」

「??どういう事?」

「それは後で教えてあげるわ。放課後、校舎裏の空き地に来てよ」

「そ、そこで香織さんと話をさせる気か?」

「いいからいいから。それじゃあ待ってるわよ」

「お、おい、永子っ」
 
 

――昼休み。

幼馴染の栄治と永子は、香織の事について話をしていた。
香織は永子と同じクラスで、部活も同じバレーボール部に所属している親友だ。
その香織にひそかに想いを寄せていた栄治。
最近、そうじゃないかなぁと感じていた永子は、その気持ちを確かめるために
栄治に聞いていたところだった。
結果は思っていたとおり。
香織にはそんな気持ちはなさそうだったが、まあ栄治は幼馴染だし、永子としても
香織のことが好きだったので(?)、栄治の願いを叶えてやろうと思ったようだ。
 

――たまたま知り合いからもらった青色のゼリージュース。
それを今、永子は学校のかばんに忍ばせている。
このゼリージュースを飲むと、他人の体に憑依出来るのだ。
これを栄治に飲ませて――
 

香織は午後の授業が終わったあと、部活に参加するため、永子と体操服に着替えて体育館へ向かうつもりだった。
しかし、永子にちょっと付き合ってほしいと言われたので、二人して校舎裏の空き地に向かったのだ。
 

「ねえ永子。手に持っているそのジュースは何なの?」

「え、これ?ううん、別に。喉が渇いたら飲もうかと思って」

「ふ〜ん……ねえ、校舎裏の空き地で何かあるの?」

「ちょっとね!」

「何?」

「着いてからのお楽しみよ」

「…………」
 
 

永子の考えていることがよく分からない香織だったが、とりあえず永子と共に
校舎裏の空き地に着いた。
 

「ちょっと待っててね、すぐに戻ってくるから」

「え、い……いいけど……」
 

永子が走っていく後姿を首をかしげながら見ていた香織。
ちょうど永子の姿が校舎に隠れて見えなくなったとき、永子の目の前に
制服姿の栄治が現れた。
 

「あ、永子」

「あ、栄治っ。ナイスタイミングッ!このジュースを飲んで。早くっ」

「な、何だよそれ」

「そうだ、英治。その前に裸にならなきゃ」

「えっ、は、裸!?」

「裸になってからこのジュースを飲むのよ。そしたら体が透明人間みたいに
 なるから。そうなったら裏の空き地にいる香織の体に栄治の体を重ねるの。
 そうすれば香織の体の中に入り込めるから」

「え、え……お、お前、何言ってるんだよ。俺、お前の言ってることがぜんぜん分からない」

「いいから私の言うとおりにすればいいのよ。ほら、あの倉庫の裏にでも隠れて服を脱いで」

「お、おいっ!ちょ、ちょっと待てよっ」
 

永子は校舎の横にあった、誰も使っていない倉庫の裏に栄治を押し込むと、
持っていたゼリージュースの蓋を開けて栄治に手渡した。
 

「ほら早くっ」

「だ、だってこんな所で裸になれるわけないだろ」

「グチグチ言ってないで早くしてよ。香織が待っているんだから」

「そんな事言ったってさ……」

「も〜っ!早く飲めぇっ!」

「お、おいっ……永……ゴクッ……ゴクッ……ん?旨いな、これ」

「全部飲んで」

「あ、ああ。ゴクゴク……押しながら飲まないと出てこない」

「ゼリージュースだからね」

「ゴクゴク……ぷはぁ。美味しかった」

「じゃあ早く服を脱いでよ。ほら、手がもう透け始めているじゃないの」

「手が?あ、ああっ!!」

「驚いてないで早く脱ぎなさいってっ」

「ほ、ほんとに手が透明に……」

「いちいち驚かないで早くっ」

「あ、ああ。分かったよ……」
 

栄治は何が何だか分からないまま、慌てて永子に背を向けると制服を脱ぎ始めた。
そうしている間にも、だんだん体が透明になってゆく。
 

「いい?時間が無いから私が永子をここまで連れて来るわ。そうしたら永子の体に
 入り込むのよ。分かった?」

「は、入り込むって……」

「永子の体に自分の体を重ねればいいのよ。分かったわね、じゃあ連れて来るから」

「お、おいっ…………って……俺の体……ぜんぜん見えなくなってる?」
 

永子を呼び止めようと手を伸ばした栄治。
本来ならその腕が視界に入っているはずなのだが、そこには何もなかった。
確かに腕を前につき出しているのに。
その後、俯いて自分の体が全く見えなくなっていることを知った栄治。
 

「ほ、ほんとに体全体が透明になってる。お、俺、透明人間になっちゃったんだ……」
 

一瞬途方に暮れてしまった栄治だったが、向こうから永子と香織の声がしたので
倉庫の前に出て二人の様子を伺った。
小走りで走ってくる永子と香織。
 

「こっちこっち」

「ど、どうしたのよ永子」

「いいからいいから」

「もう……」
 

二人が走ってくる足跡が近づいてきて、倉庫の前で止まった。
 

「何なの?こんなところに連れて来て……」

「ごめんね香織」
 

そう言った香織はキョロキョロと周りを見渡している。
透明になった栄治を探しているようだ。
 

「何処に行ったのかなぁ」

「え、誰が?」

「ううん、何でもないんだけど……ちょっと、早くしなさいよっ!」

「え?ど、どうしたの?」
 

永子がどこかに向かって大きな声を出した。

(ほ、ほんとにいいのか?)
 

ひそかに香織の目の前に立っていた栄治はそう思った。
訳も分からずこんな所に連れて来られた香織は、困惑の表情をしている。
そんな表情も可愛いと思った栄治だったが、隣にいる永子が険しい表情をしているので
言われたとおりにすることにした。
 

(こんなに間近で香織さんの顔を見れるなんて思わなかったなぁ……
それに……)
 

青くて長い髪をまとめ、ポニーテールにしている香織。
そんな香織にゆっくりと近づく。
10センチ……5センチ……そして……

体操服に包まれている香織の大きな胸と栄治の胸が触れ合った……が、栄治の胸は
香織の胸の中に埋もれてしまっている。

(ど、どうなってるんだ……でも……これって永子が言っていた体に入り込むってことか)
 

そう思いながら、さらに体を前に進める栄治。
すると、透明な栄治の体が服に染み込むように入っていった。
そして……
 

「え……あ、あれ……」

「どうしたの、香織」

「どうして?えっ……うっ……」
 

香織は両手を胸に当てながら、少し苦しそうな表情を見せた。
少し足を屈め、体を前に傾けている。
 

「か、香織……」
 

少し心配そうな表情をした永子だったが、これが栄治の仕業であることは分かっていた。
永子の目の前でブルッと体を震わせ、一瞬気を失ったように見えた香織。
でも、香織は目をパチクリさせたあと、ゆっくりと永子の顔を見た。
 

「……栄治?」

「……あ、ああ……あれ……お、俺……」
 

香織はそのまま俯き、両手が添えられている体操服の胸を見た。
 

「あっ……こ、これは……ま、まさか……」
 

その胸の感触、そして自分が発する声に驚ろいている栄治。
 

「……どうやら成功したみたいね。どう?香織の体は」

「ど、どうって……やっぱり俺……か、香織さんになったのか」

「なったのかって、今自分で胸を触ってるじゃないの。いきなり胸を触るなんて
やっぱり栄治は変態だよね」

「ち、違うってっ!」
 

栄治は慌てて胸から両手を離した。
そしてその手を体の後ろに遠ざける。
 

「ふふ。分かってるわよ、栄治。ううん、香織っ!」
 

永子はうれしそうな表情をすると、栄治が乗り移っている香織の後ろに回りこんだ。
そして、香織(栄治)の両肩に手を乗せて耳元で話を始める。
 

「すごいでしょ、ゼリージュースって。こうやって香織の体に乗り移ることが出来るんだから」

「でも香織さんは……香織さんの意識はどうなってるんだ?」

「心配しないでもいいわよ。栄治がその体から出て行くまで眠っている状態だから」

「そうなのか……」

「そうよ。ほら、望み通リ女の子、しかも憧れの彼女の体に乗り移らせてあげたのに何にもしないつもり?」

「えっ…うん、でも…」

「あーじれったいわね!
じゃ、そのままじっとしてなさいよ…フフッ♪」


「どう?気持ちいいでしょ?」

「…………」
 

永子が肩に置いていた手を離し、香織(栄治)の脇の下から胸をつかむ。

ムニュッとした香織の胸の感触を楽しむ永子。
 

「気持ちいいの?気持ちよくないの?」

「……き、気持ち……いい……」
(女の子の胸ってこんなに気持ちがいいんだ……)
 

下から持ち上げるようにしながら胸を揉んでいる永子。
そんな永子の手を止めようとはしない香織(英治)。
 

「ねえ英治、大好きな香織の体になって胸を揉まれているんだよ。
 香織はどう思っているかなぁ」

「そ、そんなの俺に分かるわけ……無いだろ……んっ……」

「ふふ。可愛い声出しちゃって!」
 

永子は何度も何度も香織(英治)の胸を揉むと、次は赤いブルマーの上に手を差し伸べた。
のっぺりとした香織(英治)の股間の上を優しく擦る。
 

「英治のココには男の子のアレが付いているのよね。でも香織のココには何も無いでしょ」

「そんな事……初めから分かってるって……」

「確かめてみたら?自分で」

「えっ……」

「ほら、こうやって……」
 

だらんと垂らしていた香織(英治)の右手を掴んだ永子は、そのまま香織の股間に触れさせてやった。
香織の手が、ブルマーの股間に添えられる。
 

「ね、何も無いでしょ」

「あ、ああ……」

「これが香織のアソコなんだよ。どう?」

「…………」

「信じられないでしょ。刺激が強すぎたかな?」

「ほ、ほんとに……俺……」

「何よ、まだ信じてないの?それならこっちへ来なさいよっ!」

「あっ、ちょ、ちょっと……そんなに引っ張るなよっ!」
 

永子は香織(英治)の手首を掴むと、無理矢理引っ張りながら校舎の中にある女子トイレに連れて行った。
 

「イタタ……」

「そんなに強く掴んでないでしょ」

「でも痛いんだからさ」

「そんなことより、ほら……」
 

香織(英治)を後ろから押して、上半身が映る位の小さい鏡の前に立たせる。
そこにはポニーテールの可愛い顔をした香織が映っていた。
 

「あ……」

「信じた?」

「か、香織……さん」
 

としゃべったのは鏡に映っている香織だった。
 

「分かったでしょ。香織」

「…………」

「こっちに来て」

「えっ」
 

永子は香織(英治)をトイレの個室に引っ張り込んだ。
そして……
 

「一度こんな事、してみたかったんだぁ!」
 

そう言うと、自分の唇で香織(英治)の唇を塞いだのだった。
 

「んっ……んんぅ〜」

「んふっ……んっ……んん……」

「んん!や、止めろよっ!」

「ふぅ……嫌なの?大好きな香織の体になってエッチな事するの」

「あ、当たり前じゃないか。俺はそんなつもりで香織さんと……」

「折角香織に乗り移らせてあげたんじゃないの。私のやりたい事だってさせてよねっ」
 

そう言うと、また唇を塞いだ。
そして香織(英治)の体を思い切り撫でまくる。
 

「おいっ……うっ……」

「いいから。ほら、ここはどう?」

「うっ……だ、だめだって……香織さんが……」

「だから香織は英治なんだって、ねっ!」

「あっ……あっ……」
 

ビクン、ビクンと香織(英治)の身体が反応している。
女子トイレの個室から怪しいため息や喘ぎ声。
 

「大きな声出したら誰かに気づかれるわよ。大人しくしてなさい、香織ちゃん!」

「こんな事して……し、知らないぞ……んっ!」

「だって本人は意識がないんだから。そんな事より……」

「あぁ……そ、そんな所を触るなよ……ひうっ……あふっ」

「しぃ〜っ!声が大きいよ」

「だ、だって……き、気持ちよすぎて……うくっ……んっ」
 

個室の扉の奥から、布が擦れる音が聞こえてくる。
そして、クチュクチュと何やら怪しい音まで聞こえてきた。
荒い息遣い。
そして……
 

「いっ……うっ……あ……あぁ……」

「んんぅぅ〜……んんっ……んふぅ〜」
 
 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

「ううっ……はぁ……は……ぁ……」
 

しばらくすると、個室の扉が開いて二人が現われた。
二人とも服装は正されているが、額から汗を滲ませて息が乱れたままだ。
 

「ふぅ……楽しかったでしょ、女の子同士も」

「…………お、女の子って……こんなに気持ちがいいんだ……」

「男の子の方が気持ちよくないの?」

「男って一瞬だし……この気持ちよさに比べたら……」
 

そう言いながら、香織(英治)は両手をブルマの上に添えた。
そんな香織(英治)を見て、ニヤリと笑った永子。
 

「それじゃあまた今度楽しいことする?」

「え……」

「忘れられないでしょ。女の子の快感っ!」

「あ、ああ……それはそうだけど……」

「今度はねぇ」
 

香織(英治)の耳元でそっと呟く。
 

「私が……」
 
 
 
 

どう?…おわり
 
 
 

あとがき
あさぎりさんのイラストを使わせていただき、作品を作らせて頂きました。
ゼリージュースにしようかどうか迷ったのですが、最近自分でゼリージュースの作品を
書いていなかったので無理矢理ゼリージュースネタとして書きあげました。
う〜ん、ほんとに久しぶりだぁ(笑
イラストの部分が書きたかったので、後半部分は省略しました(^^
え、そこが一番見たかったって!?
そういう方は、どうか妄想でカバーしてください(笑
いや、そこまで書く余裕が無くて(苦笑

それでは最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
Tiraより